この記事は、訪問看護ステーションの管理者・事務担当の方に向けたものです。介護保険の訪問看護の請求を「判定→指示書→単位数→加算→返戻対策」の順に整理します。介護保険と医療保険のどちらで請求するか、特別訪問看護指示書の期間の扱い、加算の届出と要件、返戻になりやすい点に答えます。
結論から言うと、要介護認定を受けた利用者は原則として介護保険で請求します。例外は3つです。「厚生労働大臣が定める疾病等(別表7)」「特別訪問看護指示書の期間(交付日から14日以内)」「精神科訪問看護(認知症を除く)」は医療保険になります。介護保険の訪問看護費(訪問看護ステーション)は20分未満314単位~1時間以上1時間30分未満1,128単位です。令和8年(2026年)6月からは、訪問看護にも処遇改善加算(所定単位数の1,000分の18)が新設されました。
記事は、判定フロー、指示書の期限管理、報酬構造、主な加算、請求実務、返戻例、FAQの順に進みます。国保連への請求手順そのものは、介護保険の国保連請求の流れと毎月10日締切の記事にまとめています。本記事は訪問看護に固有の論点に絞ります。
記事でわかること
訪問看護の介護保険請求とは|医療保険との関係と請求先の全体像
訪問看護の請求は、同じ事業所でも「介護保険」と「医療保険」の2系統に分かれます。どちらで請求するかは利用者ごと、期間ごとに決まり、根拠法・請求先・帳票・利用者負担のすべてが変わります。まず2系統の違いを押さえておくと、後の判定と加算の話が理解しやすくなります。
| 項目 | 介護保険の訪問看護 | 医療保険の訪問看護 |
|---|---|---|
| 根拠 | 介護保険法(訪問看護費・介護予防訪問看護費) | 健康保険法等(訪問看護療養費) |
| 主な対象 | 要介護・要支援認定を受けた人(原則) | 認定のない人、別表7の疾病等、特別指示期間中、精神科訪問看護(認知症除く) |
| 請求先 | 国保連(介護給付費請求) | 支払基金(被用者保険)または国保連(国保・後期高齢) |
| 締切 | サービス提供月の翌月10日 | 訪問看護を実施した月の翌月10日 |
| 報酬の単位 | 1回の所要時間区分ごとの単位数(20分未満~1時間30分未満) | 訪問看護基本療養費(日単位)+管理療養費等 |
| 回数の目安 | ケアプランの範囲内(区分支給限度基準額の管理あり) | 原則週3日まで(別表7・別表8の該当者と特別指示期間は週4日以上も可) |
| 利用者負担 | 1~3割 | 1~3割 |
介護保険法の給付は医療保険の給付に優先します。したがって要介護認定を受けた人は「介護保険が原則、医療保険が例外」です。利用者側から見た訪問看護の利用条件や費用の考え方は、訪問看護とは?サービス内容や利用条件の記事で解説しています。
介護保険か医療保険かの判定フロー|要介護認定・別表7・特別指示書・精神科
判定は「認定の有無→疾病→指示書の種類→精神科かどうか」の順に見ると迷いません。事務担当が請求前に確認する順番として、下の表をそのまま使えます。
判定の順番(表)
| 順番 | 確認事項 | 該当する場合 | 該当しない場合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 要介護・要支援の認定があるか | 2へ | 医療保険(40歳未満、40~64歳で特定疾病に該当しない人なども医療保険) |
| 2 | 厚生労働大臣が定める疾病等(別表7)に該当するか | 医療保険 | 3へ |
| 3 | 特別訪問看護指示書の期間内か(交付日から14日以内) | その期間は医療保険 | 4へ |
| 4 | 精神科訪問看護基本療養費の対象か(認知症を除く精神疾患) | 医療保険 | 介護保険 |
介護保険で請求するのは、4つの確認をすべて通過した場合です。逆に言えば、要介護認定があっても2~4のどれかに当たれば医療保険になります。同じ利用者でも、特別指示書の期間だけ医療保険に切り替わるため、判定は「利用者単位」ではなく「期間単位」で管理します。
厚生労働大臣が定める疾病等(別表7)
別表7に該当する利用者は、要介護認定があっても医療保険で訪問看護を行います。対象は次の疾病・状態です。
- 末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、スモン
