本記事は2026年10月19日時点の公開情報に基づいています。2027年度介護報酬改定の見直し案は検討段階で、内容は今後変わる可能性があります。
この記事は、通所介護(デイサービス)・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護の管理者、生活相談員、介護主任の方向けです。入浴介助加算の(Ⅰ)と(Ⅱ)は要件がどこで違うのか。(Ⅱ)を算定するには何を記録すればよいのか。2027年度改定で単価や要件はどう変わりそうなのか。この3つに、実務の順番で答えます。
記事でわかること
まず結論:管理者が押さえる3点
- (Ⅰ)は40単位、(Ⅱ)は55単位で、同じ日に両方は算定できません。実際に入浴介助をした日だけが対象です。清拭のみの日や入浴を中止した日は請求できません。(Ⅰ)でも、入浴介助に関わる職員への研修が要件です。
- (Ⅱ)の算定率は、通所介護でも事業所の12.2%にとどまります。医師等による居宅訪問評価と、個別の入浴計画が壁です。医師等の訪問が難しい場合は、医師等の指示の下で介護職員が訪問し、情報通信機器を使って医師等が評価する方法が、現行でも認められています。
- 2027年度改定では、単価の見直し(報道では引き上げの方向)と、介護職員訪問+ICTを例外扱いから外す案が示されました。いずれも検討段階です。年内に審議報告で大枠が固まり、単位数は2027年1~2月ごろの諮問・答申で確定する見込みです。
入浴介助加算とは|対象サービスと単位数
入浴介助加算は、通所系サービスで入浴の介助を行った日に算定する加算です。対象は、通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護(介護予防認知症対応型通所介護を含む)の3サービスです。区分は(Ⅰ)と(Ⅱ)の2つで、単位数と主な要件は次のとおりです。
| 区分 | 単位数 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 入浴介助加算(Ⅰ) | 40単位/日 | 入浴介助を適切に行うことができる人員・設備を有して入浴介助を行う/入浴介助に関わる職員に対して入浴介助に関する研修等を行う |
| 入浴介助加算(Ⅱ) | 55単位/日 | (Ⅰ)の要件に加えて、医師等による居宅の浴室の評価、個別の入浴計画の作成、居宅の状況に近い環境での入浴介助など5つの要件 |
(Ⅰ)と(Ⅱ)は同じ日に併算定できません。利用者ごとに、どちらを算定するかを決めて通所介護計画に位置付けます。算定できるのは、実際に入浴介助を行った日だけです。清拭(体を拭くこと)のみで済ませた日や、体調不良で入浴を中止した日は算定できません。要件の根拠は令和6年度介護報酬改定後の告示・通知で、厚生労働省の「令和6年度介護報酬改定について」のページにまとまっています。
加算(Ⅰ)の算定要件|研修の実施が必須
(Ⅰ)の要件は2つです。1つは、入浴介助を適切に行うことができる人員・設備を有して、入浴介助を行うこと。もう1つは、入浴介助に関わる職員に対して、入浴介助に関する研修等を行うことです。研修の要件は、令和6年度改定で新しく加わりました。
算定率を見ると、通所介護では89.8%の事業所が(Ⅰ)を算定しています。多くの事業所にとって「取れている加算」です。ただし、研修の記録が無ければ、運営指導で算定の根拠を示せません。研修は「やった」だけでなく「残す」ことが実務上のポイントです。
研修記録の残し方(実務例)
- 年間計画:年度初めに、いつ・誰を対象に・何を扱うかを決め、研修計画表に入浴介助の回を明記する
- 実施記録:日時、講師、参加者名、内容(移乗と転倒予防、入浴前後の体調確認、皮膚の観察、プライバシーへの配慮など)、使った資料を1枚にまとめる
- 欠席者のフォロー:欠席した職員には資料の回覧や動画の視聴で補い、確認した日付を記録する
- 新入職員:入職時研修に入浴介助の項目を入れ、OJT(実務を通じた指導)の確認表に残す
介護事業所には、虐待防止や感染症対策など、別の根拠で求められる研修もあります。年間計画を一体で作ると、抜け漏れを防げます。研修の全体像は介護施設の法定研修一覧で確認してください。
加算(Ⅱ)の算定要件|5つの要件を順番に
(Ⅱ)は、(Ⅰ)の要件を満たしたうえで、次の5つを行う加算です。目的は、利用者が自宅で、自分で、または家族や訪問介護員(ホームヘルパー)の介助で入浴できるようになることです。「デイで入浴を済ませる」ための加算ではない点が、要件全体を貫いています。
要件1:医師等が居宅を訪問し、浴室での動作と環境を評価する
