【2026年10月26日追記】厚生労働省が事故報告の全国一元化と様式の見直し案(介護保険最新情報Vol.1548)を示しました。2027年4月頃の新システム稼働に向けた変更点と、事業所が今からやることを、記事後半の「【2026年10月26日追記】」にまとめています。
この記事は、介護施設・事業所の施設長、管理者、リスクマネジャー(安全対策担当者)向けです。事故が起きたとき、「どの事故を、いつまでに、どの様式で市町村に報告するのか」に答えます。あわせて、「報告書に何をどう書くのか」「家族への説明と再発防止策をどう進めるのか」も整理します。
結論から言うと、市町村へ原則すべて報告する事故は2つです。「死亡に至った事故」と「医師の診断を受け、投薬・処置など何らかの治療が必要となった事故」です。厚生労働省は2021年(令和3年)に全国共通の標準様式を示しました。2024年(令和6年)11月29日の通知(介護保険最新情報Vol.1332)で、電子的な報告を前提とした様式に改めています。第1報は事故発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に提出します。第1報では様式の1~6(事故状況~事故発生後の状況)を可能な限り記載し、7~9(原因分析・再発防止策・その他)は作成でき次第報告します。
この記事では、報告の対象と期限、標準様式9項目の中身、転倒骨折のケースでの記入例を先に示します。続けて、事実と評価を分ける書き方、事故発生時の対応と家族対応の順序、再発防止策の書き方、事故発生防止委員会への回し方まで解説します。事故に至らなかった「ヒヤリハット」の集め方は介護のヒヤリハットとは|事例10選・報告書の書き方と研修での活かし方で別に扱っています。
記事でわかること
介護事故報告書とは|市町村への報告書と施設内の記録を区別する
「事故報告書」と呼ばれる書類は2種類あります。1つは、市町村(保険者・指定権者)に提出する報告書です。もう1つは、施設の中で事故の状況と処置を記録し、事故発生防止委員会で分析するための記録です。多くの施設では1枚の様式を兼用していますが、目的と提出先が違う点は押さえてください。
市町村への報告は、運営基準上の義務です。特養の運営基準(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第35条)を見てみます。事故が発生した場合、速やかに市町村と入所者の家族等に連絡し、必要な措置を講じることが求められています。あわせて、事故の状況と事故に際して採った処置を記録することも義務です。老健・介護医療院・居宅サービスにも同じ趣旨の規定があります。
国の標準様式は、市町村ごとに報告の様式が違っていた状況を踏まえて2021年に作られました。目的は、事故情報を収集・分析・公表し、再発防止とサービスの質の向上に役立てることです。2024年11月の改訂では、選択式の項目がデータ化しやすいチェックボックス形式になり、市町村が独自の項目を足せる欄も設けられました。市町村への提出は、原則として電子メール等の電磁的方法です。様式は介護保険施設が主な対象です。認知症グループホーム、特定施設、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、養護老人ホーム、軽費老人ホームにも積極的な活用が求められています。居宅サービスでも可能な限り活用する、とされています。
報告の対象と期限|国の2類型・第1報5日以内・自治体の独自基準
報告の対象と期限は、国の通知と自治体の要領の2層で決まります。国の通知は最低ラインで、自治体が対象を広げている例が多いです。
| 区分 | 報告対象 | 期限 | 提出方法 |
|---|---|---|---|
| 国の通知(令和6年11月29日改訂) | ①死亡に至った事故 ②医師(施設の勤務医・配置医を含む)の診断を受け、投薬・処置など何らかの治療が必要となった事故 | 第1報は速やかに、遅くとも5日以内を目安(様式1~6)。原因分析・再発防止策は作成次第 | 市町村へ。原則として電子メール等の電磁的方法 |
| 自治体の例:板橋区 | 治療を要した骨折・外傷・誤嚥・異食、他者の薬の誤薬(すべて)、離設(受診が必要な影響または警察届出)、感染症・食中毒・疥癬、サービスに起因する死亡、個人情報流出・金品着服・虐待、災害でサービスに影響 など | 第1報は遅くとも5日以内に項目1~6。最終報告は事故処理完了次第に項目7~9。6日以上経過は遅延理由を記載 | 郵送またはファイルストレージ。FAX・メールは不可 |
