本記事は2026年10月26日時点の公開情報に基づいています。2027年度介護報酬改定の見直し案は検討段階で、内容は今後変わる可能性があります。
この記事は、訪問看護ステーションの管理者・経営者と、介護保険の訪問看護を請求する事務担当の方向けです。2027年度改定で訪問看護の何が変わりそうか。加算の算定や運営基準にどう影響するか。今から何を準備すればよいか。この3つを、厚生労働省の資料に沿って整理します。
記事でわかること
まず結論:管理者が押さえる4点
- 緊急時の初回訪問にも、早朝・夜間・深夜加算を付けられるようにする案が出ました。今は、緊急時訪問看護加算を算定している月の最初の時間外の緊急訪問には、これらの加算を算定できません。
- 専門管理加算の対象を認知症支援などに広げる案と、看護体制強化加算のターミナルケア要件を実態に合わせる案が示されました。看護体制強化加算を算定できない理由の最多は、ターミナルケア要件(33.6%)でした。
- 運営基準では、残薬の確認と医師・薬剤師への報告を要件とし、安全管理の研修受講は「望ましい」と加える案です。医療保険の2026年度診療報酬改定に足並みをそろえる内容です。
- 理学療法士等(リハ職)の訪問は、提供体制や実績に応じて評価を見直す方向です。具体的な減算率などは示されていません。報道によると、訪問回数に占めるリハ職の割合は、訪問看護で53.2%に達しています。
いずれも第271回社会保障審議会介護給付費分科会(2026年10月19日)で示された案で、決定ではありません。例年の流れどおりなら、年内の審議報告で方向性がまとまり、単位数は2027年1~2月ごろの諮問・答申で決まり、2027年4月に施行される見込みです。
見直し案の全体像|4つの論点
資料3(訪問看護)は、次の4つの論点で構成されています。
| 論点 | 主な中身 |
|---|---|
| ①在宅療養を支える訪問看護提供体制の強化 | 安全管理の研修、緊急時の夜間・深夜加算、サテライト、専門管理加算、看護体制強化加算、残薬確認、難治性皮膚疾患 |
| ②訪問看護におけるICT等の活用の推進 | D to P with N(看護師が同席するオンライン診療)、医療機関との情報連携 |
| ③期待される役割を踏まえた評価の見直し | 理学療法士等による訪問の評価 |
| ④住まいの形態に合わせたサービス提供に係る報酬の在り方 | 集合住宅等への訪問の評価 |
このうち、事業所の収入と日々の請求に直結するものから順に解説します。
緊急時訪問看護加算と早朝・夜間・深夜加算の併算定
現行:月の最初の緊急訪問には時間外の加算が付かない
緊急時訪問看護加算(ステーションは(Ⅰ)600単位/(Ⅱ)574単位)は、24時間の連絡・訪問体制を評価する月1回の加算です。現行では、この加算を算定している月の最初の時間外の緊急訪問には、早朝・夜間加算(25%)と深夜加算(50%)を算定できません。2回目以降の緊急訪問から算定できる仕組みです。請求上の扱いは訪問看護の介護保険請求|医療保険との切り分けと加算の注意点で詳しく解説しています。
見直し案:初回の夜間訪問にも算定可能に
対応案は、緊急時訪問看護加算を算定している場合でも、月の初回の夜間の訪問に早朝・夜間加算と深夜加算を算定できるようにする、というものです。資料では次のデータが示されました。
- 緊急時訪問看護加算の算定事業所は増加しており、直近は13,750か所。算定事業所の割合は8割を超える
- 加算を算定する利用者がいる事業所は81.0%。そのうち実際に緊急訪問をした事業所は87.0%
- 月の初回の夜間(午後6時~10時)の訪問で加算を算定できなかった利用者がいた事業所は570か所、1事業所あたり平均1.2人(2025年12月~2026年2月の3か月間)。深夜・早朝でも同様の事業所がある
夜間・深夜の緊急訪問は、オンコール担当の負担が最も重い場面です。見直しが実現すれば、月1回目の深夜訪問からも割増が付き、夜間対応の多い事業所ほど収入に効いてきます。
専門管理加算・看護体制強化加算・特別管理加算の見直し
専門管理加算:認知症支援などへ対象を拡充
専門管理加算(250単位/月)は、2024年度改定で新設されました。現行の対象は、緩和ケア・褥瘡ケア・人工肛門ケアなどの専門研修を受けた看護師による管理と、特定行為研修を修了した看護師による管理です。資料では、専門性の高い看護師による認知症への支援で、BPSD(認知症の行動・心理症状)の軽減などの効果が確認されたと示されました。対応案は、地域での相談支援の役割も踏まえて、評価の対象を広げることを検討するものです。
