障害福祉サービス等報酬改定の動向|令和6年度・令和8年度改定と令和9年度(2027年4月施行予定)の論点

「障害福祉サービスの報酬改定は、次はいつ・何が変わるのか」。日々の支援と国保連請求に追われる管理者にとって、改定の動向は経営に直結する関心事です。結論から言うと、障害福祉サービス等の報酬は原則3年に1度見直され、前回の本体改定(令和6年度)から数えると、次の定例改定は令和9年度(2027年4月施行予定)にあたります。さらに、その前段として令和8年度(2026年度)には期中の「臨時応急的な見直し」がすでに施行されています。

この記事は、障害福祉サービス等報酬改定の「決まったこと」と「これから議論されること」を切り分けて整理する動向まとめです。令和9年度改定は2026年6月時点では告示前=検討段階のため、論点を中心に、進み具合に応じて随時更新していきます。介護報酬改定とは検討の場も対象サービスも異なるため、本記事は「障害福祉サービス等」に絞って解説します。

この記事でわかること
  • 障害福祉サービス等報酬改定の3年サイクルと、令和9年度改定の位置づけ
  • 令和9年度改定の検討スケジュール(検討チーム→ヒアリング→改定率→告示→施行)
  • 現時点で議論されている主な論点(あくまで検討中)
  • すでに決まった令和6年度・令和8年度改定のポイント(振り返り)
  • 告示前の今、事業者が進めておける準備

※本記事は2026年6月時点の公表情報をもとに作成しています。改定率・単位数・要件は今後の検討と告示で変わります。実際の算定・届出にあたっては、必ず厚生労働省・こども家庭庁・自治体の最新の一次情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の助言を行うものではありません。

障害福祉サービス等報酬改定とは|3年ごとの見直しサイクル

障害福祉サービス等報酬改定とは、障害者総合支援法や児童福祉法にもとづくサービスの報酬(単位数)や加算・減算の要件を国がまとめて見直すことです。事業所が国保連へ請求する金額の根拠そのものが変わるため、改定は事業所の収入に直接影響します。

見直しは原則3年に1度行われます。前回の本体改定は令和6年度(2024年4月施行)でした。3年ごとのサイクルで数えると、次の定例改定は令和9年度(2027年4月施行予定)にあたります。なお、障害福祉サービス等報酬は3年ごと、介護報酬は3年ごと、診療報酬は2年ごとに改定されるため、6年に1度は3つが重なる「トリプル改定」の年が訪れます。直近では令和6年度がこのトリプル改定の年でした。

「障害福祉」と「介護」の報酬改定は別物

名前が似ているため混同されがちですが、障害福祉サービス等報酬改定と介護報酬改定は別の会議体で、別の対象サービスを議論します。障害福祉サービス等は厚生労働省の「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」で、児童発達支援・放課後等デイサービスなどの障害児支援はこども家庭庁とも連携して検討されます。居宅介護・重度訪問介護・就労継続支援B型・共同生活援助・生活介護といった障害固有のサービスが対象である点が、介護保険の改定との大きな違いです。

用語を整理しておきます。報酬改定はサービスの単位数・加算要件の見直し、検討チームは厚労省が改定内容を議論する会議体、告示は改定内容が法令として正式に確定する手続きを指します。告示が出るまで、単位数や要件は「確定」ではありません。

令和9年度(2027年4月施行予定)改定のスケジュール

令和9年度改定は、すでに検討が始まっています。厚生労働省の障害福祉サービス等報酬改定検討チームは、第55回(2026年4月28日)で「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた今後の検討の進め方について」を議題に取り上げ、本格的な検討に入りました。続く第56回(2026年6月15日)からは関係団体ヒアリングが始まっており、現場の声を聴く段階にあります。

過去の改定の流れをふまえると、おおまかには「検討の進め方の確認 → 関係団体ヒアリング → 各サービスの論点整理 → 改定率・基本的な方向性の決定 → 告示・通知 → 施行」という順で進みます。下図に、令和9年度改定の標準的なスケジュールの目安を示します。

令和9年度 障害福祉サービス等報酬改定のスケジュール(検討チームからヒアリング、改定率の決定、告示、2027年4月施行までの縦タイムライン)

注意したいのは、改定率や具体的な単位数が固まるのは、例年の流れでは年末の予算編成にあわせた時期で、最終的な確定は告示の時点だという点です。2026年6月の段階では、論点は議論されていても、数字や要件は確定していません。「こうなりそうだ」という見通しと「こう決まった」という事実を、混同しないことが大切です。

スケジュールの注記

上記の時期はあくまで過去の改定をふまえた目安です。検討の進み方によって前後します。最新の開催回・資料は、厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」のページで確認できます(出典は記事末尾)。