| 自治体の例:江東区 | ①介護サービス等によるけが等(送迎・通院含む) ②感染症・食中毒・疥癬 ③従業員の法令違反・不祥事 ④苦情やトラブルになる可能性があるもの ⑤災害による重大な影響 | 集計資料に記載なし(区の要領で確認) | 電子申請フォーム |
自治体ごとの違いは、対象の広さと提出方法に出ます。板橋区は「他者の薬の誤薬」はすべて報告対象で、FAX・メールは受け付けません。江東区は電子申請フォームで受け付けています。利用者の保険者が複数の市町村にまたがる施設は、保険者ごとに提出要否と方法を確認してください。板橋区の資料は、他自治体の利用者なら、保険者自治体への提出要否を確認するよう求めています。あわせて、様式の「6 事故発生後の状況」の連絡した関係機関の欄に自治体名を書きます。
「報告不要」と判断する前に確認すること
板橋区は、老衰・看取り期の死亡は報告不要としています。一方、持病以外の病気による受診・死亡・救急搬送や、サービス提供が原因の受診・死亡・救急搬送は提出が必要です。「病気だから」「本人の持病だから」と判断する前に、サービス提供との関係を確認してください。迷ったときは報告する、または市町村に照会するのが安全です。
国の標準様式の9項目|第1報と最終報告の分け方
標準様式(2024年11月改訂)は9つの大項目で構成されています。第1報では少なくとも1~6を可能な限り埋め、7~9は作成でき次第、最終報告で埋めます。項目ごとの選択肢は、集計・分析のために全国で統一されています。各欄には市町村の独自項目を追加する欄もあるため、提出先の様式で確認してください。
| 項目 | 記入する内容(選択肢の例) | 第1報/最終報告 |
|---|---|---|
| 1 事故状況 | 事故状況の程度(入院/死亡/その他などから選択)。死亡の場合は死亡年月日 | 第1報 |
| 2 事業所の概要 | 法人名、事業所(施設)名、事業所番号、サービス種別、所在地 | 第1報 |
| 3 対象者 | 氏名、年齢、性別、サービス提供開始日、保険者、住所、要介護度、認知症高齢者の日常生活自立度(Ⅰ~M)、身体状況 | 第1報 |
| 4 事故の概要 | 事故の種別(転倒/転落/誤嚥・窒息/異食/誤薬・与薬もれ等/医療処置関連(チューブ抜去等)/不明/その他)、発生日時(24時間表記)、発生場所(居室(個室)/居室(多床室)/トイレ/廊下/食堂等共用部/浴室・脱衣室/機能訓練室/施設敷地内の建物外/敷地外/その他)、発生時状況、事故内容の詳細 | 第1報 |
| 5 事故発生時の対応 | 受診方法(施設内の医師(配置医含む)が対応/受診(外来・往診)/救急搬送/その他)、受診先と連絡先、診断名(切傷・擦過傷/打撲・捻挫・脱臼/骨折(部位)/その他)、診断内容、検査・処置等の概要 | 第1報 |
| 6 事故発生後の状況 | 家族等への報告(続柄(配偶者/子・子の配偶者/その他)、報告年月日)、連絡した関係機関(他の自治体/警察/その他)、本人・家族・関係先等への追加対応予定、事故発生後の利用者の状況 | 第1報 |
| 7 事故の原因分析 | 本人要因、職員要因、環境要因に分けて具体的に記載 | 最終報告 |
| 8 再発防止策 | 手順変更、環境変更、その他の対応。再発防止策の評価時期および結果 | 最終報告 |
| 9 その他 | 特記すべき事項 | 最終報告 |
様式はExcel形式で自治体のホームページから入手できます。2024年の改訂に合わせて様式を差し替えた自治体が多いため、古い様式を使い続けていないか確認してください。国の通知は、既存の市町村様式や改変した様式の使用も認めていますが、標準様式の項目を含めることを条件にしています。自施設の様式を使う場合は、上の9項目と選択肢が漏れていないか確認してください。
記入例|転倒・骨折のケースで9項目を書く
特養で起きた転倒事故を例に、第1報と最終報告の書き方を示します。架空のケースです。固有名詞と日付は自施設のものに置き換えてください。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 1 事故状況 | 事故状況の程度:入院。死亡:該当なし |
