この記事は、特別養護老人ホーム(特養。介護保険上の名称は介護老人福祉施設)の事務長・生活相談員・請求担当の方に向けて書いています。「居室類型ごとの単位はどう違うのか」「入院や外泊があった月はどう請求するのか」「補足給付の段階が変わったら請求はどうなるのか」に答えます。
結論から言うと、特養の請求は次の4点を押さえれば大きな返戻は防げます。(1)基本報酬は「居室類型×要介護度」の日額で、従来型個室と多床室は同じ単位数、ユニット型は別建てです。(2)入院・外泊は初日と最終日を除き、1月6日を限度に外泊時費用246単位に置き換えます。(3)加算はLIFE提出期限(翌月10日)や届出の有無で落ちやすいので、月初に体制を確認します。(4)食費・居住費は補足給付(特定入所者介護サービス費)の段階で決まり、2026年8月(令和8年8月)に第3段階の額が変わりました。
本文では、まず報酬の構造を表で整理します。次に入院・外泊時の数え方、主な加算と減算、補足給付と利用者への請求書、明細書の記載と返戻例、FAQの順に進みます。国保連請求の全体の流れ(毎月10日締切・返戻・再請求)は介護保険の国保連請求の流れと毎月10日締切にまとめています。初めて請求を担当する方はあわせてお読みください。
記事でわかること
特養(介護老人福祉施設)の請求とは|居宅サービスと違う4つの前提
特養の請求は「施設サービス」の請求です。訪問・通所などの居宅サービスとは、次の4点が違います。この前提を誤ると、明細書の作り方そのものを間違えます。
- 日額包括の施設サービス費:1日ごとに要介護度と居室類型で決まる単位を算定します。サービスの回数や時間では決まりません。
- 給付管理票は不要:施設入所者はケアマネジャー(居宅介護支援)による給付管理の対象外です。国保連には介護給付費請求書と明細書(様式第八)を送ります。
- 区分支給限度基準額は適用外:施設サービス費に限度額はありません。加算を含めた単位数がそのまま請求額の基礎になります。
- 食費・居住費は保険外+補足給付:食費と居住費は利用者との契約で決めます。ただし低所得者には補足給付(特定入所者介護サービス費)が保険から給付されます。施設は明細書でこの補足給付も併せて請求します。
請求先は、他のサービスと同じく都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)です。提出期間はサービス提供月の翌月1日から10日までで、審査を経て提出月の翌月末に支払われます。
基本報酬の構造|居室類型×要介護度の単位数と地域区分
4つの居室類型と施設サービス費の対応
特養の基本報酬は「介護福祉施設サービス費」と「ユニット型介護福祉施設サービス費」の2系統です。それぞれ居室類型で(Ⅰ)(Ⅱ)に分かれます。まず自施設の居室がどれに当たるかを、指定申請時の届出で確認してください。
| 告示上の区分 | 居室類型 | 特徴 |
|---|---|---|
| 介護福祉施設サービス費(Ⅰ) | 従来型個室 | ユニットケアを行わない個室 |
| 介護福祉施設サービス費(Ⅱ) | 多床室 | 2人以上の相部屋 |
| ユニット型介護福祉施設サービス費(Ⅰ) | ユニット型個室 | ユニットケアを行う個室 |
| ユニット型介護福祉施設サービス費(Ⅱ) | ユニット型個室的多床室 | 可動壁等で仕切った準個室(経過的に存続) |
定員30人未満の小規模施設や旧措置入所者には、別の区分(介護福祉施設サービス費(Ⅲ)(Ⅳ)や経過的ユニット型など)があります。該当する施設は、厚生労働省の算定構造で自施設の区分を確認してください。
要介護度別の単位数(1日につき・2026年9月時点)
令和6年度(2024年度)改定後の単位数は次のとおりです(平成12年厚生省告示第21号 別表1)。従来型個室と多床室は同じ単位数で、差は居住費(後述)に出ます。
| 要介護度 | 従来型個室・多床室 | ユニット型個室・ユニット型個室的多床室 |
|---|---|---|
| 要介護1 | 589単位 | 670単位 |
| 要介護2 | 659単位 | 740単位 |
