2027年度の介護保険制度改正|2割負担・ケアプラン有料化の現在地

本記事は2026年8月20日時点の公開情報に基づいています。制度は今後変わる可能性があります。最新・正式な内容は必ず厚生労働省の発表をご確認ください。

2027年度(令和9年度)は、介護の世界で2つの大きな見直しが同時にやってくる節目です。1つは事業所の収入を左右する「介護報酬改定」。もう1つがこの記事で扱う「介護保険制度改正」です。制度改正は、利用者がいくら払うか、どのサービスが給付の対象かを見直す話です。利用者の財布が変われば、事業所の稼働率や未収金にも影響が及びます。国の議論のどこまでが決まり、どこからが決まっていないのか。介護老人保健施設や通所・訪問系事業所の管理者の目線で、現在地を整理します。

まず結論(おさえておきたい3点)

  • 2027年度から第10期介護保険事業計画(2027~2029年度)が始まります。市町村の計画と保険料が新しくなり、事業所の指定や整備量もこの計画に紐づきます。
  • 利用者2割負担の対象拡大は結論が先送りされました。「第10期の開始前までに結論を得ることが適当」とされ、2026年度中の動きが焦点です。
  • 制度全体の見直しを待たず、2026年8月には利用者負担の判定基準額の見直しがすでに実施されています。負担割合証と負担限度額認定証の確認は、今月からの実務です。

「報酬改定」と「制度改正」は別の話

結論から言うと、2027年度に向けた国の議論は2本立てです。それぞれ担当する会議が違い、事業所への効き方も違います。混同したまま情報を追うと、「決まった」「先送り」のニュースが正しく読めなくなります。

項目 介護報酬改定 介護保険制度改正
議論する会議 社会保障審議会 介護給付費分科会 社会保障審議会 介護保険部会
決まること サービスの単位数、加算・減算の要件 利用者負担の割合、給付の範囲、保険料の仕組み
ひとことで言うと 事業所の収入(売上)の話 利用者の財布と制度の器の話
直近の節目 2027年度改定に向けて議論中 2025年12月25日に部会意見をとりまとめ
実施のサイクル 原則3年に一度 3年ごとの計画期間に合わせて見直し

どちらも3年に一度で、2027年度に時期が重なります。だから混同されやすいのです。報酬側の議論、つまり介護給付費分科会でいま何が話されているかは、【2027年度】介護報酬改定はどうなる? いま始まっている議論のポイントをやさしく解説で整理しています。障害福祉サービス等報酬との同時改定という切り口は、2027年度 介護報酬改定の論議スタート|「同時改定」の論点を先取りをご覧ください。この記事では、報酬の話は繰り返しません。以下はすべて「介護保険部会」=制度側の話です。

2027年度は何が変わる節目なのか(第10期介護保険事業計画)

介護保険は「3年を1期」とする計画に沿って運営されています。市町村が介護保険事業計画を、都道府県が介護保険事業支援計画を作ります。2027年度からは第10期(2027~2029年度)が始まります。制度の基本的な仕組みは、介護保険とは?保険の仕組みからサービス利用までの流れで解説しています。

この計画で決まるのは、大きく2つです。1つは、地域でどのサービスをどれだけ確保するかという整備量。もう1つは、そのサービス量をまかなうための65歳以上の介護保険料です。65歳以上の保険料の全国平均は、制度開始時の約2,900円から2倍以上に上がっています。第10期の保険料は、2026年度中に各市町村で検討され、議会の審議を経て決まります。

事業所にとって他人事でないのは、指定や整備の枠がこの計画に紐づくからです。地域密着型サービスの公募の有無、施設整備の枠、総合事業の設計は、市町村の第10期計画に書き込まれます。自施設の3年後の環境は、国の審議会と自分の市町村の計画の両方で決まると考えてください。

第10期が始まるまでの流れ

国の議論から施行までは、次の流れで進んでいます。2025年12月に介護保険部会が意見をとりまとめ、2026年4月3日に「社会福祉法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。同法案は2026年6月19日の参議院本会議で可決・成立し、6月25日に公布されています。施行期日は一部を除き2027年(令和9年)4月1日です。これを受けて2026年度に市町村・都道府県が第10期計画を作成し、2027年度から計画が走り出します。つまり2026年度は、国の結論と地元の計画づくりが同時に動く1年になります。

第10期の基本指針で何が示されたか(2026年6月29日・第135回)

市町村が計画を作る際のよりどころが、国の「基本指針」です。2026年6月29日の第135回介護保険部会で、この基本指針の案が示されました。あわせて、社会福祉法等の一部を改正する法律の報告と、「特定地域」の考え方も議題になっています。