- 筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症
- パーキンソン病関連疾患、多系統萎縮症、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎
- ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後天性免疫不全症候群、頸髄損傷
- 人工呼吸器を使用している状態
注意点は、パーキンソン病に重症度の条件が付いていることです。ホーエン・ヤール重症度分類ステージ3以上かつ生活機能障害度Ⅱ度またはⅢ度に限られます。診断名だけで判定せず、指示書の傷病名欄と重症度の記載を突き合わせてください。判断に迷う場合は主治医に確認し、確認した内容を記録に残します。
特別訪問看護指示書の14日間と月2回の要件
特別訪問看護指示書は、急性増悪や終末期などで頻回の訪問が必要なときに主治医が交付します。有効期間は交付日から14日以内で、原則として月1回です。気管カニューレを使用している人と真皮を越える褥瘡がある人に限り、月2回まで交付できます。
請求上の扱いは明確で、特別指示書の期間中は介護保険の訪問看護費を算定しません。期間中の訪問はすべて医療保険(訪問看護療養費)で請求します。14日を過ぎた翌日から介護保険に戻るので、指示書の交付日と終了日を利用者台帳に必ず記録してください。
精神科訪問看護と認知症の扱い
精神科訪問看護基本療養費が算定される訪問看護は、要介護認定があっても医療保険です。ただし認知症は除かれ、認知症の利用者は介護保険で請求します。精神科訪問看護指示書が出ている利用者でも、主たる傷病が認知症であれば介護保険になる点を、指示書の傷病名で確認します。
認定申請中・月途中の切替
要介護認定の申請中に訪問を始めた場合、認定が出ると申請日にさかのぼって介護保険の訪問看護になります。医療保険で先に請求してしまうと、後から返戻・返還の対象になり得ます。申請中はケアマネジャーに暫定ケアプランを依頼し、請求は認定結果が出てから行うのが安全です。区分変更や認定更新で月途中に要介護度が変わる場合の取り扱いは保険者ごとに運用があるため、保険者に確認してください。
指示書の期限管理|6か月・14日・請求前チェック
訪問看護の返戻・返還で最も多い原因の1つが、指示書の期限切れです。介護保険の訪問看護費は「指示書の有効期間内に行った訪問」に対してのみ算定できます。有効期間外の訪問は、たとえサービス自体を提供していても報酬の対象になりません。
| 書類 | 有効期間 | 交付回数 | 請求前に確認すること |
|---|---|---|---|
| 訪問看護指示書 | 主治医が定める期間(最長6か月) | 期間ごとに更新 | 指示期間の開始日・終了日、傷病名、指示内容と訪問看護計画書の整合 |
| 特別訪問看護指示書 | 交付日から14日以内 | 原則月1回(気管カニューレ使用者・真皮を越える褥瘡は月2回) | 期間中の訪問を介護保険で請求していないか |
| 精神科訪問看護指示書 | 主治医が定める期間(最長6か月) | 期間ごとに更新 | 認知症かどうか(認知症は介護保険) |
実務では、月初の請求前に「当月に指示期間が切れる利用者」を一覧で出し、更新指示書の受領を確認します。更新が遅れる場合は、訪問前に主治医から更新の意思を確認し、指示書の到着日を記録しておきます。指示書の日付が訪問日より後になっているケースは運営指導でも指摘されやすい点です。
病院・診療所が行う訪問看護(みなし指定)は、訪問看護ステーションと異なり、主治医の診療日から1か月以内に行った訪問が算定対象です。他の医療機関の主治医からの情報提供を受けた場合も、その診療日から1か月以内が目安になります。
介護保険の訪問看護費の報酬構造(2026年9月時点)
介護保険の訪問看護費は「1回の所要時間区分×職種」で基本単位数が決まり、そこに加算と減算が乗ります。単位数は令和6年度(2024年度)改定のものが、令和8年(2026年)9月時点でも適用されています。令和8年6月の臨時改定では基本単位数は変わらず、処遇改善加算が新設されました。
時間区分と単位数(表)
| 所要時間区分 | 訪問看護ステーション | 病院・診療所 |