| 要介護3 | 732単位 | 815単位 |
| 要介護4 | 802単位 | 886単位 |
| 要介護5 | 871単位 | 955単位 |
月の途中で要介護度が変わった場合は、変更日以降を新しい要介護度で算定します。明細書は同じ月でも要介護度ごとに行を分けて記載するので、認定結果通知の「変更日」を必ず確認してください。
地域区分と1単位の単価
単位数に1単位の単価をかけた額が請求額です。特養は人件費割合45%のサービスに分類されます。地域区分ごとの単価は次のとおりです(社会保障審議会介護給付費分科会 第243回 資料1)。
| 地域区分 | 1級地 | 2級地 | 3級地 | 4級地 | 5級地 | 6級地 | 7級地 | その他 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 上乗せ割合 | 20% | 16% | 15% | 12% | 10% | 6% | 3% | 0% |
| 1単位の単価 | 10.90円 | 10.72円 | 10.68円 | 10.54円 | 10.45円 | 10.27円 | 10.14円 | 10.00円 |
たとえば5級地でユニット型の要介護4なら、886単位×10.45円=9,258.7円が1日の費用額です。端数処理は明細書の計算ルールに従います。地域区分は令和6年度から令和8年度(2024~2026年度)の3年間固定で、市町村ごとに級地が決まっています。
要介護1・2の特例入所と請求
特養の入所は原則として要介護3以上ですが、要介護1・2でも「特例入所」が認められます。認知症や知的・精神障害で日常生活に支障がある、家族による深刻な虐待が疑われる、といった事情が該当します。単身や家族の高齢等で家族の支援が期待できず、地域の介護サービス等の供給も不十分な場合も対象です(平成26年老高発1212第1号)。
特例入所者の請求自体は、要介護1・2の単位数で通常どおり行います。ただし、入所の適否は入所検討委員会で判断し、保険者(市町村)に報告して意見を求める手続きが必要です。この手続きの記録がないと、運営指導で入所の妥当性を問われます。
入院・外泊時の算定|外泊時費用246単位・月6日の数え方
入所者が病院に入院した場合や、自宅へ外泊した場合は、施設サービス費の代わりに「外泊時費用」を算定します。告示では「1月に6日を限度として所定単位数に代えて1日につき246単位を算定する。ただし、入院又は外泊の初日及び最終日は、算定できない」と定められています。
初日と最終日は算定しない(7泊なら6日)
入院・外泊の初日(施設を出た日)と最終日(戻った日)は、その日に施設サービス費を算定するため、外泊時費用の対象外です。留意事項通知(老企第40号)は、連続7泊の入院・外泊なら外泊時費用は6日と計算する、と例示しています。
| 日付 | 算定内容 |
|---|---|
| 3月1日(入院日) | 施設サービス費(通常の単位数) |
| 3月2日~3月7日(6日間) | 外泊時費用 246単位/日 |
| 3月8日(退院日) | 施設サービス費(通常の単位数) |
「入院初日と退院日は施設サービス費を取れる」という点は、現場が迷いやすいところです。逆に、入院日も退院日も外泊時費用で請求すると単位が過少になります。退院日を空白にすると実日数が合わなくなります。
月をまたぐ入院・外泊は最大12日
6日の上限は「1月につき」です。したがって、1回の入院が月をまたぐ場合は、前月に最大6日、翌月に最大6日で、連続12日まで算定できます。3月28日に入院し4月10日に退院した例では、3月29日~31日(3日)と4月1日~6日(6日)が外泊時費用です。4月7日~9日は算定なし、4月10日は施設サービス費になります。
7日目以降の扱いと、30日を超えた入院後の初期加算
各月の7日目以降は、在籍していても施設サービス費も外泊時費用も算定できません。明細書上は、その日数を「外泊日数」として実日数から除きます。長期入院で退所扱いとするかどうかは、施設と入所者の契約に基づいて判断します。運営基準には、入院後3か月以内に退院できる見込みなら再入所できるよう配慮する義務があります。退所日の取り方は保険者によって運用が異なるため、迷う場合は保険者に確認してください。
