個別支援計画の書き方|記入例・作成の流れと未作成減算を防ぐ運用

個別支援計画は、障害福祉サービスの提供に欠かせない法定書類です。計画がないままサービスを提供すると、個別支援計画未作成減算として報酬が最大50%カットされます。しかも「書類はあるのに手続きの一部が欠けていた」だけで、未作成とみなされる点が落とし穴です。

この記事では、個別支援計画の作成の流れと書き方を、記入例を交えて解説します。未作成減算の早見表と、減算を防ぐ運用のチェックポイントもまとめました。サビ管・児発管に就任したばかりの方も、この記事の手順どおりに進めれば運営指導で指摘されない計画運用ができます。

個別支援計画とは|法的位置づけと作成義務

個別支援計画とは、利用者一人ひとりのアセスメントに基づき、支援の目標と具体的な支援内容を定める書類です。作成は事業所の努力目標ではなく、指定基準省令で定められた義務です。

障害福祉サービス(生活介護・就労系・グループホームなど)では、障害者総合支援法に基づく指定基準省令(平成18年厚生労働省令第171号)第58条などが根拠です。作成手順から見直しまでが条文で細かく定められています。

児童発達支援や放課後等デイサービスでは、児童福祉法に基づく指定通所支援の基準省令(平成24年厚生労働省令第15号)が根拠となります。名称は児童発達支援計画・放課後等デイサービス計画ですが、位置づけと手順は同じです。

なお、相談支援専門員が作る「サービス等利用計画(障害児支援利用計画)」とは別の書類です。サービス等利用計画が生活全体の設計図であるのに対し、個別支援計画は自事業所での支援の設計図です。両方がそろって初めて適正な支援とみなされます。

作成の責任者は、サービス管理責任者(サビ管)です。児童系の事業所では児童発達支援管理責任者(児発管)が担います。アセスメントの面接や担当者会議の開催も、サビ管・児発管本人が行う必要があります。

個別支援計画作成の流れ|5つのステップ

作成の流れは「アセスメント→原案→担当者会議→説明・同意・交付→モニタリング」の5ステップです。重要なのは、どれか1つでも欠けると計画全体が未作成扱いになる点です。まず全体像を表で確認してください。

ステップ やること 押さえるポイント
1 アセスメント 本人・家族と面接し、希望や課題を把握する 面接は省略不可。日時と内容を記録する
2 原案の作成 意向・目標・支援内容を計画原案にまとめる サビ管・児発管が作成する
3 担当者会議 支援の担当者を招集し原案へ意見を聴く 議事録を残す。オンライン開催も可
4 説明・同意・交付 本人・家族に説明し、文書で同意を得て交付する 同意日・交付日を記録する
5 モニタリング 実施状況を定期的に確認し、計画を見直す 少なくとも6か月に1回以上。面接して記録

ステップ1~4|アセスメントから交付まで

アセスメントは、利用者本人に面接して行うことが省令で義務づけられています。電話や書面のやり取りだけでは要件を満たしません。児童系では保護者との面接に加え、こども本人の意思や好みもていねいに把握します。

原案には、本人・家族の意向、支援方針、目標と達成時期、留意事項を記載します。原案ができたら担当者会議を開き、現場の担当者から意見を聴きます。会議はテレビ電話などのオンライン開催も認められています。

会議を踏まえて計画を完成させたら、本人・家族に説明し、文書で同意を得ます。署名済みの同意欄と交付日の記録が、運営指導での証拠になります。相談支援事業所(障害児相談支援事業所)への交付も忘れずに行いましょう。

ステップ5|モニタリングの頻度と期限

モニタリングは、少なくとも6か月に1回以上の実施が原則です。就労移行支援や自立訓練は3か月に1回以上と、サービスによって頻度が異なります。児童発達支援・放課後等デイサービスは6か月に1回以上です。

モニタリングでも本人・家族との面接と記録が必要です。期限を過ぎた計画は効力を失い、未作成減算の対象になります。見直しの際は、アセスメントからの5ステップを毎回やり直す点に注意してください。

個別支援計画の書き方|記載項目と記入例

様式は事業所ごとに自由ですが、記載すべき項目は省令で決まっています。項目ごとの書き方のポイントを表で整理しました。

記載項目 書き方のポイント
本人・家族の生活に対する意向 面接で聴き取った本人の言葉をそのまま書く
総合的な支援の方針 事業所として目指す方向性を1~2文で示す
長期目標(到達目標) おおむね6か月~1年で到達したい姿を具体的に書く
短期目標 長期目標を分解し、3か月程度で確認できる内容にする
具体的な支援内容 誰が・いつ・どの場面で・何をするかを明記する
達成時期 「6か月後」など期限を数字で示す
支援上の留意事項 健康面の配慮や家族支援など個別の注意点を書く