| 2 事業所の概要 | 法人名:社会福祉法人〇〇会/事業所名:特別養護老人ホーム〇〇/事業所番号:13〇〇〇〇〇〇〇〇/サービス種別:介護老人福祉施設/所在地:〇〇市〇〇町1-2-3 |
| 3 対象者 | 氏名:A・B/年齢:86歳/性別:女性/サービス提供開始日:2024年6月1日/保険者:〇〇市/住所:事業所所在地と同じ/要介護度:要介護4/認知症高齢者の日常生活自立度:Ⅲa/身体状況:両膝関節症。歩行は手すり使用で見守り。夜間はポータブルトイレ使用 |
| 4 事故の概要 | 事故の種別:転倒/発生日時:2026年10月14日 2時20分/発生場所:居室(個室)/発生時状況:夜間巡視の間(2時10分~2時20分)に、居室内で発生。巡視時に、ベッド脇の床に左側臥位で倒れているところを介護職員が発見/事故内容の詳細:ポータブルトイレはベッドの足側に設置。本人は「トイレに行こうとして足が滑った」と話した。床に尿失禁の跡あり。左股関節部の痛みを訴え、自力で動けない状態 |
| 5 事故発生時の対応 | 受診方法:救急搬送(2時35分、〇〇消防へ通報)/受診先:〇〇病院(電話〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇)/診断名:骨折(左大腿骨頸部)/診断内容:左大腿骨頸部骨折。手術予定/検査・処置等の概要:X線・CT検査。3時40分、入院決定。看護職員が2時25分にバイタル測定(血圧148/86、脈拍92、SpO2 97%)、動かさず保温して救急隊到着を待った |
| 6 事故発生後の状況 | 家族等への報告:2026年10月14日 2時45分、長女へ電話で報告。病院へ向かうとの返答/連絡した関係機関:該当なし/追加対応予定:10月15日に施設長・生活相談員から長女へ経過と原因分析の中間報告。退院後の受け入れとケアプラン見直しを担当ケアマネジャーと協議 |
| 7 事故の原因分析(最終報告) | 本人要因:夜間の尿意が切迫しやすく、ポータブルトイレまで急いで移動した。両膝関節症で立ち上がり直後にふらつきがある/職員要因:2時台の排泄誘導を本人の希望で中止していたが、中止後の夜間排泄パターンを再評価していなかった/環境要因:ポータブルトイレがベッドの足側にあり、ベッドから降りて1歩半の移動が必要だった。床に失禁があり滑りやすかった。夜間の足元灯が消灯していた |
| 8 再発防止策(最終報告) | 手順変更:1時と3時の巡視時に排泄の声かけを行う。排泄パターン表を2週間記録し、ケアプランに反映/環境変更:ポータブルトイレをベッドの頭側(手すり側)に移設し、移動距離をなくす。足元灯を常時点灯に変更。離床センサーを設置/その他の対応:10月20日の事故発生防止委員会で事例検討し、同様の配置の居室5室を点検/評価時期および結果:11月末の委員会で、巡視時の排泄声かけの実施率と夜間の離床センサー作動記録を確認し、再評価する |
| 9 その他 | 10月16日、長女へ原因分析と再発防止策を説明し、了解を得た。損害賠償保険会社へ10月15日に事故連絡済み |
記入例のポイントは3つです。第1に、4の「事故内容の詳細」は、職員が見たこと・本人が話したこと・床の状態という事実だけを書き、原因の推測は7に分けています。第2に、5の対応は時刻付きで書き、「動かさず保温」という処置も残しています。第3に、8の再発防止策は「注意する」ではなく、手順・環境・委員会での横展開・評価時期まで具体化しています。
書き方の5原則|事実と評価を分ける
市町村の担当者、家族、場合によっては弁護士や保険会社が読む書類です。読み手が事実を再現できる書き方が求められます。江東区の資料は「客観的で正確な事実の報告が重要」とし、詳細な記録を時系列で残し、家族や第三者にも事実が明確に分かるようにすることを求めています。
- 時系列で、時刻を入れる:「発見2時20分→バイタル2時25分→通報2時35分→家族連絡2時45分」のように、分単位で並べます。記録は複数の職員の記憶を照合して作ります。
- 事実と評価を分ける:事実は「見た・聞いた・した」こと。評価や推測は「~と考えられる」と書き、原因分析の欄に置きます。「不注意だった」「見守りが足りなかった」は評価であり、事実の欄には書きません。