令和9年度改定で議論されている主な論点(検討中)

ここからは、検討チームや関連資料で議論の対象になっているテーマを紹介します。いずれも2026年6月時点では「議論中」であり、改定として決まったものではありません。方向性が変わる可能性がある前提で読んでください。

1. 処遇改善・人材確保の継続的な対応

障害福祉の現場は慢性的な人手不足が続いており、他産業との賃金差の是正や、職員の処遇改善をどう持続させるかは、改定のたびに中心的なテーマになっています。令和8年度の期中改定でも処遇改善加算が拡充されましたが、その効果検証をふまえて、令和9年度に向けてさらに実効性の高い仕組みをどう設計するかが論点として挙がっています。

2. 物価・賃上げへの対応とサービスの持続可能性

物価上昇や賃上げの流れのなかで、事業所が安定して運営を続けられる報酬水準をどう確保するかも重要な論点です。一方で、後述するように一部サービスでは費用の急増が課題になっており、「必要なところに手厚く、適正化すべきところは見直す」というメリハリをどうつけるかが議論の焦点になります。

3. 基本報酬・各サービス固有の論点

就労継続支援、共同生活援助(グループホーム)、児童発達支援・放課後等デイサービス、生活介護、相談支援など、サービスごとに固有の論点があります。たとえば就労系では支援の質や成果の評価、障害児支援では支援内容の適正化、相談支援では体制の確保などが、過去の改定でも繰り返し検討されてきたテーマです。令和9年度に向けても、各サービスの実態調査の結果をふまえて個別に議論が進みます。

4. 業務効率化・ICT活用

限られた人員で運営する事業所が多いなか、記録や請求などの事務負担を軽くする業務効率化・ICT活用をどう後押しするかも継続的な論点です。報酬上の評価や要件の見直しを通じて、生産性向上の取り組みを促す方向が議論されています。

論点を読むときの注意

ここで挙げた論点は、検討チームの資料や報道で取り上げられているテーマの整理です。「論点になっている」ことと「そう改定される」ことは別です。確定情報は告示・通知で改めて確認してください。

【振り返り①】令和6年度改定で決まったこと

令和9年度の議論を理解するには、直前までの改定を押さえておくと役立ちます。まず令和6年度(2024年)改定は、3年に1度の本体改定でした。すでに施行済みで、内容は確定しています。

  • 改定率は全体で+1.12%。処遇改善加算の一本化の効果などを外枠で合わせると、+1.5%を上回る水準とされました。
  • 処遇改善加算を一本化。従来の複数の加算を、要件と加算率を組み合わせた4段階の「福祉・介護職員等処遇改善加算」に整理し、加算率を引き上げました。
  • 施行は2024年4月1日。ただし、新たな処遇改善分と加算の一本化は2024年6月1日施行という2段階構成でした。

このように、改定は「4月施行」と「6月施行」に分かれることがあります。施行日がずれると、請求の単位数や様式の切り替えタイミングも分かれるため、実務では時期の確認が欠かせません。

【振り返り②】令和8年度(2026年)の臨時応急的な見直し

次に、令和9年度の直前にあたる令和8年度(2026年度)改定です。これは3年サイクルの定例改定とは別に行われた期中の「臨時応急的な見直し」で、こちらもすでに施行されています。背景には、障害福祉サービス等の総費用額が令和6年度に約4.18兆円となり、前年度比で約12.1%増という急増があったと説明されています。

令和8年度の見直しは、大きく分けて2つの柱で構成されました。

柱1:処遇改善加算の拡充(2026年6月施行)

  • 対象を「福祉・介護職員」から障害福祉従事者全体へ拡大し、加算率を引き上げ。
  • これまで対象外だった計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援に処遇改善加算を新設(加算率は一律5.1%)。
  • 生産性向上などに取り組む事業者向けに、上乗せの加算区分を新設。

柱2:費用が急増したサービスの適正化(2026年6月施行ほか)

  • 就労継続支援B型の基本報酬区分の基準(平均工賃月額の閾値)を見直し(激変緩和措置あり)。
  • 収支差率が高く事業所が急増しているサービスについて、2026年6月以降に新規指定を受ける事業所に限り基本報酬を調整(就労継続支援B型・共同生活援助・児童発達支援・放課後等デイサービスが対象。既存事業所の基本報酬は据え置き)。
  • 就労移行支援体制加算の算定上限の設定(2026年4月施行)など。

厚生労働省はこの措置を「令和8年度限りの臨時応急的なもの」と位置づけており、影響を検証しながら、令和9年度の次期改定で適切な施策を検討するとしています。つまり令和8年度の見直しは、令和9年度改定の議論の重要な前提になります。

