就労継続支援A型の倒産・閉鎖はなぜ続く?データで見る現状と存続の打ち手

就労継続支援A型の倒産・閉鎖は、2024年の大量閉鎖で終わっていません。2026年上半期の「障害者福祉サービス」の倒産は33件で、この15年間の最多を更新しました。

背景には、令和6年度報酬改定によるスコア方式の厳格化と、生産活動収支の赤字という構造要因があります。本記事では公的データをもとに、閉鎖が続く理由と自事業所が生き残るための打ち手を整理します。

掲載データは2026年7月時点で確認できる最新のもので、すべて年次と出典を明記しています。年次更新を前提としたデータレポートとして活用してください。

データで見る就労継続支援A型の倒産・閉鎖の現状

結論から言うと、2024年に表面化した閉鎖の波は現在も収まっていません。倒産件数は3年連続で増え、2026年に入っても最多水準の更新が続いています。

2024年:329カ所が閉鎖し約5,000人が解雇・退職

共同通信が全国129自治体に実施した調査では、2024年3月~7月の5カ月間にA型事業所329カ所が閉鎖しました。解雇・退職となった障害者は約5,000人にのぼります(WEB労政時報「障害者5千人解雇、退職 就労事業所329カ所閉鎖」)。

引き金は2024年4月に実施された報酬改定です。生産活動収支の悪い事業所の基本報酬が引き下げられ、赤字体質の事業所が一斉に撤退へ動きました。

厚生労働省の集計でも影響は明確です。令和6年度にハローワークへ届け出のあった障害者の解雇者数は9,312人でした。前年度の2,407人から約3.9倍に急増し、過去最多です(厚生労働省「令和6年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況」)。

このうちA型利用者の解雇は7,292人を占めます。解雇者が10人以上発生した事業所の約9割は、生産活動収支が赤字でした(社会保障審議会障害者部会 第147回資料「就労継続支援A型の状況について」)。

2025年~2026年:倒産は減るどころか最多を更新

閉鎖の波はその後も続いています。東京商工リサーチの調査では、2025年度の「医療・福祉事業」の倒産は478件で過去最多となり、うち障害者福祉事業が54件を占めました(東京商工リサーチ「2025年度 医療・福祉事業 倒産、過去最多」)。

さらに2026年上半期の「障害者福祉サービス」の倒産は33件でした。前年同期比26.9%増で、2012年以降の15年間で最多です(東京商工リサーチ「2026年上半期 障害者福祉サービス 倒産33件」)。倒産の9割超が破産で、小規模事業者の淘汰が加速しています。

倒産・閉鎖・解雇データの推移表

主要データの推移を一覧にまとめます。数字はいずれも各調査の公表値です。

時期 指標 数値 出典
2024年3月~7月 A型事業所の閉鎖数 329カ所(解雇・退職 約5,000人) 共同通信の全国調査(129自治体)
2024年度 障害者の解雇者数(全体) 9,312人(前年度2,407人) 厚生労働省
2024年度 うちA型利用者の解雇者数 7,292人(ハローワーク把握分) 社会保障審議会障害者部会資料
2025年度 障害者福祉事業の倒産件数 54件 東京商工リサーチ
2026年上半期 障害者福祉サービスの倒産件数 33件(前年同期比26.9%増・15年間で最多) 東京商工リサーチ

※倒産統計は調査により集計範囲(暦年/年度・業種区分)が異なります。比較の際は各出典の定義を確認してください。

なお、A型の事業所数は令和5年度末で4,371カ所、利用者は84,808人です(前掲の障害者部会資料)。事業所数は令和3年度末からほぼ横ばいで、参入が拡大を続けた時代は終わりました。

倒産・閉鎖が続く3つの構造要因

閉鎖の連鎖は一時的な不況ではなく、制度設計の転換によって起きています。要因は「スコア方式の厳格化」「生産活動収支の赤字」「経営改善計画書による指導強化」の3つです。

要因1:令和6年度報酬改定でスコア方式が厳格化された

A型の基本報酬は、労働時間や生産活動などの実績を点数化するスコア方式で決まります。令和6年度報酬改定では、生産活動収支や平均労働時間に応じた評価となるよう配点が見直されました(厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」)。