再入所時の初期加算(30単位/日・30日以内)は、告示に「30日を超える病院又は診療所への入院後に再び入所した場合も、同様とする」と明記されています。30日を超える入院から戻った日から、あらためて30日間の初期加算を算定できます。30日以内の入院なら、初期加算は入所日からの通算のままです。
外泊時在宅サービス利用の費用(560単位)
外泊中に、施設自身が居宅サービス(訪問介護など)を提供する場合があります。その場合は外泊時費用に代えて「外泊時在宅サービス利用の費用」560単位を算定できます。こちらも1月6日が限度で、初日と最終日は算定せず、外泊時費用と同じ日に併算はできません。外泊中の入所者は、他の居宅サービス事業所の介護保険サービスを給付として受けることはできない点にも注意してください。
外泊中の補足給付と利用者への請求
外泊時費用を算定している日は、居住費(補足給付を含む)は請求できますが、食事を提供していない日の食費は請求できません。7日目以降は施設サービス費が算定されないため、補足給付も支給されません。その間の居住費相当額を利用者に請求できるかは、重要事項説明書・契約書の定めによります。
主な加算の単位数と請求上の注意
特養の加算は30種類を超えます。ここでは請求担当が毎月確認すべき主なものを、性格ごとに分けて単位数と注意点を整理します。単位数は平成12年厚生省告示第21号 別表1(2026年9月時点)です。要件の詳細は告示と留意事項通知で確認してください。
体制・配置系の加算(届出が前提)
次の加算は、体制届(介護給付費算定に係る体制等に関する届出)を出して初めて算定できます。届出の受理日と算定開始月がずれると、その月は全件返戻になります。
| 加算 | 単位数 | 請求上の注意 |
|---|---|---|
| 初期加算 | 30単位/日(入所日から30日以内) | 30日を超える入院後の再入所も対象。短期入所から続けて入所した場合は、その利用日数を30日から差し引く。 |
| 日常生活継続支援加算(Ⅰ)(Ⅱ) | (Ⅰ)36単位/日(従来型)、(Ⅱ)46単位/日(ユニット型) | 要介護4・5の割合や介護福祉士の配置割合は直近の実績で毎月判定する。要件を割ると翌月から算定不可。 |
| 看護体制加算(Ⅰ)(Ⅱ) | (Ⅰ)イ6・ロ4単位/日、(Ⅱ)イ13・ロ8単位/日 | イは入所定員50人以下、ロは51人以上の区分。(Ⅱ)は看護職員25対1の配置と24時間連絡体制が必要。 |
| 夜勤職員配置加算(Ⅰ)~(Ⅳ) | (Ⅰ)イ22・ロ13、(Ⅱ)イ27・ロ18、(Ⅲ)イ28・ロ16、(Ⅳ)イ33・ロ21単位/日 | (Ⅰ)(Ⅲ)は従来型、(Ⅱ)(Ⅳ)はユニット型。見守り機器を導入した場合は配置要件が緩和される。 |
| 準ユニットケア加算 | 5単位/日 | 従来型施設で準ユニットケアを行う場合。 |
| 個別機能訓練加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ) | (Ⅰ)12、(Ⅱ)20、(Ⅲ)20単位/日 | (Ⅱ)はLIFE提出が要件。(Ⅲ)は(Ⅱ)に加え、口腔衛生管理加算(Ⅱ)と栄養マネジメント強化加算の算定、機能訓練・口腔・栄養の情報共有と計画の見直しが必要。 |
| ADL維持等加算(Ⅰ)(Ⅱ) | (Ⅰ)30、(Ⅱ)60単位/月 | 評価対象期間のADL値をLIFEに提出して判定。算定開始前の届出が必要。 |
| サービス提供体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ) | (Ⅰ)22、(Ⅱ)18、(Ⅲ)6単位/日 | 介護福祉士の割合等を前年度実績(または直近3月)で判定。年度替わりの再確認を忘れやすい。 |
夜勤職員配置加算の見守り機器による緩和や、2027年度改定で議論されている夜間配置の論点は夜間の人員配置基準はさらに緩和されるのかで整理しています。
