障害福祉の身体拘束適正化|3要件・記録・委員会・研修と減算10%・1%

この記事は、障害福祉サービスと障害児通所支援の管理者、サービス管理責任者(サビ管)、児童発達支援管理責任者(児発管)向けです。生活介護・就労継続支援・グループホーム(共同生活援助)・障害者支援施設・放課後等デイサービス・児童発達支援を想定しています。「何が身体拘束に当たるか」「やむを得ず行うときに何を残すか」「減算を受けないために何が必要か」に答えます。

結論から言うと、障害福祉の指定基準は、緊急やむを得ない場合を除いて身体拘束等を禁止しています。やむを得ず行う場合は、態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由の記録が義務です。さらに、委員会(1年に1回以上)・指針・研修(1年に1回以上)の3つの措置があります。令和4年度(2022年度)から、相談系など一部を除く全事業所の義務です。記録・委員会・指針・研修のいずれか1つでも欠けると、身体拘束の有無に関係なく「身体拘束廃止未実施減算」です。令和6年度(2024年度)改定で、減算は1日5単位から引き上げられました。施設・居住系は所定単位数の10%、訪問・通所系は1%です。放デイ・児発は1%、障害児入所施設は10%です。

この記事では、根拠省令と介護保険との違い、該当する行為の例、3要件と手続き、記録の残し方、委員会・指針・研修の義務、減算の要件、同意書の扱い、児童分野の注意点、確認テスト5問の順に解説します。介護保険施設の身体拘束は身体拘束とは|三原則・やむを得ない場合の3要件と記録の残し方【研修資料つき】で扱っており、本記事は障害福祉に固有の根拠・減算率・児童分野に絞ります。

記事でわかること

障害福祉の身体拘束とは|根拠省令と障害者虐待防止法

障害福祉サービスの身体拘束の根拠は、指定障害福祉サービス基準の第35条の2です。正式名称は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号)です。第1項は「利用者又は他の利用者の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為(身体拘束等)を行ってはならない」と定めています。第2項は記録、第3項は委員会・指針・研修の措置です。この条文は、生活介護・就労系・共同生活援助・施設入所支援などの各サービスに準用されています。障害児通所支援は、児童福祉法に基づく指定通所支援の基準(平成24年厚生労働省令第15号)第44条が同じ内容を定めています。

障害福祉では、身体拘束は虐待の定義と直接つながっています。障害者虐待防止法第2条は、正当な理由なく障害者の身体を拘束することを身体的虐待に含めています。介護保険の高齢者虐待防止法には同じ文言がないため、ここは障害福祉に固有の点です。3要件を満たさない身体拘束は、基準違反であると同時に、通報義務の対象になる虐待です。虐待防止の3つの義務措置と通報の流れは障害福祉事業所の虐待防止|義務化された3つの措置・1%減算・通報義務をわかりやすく解説で解説しています。

介護保険との違い|枠組みは同じ、頻度と減算率と保存年限が違う

3要件・記録・委員会・指針・研修という枠組みは、介護保険と共通です。違うのは、委員会と研修の最低頻度、減算の率と対象、記録の保存年限です。介護施設から障害福祉に来た管理者が間違えやすいところです。

項目 障害福祉サービス・障害児通所支援 介護保険(施設系・居住系)
根拠 指定障害福祉サービス基準第35条の2/指定通所支援基準第44条 各サービスの運営基準(特養は第11条第4~6項)
委員会の頻度 定期的(減算の要件は1年に1回以上) 3か月に1回以上
研修の頻度 定期的(1年に1回以上)と新規採用時 定期的(年2回以上)と新規採用時
減算率 施設・居住系10%/訪問・通所系1% 施設系・居住系10%/短期入所系・多機能系1%
減算の対象外 計画相談・障害児相談・地域相談・自立生活援助・就労定着支援 訪問系・通所系・福祉用具・居宅介護支援(禁止と記録のみ義務)
記録の保存 サービスを提供した日から5年間 完結の日から2年間(自治体条例で5年の地域あり)
虐待との関係 障害者虐待防止法で正当な理由のない身体拘束は身体的虐待と明記 法律上の明記はなく、手引きで虐待防止と一体に扱う