|---|---|---|
| 20分未満 | 314単位 | 266単位 |
| 30分未満 | 471単位 | 399単位 |
| 30分以上1時間未満 | 823単位 | 574単位 |
| 1時間以上1時間30分未満 | 1,128単位 | 844単位 |
| 理学療法士等による訪問(1回20分) | 294単位 | (設定なし) |
| 定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所と連携する場合(月額) | 2,961単位 | (設定なし) |
20分未満の区分には要件があります。算定できるのは、緊急時訪問看護加算の届出をしている事業所に限られます。さらに、居宅サービス計画または訪問看護計画書に、週1回以上の20分以上の訪問が含まれている必要があります。短時間訪問だけを組んだ計画では20分未満を算定できません。
また、前回の訪問からおおむね2時間未満の間隔で行った訪問は、所要時間を合算して1回として扱うのが原則です。合算の例外(緊急時訪問など)は留意事項通知で確認してください。
准看護師・理学療法士等の訪問と減算
准看護師が訪問した場合は、所定単位数の100分の90を算定します(定期巡回連携型は100分の98)。訪問看護計画書に准看護師の訪問を位置付けたうえで、実績記録に職種を残しておきます。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(理学療法士等)の訪問は、1回20分・294単位で、1日に2回を超える場合は100分の90になります。令和6年度改定では、1回につき8単位を減算する仕組みが設けられました。対象は次のどちらかに当たる事業所です。1つは、前年度(4月~翌年3月)の理学療法士等の訪問回数が看護職員の訪問回数を超えている場合です。もう1つは、算定月の前6か月間に緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算をいずれも算定していない場合です。介護予防訪問看護では、利用開始月から12か月を超えた理学療法士等の訪問に1回5単位の減算があります。8単位の減算に当たる事業所では、この12か月超の減算が1回15単位になります。訪問看護と介護予防訪問看護を一体的に運営している場合の回数の数え方は、令和6年度のQ&Aと指定権者の案内で確認してください。
夜間早朝・深夜、同一建物、その他の減算
- 夜間(午後6時~午後10時)・早朝(午前6時~午前8時)の訪問:所定単位数の100分の25を加算
- 深夜(午後10時~午前6時)の訪問:所定単位数の100分の50を加算
- 同一敷地内建物等に居住する利用者:所定単位数の100分の90(同一建物に50人以上の場合は100分の85)
- 高齢者虐待防止措置未実施減算・業務継続計画(BCP)未策定減算:各所定単位数の100分の1を減算。BCP未策定減算の訪問系サービスへの経過措置は令和7年(2025年)3月31日で終了しており、2026年9月時点ではどちらの減算も適用されます
処遇改善加算(令和8年6月新設)
令和8年(2026年)6月1日施行の臨時改定で、これまで対象外だった訪問看護にも介護職員等処遇改善加算が新設されました。加算率は所定単位数の1,000分の18(1.8%)です。取得要件は2通りです。1つは、既存の加算(Ⅳ)に準じたキャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと職場環境等要件を満たす方法(令和8年度中に対応する誓約でも可)です。もう1つは、令和8年度の特例として、ケアプランデータ連携システムに加入して実績を報告する方法です。届出の期限と様式は指定権者の案内で確認してください。
主な加算の要件と請求上の注意
訪問看護の加算は「体制届が必要なもの」と「利用者の状態・実績で算定するもの」に分かれます。届出が受理される前の月は算定できないため、体制届の提出日と算定開始月の確認が請求の出発点です。単位数は2026年9月時点のものです。
| 加算 | 単位数(ステーション) | 体制届 | 算定単位 |
|---|---|---|---|
| 緊急時訪問看護加算(Ⅰ)/(Ⅱ) | 600/574単位(病院・診療所は325/315単位) | 要 | 1月につき |
