総量規制とは【2026年】放デイ・GHで指定が下りない地域と確認方法

この記事は、放課後等デイサービスや障害者グループホームなどの開設地域を選んでいる事業者向けです。物件を決める前に「その地域で本当に指定が下りるのか」を判断したい方に向けて書いています。

結論から言うと、障害福祉サービスの新規参入は原則自由です。ただし自治体が「総量規制」を実施している地域では、基準を満たしても指定を拒否されます。しかも規制の有無は都道府県・市ごとに違い、同じ市でもサービスごと、圏域ごとに扱いが変わります。物件契約の前に、指定権者(指定を出す都道府県や市)の公式情報で確認するのが最初の関門です。

本記事では、総量規制の仕組み、サービス別の対象、令和9年4月から加わるグループホームの扱いを先に整理します。そのうえで自治体の運用例、確認手順、代替戦略の順に解説します。条文と自治体の公式ページは2026年9月7日時点で確認しています。

記事でわかること

総量規制とは何か:参入自由の例外として「指定を拒める」仕組み

総量規制とは、障害福祉計画・障害児福祉計画の「見込量」に供給量が達した場合に、指定権者が新規指定や定員増を拒否できる仕組みです。法律上の正式な名称ではなく、「指定をしないことができる」という条文の運用を指す通称です。

障害福祉サービスの指定は、人員・設備・運営基準を満たした申請に対して行うのが原則です。基準を満たしていれば指定権者は原則として拒めず、総量規制はその数少ない例外です。

根拠は「計画の達成に支障を生ずるおそれ」

拒否の根拠は、都道府県障害福祉計画(障害児は都道府県障害児福祉計画)の達成に支障が出るおそれです。計画には圏域ごとにサービスの必要量(見込量)が書かれており、実績がこれに達していれば指定をしないことができます。その地域の計画を読めば、規制のかかりやすさは予測できます。

対象になるサービスは法令で限定されている

すべてのサービスが対象ではありません。総量規制をかけられるのは、法律と省令で「特定障害福祉サービス」「特定障害児通所支援」と定められたものだけです。2026年9月時点の対象と根拠条文を表にまとめます。

サービス 根拠条文 計画の種類 状況
生活介護/就労継続支援A型・B型 障害者総合支援法第36条第5項・施行規則第34条の20 都道府県障害福祉計画 対象(現行)
障害者支援施設 障害者総合支援法第38条第2項 都道府県障害福祉計画 対象(現行)
児童発達支援/放課後等デイサービス 児童福祉法第21条の5の15第5項・施行規則第18条の30の2 都道府県障害児福祉計画 対象(現行)
共同生活援助(グループホーム) 障害者総合支援法第36条第5項・施行規則第34条の20(令和8年3月31日公布の改正命令) 都道府県障害福祉計画 令和9年4月1日施行

障害児入所施設も現行の対象です。一方、訪問系(居宅介護など)、就労移行支援、自立訓練、相談支援は対象外です。

放デイ・児童発達支援の総量規制:児童福祉法第21条の5の15第5項

放課後等デイサービス(放デイ)と児童発達支援(児発)は、児童福祉法第21条の5の15第5項が根拠です。都道府県障害児福祉計画の必要な量に既に達しているとき、または指定で超えるときは、指定をしないことができます。

放デイの指定権者は都道府県のほか、指定都市・中核市・児童相談所設置市です。したがって、同じ県内でも中核市とそれ以外で規制の有無が違うケースが普通にあります。県のページだけを見て安心してはいけません。

見込量は「人日/月」や「利用者数」で計画に書いてある

障害児福祉計画の見込量は、圏域ごとに「1か月あたりの延べ利用日数(人日)」や利用者数で示されます。実績がこの数字を超えているかどうかが、規制の判断材料です。計画は自治体サイトで公開されており、圏域の見込量と実績を自分で突き合わせられます。

放デイは「解除」もある:規制は固定ではない

放デイの総量規制は、恒久的なものではありません。兵庫県芦屋市は実績が見込量を下回り、放デイの規制を令和8年9月1日で解除しました。新規指定の受付も再開しています(児童発達支援は継続)。愛知県豊橋市は放デイの定員140人程度を公募し、限定解除しました(応募は令和8年9月2日締切)。