障害福祉で身体拘束に該当する行為の例

厚生労働省の「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」は、身体拘束に当たる行為の例として次の6つを挙げています。神奈川県の障害者支援施設向け資料も同じ6例を示しています。

  • 車いすやベッド等に縛り付ける。
  • 手指の機能を制限するために、ミトン型の手袋を付ける。
  • 行動を制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
  • 支援者が自分の体で利用者を押さえつけて行動を制限する。
  • 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
  • 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。

介護保険の手引きの11類型と比べると、「支援者が自分の体で押さえつける」が入っている点が障害福祉の特徴です。強度行動障害のある方への支援では、他害や自傷を止めるために職員が体で押さえる場面が起こります。これは身体拘束です。繰り返し起きているなら、3要件の判定と記録、個別支援計画への記載が必要です。行動の背景を分析して環境を整える支援の原則は強度行動障害とは|判定基準(行動関連項目)と支援の基本・事業所の体制で解説しています。

グループホームの夜間の玄関施錠や、生活介護の作業室の出口の施錠も同じです。送迎車のチャイルドロック、放デイで部屋から出ないように職員が入口に立つ場面も含みます。本人が自分の意思で出られないなら、隔離に当たり得ます。防犯や交通安全を目的にした施錠でも、本人が出たいときに職員がすぐ開けられる体制でなければ、行動の制限になります。「誰のため」「何のため」を繰り返し自問することを、厚生労働省の資料も強調しています。

3要件と手続き|個別支援計画への記載・説明・行政への相談・記録

やむを得ず身体拘束を行う場合は、切迫性・非代替性・一時性の3要件をすべて満たす必要があります。障害福祉の手引きでは、切迫性の定義に「権利」が含まれる点が介護保険と少し違います。

要件 手引きの定義 確認する問い
切迫性 利用者本人または他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと 放置すれば生命・身体・権利に重大な危険が差し迫っているか。根拠となる行動の記録はあるか
非代替性 身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がないこと 環境調整、構造化、感覚刺激の調整、見守り体制、服薬の相談など、代替案を試したか。試した記録はあるか
一時性 身体拘束その他の行動制限が一時的であること 解除の条件と再評価の時期を決めているか。「落ち着くまで」ではなく期限があるか

3要件を満たしても、手続きを省くことはできません。厚生労働省の資料が示す手続きは、組織による決定と個別支援計画への記載、本人・家族への十分な説明、行政への相談・報告、必要事項の記録です。仙台市の指摘事例集も、組織決定・個別支援計画への記載・本人家族への十分な説明・記録の4点を「適切な手続き」として挙げています。

個別支援計画への記載|障害福祉に固有の手続き

介護保険と大きく違うのが、個別支援計画への記載です。やむを得ず身体拘束を行う場合は、個別支援計画に身体拘束の態様・時間と緊急やむを得ない理由を記載します。個別支援会議で組織として検討・決定し、サビ管・児発管が計画に反映します。計画に書くことで、本人・家族への説明と同意、モニタリングでの再評価が、通常の計画の流れに乗ります。計画に記載がないまま現場の判断で身体拘束が続いている状態は、運営指導で指摘される典型です。計画の書き方と未作成減算は個別支援計画の書き方|記入例・作成の流れと未作成減算を防ぐ運用で確認できます。

厚生労働省の資料は、手続きの一つに「行政への相談、報告」も挙げています。あわせて、要件と手続きを踏めば何をしてもよいという「免罪符」にはならない、とも注意しています。相談先や報告の方法・様式は自治体で扱いが異なります。指定権者の所管課に確認し、相談した日と助言の内容を記録に残してください。

記録の残し方|省令の記録事項と5年間の保存

基準第35条の2第2項は、やむを得ず身体拘束等を行う場合、「その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項」の記録を義務づけています。障害児通所支援の基準第44条第2項も同じです。この記録は、サービスを提供した日から5年間の保存が必要です(基準第75条等)。介護保険の2年より長い点に注意してください。

