生活介護の開業ガイド【2026年】指定基準・定員・収支モデルを解説

この記事は、生活介護(常時介護が必要な障害者への日中活動サービス)への新規参入を検討している法人の担当者向けです。就労継続支援B型やグループホームを運営中で、重度の利用者の受け皿を増やしたい法人にも役立ちます。

結論から言うと、生活介護は「平均障害支援区分」と「サービス提供時間」で報酬が決まる、人員集約型の事業です。定員20人でも生活支援員を常勤換算で10人近く置く設計になることがあり、人員計画を先に固めないと収支は成り立ちません。

本記事では、対象者要件と指定基準、定員規模別の基本報酬、開業資金と収支モデルを解説します。続けて指定申請のスケジュール、開業後の国保連(国民健康保険団体連合会)請求の準備まで扱います。数値は2026年(令和8年)9月時点の告示・省令をもとに記載し、末尾に一次情報のURLをまとめました。

記事でわかること

生活介護とは:参入前に押さえる対象者と市場規模

常時介護が必要な人の「日中の居場所」

生活介護は、障害者総合支援法に基づく介護給付のひとつです。主に昼間に、入浴・排せつ・食事の介護、創作的活動や生産活動の機会の提供、生活能力の向上のための支援を行います。重度の身体障害や知的障害、強度行動障害のある人が主な利用者です。

対象者は障害支援区分3以上が基本

厚生労働省の「障害福祉サービスの内容」では、対象者を次のように定めています。

  • 障害支援区分3以上(障害者支援施設に入所する場合は区分4以上)
  • 年齢が50歳以上の場合は区分2以上(入所の場合は区分3以上)

この要件が「利用者の区分構成」を決め、報酬と人員配置の両方を左右します。区分6が多い事業所と区分3が多い事業所では、同じ定員でも売上が2倍近く違います。

全国約1.3万事業所・利用者約30万人

厚生労働省の資料では、生活介護の事業所数は2024年12月時点で12,973か所、利用者数は304,920人です。障害福祉サービスの中で利用者数は最大級です。

一方で、地域によっては定員が埋まらない事業所もあります。参入前に指定権者の障害福祉計画で見込み量を確認します。

生活介護の指定基準(人員):区分別の配置比率がすべての起点

必要な職種と員数

人員基準は指定基準省令(平成18年厚生労働省令第171号)で定められています。生活介護に必要な職種は次のとおりです。

職種 員数 備考
管理者 1人 支障がなければ兼務可
サービス管理責任者(サビ管) 利用者60人以下で1人以上 1人以上は常勤。61人以上は40人ごとに1人追加
医師 必要な数 嘱託医で可。未配置は減算
看護職員・理学療法士等・生活支援員 平均障害支援区分に応じた総数 看護職員は1人以上。生活支援員は1人以上が常勤

生活支援員等の総数は平均障害支援区分で決まる

看護職員・理学療法士等・生活支援員の総数は、利用者の「平均障害支援区分」に応じて次の比率以上が必要です。これが指定基準としての最低ライン(省令第78条)です。

平均障害支援区分 指定基準の配置 定員20人での目安
4未満 利用者数を6で除した数以上(6:1) 常勤換算3人以上
4以上5未満 利用者数を5で除した数以上(5:1) 常勤換算4人以上
5以上 利用者数を3で除した数以上(3:1) 常勤換算6人以上

注意したいのは、実務でよく聞く「1.7:1」「2:1」「2.5:1」は指定基準ではなく、人員配置体制加算の要件だという点です。加算(Ⅰ)は1.5:1、(Ⅱ)は1.7:1、(Ⅲ)は2:1、(Ⅳ)は2.5:1以上の配置で算定できます。

利用者数は前年度の平均利用者数で計算します。新規開業の初年度は実績がないため、定員の90%などの推定値を使います。扱いは自治体差があるため、指定権者に確認してください。

常勤換算の考え方

常勤換算とは、従業者の勤務延べ時間数を常勤職員が勤務すべき時間数で割った人数です。週40時間が常勤なら、週20時間のパート2人で常勤換算1人です。ただしサビ管1人以上と生活支援員1人以上は、常勤でなければなりません。

