※2026年7月時点の情報です。最新の告示・通知と所管自治体の案内をご確認ください。
就労選択支援は、令和4年改正障害者総合支援法で創設され、2025年(令和7年)10月1日に始まった新しい障害福祉サービスです。すでに「新たに就労継続支援B型を利用する意向のある人」は原則として就労選択支援を先に利用する運用になっており、さらに2027年(令和9年)4月頃からは、A型の新規利用者と就労移行支援の標準利用期間を超えて利用する意向のある人にも対象を広げる予定とされています(※時期は目途であり、確定ではありません)。
つまりA型・B型・就労移行支援の事業所にとって、就労選択支援は「自分の事業所が実施する側になれるか」という話であると同時に、「新規利用者の入口(利用導線)が変わる」という話でもあります。この記事では、小規模事業所で現場と請求・管理を兼務している管理者の方に向けて、制度の中身・対象者・実施要件・報酬と請求の留意点・実務への影響を、厚生労働省の一次情報にもとづいて整理します。
記事でわかること
結論|B型の新規利用は就労選択支援が原則必須、A型は2027年4月頃に拡大予定
先に結論をまとめます。B型の新規利用希望者については、就労選択支援を経る運用がすでに始まっています。一方、A型・就労移行支援への拡大は「予定」の段階で、確定した告示はまだ確認できません(2026年7月時点)。この「決まっていること」と「予定であること」の区別が、この制度を追いかけるうえでいちばん大事なポイントです。
・就労選択支援は2025年10月1日に施行済み。新たにB型を利用する意向のある人は、原則として就労選択支援を先に利用する(市町村は正当な理由なく就労選択支援を経ない支給決定を行わない運用)。
・2027年(令和9年)4月頃からは、A型の新規利用意向者と、就労移行支援を標準利用期間を超えて利用する意向のある人にも拡大する予定(支援体制の整備状況を踏まえつつ、とされており断定はできない)。
・実施できるのは就労移行支援・就労継続支援の指定事業者のうち、過去3年以内に3人以上を一般就労につなげた実績のある事業所など。報酬は就労選択支援サービス費1,210単位/日。
・実施しない事業所も無関係ではない。新規利用者がアセスメントを経て紹介されてくるため、ケース会議への参加や結果を踏まえた個別支援計画の作成など、受け入れ側の実務が増える。
就労選択支援とは|令和4年改正障害者総合支援法で創設された新サービス
就労選択支援とは、障害のある本人が「どこで、どんな働き方をするか」をより良く選べるように、就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望・就労能力・適性等に合った選択を支援する障害福祉サービスです。2022年(令和4年)12月に成立した改正障害者総合支援法で創設され、2025年(令和7年)10月1日に施行されました。
創設の背景には、「本人の適性や希望を十分に把握しないままB型などの利用が始まり、働く選択肢が広がらないケースがある」という長年の課題があります。従来もB型利用前の「就労アセスメント」の仕組みはありましたが、これを独立したサービスとして制度化し、中立的な立場でアセスメントを行い、その結果を本人・市町村・事業所・ハローワークなどが共有して進路選択に活かす、というのが就労選択支援の狙いです。
法律上は「短期間の生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、就労に関する適性、知識及び能力の評価並びに就労に関する意向及び就労するために必要な配慮その他の事項の整理」を行うサービスと定義されています。つまり、実際に作業をしてもらいながら本人の状況を把握し、働き方の希望や必要な配慮を「見える化」するサービスだと理解すると分かりやすいでしょう。
施行に向けては、令和6年7月から令和7年3月末までモデル事業が実施され、その成果を踏まえて令和7年4月に実施マニュアルが公表されました。また、サービスの中核を担う「就労選択支援員」を育てる国の養成研修も令和7年6月頃から始まっており、制度・人材の両面で段階的に体制整備が進められています。地域によって就労選択支援事業所の整備状況に差があるのはこのためで、自分の地域でどの事業所が指定を受けているかは、都道府県・市町村の指定事業所一覧で確認できます。
就労選択支援のサービス内容と利用の流れ
