全国のデイサービス(通所介護)の事業所数は、4年連続で減少しています。厚生労働省の統計(2026年4月審査分)では42,125か所と、前年から531か所減りました。
「利用者は増えているのにデイは減る」という状況は、淘汰が一時的な波ではなく構造になったことを意味します。この記事では、デイサービスの管理者・経営者向けに、減少の中身と閉鎖が続く理由、そして生き残る事業所が実践している5つの打ち手を解説します。
※2026年10月16日に、東京商工リサーチの「2026年1~9月のデイサービス倒産」のデータを追記しました。
記事でわかること
データで見る:デイサービスは4年連続で減っている
厚生労働省「介護給付費等実態統計」によると、デイサービスの事業所数(当月に介護給付費を請求した事業所数)は次のとおりです。
| 区分 | 事業所数(2026年4月審査分) | 前年比 |
|---|---|---|
| デイサービス全体 | 42,125か所 | ▲531か所(4年連続減) |
| 地域密着型通所介護 | 17,780か所 | ▲350か所(2017年比▲12.3%) |
| 通常規模型・大規模型 | 24,345か所 | ▲181か所 |
特に定員18人以下の地域密着型の減少が深刻で、10年弱で1割以上が消えた計算です。近年は通常規模型・大規模型まで減少に転じており、「小規模だけの問題」では済まなくなっています。
倒産・休廃業の全体像は介護倒産が過去最多176件(2025年)の解説記事で詳しく扱っています。
【2026年10月16日追記】デイサービスの倒産が1~9月で47件、同期間の過去最多に
事業所数の減少に加えて、倒産も過去にないペースで増えています。東京商工リサーチの調査では、2026年1~9月のデイサービス事業者(通所・短期入所介護事業)の倒産は47件でした。前年同期の35件から34.2%増え、調査を始めた2000年以降の1~9月で最も多い件数です。集計の対象は、負債1,000万円以上の倒産です。
| 期間 | デイサービスの倒産件数 | 補足 |
|---|---|---|
| 2026年1~5月 | 27件 | 上半期(1~6月)の過去最多だった25件を、5か月で上回った |
| 2026年1~9月 | 47件 | 前年同期35件から34.2%増/1~9月として過去最多 |
| 年間の過去最多 | 69件(2022年) | フランチャイズの連鎖倒産があった年。2026年は60件台に届く可能性がある |
倒産の8割は「売上不振」
原因別では、売上不振が37件(78.7%)を占めました。利用者が集まらず、固定費をまかなえない状態が続いた末の倒産が大半です。
人手不足が原因の倒産も、11件(前年同期3件)に増えました。内訳は、人件費の高騰7件、後継者難2件、求人難1件、従業員の退職1件です。最低賃金の引き上げで、他業界との人材の取り合いも厳しくなっています。
介護事業全体では136件、訪問介護は減少に転じた
介護事業全体(老人福祉・介護事業)の倒産は、1~9月で136件でした。前年同期と並ぶ過去最多です。訪問介護は64件(前年同期比11.1%減)と減りましたが、過去2番目の高い水準にあります。サービス全体で見ても、介護事業の経営は厳しい状態が続いています。
倒産データから見える、管理者が今月中に点検したいこと
- 稼働率:直近3か月の稼働率を曜日別に出し、黒字を保てる稼働率と比べる(下の打ち手1を参照)
- 人件費:最低賃金の改定後の時給と、処遇改善加算の配分を見直す
- 加算:体制はあるのに算定していない加算がないか、請求明細で確かめる(下の打ち手2を参照)
- 資金繰り:赤字が続く場合は、早めに取引金融機関や福祉医療機構(WAM)の融資・経営相談を検討する
倒産の大半が売上不振である以上、最初に手を付けるのは稼働率です。次の章で、閉鎖が続く構造的な理由を整理します。
なぜ閉鎖が続くのか:3つの構造要因
デイサービスの閉鎖には、共通するパターンがあります。