医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員など(以下「医師等」)が、利用者の自宅を訪問します。浴室で利用者がどのように動くか、浴室の環境はどうかを評価します。評価した日、評価者、評価の内容を記録に残します。
要件2:訪問が難しい場合は、介護職員の訪問+情報通信機器で把握し、医師等が評価・助言する
医師等が居宅を訪問することが難しい場合は、医師等の指示の下で介護職員が訪問し、情報通信機器等を使って状況を把握してもよいとされています。把握した情報をもとに、医師等が評価と助言を行います。この方法は令和6年度改定で新設されました。ただし現行は「医師等の訪問が困難な場合」に限られます。訪問が難しい理由、医師等の指示、介護職員の訪問日、医師等の評価日を記録に残します。
要件3:居宅での入浴が難しい場合は、環境整備について助言する
自宅の浴室で、本人や家族、訪問介護員などの介助による入浴が難しいと分かった場合です。医師等は、介護支援専門員(ケアマネジャー)や福祉用具専門相談員と連携し、福祉用具の購入や住宅改修などの環境整備について助言します。助言した内容と相手を記録します。
要件4:個別の入浴計画を作成する
機能訓練指導員等が医師等と連携し、利用者の身体の状況と自宅の浴室の環境を踏まえた、個別の入浴計画を作成します。通所介護計画への記載で代えることもできます。別紙を作るか計画書に書くかは事業所の運用で決めます。どちらの場合も、評価結果と計画がつながっていることが分かる形にします。
要件5:計画に基づき、居宅の状況に近い環境で入浴介助を行う
個浴(1人ずつ入る浴槽)その他、自宅の状況に近い環境で入浴介助を行います。自宅の浴室の手すりの位置や、使う浴槽の深さ・高さを福祉用具などで再現したものも含まれます。大浴場しかない事業所でも、福祉用具で再現できれば要件を満たす余地があります。
算定率が示す「Ⅱの壁」|通所介護でも事業所の12.2%
第258回分科会の資料によると、令和7年11月審査分(令和7年10月サービス提供分)の算定率は次のとおりです。(Ⅰ)は事業所の7~9割が算定する一方、(Ⅱ)は通所介護でも事業所の約1割です。
| サービス | (Ⅰ)事業所ベース | (Ⅰ)件数ベース | (Ⅱ)事業所ベース | (Ⅱ)件数ベース |
|---|---|---|---|---|
| 通所介護 | 89.8% | 61.5% | 12.2% | 5.6% |
| 地域密着型通所介護 | 71.1% | 48.3% | 7.2% | 4.5% |
| 認知症対応型通所介護 | 94.3% | 64.7% | 7.9% | 4.2% |
事業所ベースは「算定した事業所の割合」、件数ベースは「請求件数のうち加算が付いた割合」です。(Ⅱ)を算定している事業所でも、全利用者に付けているわけではないことが、件数ベースの低さから分かります。
第270回分科会の資料では、(Ⅱ)を算定しない理由も示されました。「訪問・評価・助言を行う医師等の確保・連携」と「医師等が訪問・評価する時間の確保が困難」という意見が多いとされています。要件1の居宅訪問が、人の確保と時間の両面で壁になっています。
2027年度改定の見直し案(第270回分科会)|単価・ICT訪問・入浴目的の短時間利用
2026年10月14日の第270回社会保障審議会介護給付費分科会で、厚生労働省は通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護の論点を示しました。入浴介助加算については、次の3つの対応案が出ています。いずれも「検討してはどうか」という段階で、決定ではありません。
| 論点 | 現行 | 見直し案(検討段階) |
|---|---|---|
| 単価 | (Ⅰ)40単位/(Ⅱ)55単位 | 水道光熱費等の物価高騰と人材確保の観点から単価設定を見直す。報道では引き上げの方向。幅は示されていない |
| (Ⅱ)の居宅訪問 | 原則は医師等が訪問。介護職員の訪問+情報通信機器は「医師等の訪問が困難な場合」に限る | 「困難な場合」に限定せず、介護職員の訪問+情報通信機器による把握を認める |
| 入浴目的の短時間利用 | 入浴のみの利用は適当でないとされ、2時間以上3時間未満の利用は利用者側のやむを得ない事情がある場合に限る | 中山間地域等で、入浴介助を目的とする介護サービス事業者が存在しない地域であること等を要件に、例外的に認める |
見直し案1:単価の見直し