栄養・口腔・療養食の加算
| 加算 | 単位数 | 請求上の注意 |
|---|---|---|
| 栄養マネジメント強化加算 | 11単位/日 | 管理栄養士を50対1(常勤栄養士を置く場合は70対1)で配置し、LIFE提出が要件。 |
| 経口移行加算 | 28単位/日 | 経管栄養から経口への移行計画作成日から180日以内が原則。 |
| 経口維持加算(Ⅰ)(Ⅱ) | (Ⅰ)400単位/月、(Ⅱ)100単位/月 | (Ⅱ)は(Ⅰ)を算定している場合に上乗せ。会議に医師・歯科医師等の参加が必要。 |
| 口腔衛生管理加算(Ⅰ)(Ⅱ) | (Ⅰ)90単位/月、(Ⅱ)110単位/月 | 歯科衛生士による月2回以上の口腔ケアが要件。(Ⅱ)はLIFE提出が必要。 |
| 療養食加算 | 6単位/回(1日3回まで) | 医師の食事箋が必要。外泊や欠食の日は回数を減らす。 |
| 退所時栄養情報連携加算 | 70単位/回(1月に1回まで) | 退所先の医療機関等へ栄養情報を提供した場合。 |
| 再入所時栄養連携加算 | 200単位/回 | 入院先の医療機関と栄養に関する連携を行い、再入所した場合。 |
医療連携・看取り・緊急対応の加算
| 加算 | 単位数 | 請求上の注意 |
|---|---|---|
| 配置医師緊急時対応加算 | 勤務時間外(早朝・夜間・深夜を除く)325単位、早朝・夜間650単位、深夜1,300単位(1回) | 配置医師が施設の求めで緊急に駆けつけて診療した場合。時間帯で単位が変わるので、配置医師の勤務表と診療録に時刻を残す。 |
| 看取り介護加算(Ⅰ)(Ⅱ) | 死亡日以前31~45日 72単位、4~30日 144単位、前日・前々日(Ⅰ)680/(Ⅱ)780単位、死亡日(Ⅰ)1,280/(Ⅱ)1,580単位 | 死亡日以前45日分を死亡月にまとめて算定する。退所した日の翌日から死亡日までは算定不可。退所月と死亡月が異なる場合は、前月分の自己負担を請求することがある旨を説明し、文書で同意を得ておく。 |
| 協力医療機関連携加算 | 50単位/月(令和7年度以降)。要件を満たす協力医療機関以外との連携は5単位/月 | 協力医療機関との間で入所者の病歴等の情報を共有する会議の定期的な開催が要件。開催頻度は留意事項通知で確認する。 |
| 常勤医師配置加算 | 25単位/日 | 常勤医師を1名以上配置している場合。 |
| 若年性認知症入所者受入加算 | 120単位/日 | 担当者を定めて対応した場合。 |
| 認知症専門ケア加算(Ⅰ)(Ⅱ) | (Ⅰ)3、(Ⅱ)4単位/日 | 対象は日常生活自立度Ⅲ以上の入所者。研修修了者の配置比率を毎月確認。 |
| 認知症チームケア推進加算(Ⅰ)(Ⅱ) | (Ⅰ)150、(Ⅱ)120単位/月 | 認知症専門ケア加算との併算は不可。 |
協力医療機関の義務化(経過措置は2027年3月末まで)と連携加算の関係は、別記事で詳しく整理しています(記事末の「あわせて読みたい」)。
LIFE関連加算|提出期限は翌月10日・未提出の月は全員分が算定不可
次の加算は、LIFE(科学的介護情報システム)への情報提出が算定要件です。提出期限は、提出すべき月の翌月10日です。期限に遅れると、遅れた月のサービス提供分から提出した月の前月分まで、入所者全員について算定できません。根拠は厚労省の「LIFE関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順」です。
| 加算 | 単位数 | 提出のタイミング |
|---|---|---|
| 科学的介護推進体制加算(Ⅰ)(Ⅱ) | (Ⅰ)40、(Ⅱ)50単位/月 | 算定開始月・入所月・退所月、そのほか少なくとも3月ごと |
| 褥瘡マネジメント加算(Ⅰ)(Ⅱ) | (Ⅰ)3、(Ⅱ)13単位/月 | 算定開始月・入所月・退所月、少なくとも3月に1回 |
| 排せつ支援加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ) | (Ⅰ)10、(Ⅱ)15、(Ⅲ)20単位/月 | 同上 |
