介護施設の法定研修一覧|義務研修の頻度・対象と年間研修計画の立て方

介護施設・事業所の法定研修は、全サービス共通の「虐待防止・感染症・BCP・認知症介護基礎研修」と、施設系に上乗せされる「身体拘束適正化・事故発生防止・褥瘡予防」に分けて整理すると、抜け漏れを防げます。さらに2025年からは熱中症対策、2026年10月からはカスタマーハラスメント対策と、労働法令に由来する義務も加わりました。

この記事では、2026年7月時点の法定研修を一覧表で確認したうえで、年2回実施の研修を軸にした年間研修計画の月別モデルを紹介します。老健や特養の研修担当者が、そのまま計画表に落とし込める構成にしました。

介護の法定研修とは|運営基準で実施が義務付けられた研修

法定研修とは、介護保険法の指定基準(運営基準)と解釈通知によって、事業者に実施が義務付けられた研修を指します。未実施のまま運営指導(実地指導)を受けると、基準違反として文書指摘や改善報告の対象になります。

義務化の節目は2つあります。2021年度(令和3年度)の介護報酬改定で虐待防止・BCP・感染症対策・認知症介護基礎研修が制度化され、3年の経過措置を経て2024年4月(令和6年4月)に全サービスで完全義務化されました。根拠となる省令や解釈通知は、厚生労働省の令和6年度介護報酬改定についてのページにまとまっています。

未実施のペナルティは指摘だけではありません。虐待防止措置を怠ると基本報酬の1%減算、BCP未策定は施設・居住系で3%減算(その他のサービスは1%減算)が適用されます。研修の実施と記録は、減算回避の観点でも必須です。

介護施設・事業所の法定研修一覧表【2026年7月時点】

主な法定研修を、施設系(特養・老健・介護医療院)と通所系・訪問系に分けて一覧にしました。頻度は解釈通知と自治体の運営指導資料に基づく標準的な取り扱いです。

研修名 施設系の頻度 通所系・訪問系の頻度 根拠
高齢者虐待防止研修 年2回以上+新規採用時 年1回以上+新規採用時 運営基準・解釈通知
身体拘束等適正化研修 年2回以上+新規採用時 研修義務なし(記録義務等あり。サービス種別により異なる) 運営基準・解釈通知
感染症の予防・まん延防止研修 年2回以上+新規採用時(訓練も年2回以上) 年1回以上(訓練も年1回以上) 運営基準・解釈通知
BCP(業務継続計画)研修 年2回以上+新規採用時(訓練も年2回以上) 年1回以上(訓練も年1回以上) 運営基準・解釈通知
事故発生防止研修 年2回以上+新規採用時 研修義務なし(事故対応の体制整備は必要) 介護保険施設の運営基準
褥瘡予防の研修 指針を整備し定期的に実施 原則対象外(サービス種別により異なる) 介護保険施設の運営基準
認知症介護基礎研修 無資格の介護職員は受講義務(採用後1年以内。訪問系など対象外あり) 運営基準・解釈通知
プライバシー保護・倫理法令遵守 頻度の明文規定なし(運営指導で実施状況を確認されやすい) 運営基準(秘密保持等)

委員会の開催義務も研修とセットで確認してください。施設系では、身体拘束適正化委員会と感染対策委員会はおおむね3か月に1回以上、虐待防止委員会と事故防止委員会は定期開催が求められます。以下、研修ごとに要点を説明します。

高齢者虐待防止研修|全サービスで義務・施設系は年2回以上

虐待防止は、委員会の開催・指針の整備・研修の実施・担当者の設置という4つの措置が全サービスに義務付けられています。研修は年1回以上(施設系は年2回以上)に加えて、新規採用時にも必ず実施します。4つの措置の詳細は高齢者虐待防止の4つの義務措置の解説記事で確認できます。措置を怠ると1%の減算対象になるため、優先度は最上位です。

身体拘束等適正化研修|施設系・居住系は年2回以上

身体拘束適正化の研修義務は、施設系と居住系サービスが対象で、年2回以上と新規採用時の実施が必要です。委員会は3か月に1回以上開催します。通所系・訪問系に定期研修の義務はありませんが、緊急やむを得ず身体拘束を行った場合の記録は全サービスで必要です。自事業所の義務の範囲は、指定権者(自治体)の手引きで確認してください。

感染症の予防及びまん延防止のための研修・訓練

感染対策は、委員会・指針・研修・訓練(シミュレーション)の4点セットが全サービスで義務です。施設系は研修・訓練とも年2回以上と新規採用時、通所系・訪問系は年1回以上が標準です。厚生労働省の介護現場における感染対策のページでは、感染対策の手引きや研修動画が公開されており、教材として活用できます。

BCP(業務継続計画)研修・訓練|未策定は減算

感染症と自然災害の2本立てで、計画の策定に加えて研修・訓練が義務です。施設系は年2回以上と新規採用時、その他のサービスは年1回以上が目安です。BCPの基本と作り方はBCPとは何かを解説した記事で整理しています。ひな形や研修動画は厚生労働省の業務継続ガイドラインのページから入手できます。