看護体制強化加算:ターミナルケア要件を実態に応じて評価
看護体制強化加算は、(Ⅰ)550単位・(Ⅱ)200単位です。(Ⅰ)は前12か月のターミナルケア加算の算定利用者が5人以上、(Ⅱ)は1人以上が要件です。算定できない理由として最も多かったのが「前12か月のターミナルケア加算の算定利用者5人以上」の要件(33.6%)でした。対応案は、事業所の実態に応じてターミナルケア加算の実績を評価する方向です。具体的な人数要件の変更は、今後の資料で確認が必要です。
特別管理加算:難治性皮膚疾患の利用者を対象に
2026年度診療報酬改定で、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている人が医療保険の別表第八の対象に追加されました。これを受けて、その対象者を介護保険の特別管理加算(Ⅱ)と長時間訪問看護加算の対象に告示で加える案です。
なお、看護小規模多機能型居宅介護についても、ここまでの見直しと同様の評価を検討するとされています。
運営基準の見直し|安全管理の研修と残薬確認
運営基準(事業所が守るべきルール)にも、2つの案が示されました。
- 安全管理体制の研修:医療機関には医療安全研修が義務付けられていますが、訪問看護ステーションには同様の規定がありません。医療保険では研修受講が努力義務になったことを踏まえ、研修を受講することが望ましい旨を運営基準に加える案です。
- 残薬の確認と報告:医療保険では、残薬の確認と医師・薬剤師への報告が明記されました。介護保険でも、利用者宅で残薬を確認し、適切な服薬管理を行うことを運営基準上の要件とする案です。
残薬確認が運営基準上の要件になると、運営指導で記録の確認対象になります。訪問記録の様式に「残薬の有無」「報告先・報告日」の欄を設けておくと、移行がスムーズです。事故やヒヤリハットの情報共有は、介護事故報告書の書き方もあわせて確認してください。
このほか、サテライト(出張所)について、一体的な運営を求める技術的助言の具体的な目安を自治体に示す案も出ました。資料では、1事業所あたりのサテライトの最大設置数が47か所と、自治体ごとの差が大きい実態が示されています。
ICTの活用|D to P with N と医療機関との情報連携
D to P with N は、看護師が利用者宅に同席して、医師のオンライン診療を補助する仕組みです。医療保険ではすでに評価されています。資料では、所要時間の合計は平均35.9分で、そのうち医師の診察・診療の補助は平均9.7分でした。また、地域との連携にICTを使っている訪問看護ステーションの75.6%が、効果として「時間の短縮」を挙げています。
資料の論点②では、看護師の所属や定期訪問の有無などによる違いを踏まえ、医療保険との整理が課題とされました。医療保険では、ICTで医療機関と情報を共有する訪問看護医療情報連携加算(月1,000円)も新設されています。報道によると、厚生労働省は、D to P with N の補助と医療機関とのICT情報連携について、介護報酬での評価の新設を提案しました。分科会では、日本看護協会の委員が、平均35.9分の所要時間に見合った評価を求めました(報道による)。
リハ職の訪問|体制・実績に応じた評価の見直し
論点③では、訪問看護ステーションの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(以下、リハ職)による訪問が取り上げられました。報道によると、資料では次の実態が示されています。
- 訪問回数に占めるリハ職の割合(令和8年4月審査分):介護予防訪問看護63.2%、訪問看護53.2%で増加傾向
- 算定回数の伸び(平成30年度から令和6年度):ステーションのリハ職の訪問は約1.7倍、訪問リハビリテーションは約1.3倍
- 収支差率(令和6年度決算):看護職員のみの事業所5.7%、リハ職の訪問も行う事業所11.1%、リハ職の割合が50%超の事業所14.1%
厚生労働省は、サービス提供体制や実績などに応じた評価の見直しについて意見を求めました。具体的な減算率や回数の上限は、まだ示されていません。委員からは、既存の減算をさらに強めるべきだという意見(日本医師会)や、訪問看護と訪問リハビリの役割分担を明確にすべきだという意見が出ました。