| 自立支援促進加算 | 280単位/月 | 同上 |
請求担当がやることは2つです。第1に、毎月10日までに「今月提出すべき入所者が全員提出済みか」をLIFEの送信履歴で確認します。第2に、特定の入所者の情報が入院等で提出できなかった場合は、理由を介護記録に残します。その場合の算定の可否は、厚労省のQ&Aと指定権者の案内で確認してください。なお、LIFEは2026年5月(令和8年5月)に運用が国保中央会へ移管されました。提出先や操作の変更点は最新の案内で確認してください。
その他の加算(安全対策・感染対策・生産性向上・処遇改善)
| 加算 | 単位数 | 請求上の注意 |
|---|---|---|
| 安全対策体制加算 | 20単位(入所初日のみ) | 外部研修を受けた安全対策担当者の配置が要件。入所月にしか出ないため入力漏れが多い。 |
| 高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)(Ⅱ) | (Ⅰ)10、(Ⅱ)5単位/月 | (Ⅰ)は協定締結医療機関との連携等、(Ⅱ)は医療機関からの実地指導が要件。 |
| 新興感染症等施設療養費 | 240単位/日 | 新興感染症に感染した入所者に施設内で療養を行った場合(1月に1回・連続5日が限度)。 |
| 生産性向上推進体制加算(Ⅰ)(Ⅱ) | (Ⅰ)100、(Ⅱ)10単位/月 | 委員会の設置と見守り機器等の導入、厚労省へのデータ提出が要件。 |
| 在宅復帰支援機能加算 | 10単位/日 | 前6月の退所者のうち在宅復帰した割合等で判定。 |
| 在宅・入所相互利用加算 | 40単位/日 | 在宅と施設を計画的に交互利用する場合。 |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イ | 所定単位数の16.3%(2026年6月~)。(Ⅰ)ロは17.6% | 基本報酬と各加算の合計単位数に率をかける。2026年6月に区分と加算率が変わったので、請求ソフトのマスタ更新を確認。 |
処遇改善加算は2026年6月(令和8年6月)サービス提供分から、(Ⅰ)(Ⅱ)が「イ」「ロ」に分かれ加算率が引き上げられました。区分ごとの率と届出は処遇改善加算 完全ガイドで確認してください。
減算|夜勤基準・身体拘束・虐待防止・BCP・栄養管理
減算は「該当した月に自ら減算して請求する」のが原則です。減算せずに請求し、後から運営指導で判明すると、過誤調整による返還と自主点検の対象になります。特養で主なものは次のとおりです。
| 減算 | 率・単位数 | ポイント |
|---|---|---|
| 夜勤職員の勤務条件基準を満たさない場合 | 所定単位数の97%(入所者全員) | 基準を下回る日が2日以上連続、または月4日以上あった場合に翌月減算。夜勤の欠員は当日中に記録する。 |
| ユニットケアの職員体制基準を満たさない場合(ユニット型) | 所定単位数の97% | ユニットごとの常勤ユニットリーダー等の配置を確認。 |
| 定員超過・人員基準欠如 | 所定単位数の70% | 月平均の入所者数で判定。介護・看護職員、介護支援専門員の員数不足も対象。 |
| 身体拘束廃止未実施減算 | 所定単位数の10% | 拘束の記録、3月に1回以上の委員会、指針、年2回以上の研修のいずれかを欠くと該当。 |
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 所定単位数の1% | 委員会・指針・研修・担当者のいずれかを欠くと該当。 |
| 業務継続計画(BCP)未策定減算 | 所定単位数の3% | 感染症・災害の両方のBCPが必要。経過措置は終了している。 |
| 安全管理体制未実施減算 | 5単位/日 | 事故発生の防止のための指針・委員会・研修・担当者を欠く場合。 |
| 栄養管理の基準を満たさない場合 | 14単位/日 | 栄養士または管理栄養士を配置していない等。 |