就労選択支援の中身は、大きく4つの要素で構成されます。結論から言えば「作業をしながらのアセスメント」→「関係機関を集めた会議」→「結果のとりまとめ」→「進路先への引き継ぎ」という流れです。
サービスを構成する4つの要素
厚生労働省の実施マニュアル等では、次の4つが柱として示されています。
1. 作業場面等を活用した状況把握(アセスメント):模擬的な作業や職場実習などの場面を活用し、障害の種類・程度、就労に関する意向や経験、必要な配慮、適した作業環境などを把握します。
2. 多機関連携によるケース会議:本人・家族に加え、相談支援事業所、就労系事業所、ハローワークなどの関係機関が集まり、アセスメント結果を共有・検討します。
3. アセスメントシートの作成(結果のとりまとめ):本人と協同で、強み・課題・特性・配慮事項を整理した書面にまとめます。
4. 事業者等との連絡調整:進路先となる事業所や関係機関と調整し、スムーズな移行を支援します。
支給決定期間は原則1か月
就労選択支援の支給決定期間は原則1か月、継続的な作業体験が必要な場合は2か月とされています。長く利用するサービスではなく、進路選択の入口で短期集中的に行うアセスメントサービスという位置づけです。

ポイントは最後の「連絡調整」です。アセスメント結果は書面で進路先の事業所に共有され、受け入れ側のA型・B型事業所はその内容を踏まえて個別支援計画を作ることになります。実施しない事業所にも実務が生じるのはこのためです。
今の対象者(2025年10月〜)|新たにB型を利用する意向のある人は原則利用
2026年7月現在、原則実施の対象は「新たに就労継続支援B型を利用する意向のある人」です。厚生労働省の通知では、新たにB型を利用する意向がある場合は就労選択支援をあらかじめ利用することとされ、市町村は正当な理由なく就労選択支援を経ないままB型の支給決定を行わない運用になっています。
「正当な理由」の例としては、最寄りの就労選択支援事業所への通所が困難な場合や、利用にあたって待機期間が生じてしまう場合などが通知で示されています。地域の実施体制が整うまでの現実的な緩衝と考えられますが、原則は「B型新規=就労選択支援を先に」です。逆に言えば、B型事業所にとっては新規利用の問い合わせを受けた時点で、就労選択支援の利用状況を確認するのが標準動作になったということです。
なお、法令上の対象者は「就労移行支援・就労継続支援を利用する意向のある人、および現に利用している人」と広く定められており、原則必須なのはB型新規だけですが、それ以外の人も本人の希望に応じて利用できます。
2027年4月頃の対象拡大(予定)|A型の新規利用と就労移行支援の期間延長
次の節目は2027年(令和9年)4月頃です。厚生労働省の資料・通知では、令和9年4月以降、(1)新たに就労継続支援A型を利用する意向がある人、(2)就労移行支援を標準利用期間を超えて利用する意向のある人についても、原則として就労選択支援を利用する予定とされています。
ただし注意が必要です。この時期は「支援体制の整備状況を踏まえつつ」という条件付きで示されている目途であり、2026年7月時点で確定した告示は確認できていません。この記事で「予定」「見込み」と書いているのはそのためです。A型事業所は「2027年4月から必ずこうなる」と決め打ちするのではなく、告示・通知と自治体の案内を継続的に確認しながら準備を進めるのが現実的です。制度改正の動きを追う方法は「障害福祉サービスの報酬改定の動向」の記事でも整理しています。

拡大が実施されれば、A型の新規利用希望者も就労選択支援のアセスメントを経てから支給決定される流れになり、就労移行支援では「標準利用期間(原則2年)を超えて続けるかどうか」の判断材料としてアセスメントが入ることになります。B型で先行している運用が、就労系サービス全体の入口に広がるイメージです。
就労選択支援を実施できる事業所の要件
「うちも就労選択支援をやれるのか」という視点で見ると、指定のハードルは実績要件にあります。実施主体となれるのは、就労移行支援または就労継続支援の指定障害福祉サービス事業者であって、過去3年以内に3人以上の利用者が新たに通常の事業所(一般企業等)に雇用された実績のある事業者、またはこれと同等の経験・実績があると都道府県知事等が認める事業者です。
実績のカウントについては、Q&Aで次のような整理が示されています。