生活介護の指定基準(設備):訓練・作業室と相談室が中核

必要な設備一覧

設備基準(省令第81条)では、次の設備を求めています。省令に面積の数値はなく、多くの自治体は訓練・作業室を利用者1人あたり3平方メートル程度としています。

  • 訓練・作業室:支援に支障がない広さ。必要な機械器具を備える
  • 相談室:談話が漏えいしない構造(間仕切り等)
  • 洗面所・便所:利用者の特性に応じた設備
  • 多目的室:相談室と兼用できる場合がある

面積の目安や兼用の可否は自治体差があります。物件の契約前に指定権者の手引きで確認してください。

最低定員は20人。物件選びは「入浴」と「送迎」で決まる

生活介護の利用定員は20人以上です(多機能型には例外があります)。B型のように10人では始められないため、物件は最初から相応の規模が必要です。

物件選びで見落としやすいのが、入浴設備と送迎車の駐車スペースです。重度の利用者が多いと入浴支援が中心の支援になり、介助しやすい浴室が要ります。送迎は2台以上出すことが多く、乗降場所と駐車場がない物件は避けた方が無難です。

用途変更や消防設備の要否は、申請前に建築指導課と消防署へ相談します。

定員と報酬の関係:基本報酬は「定員規模×区分×提供時間」

令和6年度改定で提供時間別の設定に変わった

令和6年度の報酬改定で、生活介護の基本報酬は「障害支援区分」「利用定員規模」に加え、利用者ごとの「サービス提供時間」で設定されるようになりました。定員規模も5人以下、6~10人、11~20人、21~40人などに細分化されました。

サービス提供時間は、個別支援計画に位置付けた時間で判定し、送迎の時間は含みません。判定には細かな取り扱いがあるため、厚生労働省の留意事項通知とQ&Aで確認してください。

定員11~20人の基本報酬(1日あたり単位数)

新規開業で最も多い定員20人(11人以上20人以下)の基本報酬は次のとおりです。報酬告示(令和6年改正)の数値をそのまま掲載します。

サービス提供時間 区分6 区分5 区分4
3時間未満 517 386 268
5時間以上6時間未満 904 676 469
6時間以上7時間未満 1,258 941 652
7時間以上8時間未満 1,291 966 669
8時間以上9時間未満 1,353 1,027 730

区分3は7時間以上8時間未満で598単位、区分2以下は545単位です。3時間台・4時間台の区分も別に設定されています。1単位の単価は、その他地域が10円で、都市部は地域区分に応じて上乗せされます。

6時間を境に単位数が大きく跳ね上がります。5時間台と6時間台の差は区分6で354単位、1日あたり約3,500円です。個別支援計画の時間設計が、そのまま売上を決めます。

なお定員21~40人では、区分6・7時間以上8時間未満が1,150単位に下がります。定員を増やすほど1人あたり単価は下がる設計です。

令和8年6月施行の改定は生活介護の基本報酬に影響なし

2026年6月施行の臨時的な報酬改定では、新規指定事業所の基本報酬引き下げが行われました。対象はB型・共同生活援助・児童発達支援・放課後等デイサービスの4サービスで、生活介護は対象外です。

ただし、処遇改善加算は令和8年6月から対象が福祉・介護職員から「障害福祉従事者」に広がりました。詳細は令和8年6月施行の報酬改定の解説処遇改善加算の記事を参照してください。次回の定例改定は令和9年度の予定です。

生活介護の開業資金と収支モデル

初期費用の内訳:運転資金を厚く見る

生活介護は物件の改修と送迎車の初期投資が大きく、開業後の入金も遅れます。国保連請求はサービス提供月の翌月に請求し、入金は翌々月です。運転資金は最低3か月分、できれば6か月分用意してください。

  • 物件取得・改修:敷金、浴室・トイレの改修、バリアフリー化(一例で500万~1,500万円)
  • 送迎車両:福祉車両2台(購入なら一例で600万円前後)
  • 備品・システム:活動用備品、請求ソフト、PC(一例で100万~300万円)
  • 運転資金:人件費・家賃の3~6か月分(一例で1,200万~2,500万円)

金額は物件と地域で大きく変わるため、幅で示しています。積み上げると総額2,400万~4,900万円になり、B型やグループホームより重い投資です。

不足分は日本政策金融公庫の「ソーシャルビジネス支援資金」が候補です。融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内、運転資金10年以内、据置期間は5年以内です。

資金調達の選択肢や自治体の補助金の探し方は、障害福祉事業の開業資金の記事で詳しく整理しています。

月次収支モデル:定員20人・平均区分5・人員配置体制加算(Ⅲ)