生活介護・就労継続支援A型・B型の総量規制:総合支援法第36条第5項

成人向けの通所サービスは、障害者総合支援法第36条第5項が根拠です。条文の要件は、都道府県または区域のサービス量が計画の必要な量に「既に達しているか、指定によってこれを超えることになると認めるとき」です。このとき指定をしないことができます。

特定障害福祉サービスの中身は、施行規則第34条の20で生活介護、就労継続支援A型、就労継続支援B型と決まっています。実務上はB型を対象にする自治体が目立ちます。

大阪市はB型のみを対象に、新規指定と利用定員追加の受付を停止しています。市の計画の見込量が月約28万~33万人日に対し、令和7年12月時点の供給量は月約51万人日と大幅に超過しているためです。

市町村の「意見申出」と条件付き指定

同じ第36条には、総量規制と別の仕組みもあります。関係市町村長は指定前に通知を求め(第6項)、市町村障害福祉計画との調整の見地から意見を申し出ることができます(第7項)。都道府県知事はその意見を勘案して、指定に条件を付すことができます(第8項)。「指定は出すが、受け入れ対象を重度者に限る」といった条件付き指定は、この仕組みによるものです。

障害者グループホームは令和9年4月1日から総量規制の対象に

共同生活援助(障害者グループホーム)は、2026年9月時点ではまだ総量規制の対象外です。ただし令和8年3月31日に障害者総合支援法施行規則の一部を改正する命令が公布され、共同生活援助が対象に加わることが確定しました。施行日は令和9年(2027年)4月1日です。

検討段階ではなく公布済みのため、開業計画は施行を前提に組んでください。

背景:事業所数の急増と地域差

国の資料では、グループホーム事業所数の伸び率は令和6年から令和7年の1年で6.03%、日中サービス支援型に限ると23.96%です。地域によってはニーズに比べて供給が過剰になり、専門性の低い事業者でも基準を満たせば指定せざるを得ない点が課題とされています。第8期障害福祉計画(令和9~11年度)の見込量では、利用者割合が上位25%の市町村は伸び率を全国平均に止めて算定します。中山間地域などは対象から外れます。

例外:強度行動障害・医療的ケアへの対応

審議では、強度行動障害や医療的ケアが必要な人を受け入れるグループホームは例外扱いにすべきだという意見が出ています。第8期の基本指針には、重度障害者について個別に利用者数の見込みを設定するよう努める旨が盛り込まれました。つまり、令和9年度以降のグループホーム開設は「誰を受け入れるか」で規制の当たり方が変わります。

グループホームの開業手順そのものは、障害者グループホームの開業ガイドで解説しています。

実際に規制している自治体の例と運用の形

総量規制の運用は、自治体によって形が違います。2026年9月7日に公式ページで確認できた例を挙げます。いずれも期間や対象は見直されるため、必ず現行ページで再確認してください。

自治体 対象サービス 運用の形 期間・備考
大阪市 就労継続支援B型 新規指定・定員追加の受付停止 新規は令和8年8月1日~令和9年7月1日指定分、定員追加は令和8年7月1日~令和9年6月1日変更分
愛知県豊橋市 生活介護、A型、B型、児発、放デイ 定員増を伴う指定をしない。放デイは定員140人程度を公募し限定解除 公募の応募は令和8年9月2日締切。強度行動障害・重症心身障害・医療的ケア対応は例外。事業計画書は指定希望日の3か月前の15日まで
兵庫県姫路市 就労継続支援B型 見込量に1割を加えた数(見込量1,000人未満は100人を加算)を超えると発動 令和7年4月2日~令和9年9月30日。合併・事業譲渡による承継と旧4町への設置は例外
奈良市 生活介護、B型 受付停止。重度・医療的ケア対応は例外申請 令和7年4月1日~令和9年3月31日
宮崎県 児童発達支援 7つの圏域ごとに新規指定・サービス追加・定員増を制限 令和7年10月1日から(西都児湯圏域のみ同年12月1日から)。重症心身障害児対象・共生型は例外
兵庫県芦屋市 児童発達支援(放デイは解除) 実績が見込量を下回り、放デイは令和8年9月1日で解除。児発は継続 児発センター・重症心身障害児対象は除外