- 小規模ほど収支が厳しい構造:地域密着型は単価が高い一方で定員が少なく、数人の欠席が即赤字につながります。物価高で送迎・食事・光熱費のコストも上がり続けています。
- 人材の確保難:介護職員だけでなく、送迎ドライバーや看護職員の確保が難しく、「人がいないから受け入れを絞る→収入が減る」の悪循環に陥りがちです。
- 選ばれ方の変化:ケアマネジャーと家族は「空きがあるデイ」ではなく「目的が明確なデイ」を選ぶようになりました。特徴のない事業所から利用者が減っていきます。
裏を返せば、閉鎖の理由はどれも「手の打ちようがある」ものです。次章で具体策を見ていきます。
生き残る事業所の5つの打ち手
打ち手1:稼働率を「見える化」して欠席に即対応する
経営指標の起点は稼働率(定員に対する実利用者数の割合)です。週次で稼働率を数字にし、欠席が出たらその日のうちに振替を提案します。欠席の穴を埋められるかどうかが、月間の売上を左右します。曜日別の空き枠を一覧にして、ケアマネジャーへ定期的に情報提供するのも有効です。
打ち手2:加算の取りこぼしをなくす
個別機能訓練加算、口腔・栄養関連の加算、科学的介護推進体制加算など、体制はあるのに算定していない加算は珍しくありません。要件のハードルが高い入浴介助加算(Ⅱ)も、算定できれば単価差が大きい加算です。算定要件と実態を突き合わせ、取れる加算を確実に取ることが、値上げできないデイの実質的な増収策です。
打ち手3:機能特化で「選ばれる理由」を作る
リハビリ特化、入浴特化、認知症対応力、土日営業、延長対応など、何か1つ地域で突出させると、ケアマネジャーが紹介しやすくなります。「なんでもできます」は「特徴がない」と同じ意味に受け取られます。自事業所の強みを1行で言えるかを確認してください。
打ち手4:生産性向上を「義務対応」で終わらせない
2027年4月には生産性向上委員会の設置が完全義務化されます。どうせ委員会を作るなら、記録のICT化や送迎ルートの見直しなど実利のあるテーマを扱いましょう。機器導入の費用は介護テクノロジー導入支援事業が使えます(補助率・上限・受付時期は都道府県で異なります)。
打ち手5:人材定着で採用コストを減らす
閉鎖理由の上位は常に人材不足です。採用で埋め続けるより、辞めない職場を作る方が安上がりです。役割の明確化・面談の定例化・資格取得支援など、具体策は人材定着の解説記事にまとめています。
2027年度の報酬改定論議も注視を
社会保障審議会・介護給付費分科会では、2027年度介護報酬改定に向けた議論が進んでいます。通所系では経営の安定化や加算の整理が論点に上がっており、小規模デイの報酬体系が見直される可能性もあります。議論の全体像は2027年度介護報酬改定の論点解説を参照してください。
まとめ|数字で現状を掴み、選ばれる理由を1つ作る
デイサービスの減少は4年連続となり、淘汰は構造化しました。生き残りの要点は次の3つです。
- 稼働率と加算算定状況を数字で把握する(どんぶり勘定をやめる)
- 地域で選ばれる理由を1つ突出させ、ケアマネジャーに伝える
- 生産性向上と人材定着で、コスト構造を軽くする
市場が縮む局面では、残った事業所に利用者が集まりやすくなります。撤退が相次ぐ今は、体制を整えられた事業所にとって地域シェアを高める機会にもなります。
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出典
- 厚生労働省「介護給付費等実態統計」(2026年4月審査分)
- 介護ニュースJoint「デイサービスの事業所数、4年連続減」(2026年8月7日)
- 東京商工リサーチ「2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明」(2026年10月)
- 東京商工リサーチ「1-5月の「デイサービス」倒産27件、上半期最多を更新」(2026年6月12日)
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