到達目標の書き方と記入例

目標は「達成できたかどうかを第三者が判断できる表現」で書くのが原則です。抽象的な言葉を数字や場面に置き換えると、モニタリングでの評価が楽になります。

悪い例は「コミュニケーション能力を高める」です。何をもって達成とするかが分からず、支援内容にもつながりません。放課後等デイサービスの記入例で比較してみます。

長期目標(6か月)の記入例は「小集団活動に週2回参加し、職員の声かけがあれば気持ちを言葉で伝えられる」です。短期目標(3か月)は「気持ちが高ぶったとき、職員の促しでクールダウンの場所へ移動できる」とします。場面・頻度・支援の度合いが入ると、達成の判断がぶれません。

意思表示が難しい利用者の場合も、意向欄を空欄や「特になし」にしてはいけません。表情や行動の観察、家族からの聴き取りをもとに「音楽活動のときに笑顔が多い」など、本人の好みを示す事実を書きます。児童系では保護者の意向とこども本人の意向を分けて書くと、運営指導でも評価されます。

支援内容と達成時期の書き方

支援内容は、目標を実現する手段を5W1Hで書きます。記入例は「集団活動の前に、担当職員が絵カードで活動の流れを本人と確認する(毎回・5分程度)」です。担当者と頻度まで書けば、誰が読んでも同じ支援を再現できます。

達成時期は「令和8年12月末」「利用開始から6か月後」のように期限を明記します。期限があいまいだと、モニタリングで見直しの要否を判断できなくなります。目標・支援内容・達成時期がアセスメントの課題と一本の線でつながっているかを、交付前に必ず確認してください。

個別支援計画未作成減算とは|減算率の早見表と適用条件

個別支援計画未作成減算は、計画がないままサービスを提供した場合に適用される減算です。令和6年度報酬改定後の減算率は、未作成期間が3か月未満か3か月以上かで異なります。

未作成の期間 減算率 算定できる報酬
減算適用から3か月未満 30%減算 所定単位数の70%
減算適用から3か月以上 50%減算 所定単位数の50%

減算の対象は、計画が未作成となっている利用者の分だけです。ただし長期化すれば返還額は膨らみ、指定取消の処分事例もあります。減算の詳細は厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について」の報酬告示・留意事項通知で確認できます。児童系はこども家庭庁の報酬改定ページに同様の資料があります。

減算は、未作成のままサービスを提供した月から、作成が完了した月の前月まで続きます。運営指導で過去の未作成が発覚した場合は、さかのぼって報酬を返還する過誤調整が必要になります。数年分の返還となれば、経営への打撃は減算率の数字以上に大きくなります。

未作成とみなされる典型的なケース

書類が存在していても、手続きに不備があれば未作成と判断されます。運営指導で指摘が多いのは次の4つです。

  • アセスメントの面接をせずに計画を作成した(記録がない場合を含む)
  • 担当者会議を開催していない、または議事録がない
  • 本人・家族の文書同意や交付の記録がない
  • モニタリング期限を過ぎたままサービスを提供した

いずれも「やったつもりでも記録がなければ認められない」点が共通します。手続きと記録はセットと考えてください。

サビ管・児発管の不在時はどちらの減算になるか

サビ管・児発管が欠員のときは、サービス管理責任者欠如減算(児発管欠如減算)が別にあります。減算適用から5か月未満は30%減算、5か月以上は50%減算で、こちらは利用者全員が対象です。

欠員中に計画の更新期限が来ると、未作成減算の要件にも該当します。この場合、両方の減算を重ねて適用するのではなく、減算単位数が大きい方のみを適用する扱いです。なお、欠員後に一定の要件を満たせば減算が猶予される人員基準欠如減算の猶予特例もあわせて確認しておくと、不在時の対応を冷静に判断できます。

未作成減算を防ぐ運用チェックポイント

未作成減算を防ぐ鍵は、期限管理と記録の仕組み化です。サビ管・児発管個人の記憶に頼る運用は、繁忙期や退職で必ず破綻します。次の3点を事業所の仕組みとして整えてください。

利用者ごとの期限を一覧で管理する

利用者ごとに、計画の交付日・モニタリング期日・次回更新日を一覧表にまとめます。期限の2か月前に着手すれば、面接や会議の日程調整が間に合わなくなる事態を防げます。新規利用者は、サービス提供開始までに交付を終えることが原則です。

5ステップの記録をセットで保管する

アセスメント記録・担当者会議の議事録・同意欄つきの計画書・交付記録を、利用者ごとに1つづりで保管します。運営指導(実地指導)では、この一式が請求記録と突き合わせて確認されます。日付の前後関係(アセスメント→会議→同意→交付の順)が崩れていないかも点検しましょう。

計画とサービス提供記録の整合をとる

計画に書いた支援内容と、日々の提供記録の内容が食い違っていると、運営指導で計画の形骸化を指摘されます。月次の記録確認の際に、計画の目標と実際の支援がずれていないかを見る習慣をつけてください。ずれが大きければ、期限を待たずに計画を見直す判断も必要です。

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