| 特別管理加算(Ⅰ)/(Ⅱ) | 500/250単位 | 要 | 1月につき |
| ターミナルケア加算 | 2,500単位 | 要 | 死亡月につき |
| 遠隔死亡診断補助加算 | 150単位 | 要 | 1回につき |
| 看護体制強化加算(Ⅰ)/(Ⅱ) | 550/200単位 | 要 | 1月につき |
| 初回加算(Ⅰ)/(Ⅱ) | 350/300単位 | 不要 | 1月につき |
| 退院時共同指導加算 | 600単位 | 不要 | 1回につき |
| 複数名訪問加算(Ⅰ)30分未満/30分以上 | 254/402単位 | 不要 | 1回につき |
| 複数名訪問加算(Ⅱ)30分未満/30分以上 | 201/317単位 | 不要 | 1回につき |
| 長時間訪問看護加算 | 300単位 | 不要 | 1回につき |
| 専門管理加算 | 250単位 | 要 | 1月に1回 |
| 看護・介護職員連携強化加算 | 250単位 | 不要 | 1月につき |
| 口腔連携強化加算 | 50単位 | 要 | 1月に1回 |
| サービス提供体制強化加算(Ⅰ)/(Ⅱ) | 6/3単位 | 要 | 1回につき |
体制届の要否は、告示と各指定権者の「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」の記載で最終確認してください。緊急時訪問看護加算、特別管理加算、ターミナルケア加算、サービス提供体制強化加算、特別地域加算などは区分支給限度基準額の管理対象外です。一方、看護体制強化加算や退院時共同指導加算などは限度額の管理対象に含まれます。どの加算が対象外かは、サービスコード表の限度額対象外の表示で確認してください。
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)(Ⅱ)
利用者の同意を得て、24時間連絡を受けられる体制と必要時の緊急訪問ができる体制を確保している場合に、月1回算定します。算定日は、その月に最初に介護保険の訪問看護を行った日です。(Ⅰ)は、看護師等の負担軽減に資する業務管理体制の整備が追加要件です。夜間対応した翌日の勤務間隔の確保、連続した夜間対応の回数制限、ICTの活用など6項目の取組が示されています。このうち「勤務間隔の確保」か「連続回数の制限」のどちらかを含む2項目以上を満たす必要があります。
請求上の注意は3点です。第1に、緊急訪問を行った月の最初の緊急訪問には夜間早朝・深夜の加算を付けられず、2回目以降から算定できます。第2に、1人の利用者につき1事業所しか算定できないため、複数事業所が関わる利用者はケアマネジャーと算定事業所を決めておきます。第3に、医療保険の24時間対応体制加算との同月併算定はできません。
特別管理加算(Ⅰ)(Ⅱ)
特別な管理を要する状態の利用者に、計画的な管理を行った場合に月1回算定します。(Ⅰ)は在宅悪性腫瘍等患者指導管理・在宅気管切開患者指導管理を受けている状態、気管カニューレや留置カテーテルを使用している状態が対象です。(Ⅱ)は在宅酸素療法や在宅中心静脈栄養法などの指導管理を受けている状態、人工肛門・人工膀胱、真皮を越える褥瘡、週3日以上の点滴注射などが対象です。
(Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定できず、1利用者につき1事業所のみです。医療保険の特別管理加算との同月併算定もできません。褥瘡の深さや点滴の実施日数は算定根拠になるので、看護記録に状態と処置内容を具体的に残してください。特別管理加算の対象者は、長時間訪問看護加算と退院時共同指導加算の2回算定の要件にもつながります。
ターミナルケア加算・遠隔死亡診断補助加算
ターミナルケア加算は、在宅で死亡した利用者について死亡月に2,500単位を算定します。要件は、死亡日および死亡日前14日以内に2日以上(末期の悪性腫瘍などは1日以上)ターミナルケアを行っていることです。ターミナルケアを最後に行った月と死亡月が異なる場合は死亡月に算定します。医療保険の訪問看護ターミナルケア療養費との併算定はできません。特別指示書で医療保険に切り替わっている利用者は、どちらで算定するかを整理してください。