減算は所定単位数(基本報酬)にかかるものが多く、処遇改善加算の計算基礎も減ります。減算月は請求ソフトで減算コードが自動反映されているか、明細書の単位数を目で確認してください。
補足給付(特定入所者介護サービス費)と利用者への請求
段階ごとの負担限度額(2026年8月~)
補足給付は、住民税非課税世帯などの低所得者について、食費・居住費の利用者負担を「負担限度額」までとする仕組みです。基準費用額との差額は保険から施設に支給されます。2026年8月1日(令和8年8月1日)に食費の基準費用額が1,445円から1,545円に、第3段階の負担限度額が引き上げられました。
| 利用者負担段階 | 食費(日額) | ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 | 従来型個室 | 多床室 |
|---|---|---|---|---|---|
| 基準費用額 | 1,545円 | 2,066円 | 1,728円 | 1,231円 | 915円 |
| 第1段階 | 300円 | 880円 | 550円 | 380円 | 0円 |
| 第2段階 | 390円 | 880円 | 550円 | 480円 | 430円 |
| 第3段階① | 680円 | 1,370円 | 1,370円 | 880円 | 430円 |
| 第3段階② | 1,420円 | 1,470円 | 1,470円 | 980円 | 530円 |
| 第4段階 | 補足給付なし(施設との契約額) | 同左 | 同左 | 同左 | 同左 |
2026年8月の見直しで変わったのは、食費の第3段階①(650円から680円)と第3段階②(1,360円から1,420円)です。居住費は第3段階②が各居室類型で100円引き上げられました。第2段階の所得基準も年金収入等80万9千円以下から82万6,500円以下に変わっています。見直しの背景と施設側の準備は2026年8月の補足給付見直しの対象と実務にまとめています。
段階の判定には、所得に加えて預貯金等の要件(単身で第1段階1,000万円、第2段階650万円、第3段階①550万円、第3段階②500万円以下。夫婦はそれぞれ1,000万円加算)があります。判定は保険者が行い、施設は認定証の記載に従います。
負担限度額認定証の確認と請求の流れ
補足給付の請求は、明細書の「特定入所者介護サービス費等」欄で行います。記載するのは、居室類型ごとの費用単価、認定証に書かれた負担限度額、日数、費用額、保険請求額、利用者負担額です。日数には外泊時費用を算定する日を含めます(食費は提供日のみ)。
返戻で最も多いのは、認定証の有効期限切れです。認定証は毎年7月31日が有効期限で、8月1日から新しい認定証に切り替わります。8月サービス提供分の請求(9月10日締切)までに、全入所者の新認定証を回収し、段階と限度額を請求ソフトに登録してください。2026年8月は制度改正と更新が重なるため、段階が変わった入所者の限度額を旧額のまま請求しないよう二重に確認が必要です。
年度途中に申請した場合、認定は申請月の初日にさかのぼります。申請前に第4段階として請求した月は、認定証が届いた後に過誤調整で正しい額に直します。
利用者への請求書に載せる項目
利用者に請求するのは、次の4つです。請求書は費目を分け、根拠(要介護度・段階・日数)が分かる形にします。
- 介護保険の利用者負担:施設サービス費と加算の合計額の1割(所得に応じて2割・3割)。高額介護サービス費の対象になる部分です。
- 食費:補足給付の対象者は負担限度額×提供日数。第4段階は契約額×提供日数。
- 居住費:補足給付の対象者は負担限度額×日数。第4段階は契約額×日数。外泊中の扱いは契約書に明記します。
- その他の日常生活費:理美容代、教養娯楽費、私物の洗濯代など、利用者の希望に基づき実費で請求できる費目。一律徴収や「管理費」名目の徴収は認められません(老企第54号)。
おむつ代は施設サービス費に含まれるため、特養では利用者に請求できません。この点は有料老人ホームやグループホームと混同しやすいので、請求書のひな型を作る際に確認してください。