記録 いつ 記載項目
個別支援会議の記録 開始を検討するとき・再評価のとき 日時・参加者/対象行動と危険の内容/3要件それぞれを満たすと判断した理由/検討した代替案と結果/態様・時間・期間(解除予定)/説明担当者
個別支援計画 開始前(計画の変更として) 身体拘束の態様・時間/緊急やむを得ない理由/解除に向けた支援目標とモニタリング時期/本人・家族の同意(署名)
実施記録 実施のたび 開始・終了時刻と態様/その際の心身の状況(表情・訴え・けがの有無)/緊急やむを得ない理由/対応した職員/解除後の様子
委員会への報告・議事録 発生ごとの報告、年1回以上の委員会 報告様式による発生報告/事例の集計・分析/適正化策とその効果の検証/従業者への周知の方法と日付
行政への相談記録 開始前後 相談日・相談先・助言内容・提出した書類

解釈通知は、従業者が身体拘束等の発生ごとに状況や背景を記録し、所定の様式で報告することを求めています。委員会はその事例を集計・分析し、発生原因や結果をまとめ、適正化策を検討し、効果を検証します。記録は「縛った事実」を残すためではなく、「次に縛らない支援」を作るための材料です。

委員会(年1回以上)・指針(7項目)・研修(年1回以上)の義務

令和4年(2022年)4月1日から、委員会・指針・研修の3つの措置が義務化されました。減算の適用は1年の経過措置を経て令和5年(2023年)4月1日からです。解釈通知と自治体の資料から、3つの措置の要件を整理します。

措置 要件 実務のポイント
身体拘束等適正化委員会 幅広い職種で構成し、構成員の責務と役割分担を明確にする。専任の担当者を決める。解釈通知は少なくとも1年に1回の開催が望ましいとし、減算の要件も「1年に1回以上の開催」。結果を従業者に周知徹底する。テレビ電話装置等の活用可。第三者や専門家(精神科医・看護職員等)の活用が望ましい。虐待防止委員会と一体的に設置・運営できる。法人単位の設置も可 虐待防止委員会と合同開催が多い。合同の場合も議事録に身体拘束の議題を独立して残す。事例が発生したら臨時開催
指針 基本的な考え方/委員会など事業所内の組織/職員研修の基本方針/報告方法等の基本方針/発生時の対応の基本方針/利用者等への指針の閲覧の基本方針/その他適正化の推進に必要な基本方針の7項目 法人の虐待防止指針に身体拘束の章を設けてもよいが、7項目がそろっているか点検する。契約時に説明し、閲覧できる場所に置く
研修 指針に基づく研修プログラムを作成し、定期的に(年1回以上)実施する。新規採用時には必ず実施する。実施内容を記録する。虐待防止研修で身体拘束の適正化を扱えば、適正化研修を実施したとみなしてよい 年1回の研修に、自事業所の事例と記録の書き方を入れる。中途採用が多い事業所は動画と確認テストで新規採用時研修を確実にする

年1回は最低ラインです。強度行動障害のある利用者が多い事業所や、身体拘束の事例が発生している事業所では、委員会を年2~4回に増やし、研修も複数回行うのが現実的です。委員会の年間計画、研修の記録、指針の見直し履歴は、運営指導で最初に確認される書類です。障害福祉の法定研修の全体像は障害福祉の法定研修一覧|虐待防止・身体拘束・BCPの頻度と年間計画で整理しています。

身体拘束廃止未実施減算|10%・1%の対象サービスと減算期間

身体拘束廃止未実施減算は、次の4つのいずれかに該当する事実があるときに適用されます。身体拘束を実際に行ったかどうかは問いません。1件も身体拘束をしていない事業所でも、研修記録が残っていなければ減算です。

  1. 身体拘束等を行った際に、態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録していない
  2. 身体拘束等適正化委員会を1年に1回以上開催していない(結果の周知を含む)
  3. 身体拘束等の適正化のための指針を整備していない
  4. 身体拘束等の適正化のための研修を1年に1回以上実施していない