遠隔死亡診断補助加算は、情報通信機器を用いた医師の死亡診断を看護師が補助した場合の150単位です。医療保険側で死亡診断加算等が算定される場合が前提になります。研修修了などの要件があるため、届出内容を事前に確認します。
看護体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)
共通要件は直近6か月の実績で判定します。緊急時訪問看護加算の算定利用者が50%以上、特別管理加算の算定利用者が20%以上であることが必要です。(Ⅰ)は直近12か月のターミナルケア加算の算定利用者が5名以上、(Ⅱ)は1名以上です。訪問看護ステーションでは、従業者に占める看護職員の割合が6割以上であることも求められます。
割合要件は毎月変動します。請求担当は、毎月「算定月の前6か月の緊急時・特別管理の算定利用者数÷利用者総数」を計算してください。要件を下回ったら算定を止め、速やかに指定権者へ届出を出します。要件を満たさないまま算定を続けると過誤調整の対象になります。
初回加算(Ⅰ)(Ⅱ)・退院時共同指導加算
初回加算は、新規に訪問看護計画書を作成した利用者に初回の訪問看護を行った月に算定します。過去2か月間(暦月)に、当該事業所から訪問看護(医療保険の訪問看護を含む)を受けていないことが要件です。(Ⅰ)は、病院・診療所等から退院・退所した当日に、看護師が初回の訪問を行った場合です。(Ⅱ)はそれ以外の場合(退院翌日以降の初回訪問など)で、同じ月に両方は算定できません。なお、介護老人保健施設・介護医療院の退所日や短期入所療養介護の終了日は、原則として訪問看護費を算定できません。算定できるのは、特別管理加算の対象となる状態の利用者か、主治医が退所日の訪問看護を必要と認めた利用者に限られます。病院からの退院日の扱いも含め、指定権者の手引きで確認してください。
退院時共同指導加算は、入院・入所中の利用者の退院・退所にあたって算定する600単位です。主治医等と共同で在宅療養上の指導を行い、その内容を文書で提供することが要件です。退院・退所につき1回(特別管理加算の対象者は2回)で、准看護師による指導は対象外です。初回加算との同時算定はできないため、退院直後の利用者はどちらを算定するか決めておきます。
複数名訪問加算・長時間訪問看護加算
複数名訪問加算(Ⅰ)は看護師等が2人以上で同時に、(Ⅱ)は看護師等と看護補助者が同時に訪問した場合の加算です。対象は、体重が重いなどの身体的理由、暴力行為や著しい迷惑行為、その他利用者の状況から必要と認められる場合です。利用者または家族の同意を得て算定します。同意の記録と、2人目が必要だった理由の記載が請求の根拠です。
長時間訪問看護加算は、特別管理加算の対象者に対する300単位です。1時間以上1時間30分未満の訪問看護に引き続き、通算1時間30分以上の訪問を行った場合に算定します。所要時間は実績記録の開始・終了時刻で確認されるため、時刻の記載を省略しないでください。
専門管理加算・サービス提供体制強化加算・口腔連携強化加算
専門管理加算(250単位、月1回)は令和6年度改定の新設です。区分は2つです。(イ)は、緩和ケア・褥瘡ケア・人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアの専門研修を受けた看護師による計画的な管理です。対象は、悪性腫瘍の鎮痛療法や化学療法を受けている人、真皮を越える褥瘡のある人、人工肛門・人工膀胱の管理が困難な人です。(ロ)は、特定行為研修を修了した看護師が、医科で手順書加算を算定する利用者に計画的な管理を行う場合です。研修修了証の写しを届出時に添付します。
サービス提供体制強化加算は、(Ⅰ)が勤続7年以上の看護師等が30%以上、(Ⅱ)が勤続3年以上が30%以上です。看護師等ごとの研修計画、定期的な会議、健康診断の実施が共通要件です。定期巡回連携型は月50/25単位です。口腔連携強化加算(50単位、月1回)は、口腔の健康状態の評価を行い、歯科医療機関とケアマネジャーに情報提供した場合に算定します。
請求実務|サービスコード・切替月・利用者負担と公費
サービスコードと帳票
介護保険の訪問看護はサービス種類コード13(訪問看護費)、介護予防訪問看護は63で請求します。同じ「13」の中で、訪問看護ステーションと病院・診療所、時間区分、准看護師・理学療法士等の別、各加算がそれぞれ別コードです。令和8年6月施行の処遇改善加算のコードを反映したサービスコード表を使っているか確認してください。請求ソフトの版数も併せて点検します。