特に大きいのは生産活動の評価です。利用者の賃金総額を生産活動収益で賄えない状態が2年度続くと、スコアがマイナス評価となり基本報酬が下がります。稼げない事業所ほど収入が減る構造になり、賃金負担との板挟みで撤退が相次ぎました。

報酬改定は原則3年ごとに行われ、経営環境を大きく左右します。改定論議の流れは障害福祉サービス等報酬改定の動向で解説しています。

要因2:生産活動の収益で賃金を賄えない事業所が半数

A型は利用者と雇用契約を結ぶため、最低賃金以上の賃金支払い義務があります。指定基準では、賃金総額を生産活動の収益で賄うことが原則です。

しかし令和5年3月末時点で、この基準を満たさない事業所は50.7%と半数を超えていました(厚生労働省・令和5年度障害者総合福祉推進事業「就労継続支援事業における生産活動の活性化に関する調査研究」)。

A型の平均賃金は月80,143円(令和4年度)で、最低賃金の引き上げとともに毎年増えています。生産活動の採算を改善しないまま給付費で賃金を穴埋めする経営は、制度上も資金繰り上も続けられなくなりました。

要因3:経営改善計画書の提出義務と指導の強化

賃金総額を生産活動収益で賄えない事業所には、自治体への経営改善計画書の提出が義務づけられています。計画を出しても改善が進まなければ、運営指導や指定更新時の確認で厳しく問われます。

令和7年度には、新規指定と運営状況の把握・指導のためのガイドラインも整備されました(厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」)。安易な参入と漫然とした赤字経営の両方に、行政の目が強まっています。

閉鎖後の利用者はどこへ:B型移行が最多

閉鎖の影響を受けた利用者の受け皿として最も多いのは、就労継続支援B型への移行です。事業所側の転換にも同じ構図があります。

前掲の障害者部会資料によると、令和6年度に解雇されたA型利用者7,292人のうち、B型事業所等への移行(予定含む)は3,834人と半数を超えました。再就職の決定は2,171人、求職中は856人です。

事業所側でも、A型の指定を返上してB型へ転換する法人が増えています。B型は雇用契約がなく最低賃金の支払い義務もないため、賃金負担の重さから転換を選ぶ判断です。

ただし転換は利用者の収入減に直結し、B型の報酬も平均工賃額に応じて変わります。転換すれば安泰という制度ではありません。両者の仕組みの違いはA型とB型の違いで詳しく解説しています。

存続に向けて今からできる4つの打ち手

生き残りの軸は「生産活動の採算」「スコア」「次期改定への備え」「間接業務の圧縮」の4つです。閉鎖の波が制度の構造から来ている以上、対策も構造に沿って立てる必要があります。

打ち手1:生産活動の採算を事業別に洗い直す

最優先は生産活動の収支の見える化です。事業別に収支を分解し、赤字の受託作業は単価交渉・撤退・高付加価値業務への入れ替えを検討します。

前掲の厚労省の調査研究では、就労支援会計の収支がプラスに転じた事業所が13.8%ありました。営業先の開拓や商品構成の見直しで、改善の余地は残されています。

打ち手2:スコアの取りこぼしをなくす

スコア方式は減点だけでなく加点の仕組みでもあります。平均労働時間の延長、多様な働き方の制度整備、地域連携活動の実施と記録など、取れる項目を計画的に積み上げます。

自事業所のスコアを毎年度試算し、公表義務への対応と合わせて改善目標に落とし込む運用が土台になります。

打ち手3:次期報酬改定を先取りして備える

次の報酬改定は令和8年6月施行が見込まれ、就労系サービスの評価は実績重視へさらに進む方向です。改定項目を早く把握するほど、体制整備に使える時間が増えます。論点は令和8年6月施行の報酬改定で整理しています。

B型等への転換も、撤退ではなく利用者を守る選択肢の一つです。転換を検討する場合でも、生産活動の立て直しは共通の課題として残ります。

打ち手4:間接業務を圧縮し生産活動と支援に人を回す

国保連請求や記録などの間接業務は、収益も賃金も生みません。ここを圧縮できれば、職員の時間を営業活動や生産性の改善、支援の質向上に振り向けられます。

具体的な手順は請求業務を効率化する6つの方法で紹介しています。人手を増やさずに経営改善の時間を捻出する現実的な一手です。

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