事故発生防止研修|介護保険施設は年2回以上

特養・老健・介護医療院では、事故発生防止のための指針整備・委員会開催・研修(年2回以上+新規採用時)・安全対策担当者の設置が義務です。担当者を置かない場合は安全管理体制未実施減算の対象になります。ヒヤリハットの分析を研修題材にすると、報告文化の定着と研修を兼ねられます。

褥瘡予防・プライバシー保護など|サービス種別により異なる

褥瘡予防は介護保険施設で指針の整備と継続的な教育が求められます。一方、プライバシー保護や倫理・法令遵守の研修は、頻度を定めた明文規定がありません。ただし秘密保持や個人情報保護の措置義務を根拠に、運営指導のチェックリストへ載せている自治体が多くあります。年1回程度、新規採用時研修と合わせて実施しておくのが現実的です。

認知症介護基礎研修|無資格者は受講が義務

介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を持たない人は、認知症介護基礎研修の受講が2024年4月から完全義務化されています。新規採用の無資格者は採用後1年以内の受講が必要です。eラーニングで受講でき、内容や申込方法は認知症介護基礎研修の解説記事にまとめています。受講管理は集合研修と別枠で、個人単位の台帳を作って追跡してください。

2025~2026年に加わった新しい義務|熱中症とカスハラ

介護報酬の運営基準とは別に、労働安全衛生や雇用管理の法令からも、研修・周知の義務が追加されています。介護事業所も一般企業と同じく対象です。

熱中症対策|2025年6月から罰則付きで義務化

労働安全衛生規則の改正により、2025年6月から、一定の暑熱環境で作業を行う事業場に「報告体制の整備・重症化防止の手順作成・関係労働者への周知」が罰則付きで義務付けられました。送迎や入浴介助、屋外の活動支援がある事業所は対象になり得ます。周知は研修や朝礼で行い、記録を残します。介護現場での具体的な対応は熱中症対策の義務化の解説記事を、制度の原文は厚生労働省の職場における熱中症予防対策のページを参照してください。

カスタマーハラスメント対策|2026年10月から義務化

改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、カスハラ防止の雇用管理上の措置が全事業主の義務になります。方針の明確化と周知、相談体制の整備、研修の実施などが求められ、利用者や家族からのハラスメントも対象です。準備の進め方はカスハラ対策義務化の解説記事で、指針の内容は厚生労働省の職場におけるハラスメント防止のページで確認できます。2026年度の年間計画には、カスハラ研修を1枠確保しておきましょう。

年間研修計画の立て方|月別の組み方例

年間計画づくりの結論はシンプルです。年2回実施が必要な研修を上期・下期に1回ずつ配置し、季節リスクのある研修を流行期・繁忙期の前に置く。この2つの原則で、ほとんどの抜け漏れは防げます。手順は次の3ステップです。

手順1は、自事業所に該当する義務の抽出です。前章の一覧表からサービス種別に当てはまる研修を選び、頻度と委員会開催をリスト化します。手順2は、年2回研修の上期・下期への振り分けです。手順3は、季節との調整で、感染症研修は流行前の秋、熱中症の周知は夏前、BCP訓練は防災月間などに合わせます。

月別モデル(施設系・老健の例)

研修・訓練の例
4月 新規採用時研修(虐待防止・身体拘束・感染症・BCP・事故防止・プライバシー保護を一括)
5月 事故発生防止研修(1回目)/ヒヤリハット分析
6月 熱中症対策の周知・研修/安全衛生の確認
7月 身体拘束適正化研修(1回目)
8月 BCP研修・訓練(自然災害編)
9月 高齢者虐待防止研修(1回目)
10月 感染症研修・訓練(1回目・流行期前)
11月 事故発生防止研修(2回目)/カスハラ対応研修
12月 身体拘束適正化研修(2回目)
1月 BCP研修・訓練(感染症編)/感染症研修(2回目)
2月 高齢者虐待防止研修(2回目)
3月 倫理・法令遵守/プライバシー保護/次年度計画の策定

認知症介護基礎研修は集合研修と別枠で、無資格者ごとに受講期限(採用後1年)を台帳管理します。委員会は研修と同日に開催すると、参集の負担を減らせます。

研修記録の残し方|保存年限と欠席者フォロー

記録には、実施日時・研修名・内容の概要・講師・出席者名・使用資料を残します。欠席者には資料配布や動画視聴などの補講を行い、その記録も残してください。全員受講の証跡がないと、運営指導で「実施した」と認められない場合があります。保存年限は国の基準で完結の日から2年ですが、条例で5年と定める自治体が多いため、5年保存に統一しておくと安全です。

まとめ|一覧表で棚卸しし、年2回研修を軸に計画化する

法定研修の管理は、一覧表による義務の棚卸し、年2回研修の上期・下期配置、記録と欠席者フォローの3点で回ります。2026年度は熱中症とカスハラという新しい義務も計画に組み込み、年度初めに研修計画表として職員へ公表しておきましょう。計画があること自体が、運営指導での信頼材料につながります。

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