・多機能型事業所(例:移行+B型)は、同一事業所内の複数事業の実績を合算してよい。
・一方、同一法人でも別の事業所の実績を流用・合算することはできない。あくまで指定を受けようとする事業所単位の実績で判断されます。
人員面では、専門職として「就労選択支援員」を常勤換算で利用者数15:1以上配置する必要があり、就労選択支援員は養成研修の修了が要件とされています(研修受講には就労支援の実務経験などの要件があり、経過措置も設けられています。詳細は都道府県の案内をご確認ください)。一般就労への移行実績がある移行・A型・B型事業所にとっては、既存の指定・ノウハウを活かして参入できる制度設計ですが、1〜2か月で利用者が入れ替わる短期サービスのため、安定稼働(利用者確保)の見通しと担当職員の確保が採算の分かれ目になります。
A型・B型・就労移行支援の事業所への実務影響
就労選択支援を実施しない事業所にも、実務は確実に増えます。結論としては「新規利用者の入口が変わることに合わせて、受け入れの段取りを作り直す」ことが必要です。
まず利用導線の変化です。B型ではすでに、新規利用希望者は原則として就労選択支援のアセスメントを経てやって来ます。見学や体験利用の相談を受けた段階で、就労選択支援の利用状況・予定を確認し、未利用なら相談支援事業所や市町村への案内が必要になります。2027年4月頃の拡大が実施されれば、A型でも同じ導線になる見込みです。
次に連携実務の増加です。就労選択支援は作業体験の場として地域の事業所を活用するため、体験の受け皿として協力を求められる場面が想定されます。多機関連携のケース会議に呼ばれれば出席が必要ですし、利用開始時にはアセスメント結果を書面で受け取り、その内容を個別支援計画に反映することが求められます。ハローワークもアセスメント結果を踏まえて職業指導を行う枠組みであり、「アセスメント結果を軸に関係機関がつながる」のがこの制度の設計思想です。
就労移行支援事業所への影響も見逃せません。2027年4月頃の拡大が実施されれば、標準利用期間(原則2年)を超えて利用を続けるかどうかの場面で就労選択支援のアセスメントが入る見込みです。期間満了が近い利用者について「延長して移行を目指すのか、A型・B型に切り替えるのか、一般就労に進むのか」を関係機関と検討する材料が制度として用意される形になるため、利用期間の管理と出口支援の記録を日頃から整えておくことが、そのまま拡大後の備えになります。また、移行実績のある事業所であれば、就労選択支援の実施主体として指定を受ける選択肢そのものも検討対象になるでしょう。
1. 新規問い合わせ対応の手順を更新する:見学・体験の相談時に就労選択支援の利用状況を確認する項目を追加する。
2. アセスメント結果の受け取りと活用の流れを決める:誰が受領し、個別支援計画のどこに反映するかをあらかじめ決めておく。
3. ケース会議・体験受け入れの窓口を決める:管理者が全部抱えず、サービス管理責任者と分担する。
小規模事業所では、こうした連携実務の増加分がそのまま管理者に乗りがちです。ケース会議も個別支援計画の見直しも管理者やサビ管にしかできない仕事である一方、毎月の国保連請求は外部に切り出せる業務です。新制度対応に時間を割くために、障害福祉専門の国保連請求代行「WITH福祉」のようなサービスに請求業務を任せ、管理者の時間を連携・支援の質に回すという選択肢もあります。
就労選択支援の報酬と請求の留意点
報酬は、基本報酬として就労選択支援サービス費1,210単位/日が設定されています(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定で新設)。加算は福祉専門職員配置等加算(Ⅰ)15単位・(Ⅱ)10単位・(Ⅲ)6単位のほか、食事提供体制加算・送迎加算などが対象で、福祉・介護職員等処遇改善加算の対象サービスにも含まれます。減算では、特定の事業所に利用者を誘導することを防ぐ特定事業所集中減算(200単位/日)が特徴的です。中立性が生命線のサービスであるため、自法人・特定事業所への誘導と見なされる運用は避ける必要があります。
請求実務では、次の点をおさえておきましょう。
・業務継続計画(BCP)未策定減算は、就労選択支援については2027年(令和9年)3月31日までの間、適用しない経過措置が設けられています。新規参入直後から減算リスクを負わない配慮ですが、期限後は通常どおり適用されるため、BCP策定自体は進めておく必要があります。