利用者18人(稼働率90%)、営業日22日、平均区分5、提供時間7時間以上8時間未満で試算します。人員配置体制加算(Ⅲ)(2:1)と送迎加算(Ⅰ)往復を算定し、1単位10円で換算します。

項目 算定根拠 月額
基本報酬 966単位×18人×22日 約382万円
人員配置体制加算(Ⅲ) 181単位×18人×22日 約72万円
送迎加算(Ⅰ) 21単位×2回×18人×22日 約17万円
収入合計 1,189単位×10円×396人日 約471万円

支出側は、看護職員を含む生活支援員等を常勤換算9人(18人÷2)、サビ管1人、事務員1人の計11人を置く前提です。人件費を1人あたり月額30万~35万円(法定福利費込み、地域と職種で変わる仮定値)とすると、約330万~385万円です。家賃・送迎車・嘱託医への謝金・水道光熱費などを月70万~80万円とすると、営業利益は月10万~70万円にとどまります。

処遇改善加算は含めていません。職員の賃金に充てる加算なので、利益にはならない前提で計画します。

収支を左右する3つの変数

同じモデルで稼働率が80%(16人)に落ちると、収入は約419万円まで下がり、人件費を減らせなければ利益は消えます。収支を決める変数は次の3つです。

  • 稼働率:欠席が多い利用者構成だと想定より下がる
  • 平均障害支援区分:区分6中心なら基本報酬は区分4の約2倍。ただし必要人員も増える
  • サービス提供時間:6時間以上を計画に位置付けられるかで単価が大きく変わる

「重度の人を受け入れて高単価を取る」戦略は、看護職員や経験ある支援員を採用できて初めて成り立ちます。採用計画と一体で考えてください。

生活介護は利用者の入れ替わりが少なく、定員が埋まれば安定します。反面、開業直後に利用者が集まらない期間が長引くと、固定費の重さで資金が尽きます。「1年で定員の8割」の見込みが立たない地域では、多機能型や既存事業への併設を検討してください。

送迎と加算の設計:開業時に取れる加算を決めておく

送迎加算は利用者確保の生命線

生活介護の利用者は自力通所が難しい人が多く、送迎の有無が利用者確保に直結します。送迎加算は(Ⅰ)が片道21単位、(Ⅱ)が片道10単位です。送迎時間はサービス提供時間に含まれないため、送迎が長いと基本報酬の時間区分が下がることがあります。

開業時に検討する主な加算

  • 人員配置体制加算(Ⅰ)~(Ⅳ):定員20人以下で321/265/181/51単位/日。1.5:1、1.7:1、2:1、2.5:1の配置が要件
  • 常勤看護職員等配置加算:定員11~20人は28単位/日に看護職員の常勤換算数(小数点以下切捨て)を乗じる
  • 福祉専門職員配置等加算(Ⅰ)~(Ⅲ):15/10/6単位/日。社会福祉士・介護福祉士等の有資格者比率
  • 入浴支援加算:80単位/日(令和6年度新設)。浴室設備の投資と対で考える

たんの吸引等を行う場合は喀痰吸引等実施加算(30単位/日)、強度行動障害などの支援が必要な人を受け入れる場合は重度障害者支援加算があります。看護職員が指定基準の職種のため、生活介護に医療連携体制加算はありません。届出時期は自治体差があるため、指定権者へ確認してください。

医師を配置しない場合は医師未配置減算(12単位/日)の対象です。嘱託医で足りるため、地域の診療所と早めに契約してください。各加算の請求方法は生活介護の請求の記事で解説しています。

指定申請の流れとスケジュール

開業まで最短でも6か月、通常は9~12か月

指定申請は指定権者(都道府県・政令市・中核市)へ行います。法人格が必要ですが、社会福祉法人である必要はなく、株式会社・合同会社・NPO法人・一般社団法人でも指定を受けられます。法人形態の選び方は障害福祉事業の法人格の記事にまとめました。

  1. 開業12~9か月前:事業計画、指定権者へ事前相談、法人設立・定款変更
  2. 開業9~6か月前:物件選定、建築・消防との図面協議、資金調達(契約前に指定権者へ図面を確認)
  3. 開業6~3か月前:改修工事、サビ管・看護職員・生活支援員の採用、運営規程の作成
  4. 開業3~1か月前:指定申請書の提出、現地確認、加算届の提出