帳票は介護給付費明細書(様式第二)で、居宅介護支援事業所が提出する給付管理票と単位数・回数が一致している必要があります。ケアマネジャーへ渡す実績(サービス提供票の実績欄)に、加算の有無と回数まで正確に記載することが返戻を防ぐ近道です。
介護保険と医療保険が同じ月に混在するとき
同じ日の同じ訪問を介護保険と医療保険の両方で請求することはできません。一方で、特別指示書の交付を境に月の途中で医療保険へ切り替わり、14日を過ぎて介護保険へ戻るケースは通常起こります。この場合、介護保険分は国保連へ介護給付費として、医療保険分は訪問看護療養費として、それぞれ別に請求します。
切替月の実務は次の3点です。第1に、実績記録票の各訪問に「介護」「医療」の区分を付け、特別指示書の期間と突き合わせる。第2に、月1回の加算(緊急時訪問看護加算・特別管理加算など)を介護保険と医療保険の両方で算定していないか確認する。第3に、ケアマネジャーに医療保険へ切り替わった期間を伝え、給付管理票からその期間の訪問看護を外してもらう。この連絡が漏れると、給付管理票と明細書の不一致で返戻になります。
利用者負担と公費(生活保護・難病)
介護保険の利用者負担は1~3割で、負担割合証で確認します。生活保護受給者は介護扶助の対象で、公費の法別番号は12です。65歳以上の被保険者は介護保険9割+介護扶助1割です。40~64歳で医療保険に加入していない受給者(いわゆるみなし2号)は介護扶助10割となり、明細書の記載が変わります。介護券の有効期間と本人支払額を毎月確認してください。
指定難病の利用者は、特定医療費(法別番号54)の対象に介護保険の訪問看護も含まれます。医療受給者証の有効期間(原則1年)、自己負担上限額、指定医療機関としての登録を確認します。自己負担上限額管理票への記載も忘れないようにします。受給者証の内容と請求内容が合わないと、公費分が返戻されます。
返戻・過誤になりやすい例と運営指導での指摘
訪問看護の返戻・過誤は、他サービスと共通する「給付管理票との不一致」に加え、指示書と保険の切り分けに固有のものが多くあります。請求前チェックに組み込みたい例を挙げます。
- 指示書の有効期間外の訪問を請求した(更新指示書の受領遅れ、指示書の日付が訪問日より後)
- 特別指示書の期間中の訪問を介護保険で請求した、または期間終了後も医療保険で請求し続けた
- 別表7の疾病や精神科訪問看護の利用者を介護保険で請求した(認知症は介護保険)
- 認定申請中に医療保険で請求し、認定後に申請日へさかのぼって介護保険となった
- 体制届が受理される前の月から加算を算定した(緊急時訪問看護加算・看護体制強化加算・専門管理加算など)
- 20分未満の区分を、週1回以上の20分以上の訪問が計画にない利用者に算定した
- 緊急訪問の当月1回目に夜間早朝・深夜加算を付けた
- 初回加算と退院時共同指導加算を同時に算定した
- 特別管理加算・緊急時訪問看護加算を、医療保険側と同月に二重で算定した
- 看護体制強化加算の割合要件を下回った月も算定を続けた
- 准看護師・理学療法士等の訪問を看護師のコードで請求した
- 給付管理票の訪問看護の単位数・回数が明細書と一致しない(医療保険への切替期間の連絡漏れ)
運営指導では、訪問看護計画書・報告書の主治医への提出と、指示書と計画書の整合が確認されます。加算の根拠となる記録(同意書、緊急対応の記録、ターミナルケアの記録)も対象です。返戻は再請求で回復できますが、過誤調整や返還は事業所の資金繰りに直結します。返戻を減らす請求ソフトの選び方や代行との使い分けは、介護請求ソフトの比較と選び方の記事で解説しています。
よくある質問(FAQ)
要介護認定がある利用者に特別指示書が出た場合、その月の請求はどうなりますか?
特別指示書の期間(交付日から14日以内)は医療保険、それ以外の日は介護保険で請求します。同じ月に介護給付費と訪問看護療養費の両方の請求が発生するのは正常です。月1回の加算を両方で算定しないこと、ケアマネジャーへ医療保険の期間を伝えることの2点を確認してください。
訪問看護指示書の有効期間が切れていたことに請求後に気づきました。どうすればよいですか?