・原則1か月(最大2か月)の短期サービスのため、毎月ほぼ全員が「新規利用者」です。受給者証の確認、契約内容報告、利用者負担上限月額の確認といった利用開始時の事務が毎月発生する、請求事務の負荷が構造的に高いサービスと言えます。
・地域区分別の単価や請求ソフトのサービスコード対応など、細部は国保連・所管自治体への確認をおすすめします。
国保連請求の基本的な流れは「障害福祉の国保連請求 完全ガイド」で、A型・B型の請求実務(在宅利用・施設外就労・平均工賃の区分など)は「就労継続支援A型・B型の国保連請求」の記事で詳しく解説しています。就労選択支援を経由した新規利用者の受け入れが増えると、初回請求(新規利用者分)の事務も増えるため、あわせて確認しておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
すでにB型を利用している人も、就労選択支援を受け直す必要がありますか?
原則実施の対象は「新たにB型を利用する意向のある人」であり、既存利用者に一律で利用が義務づけられるものではありません。ただし、対象者には「現に就労移行支援・就労継続支援を利用している人」も含まれており、一般就労への移行を考えたいなど本人の希望があれば利用できます。
就労選択支援を経ずにB型の支給決定を受けられる「正当な理由」とは何ですか?
通知では、最寄りの就労選択支援事業所への通所が困難な場合や、利用に待機期間が生じる場合などが例示されています。該当するかどうかの判断は支給決定を行う市町村によるため、個別のケースは市町村の障害福祉担当課に確認してください。
一般就労への移行実績が少ない事業所でも、就労選択支援を実施できますか?
基本要件は「過去3年以内に3人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用された実績」です。多機能型事業所は同一事業所内の複数事業の実績を合算できますが、同一法人の別事業所の実績は使えません。実績が足りない場合でも、同等の経験・実績があると都道府県知事等が認めるルートがあるため、指定権者に相談する余地はあります。
2027年4月からのA型・就労移行支援への拡大は確定していますか?
確定ではありません。厚生労働省の資料・通知では「令和9年4月以降」に拡大する予定と示されていますが、「支援体制の整備状況を踏まえつつ」という条件付きの目途であり、2026年7月時点で確定告示は確認できていません。時期や運用の詳細は今後の告示・通知で確定するため、最新情報の確認を続けてください。
まとめ|「実施する側」と「受け入れる側」の両方で準備を
就労選択支援は、B型の新規利用ではすでに「通り道」になっており、2027年4月頃にはA型・就労移行支援にも広がる予定です。移行実績のある事業所にとっては新しい事業機会であり、実施しない事業所にとっても、新規利用者の導線変更・ケース会議・アセスメント結果を踏まえた個別支援計画づくりという形で実務が増えます。「決まっていること(B型新規は原則必須・報酬1,210単位/日・BCP減算の経過措置)」と「予定であること(2027年4月頃のA型等への拡大)」を区別しながら、自事業所の受け入れ手順を今のうちに整えておきましょう。
出典・参考(一次情報)
・厚生労働省「就労選択支援について」
・厚生労働省「就労選択支援の実施について」(障障発0331第3号・令和7年9月30日改正反映版)
・厚生労働省 事務連絡「『就労選択支援実施マニュアル』の送付について」(令和7年4月21日)
・厚生労働省「就労選択支援実施マニュアル」
・厚生労働省「就労選択支援に係るQ&A VOL.1」(令和7年9月5日)
・社会保障審議会障害者部会(第145回)資料「就労選択支援について」
・厚生労働省「就労選択支援の概要(報酬単価・対象者・サービス内容・主な人員配置)」
・厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」
・厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」(障障発0331第2号・令和7年3月31日)
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