- 主語を明確にする:「発見した」ではなく「介護職員〇〇が発見した」。誰が何をしたかが分からない報告書は、再発防止の手がかりになりません。
- 本人の言葉はそのまま書く:「トイレに行こうとして足が滑った」と、本人の発言は要約せずに残します。
- 数値で書く:バイタル、距離、時間、回数。「少し」「しばらく」「頻繁に」は使いません。
また、職員を責める表現は避けてください。解釈通知は、事故等の報告の目的は施設全体での情報共有と再発防止であり、職員の懲罰が目的ではないと明記しています。「〇〇職員のミス」と書かず、「〇〇の手順が定められていなかった」と、仕組みの言葉で書きます。
事故発生時の対応|救命・医療・家族・市町村の順序
事故直後の対応の順序を、あらかじめ指針と手順書に定めておくことが解釈通知で求められています。順序は次のとおりです。
- 利用者の安全確保と救命:意識・呼吸・出血・痛みを確認し、看護職員(夜間はオンコール)に連絡します。骨折が疑われる場合は動かしません。
- 医療につなぐ:配置医・協力医療機関への連絡か、救急要請かを看護職員と判断します。受診先・時刻・診断名は様式5に書く情報です。
- 家族への連絡:運営基準は「速やかに」家族等へ連絡することを求めています。深夜でも、救急搬送や入院に至る場合は当日中に連絡します。連絡日時と続柄は様式6に記録します。
- 市町村への第1報:遅くとも5日以内が目安です。板橋区のように6日以上経過すると遅延理由の記載を求める自治体もあります。
- 関係機関への連絡:居宅サービスなら担当ケアマネジャー、離設や事件性があれば警察、他自治体の利用者なら保険者自治体です。
- 記録と保存:事故の状況と処置の記録は、国の基準で2年間の保存が必要です。自治体の条例で保存年限を長く定めている場合があるため、指定権者の基準を確認してください。
家族対応の順序|第1報・経過報告・原因と対策の説明
家族対応は3段階に分けると、説明の抜けが減ります。第1報では「何が起きたか」「今どういう状態か」「どの病院か」を事実だけ伝えます。原因や責任についてこの段階で断定すると、後の原因分析と食い違うことがあります。経過報告では、治療の状況と、施設としての原因分析を進めていることを伝えます。原因と対策の説明では、様式7・8の内容を、施設長または生活相談員が対面で説明します。説明した日時・相手・内容は様式9や施設の記録に残します。
家族からの質問や不満は、苦情対応の記録としても残します。説明の場に複数の職員が同席し、記録担当を決めてください。家族対応の基本は利用者家族からハラスメントの標的にならないためにも参考になります。
損害賠償と保険
運営基準は、賠償すべき事故が発生した場合、速やかに損害賠償を行うことを求めています。解釈通知は、そのために損害賠償保険に加入するか、賠償資力を確保することが望ましいとしています。事故発生後は、保険会社への事故連絡の期限を保険契約で確認し、連絡日を記録してください。賠償の有無や金額は、原因分析の結果を踏まえて保険会社と協議します。家族への説明の場で、施設側が独断で賠償の約束をしないよう、対応者を決めておくことが実務上の要点です。
原因分析と再発防止策の書き方|「注意する」で終わらせない
標準様式7は、原因を本人要因・職員要因・環境要因の3つに分けて書く構成です。この3分類は、対策の種類とも対応します。本人要因には「アセスメントとケアプランの見直し」、職員要因には「手順の変更と研修」、環境要因には「設備・配置・用具の変更」が対応します。
江東区の資料は、「『注意する』といった対応策ではなく、根本的な原因を理解し、解決することが必要」としています。改善策の例として、利用者の行動把握、備品配置の見直し、マニュアルの見直し、教育の充実が挙げられています。「見守りを強化する」「声かけを徹底する」だけの再発防止策は、何が変わるのかが分からないため、市町村から追加の説明を求められることがあります。
再発防止策を書く4つの問い
- 何を変えるか:手順(巡視時の声かけ)、環境(トイレの位置・センサー)、情報(排泄パターン表)、体制(夜勤の配置)のどれかを具体的に。
- 誰がいつから:担当者と開始日を書きます。
- 横展開するか:同じリスクのある他の利用者・居室・ユニットに広げるかを書きます。委員会で検討した事実も記載します。
