有料老人ホームの「登録制」とは?いつから・対象・登録施設介護支援まで解説

本記事は2026年8月21日時点の公開情報に基づいています。制度は今後変わる可能性があります。最新・正式な内容は必ず厚生労働省の発表をご確認ください。

住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を運営する経営者・施設長に向けて、有料老人ホームの「登録制」を解説する記事です。2026年6月に成立した社会福祉法等の一部を改正する法律により、これまでの届出制に代わる新たな登録制度の創設が決まりました。あわせて、登録ホームの入居者を対象とする新しいケアマネジメント「登録施設介護支援」も介護保険給付に位置づけられます。

制度の中身はこれから政省令と審議会の議論で具体化される段階です。ただ、対象は広い範囲に及ぶ可能性があり、住まい系事業者への影響は小さくありません。この記事で、登録制の概要・対象・スケジュール・最新の論点・今から準備できることがわかります。

この記事でわかること

  • 有料老人ホームの「登録制」とは何か(届出制から何が変わるのか)
  • 登録制の対象になるホームの範囲(中重度の入居者がいる施設)
  • 施行スケジュールと、今後の議論の場(検討会・介護保険部会・介護給付費分科会)
  • 新しいケアマネジメント「登録施設介護支援」と報酬論議の現在地
  • 住宅型有料・サ高住の事業者が今から準備できること

有料老人ホームの「登録制」とは|届出制から何が変わるのか

結論から言うと、登録制とは、中重度の要介護者等が入居する有料老人ホームに、都道府県知事への「登録」を義務づける新しい制度です。2026年6月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)に盛り込まれました。これまでの有料老人ホームは、老人福祉法にもとづく「届出」で足りていました。届出制には、行政が施設を事前に審査する仕組みがありません。そのため、いわゆる「囲い込み」(入居者のケアプランを自社系列のサービスで固め、過剰な介護サービスを提供する運営)への対応が課題とされてきました。登録制は、情報の透明性を高め、ケアプランと介護サービスの独立性を確保することを目的としています。

届出制と登録制の主な違いは次のとおりです。

項目 これまで(届出制) これから(登録制)
手続き 都道府県等への届出 都道府県知事への登録(審査あり)
有効期間 なし 5年ごとの更新制
行政の関与 事後的な指導が中心 基準不適合・不正行為等があれば登録拒否・取消しの対象
設置者の義務 重要事項の情報開示など 誇大広告の禁止、契約前の書面交付・説明義務などの義務規定を整備。報告徴収・立入検査、登録拒否・取消しの対象に

また、入居者が介護保険施設などへの移行を希望する場合には、関係機関との連絡調整といった便宜を図る義務も設けられます。運営の自由度が高かった住まい系事業に、施設サービスに近い規律が入るイメージです。

対象になるのはどんなホームか

登録の対象は、中重度の要介護者等(政令で定める要介護状態区分に該当する方)が入居する有料老人ホームです。介護保険最新情報Vol.1518(2026年6月25日)では、対象施設は従来の届出から「都道府県知事への登録」が必要になると示されています。具体的にどの要介護度から対象になるかは、今後の政令で定められます。

ここで押さえておきたいのは、入居者の中重度化がすでに進んでいる実態です。厚生労働省の資料によると、2025年度時点で住宅型有料老人ホームでは要介護3以上の入居者が全体の約56%を占めます。医療処置を必要とする方も13.4%にのぼります(厚労省資料)。「うちは住宅だから関係ない」とは言いにくい状況で、業界紙・週刊高齢者住宅新聞では施設の大半が対象になるとの見方も報じられています。一方で、専従の看護職員を配置している住宅型有料は20.3%にとどまります。中重度の入居者が多いほど登録の対象になりやすく、看護配置が薄い施設ほど基準への対応負担が大きくなる構図です。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のうち有料老人ホームに該当する住宅も、同じ文脈で議論の対象に含まれています。自施設の入居者の要介護度分布と医療処置の状況を、まず数字で把握しておきましょう。

いつから始まるのか|施行スケジュールはまだ確定していない

登録制の施行日は、まだ確定していません。改正法の施行期日は項目ごとに異なり、登録制の施行日は今後の政令で定められます。登録施設介護支援の施行日は「公布から2年以内の政令で定める日」とされており、遅くとも2028年6月までに始まる枠組みです。現時点で確定・見込みの動きを時系列で整理すると次のとおりです。

時期 動き
2026年6月25日 社会福祉法等の一部を改正する法律が公布(登録制・登録施設介護支援の創設が決定)
2026年7月29日 厚労省の検討会(第8回)で登録制の具体化に向けた議論を開始
2026年秋頃 検討会の整理を社会保障審議会・介護保険部会へ報告(予定)
今後(時期未定) 政省令で登録基準・対象となる要介護状態区分・施行日を確定(登録施設介護支援は公布から2年以内に施行)