「決定」と「検討中」の早見
  • 決定・施行済み:令和6年度改定(2024年)/令和8年度の臨時応急的な見直し(2026年)
  • 検討中(告示前):令和9年度改定(2027年4月施行予定)の改定率・各サービスの具体的な単位数や要件

告示前の今、事業者が進めておける準備

確定情報が少ない段階でも、事業所としてできる準備はあります。改定が固まってから慌てないために、平時の体制を整えておくことが近道です。

  1. 一次情報を定点観測する。検討チームの開催回・資料を定期的に確認し、自事業所のサービスに関わる論点だけでも追っておく。
  2. 令和8年度改定への対応状況を点検する。処遇改善加算の届出や、就労B型の区分・新規事業所の取り扱いなど、すでに施行された変更にきちんと対応できているか確認する。
  3. 自事業所の数字を把握しておく。利用実績・加算の算定状況・収支を整理しておくと、改定後の影響をすぐに試算できる。
  4. 請求・記録の体制を見直す。改定のたびに単位数や様式が変わると、請求事務の負担が一時的に増えます。属人化していないか、チェック体制があるかを確認しておく。

改定対応は「内容を理解すること」と「実務に反映すること」の両輪です。特に4点目の請求・記録の体制は、改定の有無にかかわらず毎月の入金に直結します。

改定対応の負担と、請求体制づくり

報酬改定があると、単位数の変更、加算要件の確認、システムの設定変更、様式の切り替えなど、請求まわりの作業が一時的に増えます。小規模な事業所では、管理者がケア業務と請求事務を兼務していることも多く、改定対応がそのまま負担増になりがちです。

改定の動向を追いつつ、毎月の国保連請求を正確に回すには、請求の流れ全体を整理しておくことが土台になります。返戻や過誤への対応、上限額管理、実績記録票の取り扱いなど、請求実務の全体像は、別記事の障害福祉サービスの国保連請求の完全ガイドで詳しく解説しています。改定で何が変わっても揺らがない請求体制をつくるために、あわせてご覧ください。

処遇改善加算の区分I〜IVの要件や、計画書・実績報告の実務は、障害福祉の福祉・介護職員処遇改善加算|要件と実務で詳しく解説しています。

改定対応は一過性の作業ですが、請求体制づくりは継続的な経営課題です。「改定を追う」だけでなく「毎月の請求を安定させる」視点を持つと、改定のたびの負担を抑えられます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 障害福祉サービスの報酬改定は何年ごとですか?

原則3年に1度です。前回の本体改定は令和6年度(2024年4月施行)で、次の定例改定は令和9年度(2027年4月施行予定)にあたります。ただし、令和8年度(2026年)のように、サイクルの途中で臨時の見直しが行われることもあります。

Q2. 令和9年度改定の内容はもう決まっているのですか?

いいえ。2026年6月時点では検討段階で、告示前です。検討チームでの議論や関係団体ヒアリングが進んでいる途中であり、改定率や具体的な単位数・要件は確定していません。確定するのは告示・通知の時点です。

Q3. 令和8年度の「臨時応急的な見直し」と令和9年度改定は何が違うのですか?

令和8年度の見直しは、3年サイクルの定例改定とは別に行われた期中の臨時措置で、厚生労働省は「令和8年度限りのもの」と位置づけています。令和9年度改定は、3年に1度の定例の本体改定です。令和8年度の見直しの効果検証が、令和9年度の議論の前提になります。

Q4. 改定の最新情報はどこで確認できますか?

厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」のページで、各回の資料・議事録が公表されています。障害児支援(児童発達支援・放課後等デイサービスなど)については、こども家庭庁のページもあわせて確認すると確実です(URLは下記の出典参照)。本記事も、検討の進み具合に応じて随時更新します。

まとめ|「決まったこと」と「議論中」を分けて追う

障害福祉サービス等報酬改定は3年に1度が原則で、令和6年度の本体改定、令和8年度の臨時応急的な見直しを経て、いまは令和9年度(2027年4月施行予定)改定の検討が進んでいます。2026年6月時点では告示前=検討段階のため、論点を押さえつつ、確定情報は告示で確認するのが基本姿勢です。

動向を追うことと並行して、改定のたびに負担が増える請求の体制を平時から整えておくことが、改定対応をスムーズにする近道です。本記事は継続更新型のまとめとして、新しい動きがあれば内容を更新していきます。

出典・参考(一次情報)

最終更新:2026年6月。本記事は2026年6月時点の公表情報にもとづく動向まとめです。令和9年度改定は告示前のため、改定率・単位数・要件は今後変わります。算定・届出の際は必ず最新の一次情報をご確認ください。