- いつ評価するか:標準様式8には「再発防止策の評価時期および結果」の欄があります。1~3か月後の委員会で評価する、と書き、評価結果を追記します。
身体拘束を再発防止策にしてはいけません。「ベッドを4点柵で囲む」「立ち上がれないいすに座らせる」は身体拘束に該当します。緊急やむを得ない場合の3要件と適正な手続きを経ていなければ、原則として高齢者虐待に該当します。転倒防止と身体拘束の関係は身体拘束とは|三原則・やむを得ない場合の3要件と記録の残し方【研修資料つき】で解説しています。
事故発生防止委員会への回し方|分析・周知・減算との関係
事故報告書は、市町村に出して終わりではありません。運営基準は、事故やヒヤリハットが報告され、その分析を通じた改善策を職員に周知する体制を求めています。解釈通知が示す流れは、報告→委員会での集計・分析→原因と防止策の検討→職員への周知→効果の評価です。
特養・老健・介護医療院では、事故発生防止の措置(指針、報告・分析体制、委員会と研修、担当者)が欠けると減算になります。安全管理体制未実施減算(1日につき5単位)が、入所者全員に適用されます。減算は、基準を満たさない事実が生じた月の翌月から、解消された月まで続きます。事故報告書が委員会で検討された記録(議事録)が残っていないと、「報告・分析体制がない」と判断される可能性があります。委員会の運営と安全対策体制加算については事故発生防止委員会と安全対策担当者|安全対策体制加算20単位の要件と研修で詳しく解説しています。
運営指導では、事故報告書の控え、市町村への提出記録、家族への連絡記録、委員会の議事録、研修記録(年2回以上+新規採用時)が一式で確認されます。報告書を利用者ごとではなく、事故ごとに時系列で綴り、委員会の検討結果と評価結果を添付しておくと、確認がスムーズです。運営指導の全体は実地指導(運営指導)とは|流れ・確認書類・対策を参照してください。施設の委員会全体の整理は介護施設の委員会一覧にまとめています。
【2026年10月26日追記】事故報告が全国で一元化へ|2027年4月頃の新システムと様式見直し案
2026年10月21日、厚生労働省は事務連絡「介護現場において事故が発生した際の報告について」(介護保険最新情報Vol.1548)を出しました。介護現場の事故情報を全国で一元的に集めて分析し、現場に返す仕組みをつくるためです。上で解説した標準様式(2024年11月改訂)も、あわせて見直されます。ただし、今回示されたのは2027年度からの事務に備えた「現時点の案」で、内容はまだ調整中です。
何が変わるのか|要点は3つ
- 報告先の仕組み:「介護現場における事故情報報告システム」が、介護サービス情報公表システムのサブシステムとして作られます。稼働は2027年4月頃の予定です。稼働後は、見直した様式の内容が入力フォームになります。
- 様式の中身:氏名欄がなくなり、発生日時は「年月+2時間ごとの時間帯」になります。事故種別の選択肢が増え、「事故発生前の利用者の状況」欄が新しく加わります。原因分析は、決まった要因から選ぶ形に変わります。
- 変わらない点:第1報は事故発生後速やかに、遅くとも5日以内が目安です。第1報では少なくとも項目1~6を可能な限り記載します。この扱いは現行と同じです。
背景には、2025年12月25日の社会保障審議会介護保険部会の意見があります。事故情報を全国レベルで集めて分析する必要性が指摘されていました。これまでは市町村ごとに報告を受けていたため、全国の傾向をつかみにくかったのです。
現行様式と見直し案の比較
見直し案も、大項目は9つです。項目名と記入方法が、次のように変わります。
| 項目 | 現行(2024年11月改訂) | 見直し案(2026年10月・調整中) |
|---|---|---|
| 1 | 事故状況(入院/死亡などの程度) | 受診状況(受診(外来・往診)/自施設で処置 などの受診・処置の状況) |
| 2 | 事業所の概要 | 事業所の概要(法人番号、室数・定員、サービス提供開始年月なども記載) |
| 3 | 対象者(氏名、年齢、性別、住所、要介護度、認知症高齢者の日常生活自立度 など) | 利用者(年齢・性別、要介護度、障害高齢者の日常生活自立度、認知症高齢者の日常生活自立度、身体状況)。氏名欄はなし |
| 4 | 事故の概要(発生日時は24時間表記) | 事故の概要(発生年月と2時間ごとの時間帯)。「事故発生前の利用者の状況」欄を新設 |
