就労継続支援B型は儲かるのか【2026年】収益・工賃・撤退ライン

この記事は、就労継続支援B型への参入を検討する経営者・投資判断層向けです。開業手順は就労継続支援B型の開業ガイドに譲り、本記事は「そもそも採算が合うのか」に絞ります。

結論から言うと、B型は「儲かる事業」ではありません。利用率と平均工賃月額で報酬が決まる装置産業であり、稼働が埋まるまでは赤字が続きます。厚生労働省の令和7年経営概況調査では、B型の収支差率は令和6年度決算で6.2%でした。

この記事では、令和8年6月施行の基本報酬区分を一次情報で確認したうえで、収益構造を分解します。定員20人のモデル収支を3ケースで示し、分かれ目・見落としがちなコスト・撤退ラインまで扱います。

記事でわかること

結論:B型は「利用率と工賃で決まる装置産業」

B型の収入の大半は、国保連(国民健康保険団体連合会)経由で入る訓練等給付費です。その額は「1日の単位数×利用者数×開所日数」で機械的に決まり、売価を自分で決められません。

単位数を左右するのは、定員規模・人員配置・前年度の平均工賃月額の3つです。経営者が動かせる変数は、利用率(定員に対する実利用者数)と平均工賃の2つに絞られます。

令和7年障害福祉サービス等経営概況調査では、B型の収支差率は令和6年度決算で6.2%、収入に対する給与費の割合は68.1%でした。障害福祉サービス全体の加重平均6.5%と大きく変わらず、人件費が7割近い構造です。「儲かる」より「回すのが難しい」事業です。

収益構造の分解:基本報酬は定員規模×平均工賃月額で決まる

令和8年6月施行の基本報酬区分(定員20人以下・7.5対1の例)

B型の基本報酬には、平均工賃月額に応じて評価する方式(サービス費I~III)と、利用者の参加等を一律に評価する方式(サービス費IV~VI)があります。参入検討者の多くが選ぶのは前者です。人員配置6対1・7.5対1・10対1で単位数が変わります。

令和8年6月施行の見直しで、平均工賃月額の各区分の基準額が3千円ずつ引き上げられました。あわせて中間区分(A~F)が新設され、区分が下がる事業所の減少幅を3%程度に抑える設計です。区分七と八の境界(1万円)だけは据え置かれています。

改定全体の要点は令和8年6月施行の報酬改定の記事にまとめています。

区分 平均工賃月額 単位数(1日)
(一) 4万8千円以上 748
(A) 4万5千円以上4万8千円未満 726
(二) 3万8千円以上4万5千円未満 716
(B) 3万5千円以上3万8千円未満 695
(三) 3万3千円以上3万5千円未満 669
(C) 3万円以上3万3千円未満 649
(四) 2万8千円以上3万円未満 649
(D) 2万5千円以上2万8千円未満 637
(五) 2万3千円以上2万5千円未満 637
(E) 2万円以上2万3千円未満 618
(六) 1万8千円以上2万円未満 614
(F) 1万5千円以上1万8千円未満 596
(七) 1万円以上1万5千円未満 584
(八) 1万円未満 537

表は就労継続支援B型サービス費(II)(定員20人以下・7.5対1)の単位数です。1日16人・月22日・1単位10円なら、区分(一)で約263万円、区分(五)で約224万円、区分(八)で約189万円の月額になります。

6対1の(I)は最上位837単位・最下位590単位、10対1の(III)は最上位682単位・最下位490単位です。都市部は地域区分の上乗せがつきます。

新規指定の初年度は「1万円未満」区分で始まる

開業初年度は前年度の工賃実績がないため、初年度1年間は平均工賃月額1万円未満とみなして基本報酬を算定します。定員20人以下・7.5対1なら537単位からのスタートです。

ただし、支援開始から6か月経過した月からは、その6か月間の平均工賃月額に応じた区分へ届出で変更できます。この届出を忘れると、丸1年を最下位区分で過ごします。

さらに令和8年6月1日以降に新規指定を受けたB型には、応急的な報酬単価が適用されます。基本報酬が所定単位数の1000分の984(約1.6%減)となり、令和9年度報酬改定までの措置です。新規参入の抑制策の全体像は障害福祉サービスの総量規制の記事で解説しています。

全国平均工賃月額は24,141円(令和6年度)