厚労省は論点として、水道光熱費等の物価高騰で報酬単価が実態に見合っていないなど、事業所運営に大きな影響が出ていると示しました。そのうえで、物価高騰に加えて人材確保の観点から、入浴介助加算の単価設定を見直すことを検討してはどうかとしています。報道は「単価引き上げへ」と伝えていますが、引き上げ幅は示されていません。新しい単位数が決まるのは、2027年1~2月ごろの諮問・答申の見込みです。
見直し案2:介護職員の訪問+ICTを「例外」でなく認める
(Ⅱ)の居宅訪問について、医師等の指示の下で介護職員が訪問し、情報通信機器等で浴室等の環境を把握する方法を、「医師等が訪問することが困難な場合」に限定せずに認める案です。実現すれば、要件1の壁が下がります。ただし、評価と助言の主体は医師等のままです。記録の重要性も変わりません。委員からは「入浴を済ませるだけでなく、自立支援につなげる視点が重要」との指摘がありました。
見直し案3:中山間地域等で入浴目的の短時間利用を認める
現行、通所系サービスでは「単に入浴サービスのみの利用は適当ではない」とされています。2時間以上3時間未満の利用は、利用者側のやむを得ない事情で長時間の利用が難しい人に限られます。一方、中山間地域等では訪問入浴介護の事業所が減っています。資料によると、通所介護で「短時間で入浴のみ利用したい」という相談を受けた事業所は約5割でした。そのうち、地域の入浴サービス不足が理由のものは約1割です。対応案は、中山間地域等で入浴介助を目的とする介護サービス事業者が存在しない地域であること等を要件に、例外的に通所介護等で入浴介助を目的とするサービスを認めることを検討する、というものです。訪問入浴介護の仕組みは訪問入浴とはの記事で解説しています。
同日に示された通所介護全体の論点
同じ資料では、入浴以外の対応案も示されました。迎えに行った際のキャンセルなど突発的な送迎キャンセルを送迎減算の対象から外す案。共同送迎の同乗範囲を、児童の通園・通学や地域の買い物支援などにも広げる案。延長加算の12時間以上13時間未満・13時間以上14時間未満の区分を廃止する案。地域密着型通所介護の中重度者ケア体制加算の要件見直しです。送迎減算や時間区分の現行ルールは、通所介護の請求の記事で整理しています。
確定までのスケジュール
分科会は年内に施策の大枠(審議報告)を固める予定です。単位数の確定は2027年1~2月ごろの諮問・答申、施行は2027年4月の見込みです。改定全体の流れは2027年度介護報酬改定はどうなるで更新しています。
請求で間違えやすいポイント
入浴介助加算は1日あたりの単位数が小さい分、毎日の積み重ねで誤りが膨らみます。返戻(請求の差し戻し)や、運営指導後の自主返還につながる典型例を整理します。
- 入浴していない日に算定:清拭のみの日や、体調不良で中止した日は算定できません。実施記録に「入浴/清拭/中止」を日ごとに残し、請求データと照合します。
- (Ⅰ)と(Ⅱ)を同じ日に算定:併算定はできません。利用者ごとにどちらを算定するかを決め、請求ソフトの設定を確認します。
- 体制届出前の利用分に算定:加算の体制届出が受理され、算定が認められた月より前の利用分には付けられません。届出の提出期限と算定開始月は、指定権者に確認してください。
- (Ⅱ)の評価・計画の記録不足:居宅訪問の日付・評価者・評価内容、個別入浴計画の作成日が無いと、算定の根拠を示せません。計画は通所介護計画への記載で代えられますが、評価結果との対応が分かる形にします。
加算の請求が誤っていた場合、返戻で済まないこともあります。運営指導で指摘されると、過去にさかのぼって返還を求められます。返還の仕組みは介護報酬の返還とはで解説しています。
改定前にやっておくこと(チェックリスト)
- (Ⅱ)の対象候補の洗い出し:自宅の浴室で入浴できていない利用者、家族が入浴介助に困っている利用者をリストにする
- 医師等との連携先の確保:居宅訪問や評価・助言を頼める医師、理学療法士・作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員を具体名で決める
- ICT訪問の手順書:介護職員が訪問して撮影・計測する項目(浴槽の深さ・高さ、手すりの位置、出入口の段差、脱衣所の広さなど)と、医師等への共有方法を決める
- 個別入浴計画のひな形:評価結果、目標、入浴方法、使用する福祉用具、見直しの時期を書く欄を用意する
- 研修記録の点検:(Ⅰ)の研修が年度内に実施・記録されているかを確認する
- ケアマネとの連携:(Ⅱ)の目的(自宅での入浴)をケアマネと共有し、福祉用具・住宅改修の助言をケアプランにつなげる
- 請求ソフトのマスタ更新の準備:単価が変わった場合に、施行月からマスタを更新する担当と手順を決める
よくある質問(FAQ)
(Ⅱ)の居宅訪問は、今でも介護職員が行ってよいのですか?