| 5 | 事故発生時の対応 | 医療対応の概要(受診方法、受診先、診断名・診断内容) |
| 6 | 事故発生後の状況 | 事故発生後の状況(家族等への報告、連絡した関係機関、追加対応) |
| 7 | 事故の原因分析(本人・職員・環境の要因を記述) | 事故の原因分析(事故の分類2つと、7つの要因から複数選択) |
| 8 | 再発防止策 | 再発防止策(再発防止策として取り組む事項を記載) |
| 9 | その他 | その他(特記すべき事項) |
表は、事務連絡の別紙(見直し案)と現行様式を突き合わせて整理したものです。細かな選択肢は、別紙の原本で確認してください。
記入方法が変わる4つのポイント
1.事故種別の選択肢が増える
見直し案の事故種別には、転倒、転落、異食・誤飲、誤薬・与薬もれ等、誤嚥・窒息、医療処置関連(チューブ抜去等)に加えて、次の選択肢が並びます。
- 強打、圧迫
- 所在不明
- 火傷
- 溺水
- 熱中症
- 自傷行為
- 利用者間トラブル
- 車両(乗降時を含む)
現行では「その他」にまとめていた事故も、種別で選べるようになります。一方、現行にある「不明」の選択肢は、見直し案には見当たりません。送迎中の事故や、利用者どうしのトラブルを「その他」で済ませていた事業所は、分け方を見直しておくと移行が楽です。
2.「事故発生前の利用者の状況」を書く
新しく加わる自由記述欄です。記載要領では、普段の様子との違い、疲労度や眠気などを書くよう示されています。発生直前の様子が分かると、同じ時間帯・同じ状態での事故を防ぐ手がかりになります。介護記録やバイタルの記録から、直前の状態を拾える運用にしておきましょう。
3.時刻ではなく「2時間ごとの時間帯」で記入する
発生日時は「yyyy年mm月頃(2時間ごと)」の形式になります。氏名欄の廃止とあわせて、発生日と正確な時刻は報告書に書かない形です。時間帯の区切り方は、別紙ではまだ示されていません。施設内の記録には、これまでどおり正確な日時を残してください。報告書の書き方が変わるだけで、事実の記録を省いてよいわけではありません。
4.原因を「分類+要因」で選ぶ
原因分析は、まず事故を2つに分類します。
- 利用者の日常生活動作中に発生した事故
- 介助中等、職員が関与した事故
そのうえで、要因を次の7つから選びます(複数選択可)。
- 利用者の行為や状態変化
- 環境・設備
- 介護技術
- 職員間の連携・情報共有
- 組織運営体制
- マニュアル・手順
- その他
現行の「本人要因・職員要因・環境要因」より細かくなり、組織運営体制やマニュアルの見直しまで問われる形です。原因を7要因で整理しておくと、8の再発防止策も要因に対応させて書きやすくなります。上の「再発防止策を書く4つの問い」とも重なるので、委員会での分析の型をこの7要因に合わせておくと、新様式にそのまま移せます。
事業所が今からやること
- 施設内の事故記録に、新様式の項目を足す:「事故発生前の利用者の状況」と「事故の分類(生活動作中/職員関与)」の2つを、今の記録に加えておきます。
- 事故種別の分け方をそろえる:所在不明・熱中症・利用者間トラブル・車両などを「その他」にしない運用に切り替えます。
- 事故発生防止委員会の分析シートを7要因に合わせる:委員会の議事録や分析シートの要因欄を、見直し案の7要因にそろえます。
- 報告様式は、確定版が出るまで現行のまま:今は市町村の指定する様式(2024年11月改訂版)で報告します。確定版と提出方法は、市町村からの案内を待って切り替えます。
システムが稼働すると、全国の事故の傾向が集計され、現場に返ってくる見込みです。自施設の事故を全国の傾向と比べられるようになれば、研修のテーマ選びにも役立ちます。確定版の様式と入力方法が示されたら、この記事も更新します。
よくある質問(FAQ)
擦過傷で施設内の処置だけで済んだ事故も、市町村に報告が必要ですか?
国の通知が原則すべて報告を求めるのは、死亡事故と、医師の診断を受けて治療が必要になった事故です。それ以外の事故の扱いは、国の通知でも各自治体の取扱いによるとされています。板橋区のように、治療を要しない事故でも離設や他者の薬の誤薬などを対象にする自治体があります。保険者・指定権者の要領を確認してください。
第1報の5日以内に原因が分からない場合はどうすればよいですか?