減算の額は、令和6年度改定で大きく変わりました。平成30年度改定で導入された当初は1日につき5単位でした。令和6年4月からは、施設・居住系サービスで所定単位数の10%、訪問・通所系サービスで1%です。厚生労働省の「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」は、「身体拘束等の適正化の徹底を図るため、施設・居住系サービスについて、身体拘束廃止未実施減算の減算額を5単位から所定単位数の10%に引き上げ」と説明しています。

区分 減算率 対象サービス
施設・居住系 所定単位数の10% 障害者支援施設(施設入所支援と、障害者支援施設が行う各サービス)、療養介護、障害児入所施設、共同生活援助、宿泊型自立訓練
訪問・通所系 所定単位数の1% 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、生活介護、短期入所、自立訓練(宿泊型を除く)、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援
対象外 - 計画相談支援、障害児相談支援、地域相談支援、自立生活援助、就労定着支援

減算の期間は、事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月までです。その間、利用者全員について所定単位数から減算します。事業所は、事実が生じたら速やかに指定権者へ改善計画を提出し、事実が生じた月から3か月後に改善状況を報告します。報告がない、または改善が不十分な場合は、改善が認められるまで減算が続きます。複数の事由に該当しても減算を重ねて適用しない、と説明している自治体資料もあります(枚方市)。

グループホームの例で金額を見ます。定員10人の共同生活援助で、1人1日あたり600単位、1単位10円、月30日とすると、月の基本報酬は約180万円です。10%減算が3か月続けば約54万円の減収です。生活介護(1%)は率が低いものの、定員40人で1人1日1,000単位、月22日なら月の基本報酬は約880万円で、3か月分の1%は約26万円です。加算の取りこぼしと同じ規模の影響が、研修記録の有無で生じます。GHと生活介護の加算・減算の全体像は障害者グループホームの加算一覧【2026年版】要件・単位数・減算の早見表と生活介護の加算一覧【2026年版】単位数・算定要件・届出の早見表と取りやすい順で確認できます。

運営指導で確認される書類と自主点検

厚生労働省は令和8年(2026年)6月8日付で指導指針を改め、運営指導で確認する項目と書類を「確認項目及び確認文書」として示しました。身体拘束の体制は、指針、委員会の議事録と周知記録、研修の記録(日時・内容・受講者)、身体拘束の実施記録と個別支援計画をセットで見られると考えて準備してください。身体拘束を行っている利用者がいる場合は、個別支援計画に態様・時間・理由が記載されているか、本人・家族への説明の記録があるか、再評価の記録があるかを見られます。虐待防止の体制(委員会・研修・担当者)と一体で点検されるのが通例です。運営指導の準備は障害福祉の運営指導チェックリスト|サービス別の確認項目と準備【DL付き】で確認してください。減算の判定や体制届との整合まで含めて毎月の請求を確認したい場合は、障害福祉専門の請求代行WITH福祉のように、減算の適用月の反映と請求の整合確認を外部に任せる方法もあります。

同意書の扱い|同意は3要件の代わりにならない

「保護者から同意書をもらっているから大丈夫」という考え方は、障害福祉では通用しません。同意は手続きの一部であり、3要件の代わりにはなりません。本人・家族への十分な説明と了解の確認は必要ですが、同意書があっても切迫性・非代替性・一時性のいずれかを欠けば、正当な理由のない身体拘束として虐待に当たり得ます。介護保険の厚生労働省手引きは「家族の同意は、身体拘束を認める根拠にはならない」と明記しており、障害福祉でも同じ考え方で指導されています。

実務では、契約時に「身体拘束を行う場合があります」という包括的な同意を取る事業所があります。包括同意だけで個別の身体拘束を正当化することはできません。やむを得ず行うときは、そのたびに内容・目的・理由・時間・期間を説明し、個別支援計画の変更として同意を得ます。説明した日時・説明者・説明を受けた人・本人の意思表示の様子を記録に残します。本人に意思決定の支援が必要な場合は、本人の理解に合わせた説明の工夫(視覚的な資料、普段の支援者の同席など)を行い、その方法も記録します。