運用の形は大きく4つ

厚生労働省の指定のガイドライン案は、総量規制の運用として事前周知、公募、受付停止を段階的に使うことを示しています。実務では次の4つの形に整理できます。

  • 受付停止:期間を区切って新規指定と定員増の申請を受け付けない。大阪市・奈良市の形。
  • 公募制:必要な定員枠だけを公募し、選考して指定する。豊橋市の放デイの形。
  • 事前協議での判定:申請前の事前協議で圏域の見込量と照らし、超過なら申請を受理しない。
  • 条件付き指定:市町村の意見申出を受け、受け入れ対象や定員に条件を付して指定する。

どの形でも共通するのは、「指定希望日の2~3か月前」には結論が出ている点です。契約後に規制を知っても、家賃だけが発生します。

令和8年6月施行の新規指定事業所の報酬引き下げとの関係

総量規制と混同しやすいのが、令和8年度報酬改定の「新規指定事業所に対する基本報酬の特例」です。こちらは指定を拒む仕組みではなく、指定は出るが報酬が下がる仕組みです。

令和8年6月1日以降に新規指定された事業所は、令和9年度報酬改定までの間、基本報酬に係数がかかります。就労継続支援B型は1000分の984、児童発達支援は988、放課後等デイサービスは982です。共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)は972です。

重度支援の対象者や離島・中山間地域などは、従前の単価が適用されます。

対象サービスが総量規制の対象(またはその候補)と重なっている点に注目してください。国は「指定を拒む」と「報酬を下げる」の両方で、伸びすぎたサービスの新規参入を抑えています。収支計画は下がった単価で組み、規制地域かどうかは別途確認する、という二段構えが必要です。改定の全体像は令和8年6月施行の報酬改定の記事を参照してください。

自治体で「指定が下りるか」を確認する方法

確認は、計画の数字を読む、指定権者の公式ページを見る、事前協議で聞く、の3段階で行います。所要期間は物件契約の3か月以上前に始めるのが目安です。

段階 見るもの 確認する内容 タイミング
1. 計画を読む 都道府県・市の障害福祉計画/障害児福祉計画 開設予定圏域の見込量と直近実績。超過していないか 候補地の絞り込み時
2. 公式ページを見る 指定権者の「総量規制」「事前協議」「事業者向けお知らせ」 対象サービス、期間、例外、公募の有無 物件の内見前
3. 事前協議で聞く 指定担当課、所在市町村の障害福祉担当課 圏域の判定、意見申出の予定、条件付き指定の可能性 物件契約の3か月前まで

計画は「圏域」単位で読む

都道府県の計画は、県全体ではなく障害保健福祉圏域ごとに見込量を置いています。宮崎県が児童発達支援を7圏域ごとに判定しているように、同じ県内でも規制のある圏域とない圏域が併存します。

指定権者と所在市町村は別々に確認する

指定権者が都道府県でも、所在市町村は意見申出で指定に条件を付けさせることができます。都道府県によっては、事前協議の前に所在市町村の担当課へニーズの確認と開設の連絡を行うよう求めています。県と市の両方に聞くのが安全です。

事前協議は締切が早い

事前協議の受付を、指定希望日の3か月前の1日から月末までとする指定権者は多くあります。豊橋市の事業計画書も、指定希望日の3か月前の15日が締切です。協議を逃すと指定が翌月以降にずれるため、物件の契約開始日から逆算して動く必要があります。事前協議から指定までの流れは指定申請 完全ガイドで確認できます。