厚生労働省の「令和6年度工賃(賃金)の実績について」によると、B型の全国平均工賃月額は24,141円、前年度比106.6%でした。対象事業所数は18,245か所です。上の表に当てはめると、平均的なB型は区分(五)に位置します。

令和6年度改定で平均工賃月額の分母が「工賃支払対象者数」から「1日当たりの平均利用者数」に変わった点にも注意してください。この変更で平均工賃月額は令和4年度から令和5年度に約6千円上がり、その2分の1の3千円が令和8年6月の引き上げ幅とされました。

モデル収支:定員20人・7.5対1の月次シミュレーション

前提条件

以下のモデルは、定員20人、サービス費(II)7.5対1、地域区分「その他」(1単位10円)、月22日開所の前提です。加算は送迎加算(I)(片道21単位)と福祉専門職員配置等加算(III)(1日6単位)のみ算定します。そこに処遇改善加算(I)イ(B型の加算率10.5%)を上乗せしています。

人件費は法定福利費込みの想定額で計145万円です。内訳は管理者兼サビ管(サービス管理責任者)42万円、常勤の職業指導員・生活支援員2名62万円、非常勤支援員2名26万円、事務15万円です。

処遇改善加算は全額を職員に配分する前提で、収入と人件費の両方に同額を計上しています。家賃・車両・光熱通信・消耗品・保険研修・借入返済は合計68万円と置きました。

いずれも一例で、地域・物件・作業内容で大きく変わります。

3ケースの月次収支(生産活動を除く)

項目 初年度(12人・区分八) 安定期(16人・区分五) 上振れ(18人・区分三)
基本報酬 141.8万円 224.2万円 264.9万円
加算(送迎・福祉専門職員) 12.7万円 16.9万円 19.0万円
処遇改善加算(I)イ 16.2万円 25.3万円 29.8万円
収入合計 170.7万円 266.4万円 313.7万円
人件費(処遇改善分含む) 161.2万円 170.3万円 174.8万円
家賃・車両・経費・返済 68.0万円 68.0万円 68.0万円
月次収支 マイナス58.5万円 プラス28.1万円 プラス70.9万円

初年度ケースは、利用率60%かつ最下位区分の組み合わせです。月58万円の赤字が続けば、半年で350万円の運転資金が消えます。

開業資金にはこの赤字期間の運転資金を必ず含めてください。詳しくは障害福祉事業の開業資金の記事で扱っています。

安定期ケースは、利用率80%・全国平均並みの工賃で月28万円の黒字です。利益率は約10%で、ここから役員報酬や設備更新、採用費を賄うと手元に残る額は多くありません。

上振れケースでも月71万円、年間850万円程度です。区分(三)には平均工賃3万3千円以上が必要で、簡単には届きません。

生産活動の収支は別会計で見る

上の表には生産活動の売上と経費を入れていません。生産活動の収支差はそのまま工賃の原資になり、法人の利益にはならないからです。運営基準(厚生労働省令第171号)第201条は、生産活動の収入から必要経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払うと定めています。

項目 健全な例 危険な例
生産活動の売上 60万円 35万円
材料費・外注費など経費 20万円 15万円
工賃の原資(収支差) 40万円 20万円
支払う工賃総額(16人×2.4万円) 38.4万円 38.4万円

危険な例では、工賃の原資が支払総額を18万円下回っています。この状態で工賃を維持すると給付費から補填する構図になり、運営基準の趣旨に反します。実地指導でも確認されます。

あわせて、月当たりの工賃の平均額は3千円を下回ってはならず、年度ごとの工賃目標水準の設定と報告も義務です。

儲かるB型とそうでないB型の分かれ目

利用率:定員の8割を切ると黒字が消える

先のモデルでは、16人(80%)で黒字、12人(60%)で大幅赤字で、損益分岐点は14人前後です。登録者を30人程度確保し、1日平均16人以上の通所を維持できるかが最初の関門です。

登録者がいても通所が安定しなければ稼働は上がりません。相談支援事業所や特別支援学校との関係づくりが利用率を決めます。

B型を新たに利用する人には、原則として先に就労選択支援を受ける運用が始まっています。利用開始までの期間が延びるため、開業直後の稼働の立ち上がりは以前より遅くなります。