基本指針案のポイントは次のとおりです。

  • 2040年を見据えた計画づくり。高齢者数がピークに向かう一方で現役世代が急減する局面を前提に、地域包括ケアシステムの深化・推進を明確に位置づけました。
  • 地域を主に3つに分けて考える。全国一律ではなく、「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市等」の分類で、地域の実情に応じた提供体制を検討します。
  • 特定地域の考え方の明示。今の基準ではサービスを維持しにくい地域への対応が、計画にも反映されます。
  • 改正社会福祉法への対応。地域共生社会の実現や包括的な支援体制の整備を、介護保険事業計画にも反映させます。

また、2026年3月9日の第134回では、計画作成への都道府県の積極的な関与が促されました。初期段階から医療・介護の担当者による協議の場を持つことも求められています。「見える化システム」に新たな地域分析ツールを追加し、2026年3月以降に順次提供する予定とも説明されています。自分の市町村がどの地域分類で語られるのか、計画の素案にどう書かれるのか。ここが第10期の読みどころです。

先送りされた3つの論点と、決着する時期

介護保険部会は、令和6年12月以降18回にわたる審議を経て、2025年12月25日に「介護保険制度の見直しに関する意見」をとりまとめました。ただし、利用者の負担に直結する主要な論点の多くは、このとりまとめでも結論が出ていません。まず全体像を表で押さえてください。

論点 2025年12月の意見での扱い 結論の時期
①2割負担の対象拡大(「一定以上所得」の判断基準の見直し) 継続検討。医療保険制度における給付と負担の見直しや、補足給付で行われている預貯金等の把握に係る事務の状況等を踏まえるとされた 第10期の開始(2027年度)の前までに結論を得ることが適当とされた
②ケアプラン作成の自己負担(有料化) 一般の居宅介護支援(利用者全体)への導入は今回も盛り込まれず。一方、登録制の対象となる有料老人ホーム(住宅型が中心)の入居者について、ケアプラン作成と地域生活支援を一体で提供する新サービス「登録施設介護支援」を創設し、所得に応じた1~3割の利用者負担を求めることが意見に明記された 新サービスの創設は2026年6月成立の改正法で決定済み。ただし施行日は公布日(2026年6月25日)から2年以内の政令で定める日とされ、2026年8月時点で未定。報酬・基準は介護給付費分科会で議論中
③軽度者向けサービスの総合事業への移行 新たな提案はなく、引き続き包括的に検討とされた 時期の明示なし

①2割負担の対象拡大:どこまで議論が進んでいたか

現在、介護サービスの自己負担は原則1割です。一定以上の所得がある人は2割、現役並み所得の人は3割を負担します。2割負担の現行基準は、単身世帯で「年金収入+その他合計所得金額280万円以上」(夫婦世帯は346万円以上)かつ「合計所得金額160万円以上」。65歳以上の所得上位20%程度に相当します。

2025年12月1日の第130回部会では、厚生労働省がこの基準を引き下げる素案を示しました。基準を260万円・250万円・240万円・230万円に引き下げる4案です。2割負担になる人は、それぞれ約13万人・約21万人・約28万人・約35万人増える見込みとされました。あわせて、負担が急に増えないための配慮措置も2案が示されています。1つは、自己負担の上げ幅を当分の間、最大7,000円に抑える案。もう1つは、預貯金等が一定額(例えば500万円)以下なら1割のままとする案です。

部会では賛否が大きく割れました。物価高のもとでの負担増に反対する意見と、医療保険との整合性から拡大すべきだという意見の両方が出ています。結局、2025年12月の意見では結論を持ち越しました。給付と負担の議論は2022年以降、実質4回先送りされたことになるとの指摘もあります。ここで大事なのは、「何も決まっていない」のではなく「2027年度の前までに結論を出す」と期限が切られたことです。2026年度中に、具体的な基準と配慮措置が固まる可能性が高い局面です。

②ケアプラン有料化:全体は見送り、有料老人ホーム入居者向けは法制化

居宅介護支援のケアマネジメントは、現在は利用者の自己負担がありません。これに自己負担を求めるかどうかは、長年の論点です。2022年12月の前回とりまとめでも見送られ、「第10期計画期間の開始までの間に結論を出す」とされていました。