施行までには一定の準備期間が置かれる見通しです。全国有料老人ホーム協会は、登録申請で事業計画書や入居契約約款などの添付が想定されるとして、書類整備への早めの着手を勧めています。

検討会で議論されている4つの論点(2026年7月29日・第8回)

厚生労働省は2026年7月29日、「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」の第8回会合を開きました。登録制の具体化に向けた論点は次の4点です。

  • 登録基準:特定施設入居者生活介護やサ高住との均衡に配慮しつつ、介護・医療ニーズへの対応や、夜間の火災・災害など緊急時対応を想定した基準を設ける方向。「介護・看護職員の最低限の人員配置を明示すべき」との委員意見が出たことも報じられています。
  • 登録事務:事業者の事務負担を抑えるため、サ高住の情報提供システムと同様に、システム上で登録申請・審査・情報公表まで完結できる仕組みを検討。自治体が高齢者向け住まいの位置づけを明確化し、第10期介護保険事業(支援)計画(2027~2029年度)に反映する方向も示されています。
  • 対象となるホームの範囲:どの要介護状態区分から対象とするかなど、範囲の整理。
  • 入居者紹介事業者の優良認定制度:紹介会社の質を担保するため、事業者・紹介事業者・有識者等による三者協議の場で制度設計を検討。

人員配置基準の水準しだいでは、看護職員の採用・配置がこれまで以上に重要になります。検討会の資料は厚生労働省のサイトで公開されています。自施設に関係する論点は原文で確認してください。

「登録施設介護支援」とは|報酬の議論も始まった

登録制とセットで押さえたいのが、新しいケアマネジメント類型「登録施設介護支援」です。登録を受けた有料老人ホーム(外付けサービス型)の入居者を対象に、ケアプランの作成・調整を行うサービスとして介護保険給付に位置づけられます。利用者負担は所得に応じて1~3割となる見込みで、無料が維持される一般の居宅介護支援とは扱いが分かれます(一般の居宅介護支援の有料化は今回見送られました)。

報酬の議論もすでに始まっています。2026年8月5日の社会保障審議会・介護給付費分科会(第262回)で、高齢者住まいへのサービス提供のあり方とあわせて登録施設介護支援の報酬が議題になりました。委員からは「居宅介護支援の報酬水準を踏襲すべき」との声が相次いでいます。一方、同一建物減算をどう扱うかについては意見が分かれました。現場のケアマネジャーの業務負担が増えることを危惧する意見も出ており、制度設計の詳細はこれから詰められます。2027年度の介護保険をめぐる改正の全体像は、2027年度の介護保険制度改正の記事で整理しています。

住まい系事業者が今から準備できること

施行日や基準は未確定ですが、方向性ははっきりしています。「透明性」と「ケアプランの独立性」です。今から次の準備を進めておくと、政省令が出た後に慌てずに済みます。

  • 入居者データの把握:要介護度の分布、医療処置が必要な方の人数を一覧化する。登録対象になるかの判断材料になります。
  • 人員配置の現状整理:介護・看護職員の配置状況を整理し、基準が示された場合の不足を試算しておく。
  • ケアプランの独立性の点検:入居者のケアプランに占める自社・系列サービスの割合を確認する。区分支給限度基準額に対する利用割合が一律に高い場合は、外部から囲い込みと見られるリスクがあります。
  • 広告・契約書類の点検:パンフレットやWebの表現に誇大な記載がないか、契約前の説明・書面交付の流れが整っているかを確認する。
  • 登録申請書類の下準備:事業計画書・入居契約約款など、登録申請での添付が想定される書類(全国有料老人ホーム協会の解説より)を最新化しておく。
  • 続報のウォッチ:検討会の介護保険部会への報告(2026年秋頃)と政省令の公布を確認する。

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まとめ

有料老人ホームの登録制は、2026年6月公布の社会福祉法等改正法で創設が決まった、届出制に代わる新しい仕組みです。中重度の要介護者等が入居するホームは、5年ごとの更新制で都道府県知事の登録を受け、誇大広告の禁止や契約前の書面交付などの義務を負います。あわせて、登録ホームの入居者向けに「登録施設介護支援」が介護保険給付として創設され、報酬の議論も2026年8月から始まりました。施行日や登録基準は政省令待ちですが、住宅型有料の入居者は要介護3以上が約56%と中重度化が進んでおり、対象は広くなる可能性があります。入居者データの把握、ケアプランの独立性の点検、書類の整備から着手しておきましょう。

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出典・参考(一次情報)