平均工賃:区分を上げるより「落とさない」ことが先

隣り合う区分の差は1日10~30単位程度で、16人・22日なら月3万~10万円の違いです。一方で区分(五)637単位から区分(八)537単位まで落ちると月35万円の減収です。工賃を上げる投資より、工賃を落とさない仕組みのほうが収支への影響は大きいです。

平均工賃は前年度実績で決まるため、今年の工賃低下は来年度の報酬に効きます。主要取引先を1社に依存していると契約終了の翌年に区分が急落するため、取引先は分散させます。

加算の取りこぼしと減算の直撃

B型の加算には、送迎加算、福祉専門職員配置等加算、食事提供体制加算(1日30単位)などがあります。初期加算(利用開始から30日・1日30単位)や目標工賃達成加算も算定できます。地域協働加算とピアサポート実施加算は参加等を評価する方式(サービス費IV~VI)が対象で、平均工賃方式では算定できません。

自事業所で取れる加算を一覧にし、要件を満たした月に確実に届出するのが費用ゼロの増収策です。

逆に減算は利益を直撃します。サビ管欠如減算は1~4か月目で30%、5か月目以降は50%です。月224万円の基本報酬なら、サビ管不在が5か月続くだけで月112万円が消えます。

生産活動収支が工賃を下回らないこと

健全なB型は生産活動を独立した事業として損益管理し、時給換算で赤字の作業は見直します。

見落とされがちなコスト

送迎:加算より費用が大きくなりやすい

送迎加算(I)は片道21単位で、16人が往復すれば月約14.8万円の収入です。一方、車両2台の維持費に加え、運転する職員の人件費がかかります。

送迎に常勤換算1人分の時間を取られると加算収入では足りません。送迎エリアを先に決め、その中で利用者を確保する順番が現実的です。

請求事務:小規模ほど固定費として重い

国保連請求は毎月1日から10日までに行い、定員20人規模でも月に数日は管理者かサビ管の時間を取られます。返戻(差し戻し)が出れば入金が遅れます。

この作業を誰が担うかを開業前に決めていない事業所が多く、管理者が抱え込むと利用者確保の営業が止まります。請求ソフトで内製するか代行に出すかの判断軸は内製と外注の判断軸に、B型固有の請求の注意点は就労継続支援A型・B型の請求にまとめています。

処遇改善加算:入ってくるが手元には残らない

令和8年6月から処遇改善加算は(I)イ・(I)ロ・(II)イ・(II)ロ・(III)・(IV)の6区分になりました。B型の加算率は(I)イ10.5%、(I)ロ10.9%、(II)イ10.3%、(II)ロ10.7%、(III)8.8%、(IV)7.4%です。ロは生産性向上や協働化の取組と月給での配分要件を満たした場合の上位区分です。

加算額は全額を職員の賃金改善に充てるため、法人の利益にはなりません。配分設計や計画書・実績報告は処遇改善加算の記事で解説しています。

BCP・虐待防止・身体拘束:未整備なら1%減算

業務継続計画(BCP)未策定減算、虐待防止措置未実施減算、身体拘束廃止未実施減算は、いずれも基本報酬の1%減算です。3つ重なれば月224万円の事業所で月6.7万円の減収です。情報公表未報告減算は5%と大きく、WAM NETへの報告漏れだけで月11万円が消えます。

いずれも委員会・研修・訓練・記録の体制整備で防げます。要件はBCP未策定減算虐待防止の義務の記事にまとめています。

失敗パターン4つ

工賃が上がらない

受注型の内職だけで始め、単価の低い作業から抜け出せないパターンです。平均工賃1万円台が続くと基本報酬は区分(七)以下に固定され、紹介元からの評価も下がります。

利用者が集まらない

同じ市区町村にB型が多く、差別化できないまま開業したパターンです。B型の事業所は全国で1万8千か所を超え、地域によっては飽和しています。開業前に市区町村の障害福祉計画で見込み量と現状を確認してください。

サビ管が退職する

サビ管は利用者60人までに1人の配置で、不在になると欠如減算が始まります。後任には研修修了の要件があるため、採用まで数か月かかることが珍しくありません。

返戻を放置する

返戻の原因を直さないまま翌月も同じ請求を続け、入金がずれ込むパターンです。数か月分の返戻が積み上がると、資金繰りが急に詰まります。

返戻は当月中に原因を特定し、翌月請求に反映するのが原則です。対処法は返戻対応の記事を参照してください。

撤退ライン:何を見て、いつ判断するか

撤退の判断を先送りにすると、運転資金が尽きてからの閉鎖になり、利用者の移行先探しも間に合いません。開業前に「この数値を下回ったら見直す」基準を決めておきます。以下は一例です。