今回の議論で厚生労働省は、低所得者に配慮しつつ幅広い利用者に負担を求める案と、一部の有料老人ホームの利用者に限定する案の2案を示しました。部会の意見は割れています。利用控えや公正中立性への懸念から反対する声がある一方、ケアマネジメントの価値を認識してもらうために導入すべきだという声もあります。結果として、一般の居宅介護支援(利用者全体)への有料化は2025年12月の意見に盛り込まれませんでした。一方で、登録制の対象となる有料老人ホームの入居者には、新しい仕組みが設けられます。ケアプラン作成と地域生活支援を一体的に提供する介護保険サービス「登録施設介護支援」の創設です。利用者には、所得に応じた1~3割の負担を求めることが意見に明記されました。この内容は、2026年6月19日に成立した「社会福祉法等の一部を改正する法律」(6月25日公布)に盛り込まれました。つまり、創設自体は法律上決まっています。ただし施行日は公布日から2年以内の政令で定める日とされており、2026年8月時点では決まっていません。報酬額や指定基準は、社会保障審議会介護給付費分科会で議論が続いています。居宅介護支援事業所を併設する法人は、続報を追う必要があります。

③軽度者向けサービス:新たな提案はなし

要介護1・2の人への訪問介護・通所介護を市町村の総合事業へ移す構想も、2022年12月に見送りが決まった経緯があります。今回の見直し議論では新たな提案はなく、意見では引き続き包括的に検討するとされました。3つの論点のうち、最も動きが小さかったテーマです。ただし、給付費の増大という背景事情は変わっていません。次の計画期間に向けて再浮上する可能性は残ります。

2026年8月に先行して動いたもの(利用者負担の基準額見直し)

制度改正の本体を待たずに、現場ではすでに変化が始まっています。厚生労働省は介護保険最新情報vol.1532で、令和8年8月1日から利用者負担等の判定基準額を見直す通知を出しました。令和7年の老齢基礎年金(満額)が826,500円となったことを踏まえた改定です。制度の仕組み自体を変えるものではなく、判定に使う基準額の更新が主な内容です。

影響が出るのは、次の3つの判定です。

  • 利用者負担割合(1割・2割・3割)の判定
  • 高額介護サービス費の自己負担上限額の区分
  • 負担限度額認定(補足給付)の判定区分

判定は市町村が行い、新しい負担割合証や負担限度額認定証が交付されます。事業所側の実務は、8月以降に利用者から提示される新しい証を確認し、請求・徴収額に正しく反映することです。所得更正や世帯構成の変更で後日負担割合が変わる場合もあります。その場合の差額調整は、原則として保険者(市町村)と利用者の間で行われます。

また、施設やショートステイの食費に関わる基準費用額と負担限度額の引き上げも、令和8年8月から実施されています。対象者と実務の詳細は、【2026年8月】介護施設の食費・居住費が引き上げ|補足給付見直しの対象と実務で解説しています。「制度改正はまだ先の話」ではなく、利用者負担の見直しは一部がすでに現場に届いている。この感覚を持っておくと、2027年度への備えが具体的になります。

利用者負担が上がると事業所に何が起きるか

ここからがこの記事の核です。2割負担の対象が広がった場合、対象となる利用者の自己負担は原則2倍になります。事業所の収入単価は変わりません。しかし、利用者の行動が変われば、稼働率と収益は間接的に動きます。想定される影響を、実務の順に整理します。いずれも「必ず起きる」ではなく「こうした影響が指摘されている」段階として読んでください。

利用控えとサービス回数の削減

介護保険部会では、委員から次のアンケート結果が紹介されました。利用料が2割になった場合、40.8%の利用者がサービスの利用回数や時間を減らすと回答。中止するという回答を合わせると約半数に達しました。利用を続けるために食費など生活費を切り詰めるという回答も31.2%に上ったとされます(医療系団体の緊急調査、1,341名回答)。数字は一団体の調査ですが、通所の回数減やショートステイの日数減が最初に出やすいという見立ては、多くの委員に共有されています。

区分支給限度基準額に対する使い方の変化

自己負担が倍になると、「限度額の範囲でしっかり使う」から「本当に必要な分だけ使う」へ、利用者側の発想が変わる可能性があります。ケアプランの見直し相談が増え、居宅のケアマネジャー(介護支援専門員)との調整も増えます。自施設の利用者の限度額利用率を把握しておくと、影響の出方を早く察知できます。

滞納・未収金と経営への波及

月々の自己負担が数千円から数万円単位で増えれば、支払いが遅れる利用者が出るおそれがあります。未収金は、発生してから対応すると回収が難しくなりがちです。介護業界では倒産件数が過去最多を更新しており、資金繰りの余力が小さい事業所ほど、未収の影響は重くなります。経営面の備えは、介護倒産が過去最多176件(2025年)|訪問介護が生き残る経営の打ち手もあわせてご覧ください。