明細書の記載と返戻・過誤になりやすい例
施設サービスの明細書(様式第八)で確認する項目
特養の明細書は、居宅サービスにはない項目があります。国保連の審査は次の項目の整合性をシステムでチェックしているため、ここが合わないと返戻になります。
- 入所年月日・退所年月日・退所後の状態:入所月と退所月に記載。退所後の状態(居宅・医療機関・死亡等)を区分で入れる。
- 入所実日数と外泊日数:入所実日数+外泊日数が、月の在籍日数と一致しているか。外泊時費用の算定日は外泊日数側に入れる。
- 要介護状態区分と認定有効期間:月途中の区分変更は行を分ける。有効期間外の日を請求しない。
- サービスコード・単位数・日数:居室類型と要介護度に対応したコードか。日額加算の日数が施設サービス費の日数を超えていないか。
- 特定入所者介護サービス費等の欄:段階・限度額・日数が認定証と一致しているか。
返戻・過誤になりやすい例
| 場面 | 起きやすい誤り | 防ぐ手順 |
|---|---|---|
| 入院・外泊 | 初日・最終日も外泊時費用にする/月7日以上算定する/退院日を空白にする | 入退院日を看護記録と突合し、月ごとの外泊時費用の日数を6日以内で数える |
| 認定の更新 | 認定有効期間が切れた日を請求する/更新結果を待たず旧区分で請求する | 月初に全入所者の有効期間終了日を一覧化し、更新申請の状況を確認する |
| 負担限度額認定証 | 8月以降も旧認定証の段階で請求する/段階変更を反映しない | 8月請求前に新認定証を全員分回収し、ソフトの段階を更新する |
| 加算の届出 | 体制届の受理前の月から加算を算定する/要件を割った翌月も算定を続ける | 加算ごとに「判定指標・確認者・確認日」を月次チェック表にする |
| LIFE | 翌月10日までに提出が終わらず、加算を算定してしまう | 提出対象者リストと送信履歴を10日前に照合する |
| 看取り | 死亡月に45日分をまとめて算定せず、前月分を入れ忘れる/退所日の翌日以降の日も算定する | 死亡月の請求前に、死亡日以前45日の日数と在籍日を看取り記録と突合する |
| 減算 | 夜勤欠員・身体拘束の記録不備を減算せずに請求する | 減算要件の該当有無を管理者が月末に確認し、請求担当に書面で伝える |
| 二重請求 | 同月の再請求で正しい分と誤った分が重なる | 返戻分は原本を取り消し、修正後に再請求する。過誤は保険者への過誤申立で行う |
返戻は再請求、審査を通った後の誤りは保険者を通じた過誤調整で直します。返戻通知の見方と再請求の期限、過誤申立の手順は、前述の国保連請求の流れの記事で解説しています。
運営指導・監査で指摘されやすいポイント
請求の誤りは、運営指導(旧実地指導)で書類との突合により見つかります。特養で指摘されやすいのは次の点です。いずれも「請求した内容を裏付ける記録」が問われます。
- 外泊時費用の算定日と、入院・外泊の記録(出発・帰所の日時)が一致していない。
- 日常生活継続支援加算や看護体制加算の要件(介護福祉士や看護職員の比率)を、月ごとに計算した根拠資料がない。
- 身体拘束や虐待防止の委員会が定期に開かれておらず、減算せずに請求していた。
- 特例入所者について、入所検討委員会の記録と保険者への報告が残っていない。
- その他の日常生活費を一律徴収している、または同意書がない。
指摘を受けた場合、過去にさかのぼって自主点検と返還を求められます。加算ごとに「要件を満たしている根拠」を毎月ファイルしておくことが、最も確実な防御です。
よくある質問(FAQ)
入院した月は施設サービス費をまったく請求できないのですか。
いいえ。入院日と退院日は施設サービス費を算定し、その間は1月6日を限度に外泊時費用246単位を算定します。7日目以降は算定できません。月をまたぐ入院は各月6日まで、連続で最大12日です。
外泊時費用の6日は、入院と外泊を合算した日数ですか。
はい。告示は「入院を要した場合及び外泊を認めた場合」を合わせて1月6日を限度としています。同じ月に外泊3日と入院5日があれば、算定できるのは合計6日までです。