指標 見直しライン 判断の目安
利用率 開所12か月後に60%未満 紹介元の開拓を再設計。18か月で改善しなければ縮小
平均工賃月額 2年連続で1万円未満 生産活動の全面見直し。3年目も同じなら方式変更か撤退
月次収支 稼働安定後に6か月連続赤字 人件費と送迎費を再点検。改善見込みが立たなければ撤退協議
運転資金 月次支出の3か月分を割る 追加借入の可否を即確認。不可なら撤退準備に入る

撤退と決めた場合も、利用者の移行先の確保や廃止届など数か月の準備が要ります。廃止届の様式や期限は自治体差があるため、指定権者の手引きで確認してください。

それでも参入するなら押さえる3点

1年分の赤字を運転資金として持つ

初年度は最下位区分かつ低稼働で始まります。設備投資とは別に、半年から1年分の赤字を運転資金として確保してから開業してください。

生産活動の取引先を開業前に決める

開業後に作業を探し始める事業所は、工賃1万円台からなかなか抜けられません。開業前に受注先を2社以上確保し、月の受注量と単価を確認しておきます。6か月経過時の区分変更の届出も、開業時のスケジュールに入れておきます。

請求と体制整備は開業前に固める

請求の担当者、請求ソフトか代行かの選択、BCP・虐待防止・身体拘束の委員会と研修計画は、開業前に決めます。開業直後の管理者の時間を利用者確保に集中させるためです。

よくある質問

B型1事業所でどのくらいの利益が見込めますか

安定期モデルで月28万円、年間340万円程度です。1事業所で大きな利益を出す事業ではなく、複数事業所やグループホーム併設で規模を作る法人が多いのはそのためです。

令和8年6月の改定で既存事業所の報酬は下がりましたか

基準額が3千円上がったため、同じ工賃でも区分が1つ下がる事業所があります。ただし令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所は見直しの適用対象外です。区分が下がる場合も、中間区分で減少幅が3%程度に抑えられています。

自事業所の扱いは、指定権者からの届出案内で確認してください。

参加等を評価する方式を選べば工賃を気にしなくてよいですか

サービス費(V)(定員20人以下・7.5対1)は工賃にかかわらず1日530単位で一定です。平均工賃方式の区分(八)(537単位)と同水準に固定されるため、工賃を上げても報酬は増えません。地域協働加算やピアサポート実施加算を算定できる一方、工賃向上を収入に結びつけたい法人には向きません。

A型とB型ではどちらが採算を取りやすいですか

B型は最低賃金の支払い義務がなく、固定費リスクが小さいです。一方、A型は基本報酬が高く、生産活動が回れば収益性は上がります。A型の存続問題はA型の倒産・閉鎖、制度の違いはA型とB型の違いの記事で整理しています。

まとめ:儲かるかではなく「回せるか」で判断する

B型は、利用率と平均工賃で報酬が決まり、利益率6%前後の事業です。定員20人・利用率80%で月20万~30万円の黒字が現実的な着地であり、初年度は赤字を前提に運転資金を持つ必要があります。「儲かるか」ではなく「1年の赤字に耐え、稼働8割と工賃2万円台を維持できるか」で参入を判断してください。

参入を決めたら、生産活動の取引先と請求・体制整備を開業前に固めてください。開業手順は就労継続支援B型の開業ガイドへ進んでください。

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請求事務の固定費を軽くして、利用者確保に時間を使う

B型の採算は、管理者とサビ管が利用者確保と生産活動にどれだけ時間を使えるかで決まります。障害福祉専門の請求代行WITH福祉は、実績記録票をFAXで送るだけで請求事務の負担を約90%削減します。毎月20,000件以上の請求処理、約1,200事業所、全国47都道府県に対応しています。

指定申請の書類作成や自治体との事前協議を専門家に任せたい場合は、障害福祉サービスの指定申請代行をご検討ください。サビ管の確保や欠員対応には、サービス管理責任者の求人一覧も参考になります。

参考(一次情報)