大阪府の場合、指定日は毎月1日で、申請の一次締切は指定日の前々月20日ごろ、最終締切は前月10日です。締切と必要書類は自治体差があるため、指定権者の手引きで確認してください。書類の全体像は指定申請 完全ガイドで解説しています。

採用が最大のボトルネック

申請で最も遅れやすいのがサビ管の採用です。サビ管は所定の研修修了と実務経験が必要で、有資格者は不足しています。物件が決まった段階で求人を出し、申請時に雇用契約書を添付できる状態にします。

開業前に整えておく運営体制

指定後すぐに、業務継続計画(BCP)の策定、虐待防止委員会の設置と研修、身体拘束適正化が義務になります。未実施は減算対象です。詳しくはBCP未策定減算の記事虐待防止の義務の記事で確認できます。

開業後の国保連請求:区分と提供時間の実績記録が肝

請求の準備は指定日の前に終える

指定を受けたら、国保連の電子請求受付システムで事業所登録を行い、電子証明書を取得します。指定日が決まり次第着手してください。手順は電子請求受付システムの完全ガイドで確認できます。

初回請求は開業月の翌月1日から10日です。受給者証の情報、契約内容報告、サービス提供実績記録票、個別支援計画がそろっていないと請求できません。

生活介護の請求で間違えやすい2点

生活介護の請求は、利用者ごとの「障害支援区分」と「サービス提供時間の区分」が単位数を決めます。実績記録票の提供時間と個別支援計画の時間を整合させる運用が必要です。区分の更新時期を見落とすと返戻の原因になります。

もう1点は、人員配置体制加算の前提となる常勤換算数の管理です。退職で配置比率が下がると加算が算定できず、届出も必要です。勤務表と加算要件を毎月照合する仕組みを開業時から作ってください。

手順は開業後はじめての国保連請求チェックリストを参照してください。

よくある質問

定員20人未満で生活介護を始められますか

単独型は定員20人以上が必要です。B型など他のサービスと組み合わせる多機能型なら、合計定員20人以上を条件に、生活介護部分を6人以上にできます。自治体差があるため、指定権者に確認してください。

医師は必ず雇用しなければなりませんか

常勤雇用は不要で、嘱託医で構いません。配置しない場合は医師未配置減算(12単位/日)の対象で、定員20人・稼働率90%なら月約4万~5万円の減収です。嘱託契約の費用と比べて判断します。

平均障害支援区分は開業初年度どう計算しますか

前年度の実績がないため、利用予定者の区分から推定します。計算方法は指定権者の手引きで指示されるので、申請前に確認してください。見込みを高く申告して人員を多く配置すると、実際の区分が低かった場合に収支が合いません。

令和8年6月の改定で生活介護の新規事業所は不利になりましたか

引き下げの対象はB型・共同生活援助・児童発達支援・放課後等デイサービスの4サービスで、生活介護は含まれていません。ただし今後の定例改定で議論される可能性はあります。報酬改定の動向を定期的に確認してください。

まとめ:生活介護の開業は「人員計画」と「稼働率」で決まる

生活介護は、障害支援区分3以上の利用者に日中活動を提供する、利用者数最大級の障害福祉サービスです。指定基準は平均障害支援区分に応じた6:1・5:1・3:1の配置が最低ラインで、収支を成り立たせるには人員配置体制加算まで見据えた人員計画が必要です。

基本報酬は定員規模・区分・サービス提供時間で決まり、定員20人・区分5・7時間台なら1人1日966単位です。運転資金を厚く用意し、指定日の前から採用と請求体制を整えることが、開業後1年を乗り切る条件です。

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生活介護の開業準備と請求体制を外部の力で整える

生活介護の請求は、区分と提供時間の区分、加算の要件管理が絡み、開業直後の事務負担が重くなりがちです。障害福祉専門の請求代行「WITH福祉」は、実績記録票をFAXで送るだけで国保連請求を代行し、請求事務の負担を約90%削減します。約1,200事業所・毎月20,000件以上の請求処理実績があり、全国47都道府県に対応しています。

指定申請の書類作成を専門家に任せたい場合は、指定申請の代行サービスもご検討ください。サビ管の採用は、e介護転職のサビ管求人一覧から市場の相場を確認できます。

参考(一次情報)