同意書の様式は、自治体が参考様式を示していることがあります。「緊急やむを得ない身体拘束に関する説明書」として、身体拘束の態様・時間・期間・理由・解除の条件・再評価の時期・相談窓口を記載し、本人・家族・説明者の署名欄を置くのが一般的です。説明書の控えは個別支援計画と一緒に5年間保存します。

児童分野の注意点|放デイ・児発・障害児入所施設

障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援)と障害児入所施設は、こども家庭庁の所管です。根拠は児童福祉法に基づく指定通所支援の基準第44条で、内容は成人の基準と同じです。委員会・指針・研修の義務化(令和4年4月)と減算の適用(令和5年4月)も成人と同じ日程で進みました。減算率は、通所支援が所定単位数の1%、障害児入所施設が10%です。放デイ・児発の加算・減算の全体像は放課後等デイサービス・児童発達支援の加算一覧【2026年版】|単位数・要件・届出の早見表で確認できます。

児童分野で特に注意したい点は3つです。

  • 保護者への説明と同意が中心になるため、「こども本人への説明」が抜けやすい。年齢と理解に応じて本人にも説明し、その様子を記録する。
  • 安全確保と身体拘束の線引きが難しい。道路への飛び出しを止めるために手を引く、パニック時に危険物から離すなどは、瞬間的な安全確保です。一方、落ち着かせるために職員が体で押さえ続ける、部屋から出られないように入口をふさぐ行為が繰り返されているなら、身体拘束として3要件の判定・計画への記載・記録が必要になる。
  • 送迎車のチャイルドロックや、教室の出口の施錠は、本人が自分の意思で出られない状態なら隔離に当たり得る。安全目的なら、職員がすぐ開けられる体制と、その運用を指針に書く。

障害児通所支援は、障害者虐待防止法の「障害者福祉施設従事者等による虐待」の対象です。正当な理由のない身体拘束は通報義務の対象になります。放デイ・児発では、児発管が個別支援計画の作成責任者です。身体拘束を行う場合の個別支援計画への記載、保護者への説明、モニタリングでの再評価は、児発管の業務として年間計画に組み込んでください。児発管が不在になると計画の更新が止まり、身体拘束の再評価も滞ります。児発管不在時の対応は児発管がいない・退職した場合どうなる?減算・受け入れへの影響と今すぐやることで解説しています。

確認テスト(5問・答えと解説つき)

年1回の研修と新規採用時研修の最後に使う確認テストです。解説を隠して配布してください。

問1 障害福祉サービスで身体拘束等の禁止を定めている根拠はどれか

  1. 指定障害福祉サービス基準第35条の2(障害児通所支援は指定通所支援基準第44条)
  2. 労働基準法
  3. 各事業所の就業規則

正答は1です。基準省令が、緊急やむを得ない場合を除く身体拘束等の禁止、記録、委員会・指針・研修の措置を定めています。

問2 障害者虐待防止法上、正当な理由なく障害者の身体を拘束する行為はどれに当たるか

  1. 身体的虐待
  2. 心理的虐待
  3. 虐待には当たらない

正答は1です。障害者虐待防止法第2条は、正当な理由なく障害者の身体を拘束することを身体的虐待に含めています。3要件を満たさない身体拘束は、通報義務の対象です。

問3 やむを得ず身体拘束を行う場合の手続きとして、障害福祉に固有のものはどれか

  1. 個別支援計画に態様・時間・理由を記載する
  2. 職員の勤務表に記載する
  3. 市町村への届出だけで足りる

正答は1です。組織による決定、個別支援計画への記載、本人・家族への十分な説明、行政への相談・報告、記録が手続きです。計画への記載は、介護保険にはない障害福祉固有の手続きです。

問4 身体拘束廃止未実施減算について正しいものはどれか

  1. 身体拘束を行った利用者の分だけ減算される
  2. 委員会・指針・研修・記録のいずれかが欠ければ、身体拘束の有無を問わず利用者全員が減算される
  3. 減算額は現在も1日5単位である

正答は2です。減算は事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで、利用者全員に適用されます。令和6年4月から、施設・居住系は所定単位数の10%、訪問・通所系は1%です。