第1報では様式1~6を可能な限り記載すれば足ります。原因分析(7)と再発防止策(8)は作成でき次第、最終報告として提出します。分からない項目は空欄にせず「調査中」と書き、追加報告の予定を6の「追加対応予定」に記載すると、市町村とのやりとりが減ります。
利用者の保険者が施設の所在地と違う市町村の場合、どちらに報告しますか?
自治体の要領によります。板橋区の資料は、他自治体の利用者なら、保険者自治体への提出要否を確認するよう求めています。報告書では「6 事故発生後の状況」の連絡した関係機関の欄にチェックを入れ、自治体名を書きます。所在地の市町村と保険者の双方に確認してください。
家族に報告書のコピーを渡してもよいですか?
個人情報の扱いと施設の方針によります。市町村への報告書そのものではなく、事実経過と原因分析・再発防止策を整理した説明資料を別に作り、対面で説明する施設が多いです。渡した資料と日時は記録に残してください。
事故報告書は何年保存すればよいですか?
国の運営基準では、事故の状況と処置の記録は2年間の保存が必要です。自治体の条例で保存年限を長く定めている場合があるため、指定権者の基準を確認してください。損害賠償の時効も考え、長めに保存する施設が多いです。
まとめ|自施設で明日やること
- 利用者の保険者ごとに、事故報告の対象範囲・期限・提出方法(電子申請かメールか郵送か)を一覧にする。
- 自施設の事故報告様式に、国の標準様式9項目と選択肢がすべて含まれているか確認する。
- 夜勤者向けに「発見→看護職員→医療→家族→記録」の初動フローを1枚にし、詰所に掲示する。
- 直近の事故報告書を1件取り出し、事実と評価が分かれているか、再発防止策に「誰が・いつから・いつ評価」があるかを点検する。
- 事故報告書を委員会で検討した記録(議事録)と、評価結果の追記が残っているかを確認する。
- 損害賠償保険の事故連絡期限と、家族対応の担当者(施設長・生活相談員)を決めておく。
【無料ダウンロード】介護事故報告書テンプレート(Excel・国の標準様式の項目に準拠)国の標準様式(2024年11月改訂)の9項目と選択肢を備えたテンプレートです。第1報・最終報告の区分、原因分析(本人・職員・環境)、再発防止策の評価時期の欄を含みます。
事故報告の体制は、安全管理体制未実施減算のように請求に直結します。体制の整備と、毎月の請求・加算減算の整合確認を同じ担当者が抱えている施設では、どちらかが後回しになりがちです。加算・減算の判定や請求の整合確認まで任せたい場合は、介護保険専門の国保連請求代行WITH介護も選択肢の1つです。全国47都道府県・約1,000事業所、毎月約20,000件の請求を扱い、実績をFAXで送るだけで請求ソフトがなくても始められます。返戻の原因調査から再請求まで対応し、請求事務の負担を約90%削減できます(2026年10月時点)。
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参考(一次情報)
- 厚生労働省 介護保険施設等における事故の報告様式等について(令和6年11月29日 老高発1129第1号・老認発1129第1号・老老発1129第1号・介護保険最新情報Vol.1332・別紙様式つき)
- 新潟市 介護保険施設等における事故報告様式の変更について(令和6年12月6日・国の標準様式改訂に伴う切替え)
- 東京都福祉局掲載 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について(老企第43号)事故発生の防止及び発生時の対応
- 福岡県 介護保険施設におけるリスクマネジメントの強化に係る安全管理体制未実施減算及び安全対策体制加算の取扱いについて(令和3年9月28日・福岡市ホームページ掲載)
- 板橋区 介護保険事業における事故発生時の報告について(令和6年度集団指導)
- 江東区 令和7年度 介護保険事業者における事故報告 集計・分析結果
- 京都市 介護保険事業所・施設における事故報告について(令和6年度分)
- 厚生労働省老健局 介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き(令和7年3月)
- 厚生労働省 介護現場において事故が発生した際の報告について(令和8年10月21日 事務連絡・介護保険最新情報Vol.1548・別紙 報告様式の見直し案)
- 厚生労働省 介護保険最新情報掲載ページ
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