現行では、医師等が訪問することが困難な場合に限り、医師等の指示の下で介護職員が訪問し、情報通信機器等で状況を把握する方法が認められています。評価と助言は医師等が行います。2027年度改定では、この「困難な場合」という限定を外す案が示されましたが、検討段階です。
個浴の設備が無い事業所は(Ⅱ)を算定できませんか?
要件は「個浴その他の居宅の状況に近い環境」です。自宅の浴室の手すりの位置や浴槽の深さ・高さを、福祉用具等で再現したものも含まれます。個浴が無くても、再現できれば要件を満たす余地があります。個別の入浴計画に、どの環境をどう再現するかを書いておきます。
2027年度に単価が上がるのは決まったのですか?
決まっていません。第270回分科会で「単価設定を見直すことを検討してはどうか」という対応案が示された段階です。報道は引き上げの方向と伝えていますが、幅は示されていません。年内の審議報告で大枠が固まり、単位数は2027年1~2月ごろの諮問・答申で確定する見込みです。
入浴介助に関する研修は、外部の研修でなければいけませんか?
要件は「入浴介助に関わる職員に対し入浴介助に関する研修等を行うこと」です。事業所内の研修でも、日時・内容・参加者の記録を残し、運営指導で説明できる状態にしておくことが実務上の要点です。細かな運用は指定権者に確認してください。
まとめ
入浴介助加算は、(Ⅰ)40単位・(Ⅱ)55単位で、実際に入浴介助をした日だけ算定します。(Ⅰ)は研修の実施と記録、(Ⅱ)は医師等の居宅訪問評価・個別入浴計画・居宅に近い環境の3点が柱です。(Ⅱ)の算定率は通所介護でも事業所の12.2%で、医師等の確保と訪問時間が壁になっています。
2027年度改定では、単価の見直しと、介護職員の訪問+ICTを例外扱いから外す案、中山間地域等での入浴目的の短時間利用を認める案が示されました。いずれも検討段階です。確定は年末の審議報告から来年初めの諮問・答申にかけてです。今できるのは、(Ⅱ)の対象候補の洗い出し、医師等との連携先の確保、記録のひな形づくり、研修記録の点検です。
入浴介助加算は、実施記録・研修記録・評価と計画の記録が毎日の請求と結びつく加算です。入浴の有無を日ごとに照合し、(Ⅱ)の記録をそろえ、返戻の原因を調べて再請求する作業は、生活相談員や管理者の時間を奪います。単価が変われば、マスタの更新も重なります。
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出典(一次資料)
- 厚生労働省「第270回社会保障審議会介護給付費分科会 資料」(2026年10月14日)
- 厚生労働省「第270回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1 通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護」(2026年10月14日)
- 厚生労働省「第258回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1 通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護」(入浴介助加算の算定率)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」(告示・留意事項通知・Q&A)
- 介護ニュースJoint 入浴介助加算の単価見直し案に関する報道(第270回分科会・2026年10月)
- 社会保険研究所 第270回社会保障審議会介護給付費分科会に関する報道(2026年10月)
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