要介護1・2の特例入所者は請求方法が違いますか。
請求方法は同じで、要介護1・2の単位数で算定します。違うのは入所手続きで、入所検討委員会での判断と保険者への報告・意見聴取が必要です。その記録を残しておいてください。
負担限度額認定証の申請が遅れた入所者の食費・居住費はどうなりますか。
認定は申請月の初日までさかのぼります。申請前に第4段階で請求した月は、認定証を確認したうえで過誤調整を行い、利用者への請求も差額を精算します。さかのぼりの範囲は保険者に確認してください。
LIFEの提出が翌月10日に間に合わなかったら、その月の加算はどうなりますか。
提出が遅れた月のサービス提供分から、提出した月の前月分まで、入所者全員について該当加算を算定できません。特定の入所者だけ入院等で提出できなかった場合は理由を介護記録に残し、算定の可否を指定権者に確認してください。
看取り介護加算は死亡した月にまとめて請求できますか。
はい。告示は死亡日以前45日分を「死亡月に加算する」と定めています。前月にまたがる分も死亡月の請求で算定します。ただし、退所した日の翌日から死亡日までは算定できません。
まとめ|特養の請求で毎月やること
- 月初に、全入所者の要介護度・認定有効期間・負担限度額認定証の段階を一覧で確認する。
- 入院・外泊は初日と最終日を除き、月6日以内で外泊時費用246単位に置き換える。7日目以降は算定なし。
- 加算は「体制届の受理」「要件の月次判定」「LIFEの翌月10日提出」の3点を、担当者と確認日を決めて点検する。
- 減算要件(夜勤欠員・身体拘束・虐待防止・BCP・栄養管理)は管理者が月末に該当有無を確認し、該当月は自ら減算する。
- 2026年8月からの補足給付の新しい額(食費第3段階と居住費第3段階②)を請求ソフトと利用者請求書に反映する。
特養の請求は、施設サービス費・加算・補足給付・利用者負担が1枚の明細書に集まるため、ひとつの入力ミスが複数の項目に波及します。人手が足りず返戻対応が追いつかない場合は、介護保険専門の請求代行に任せる方法もあります。
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あわせて読みたい
参考(一次情報)
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表1 介護福祉施設サービス
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年老企第40号)
- 厚生労働大臣が定める利用者等の数の基準及び看護職員等の員数の基準並びに通所介護費等の算定方法(平成12年厚生省告示第27号)
- 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(平成26年老高発1212第1号)
- 社会保障審議会介護給付費分科会 第243回 資料1 地域区分(厚生労働省)
- 介護保険最新情報Vol.1506 令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等について(厚生労働省)
- 令和8年8月1日以降の食費・居住費の負担限度額(厚生労働省老健局)
- 介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順(令和8年3月13日 老発0313第6号・厚生労働省)
- 科学的介護情報システム(LIFE)の運営主体の移管に係る周知について(一宮市)
- 令和8年8月1日より介護保険施設等における食費・居住費が変更となります(桜川市)
- 科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(介護保険最新情報Vol.1216)
- 介護給付費請求書等の記載要領 3 介護給付費明細書記載に関する事項(厚生労働省)
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