規制地域だったときの代替戦略

規制がかかっている地域でも、選択肢はゼロではありません。現実的な順に4つ挙げます。

1. 隣接自治体・別圏域へずらす

規制は指定権者と圏域の単位でかかります。中核市で規制中でも、隣接する県指定の町村では受け付けている例があります。数キロ離れた候補地で解決する場合もあります。

2. 例外区分を狙う

多くの自治体が、強度行動障害、重症心身障害、医療的ケアへの対応事業所を例外にしています。看護職員の配置や研修修了者の確保が条件になり人件費は上がりますが、規制地域で唯一の新規参入枠になり得ます。事業計画書の提出は指定希望日の3か月前が目安です。

3. サービス種別や形態を変える

放デイが規制中で児童発達支援が空いている、あるいはその逆という地域があります。成人向けなら、B型が規制中でも就労移行支援や自立訓練は対象外です。多機能型で対象外のサービスを主軸にし、規制対象のサービスは公募や解除を待つ設計も選べます。就労系の違いはA型とB型の違いを参照してください。

4. 既存事業所の承継(M&A)

姫路市のように、事業の継続性が保たれる合併・譲渡を規制の例外にする自治体があります。総量規制は「量を増やさない」ための制度なので、既存の定員を引き継ぐ形なら成立しやすいのです。ただし承継後の指定の扱いは自治体差があるため、指定権者の手引きで確認してください。

物件契約前のチェックリスト

契約書に判を押す前に、次の項目をすべて「はい」にしてください。ひとつでも「いいえ」なら、契約を待つべきです。

  • 候補地の指定権者(県か、指定都市・中核市か)を特定した。
  • 候補地が属する障害保健福祉圏域と、その圏域の見込量・実績を計画で読んだ。
  • 指定権者の公式ページで、開設予定サービスの総量規制の有無と期間を確認した。
  • 所在市町村の障害福祉担当課に、意見申出や条件付き指定の予定を聞いた。
  • 事前協議の受付期間と締切を、希望指定日から逆算して把握した。
  • グループホームなら、令和9年4月以降の総量規制を前提に開設時期を決めた。
  • 令和8年6月以降の新規指定に適用される報酬係数で収支を組み直した。
  • 規制だった場合の代替案(隣接自治体・例外区分・種別変更)を1つ以上持っている。
  • 賃貸契約に、指定が下りなかった場合の解約条件や開始日の猶予を入れた。

資金計画と法人格の準備は、障害福祉の開業資金法人格の選び方の記事で並行して進めてください。

よくある質問

総量規制は法律上「拒否しなければならない」義務ですか

いいえ。条文は「指定をしないことができる」という裁量規定です。見込量を超えていても指定を出す自治体はあります。だからこそ、自治体ごとの運用を公式ページで確認する必要があります。

指定が拒否されたら、不服申立てはできますか

指定拒否は行政処分なので、審査請求や取消訴訟の対象にはなります。ただし、計画の見込量超過を理由とする拒否は法律の明文に基づくため、覆すのは容易ではありません。例外区分や隣接自治体で解決する方が現実的です。

既に運営している事業所の定員増も規制されますか

されます。大阪市や豊橋市は、新規指定だけでなく利用定員の追加も受付停止の対象にしています。共同生活援助も令和9年4月以降は、同じ条文の仕組みで定員増が判断の対象になります。増員計画がある既存事業所も確認が必要です。

放デイの総量規制はどのくらいの自治体で行われていますか

自治体単位の全国一覧は、国から公表されていません。厚生労働省は令和8年6月に指定のガイドライン案を示し、都道府県に運用の標準化を求めている段階です。実施の有無と期間は頻繁に変わるため、本記事の例を含め、必ず指定権者の現行ページで確認してください。

まとめ:規制の判定は「圏域の計画」と「指定権者の現行ページ」で決まる

総量規制は、障害福祉計画・障害児福祉計画の見込量を根拠に、指定権者が新規指定や定員増を拒める仕組みです。放デイ・児発は児童福祉法第21条の5の15第5項、生活介護・A型・B型は総合支援法第36条第5項が根拠です。グループホームは令和9年4月1日から対象に加わります。

規制の有無は指定権者と圏域の単位で違い、解除や公募もあります。物件契約の3か月以上前に、計画の数字、公式ページ、事前協議の3段階で確認してください。規制地域なら隣接自治体・例外区分・種別変更・承継の順に代替案を検討します。

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