有効期間外の訪問は介護保険の訪問看護費を算定できません。すでに支払われた分は保険者に過誤申立を行い、返還します。指示書を後から日付をさかのぼって発行してもらう対応は認められないため、再発防止として指示期間の一覧管理を導入してください。
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)と(Ⅱ)はどちらを届け出るべきですか?
24時間連絡体制と緊急訪問体制に加えて、夜間対応後の勤務間隔の確保やICT活用など看護師等の負担軽減の取組を整えられるなら(Ⅰ)です。取組が整わない場合は(Ⅱ)を届け出て、体制が整ってから(Ⅰ)へ変更届を出します。届出内容と実際の勤務体制が一致していることが運営指導で確認されます。
理学療法士等の訪問が多い事業所は、何を確認すべきですか?
2点を確認します。1つ目は、前年度の理学療法士等の訪問回数が看護職員の訪問回数を超えていないかです。2つ目は、前6か月間に緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のどれか1つでも算定しているかです。回数が超えている、または3つとも算定していない場合は、理学療法士等の訪問1回につき8単位の減算になります。介護予防訪問看護の12か月超の減算(通常5単位)も、この場合は15単位になります。
令和8年6月に新設された訪問看護の処遇改善加算は、届け出ないと損ですか?
所定単位数の1,000分の18が上乗せされる加算なので、要件を満たせるなら取得を検討する価値があります。キャリアパス要件と職場環境等要件を満たす方法のほか、令和8年度はケアプランデータ連携システムに加入して実績を報告する特例もあります。賃金改善の計画書と実績報告が必要になるため、事務負担も含めて判断してください。
まとめ|明日からやること
- 利用者台帳に「認定の有無・別表7該当・特別指示書の期間・精神科(認知症除く)」の4項目を持ち、期間単位で介護保険か医療保険かを管理する
- 月初に「当月に指示期間が切れる利用者」を一覧化し、更新指示書の受領を確認してから請求する
- 加算ごとに体制届の受理日と算定開始月を一覧にし、看護体制強化加算の割合要件は毎月計算する
- 特別指示書で医療保険に切り替わった期間は、ケアマネジャーへ連絡して給付管理票から外してもらう
- 令和8年6月版のサービスコード表に更新し、処遇改善加算の届出可否を検討する
訪問看護の請求は、介護保険と医療保険の切り分け、指示書の期限、加算の届出と要件が重なります。事務担当1人で抱えると返戻の見落としが起きやすい業務です。介護保険専門の請求代行サービス「WITH介護」は、実績をFAXで送るだけで国保連請求を代行します。返戻原因の調査から再請求まで対応します。約1,000事業所・全国47都道府県で利用され、毎月約20,000件の請求を扱っており、既存の請求ソフトは不要です。
訪問看護ステーションの場合、WITH介護が対応するのは介護保険の訪問看護の請求です(医療保険の訪問看護療養費は対象外)。介護保険分の請求事務の負担を約90%削減し、看護師が訪問に集中できる体制づくりに役立ちます。詳しくはWITH介護の詳細を見るからご確認ください。
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参考(一次情報)
- 厚生労働省|指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表 訪問看護費
- 厚生労働省|指定居宅サービス介護給付費単位数の算定構造(令和6年4月改定)
- 厚生労働省|令和6年度介護報酬改定について
- 厚生労働省|令和8年度介護報酬改定について(令和8年6月・8月実施)
- 厚生労働省|令和8年度介護報酬改定の概要(処遇改善加算の拡充)
- 厚生労働省|報酬算定構造・サービスコード表等
- 厚生労働省|社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料「訪問看護」
- 厚生労働省|訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法(平成20年厚生労働省告示第67号)
- 近畿厚生局|訪問看護療養費の取扱いの理解のために
- 近畿厚生局|訪問看護ステーションの皆様へ(訪問看護療養費の届出・集団指導資料)
- 横須賀市|令和6年度介護報酬改定説明資料(訪問看護)
- 兵庫県|訪問看護・介護予防訪問看護の手引き(令和6年6月)
- 日本訪問看護財団|令和8年度臨時介護報酬改定(処遇改善加算)について
- 熊本県看護協会|Q&A 20分未満の訪問看護について
- 熊本県看護協会|Q&A 介護保険申請中の方の訪問看護について
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