現行でも、前年度のリハ職の訪問回数が看護職員の訪問回数を超える事業所などには、1回8単位の減算があります(2024年度改定)。リハ職の比率が高い事業所は、看護職員の訪問回数と、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算の算定状況を今のうちに点検しておくと安心です。
論点④の住まいの形態に合わせた報酬は、訪問介護でも同じ論点が示されています。訪問介護の見直し案は訪問介護の同一建物減算は廃止へ?2027年度改定の新報酬区分案で整理しています。
ステーションが今からやること
- 夜間・深夜の緊急訪問の件数を数える:月の初回で時間外の加算を算定できなかった訪問が何件あるかを、直近3か月分集計します。見直し後の増収の目安になります。
- 看護体制強化加算の要件を試算する:前12か月のターミナルケア加算の算定人数と、緊急時・特別管理の算定割合を確認します。要件が変わったときに、すぐ届出を判断できます。
- 訪問記録に残薬確認の欄を設ける:残薬の有無、報告先(主治医・薬剤師)、報告日を記録できるようにします。
- 安全管理の研修計画を立てる:努力義務の扱いでも、医療安全・事故防止の研修を年間計画に入れ、受講記録を残しておくと安心です。
- リハ職の訪問比率を確認する:職種別の訪問回数を年度で集計し、現行の減算に当たっていないかと、見直し後の影響を見ておきます。
改定全体の流れは【2027年度】介護報酬改定はどうなる?、訪問看護の基本は訪問看護とは?サービス内容や利用条件も参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
緊急時の初回訪問への夜間・深夜加算は、いつから算定できますか?
まだ決まっていません。第271回分科会で示された対応案の段階です。例年の流れどおりなら、2027年度改定の施行(2027年4月の見込み)にあわせて適用されます。それまでは、現行どおり月の最初の緊急訪問には時間外の加算を算定できません。
リハ職の訪問は減算が強化されるのですか?
強化を求める委員の意見はありましたが、厚生労働省は具体的な減算率や要件を示していません。「提供体制や実績に応じた評価の見直し」を検討する段階です。審議報告と答申の内容を確認してください。
残薬確認は、今から記録したほうがよいですか?
運営基準になるのは改定後の見込みですが、医療保険ではすでに求められている内容です。介護保険の利用者も含めて記録の様式をそろえておくと、改定時に慌てずに済みます。
2026年6月に新設された訪問看護の処遇改善加算はどうなりますか?
2026年度の臨時改定で、訪問看護にも介護職員等処遇改善加算(1.8%)が新設されました。2027年度改定でどう扱われるかは、処遇改善全体の議論の中で今後示される見込みです。加算の概要は2026年度の臨時改定で処遇改善加算が引き上げで確認できます。
まとめ
2027年度改定に向けて、訪問看護では、緊急時の初回訪問への早朝・夜間・深夜加算、専門管理加算の対象拡充、看護体制強化加算のターミナル要件の見直し、残薬確認の運営基準化、安全管理研修の受講を望ましいとする規定が示されました。リハ職の訪問は、体制・実績に応じた評価の見直しが論点です。
いずれも検討段階です。今できるのは、夜間の緊急訪問の件数、ターミナルケアの実績、職種別の訪問回数を数字で押さえることです。審議報告で方向が見えたら、届出と請求の準備に移りましょう。
改定のたびに増えるのが、サービスコードの差し替えや加算要件の確認、返戻対応といった請求の手間です。訪問看護の介護保険請求を任せたい事業所様には、介護保険専門の請求代行サービスWITH介護があります。実績をFAXで送るだけで、請求データの作成から国保連への伝送、返戻対応まで任せられます。
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出典(一次資料)
- 厚生労働省「第271回社会保障審議会介護給付費分科会 資料」(2026年10月19日)
- 厚生労働省「第271回社会保障審議会介護給付費分科会 資料3 訪問看護」(2026年10月19日)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」(告示・留意事項通知・Q&A)
- PT-OT-ST.NET 訪問看護ステーションのリハ職による訪問の報酬見直しに関する報道(2026年10月20日)
- 社会保険研究所 第271回社会保障審議会介護給付費分科会に関する報道(2026年10月)
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