家族からの問い合わせと説明の実務

負担が変わるとき、最初に矢面に立つのは現場の窓口です。「なぜうちだけ2割なのか」「先月と請求額が違う」という問い合わせは、制度の節目のたびに増えます。負担割合の判定は市町村が行うものであり、事業所が決めているのではないこと。不服がある場合の相談先は市町村であること。この2点を、相談員や事務職員が同じ言葉で説明できるようにしておくと、トラブルを減らせます。負担割合証の有効期間(毎年8月更新)の確認フローとセットで整えておきたいところです。

今から準備できること(管理者のチェックリスト)

結論が出るのは2026年度中の見込みです。いま断定できることは少ない一方で、どちらに転んでも無駄にならない準備はあります。自施設の状況を、次のリストで点検してみてください。

  • 負担割合証・負担限度額認定証の確認フローを決めている(8月の更新時期に確認漏れが出ない仕組みがある)
  • 2割・3割負担の利用者が何人いるか、すぐに答えられる
  • 2割負担の対象が広がった場合に影響を受けそうな利用者層を、収入区分のイメージで把握している
  • 利用者・家族向けの説明の型がある(制度で決まった変更であること、判定と相談の窓口は市町村であることを伝えられる)
  • 未収金の発生状況と、発生時の対応ルール(督促の手順・分割相談)を把握している
  • 利用料の支払い方法を点検した(口座振替の案内など、滞納が生まれにくい形になっている)
  • 区分支給限度基準額に対する利用率を確認し、利用調整の相談に備えている
  • 自分の市町村の第10期計画のパブリックコメント時期を確認した(多くは2026年冬ごろの見込み)
  • 地域ケア会議や集団指導の場で、保険料の見通しや整備方針の情報を拾う担当を決めている
  • 中山間・人口減少地域で運営している場合、「特定地域」の議論の続報を追う体制がある
  • 職員に「報酬改定と制度改正の違い」を共有した(問い合わせ対応の質が上がる)

チェックがつかない項目が多くても、あわてる必要はありません。優先順位は上から3つ、つまり負担割合証の確認体制と対象者の把握です。ここだけは、2026年8月の基準額見直しですでに実務になっています。

今後のスケジュール(確定と見込みを分けて)

最後に、時間軸を1枚にまとめます。「実施済み」「確定」以外は現時点で確定した情報ではなく、時期は前後する可能性があります。

時期 動き 状況
2025年12月25日 介護保険部会が「介護保険制度の見直しに関する意見」をとりまとめ 実施済み
2026年4月3日 「社会福祉法等の一部を改正する法律案」を閣議決定 実施済み
2026年6月19日 同法が成立(6月25日公布)。特定地域の創設、有料老人ホームの登録制、登録施設介護支援の創設、ケアマネジャーの更新制廃止など 実施済み
2026年6月29日 第135回部会で第10期の基本指針案を提示 実施済み
2026年8月1日 利用者負担等の判定基準額の見直しを実施 実施済み
2026年度中 2割負担の対象拡大など「給付と負担」の結論/市町村・都道府県が第10期計画を作成 見込み
2026年冬~2027年2月ごろ 市町村でパブリックコメント・議会審議を経て保険料を決定 見込み
2027年4月1日 改正法の施行(一部を除く)、第10期介護保険事業計画がスタート 確定(ただし登録制と登録施設介護支援は公布から2年以内の政令で定める日で未定)

まとめ

2027年度に向けた介護保険の制度改正は、改正法の成立と「期限つきの先送り」が混在する状態です。改正法(社会福祉法等の一部を改正する法律)は、2026年6月に成立・公布されました。一方、2割負担の対象拡大は、第10期の開始前までに結論を得ることが適当とされました。ケアプラン有料化は、一般の居宅介護支援では見送られました。一方で、登録制の有料老人ホーム入居者向けの新サービス「登録施設介護支援」として法制化されています(施行日は未定)。軽度者サービスの移行は引き続き検討です。一方で、利用者負担の判定基準額の見直しは2026年8月にすでに実施されています。

管理者として押さえるべきは3点です。第一に、報酬改定(収入の話)と制度改正(利用者の財布の話)を分けて情報を追うこと。第二に、2026年度中に出る「給付と負担」の結論と、自分の市町村の第10期計画の両方を見ること。第三に、負担割合証の確認体制と未収金対策という足元の実務を、いまのうちに整えることです。本サイトでも続報を追っていきます。

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出典