問5 保護者から身体拘束の同意書をもらっている場合の扱いとして正しいものはどれか

  1. 同意書があれば3要件の確認は不要である
  2. 同意は手続きの一部であり、3要件を満たさなければ身体拘束は正当化されない
  3. 契約時の包括同意があれば個別の説明は不要である

正答は2です。同意は3要件の代わりになりません。やむを得ず行うたびに個別に説明し、個別支援計画の変更として同意を得て記録します。

よくある質問(FAQ)

身体拘束を一度も行っていない事業所でも、委員会・指針・研修は必要ですか?

必要です。3つの措置は身体拘束の有無にかかわらず講じる義務で、欠けていれば減算の対象です。事例がない年は、ヒヤリハットの分析、身体拘束に至りそうな場面の事前検討、指針の見直しを委員会の議題にし、「実施事例なし」と確認したことも議事録に残します。

虐待防止委員会と身体拘束等適正化委員会を一緒に開いてもよいですか?

一体的に設置・運営できます。解釈通知も認めています。一緒に開く場合は、議事録に身体拘束の適正化に関する議題と結論を独立した項目で残してください。研修も、虐待防止研修の中で身体拘束の適正化を扱えば、適正化研修を実施したとみなされます。その場合は、研修記録に身体拘束の内容を扱ったことを明記します。

強度行動障害のある利用者への「押さえる」対応は、すべて身体拘束ですか?

職員が体で押さえて行動を制限する行為は、障害福祉の手引きが身体拘束の例として挙げています。他害や自傷を止める瞬間的な安全確保と、継続的・反復的な制限は区別して考えますが、繰り返されているなら身体拘束として3要件の判定、個別支援計画への記載、記録が必要です。行動の背景を分析し、環境調整や構造化で押さえる場面そのものを減らす支援が本筋です。

減算に該当する事実が分かりました。どう手続きすればよいですか?

速やかに指定権者へ改善計画を提出し、体制届で減算の適用を届け出ます。事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月まで減算です。事実が生じた月から3か月後に改善状況を報告します。自己申告せずに運営指導で判明すると、減算に加えて、虐待防止の体制についても指摘を受けやすくなります。

【無料ダウンロード】障害福祉の身体拘束適正化 研修スライド(PDF・A4横・確認テスト付き)本記事の要点(根拠省令・該当行為の例・3要件と手続き・記録・委員会と指針と研修・減算・児童分野)を10~15枚のスライドにまとめたものです。年1回の研修と新規採用時研修でそのまま投影でき、巻末に確認テスト5問と解答を付けています。

障害福祉の身体拘束適正化 研修スライド(PDF)をダウンロードする

まとめ|自施設で明日やること

  • 指針を開き、7項目(考え方・組織・研修・報告・発生時対応・閲覧・その他)がそろっているか確認する。
  • 直近の委員会議事録と研修記録を確認し、1年以内の開催・実施と新規採用者の受講記録があるか点検する。
  • 現在行っている身体拘束(押さえる対応・施錠を含む)を一覧にし、個別支援計画への記載と3要件の記録があるか確かめる。
  • 記録様式に「態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由」の欄があるか確認し、5年間の保存ルールを決める。
  • 契約時の包括同意だけで運用していないか見直し、個別の説明・同意の手順を指針と計画の流れに組み込む。
  • 児童分野は、保護者への説明に加えてこども本人への説明と、安全確保と身体拘束の線引きを職員会議で確認する。

WITH福祉は障害福祉専門の請求代行サービスです。毎月20,000件以上の請求を代行し、導入事業所は約1,200事業所、全国47都道府県に対応しています。実績記録票をFAXで送るだけで完結し、請求事務の負担を90%削減できます。減算の適用月の反映や体制届との整合確認も含めて、毎月の請求を任せられます。WITH福祉の詳細を見る

身体拘束に頼らない支援には、行動の背景を読み取れる職員の定着が必要です。人材採用にお困りの事業所様は、e介護転職への求人掲載もご検討ください。

あわせて読みたい

参考(一次情報)