この記事は、在宅で介護保険サービスの利用を考える方や、ケアマネジャーへの転職を検討する方に向けたものです。居宅介護支援事業所の役割・人員基準・利用方法・費用・職場としての特徴が分かります。
在宅で介護保険サービスを使うとき、その出発点になるのが居宅介護支援事業所です。ここに在籍する介護支援専門員(ケアマネジャー)が、利用者一人ひとりに合ったケアプラン(居宅サービス計画)を作ります。サービス事業者との調整役も担います。本記事では、これらの内容を2026年7月時点の最新情報で解説します。
記事でわかること
この記事でわかること
- 居宅介護支援事業所とは何か、どんな役割を担うのか
- 人員基準(介護支援専門員・管理者)と利用時の費用
- アセスメントからモニタリングまでの仕事の流れ
- 2024年度改定・2026年6月の処遇改善加算新設と、ケアマネの職場としての視点
居宅介護支援事業所とは
居宅介護支援事業所とは、在宅で生活する要介護者が介護保険サービスを適切に使えるよう支える事業所です。居宅サービス計画(ケアプラン)を作成し、サービス事業者などとの連絡調整を行います。「ケアプランセンター」と呼ばれることもあります。都道府県(指定都市・中核市)の指定を受けて運営され、ここに介護支援専門員(ケアマネジャー)が在籍しています。
たとえば「訪問介護と通所介護を組み合わせたいが、どの事業所に何を頼めばよいか分からない」というケースを考えてみましょう。利用者本人や家族だけで複数のサービスを比較・調整し、契約手続きまで進めるのは負担が大きい作業です。ここで居宅介護支援事業所のケアマネが、本人の心身の状況や生活環境、希望をふまえてサービスを組み立て、各事業者との橋渡しを担います。この一連の調整があることで、在宅生活を支える仕組みが回ります。ケアマネの役割の全体像は、介護支援専門員(ケアマネジャー)もあわせて参考にしてください。
「居宅介護支援」と「居宅介護」は別物
名称が似ているため混同されがちですが、両者はまったく別の制度です。居宅介護支援は介護保険のケアプラン作成を指します。一方居宅介護は障害福祉サービスのホームヘルプ(身体介護・家事援助など)です。本記事で扱うのは介護保険の「居宅介護支援」です。求人を探す際も、どちらの仕事なのかを名称でよく確認しましょう。
居宅介護支援事業所の役割と対象
居宅介護支援事業所が対象とするのは、原則として在宅で生活する要介護1~5の認定を受けた人です。主な役割は次のとおりです。
- 利用者の状態や希望をふまえたケアプラン(居宅サービス計画)の作成
- 訪問介護・通所介護・福祉用具など、各サービス事業者との連絡調整
- サービス利用後の状況確認(モニタリング)とプランの見直し
- 給付管理(利用実績の取りまとめと国保連への請求事務)
- 必要に応じた介護保険施設などへの紹介
なお、要支援1・2の人を対象とする介護予防支援は、従来は地域包括支援センターが担ってきました。居宅介護支援事業所や地域包括支援センターの位置づけは、地域包括支援センターの業務もあわせて確認すると、機関ごとの違いが整理しやすくなります。
居宅介護支援事業所の人員基準
居宅介護支援事業所を運営するには、国が定める人員基準を満たす必要があります(出典:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準、厚生労働省)。主な内容を表で整理します。
| 区分 | 基準の内容 |
|---|---|
| 介護支援専門員 | 常勤で1人以上を配置。利用者44人(ケアプランデータ連携システムの活用+事務職員配置の場合は49人)またはその端数ごとに1人を基準に増員 |
| 管理者 | 原則として主任介護支援専門員。確保が著しく困難などやむを得ない場合は介護支援専門員を管理者とすることも可能。常勤専従が基本だが、支障がなければ兼務も可 |
以前は介護支援専門員1人あたり利用者35人を基準とする考え方でした。2024年度の改定で1人あたりの取扱件数の基準が見直されました。ICT(ケアプランデータ連携システム)の活用や事務職員の配置によって、さらに多くの利用者を担当できるようになりました(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」)。増員分の介護支援専門員は非常勤でも差し支えありません。
利用の流れと費用
居宅介護支援事業所を利用する大まかな流れは次のとおりです。まず要介護認定を受け、居宅介護支援事業所を選んで契約します。その後、ケアマネが計画を作成していきます。
| ステップ | 主な内容 |
|---|---|
| 1. アセスメント | 自宅を訪問し、本人の心身状況・生活環境・希望などを把握する |
| 2. ケアプラン原案の作成 | 課題と目標を整理し、必要なサービスの組み合わせを立案する |
| 3. サービス担当者会議 | 本人・家族・各サービス事業者が集まり、原案を検討・調整する |
| 4. ケアプランの確定・利用開始 | 本人の同意を得て計画を確定し、サービス利用を始める |
| 5. モニタリング | 定期的に状況を確認し、必要に応じて計画を見直す |
| 6. 給付管理 | サービス利用実績を取りまとめ、保険給付の請求事務を行う |
このうち、サービス開始後に状況を確認しプランを調整する工程はケアプランのモニタリングで解説しています。利用者の状態や課題を把握する工程はアセスメントで詳しく扱っています。
費用面の大きな特徴は、居宅介護支援費に利用者の自己負担がない(全額が介護保険から給付される10割給付)点です。ケアプランの作成費用は、創設時から利用者が積極的にサービスを使えるよう原則無料とされています。なお、ケアマネジメントの費用負担のあり方は国の審議会で継続的に議論されています。ただし2026年7月時点では、利用者負担なしの扱いが続いています(出典:厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会)。
介護報酬改定での主な見直し(2024年度・2026年6月)
2024年度(令和6年度)の介護報酬改定では、居宅介護支援についても複数の見直しが行われました。代表的なものは次のとおりです(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の概要」)。
- 取扱件数の基準(逓減制)の緩和:基本報酬が減額となる取扱件数が45件以上に引き上げられた。ケアプランデータ連携システムの活用と事務職員の配置がある場合は50件以上からとなる
- 介護予防支援の市町村指定:2024年4月から、市町村の指定を受けた居宅介護支援事業所も、要支援者向けの介護予防支援を直接提供できるようになった
- 特定事業所加算の見直し:ヤングケアラーや障害者、生活困窮者など多様な課題への対応に関する研修参加などを要件に加え、評価が充実された
さらに2026年(令和8年)6月の臨時改定では、これまで対象外だった居宅介護支援にも介護職員等処遇改善加算(加算率2.1%)が新設されました。ケアマネジャーの賃上げに直結する大きな見直しです(出典:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」)。
これらの改定には、ケアマネが質を保ちながら効率的に業務を進められるようにする狙いがあります。制度や報酬は改定のたびに変わるため、最新の数値や要件は厚生労働省の公表資料で確認しましょう。
居宅介護支援事業所で働くという選択
居宅介護支援事業所は、ケアマネジャーにとって代表的な職場の一つです。介護福祉士などとして実務経験を積み、介護支援専門員実務研修受講試験に合格して研修を修了すると、ケアマネとして働けるようになります。
職場としての主な特徴は次のとおりです。利用者の在宅生活を計画面から支える専門職で、現場の身体介助とは異なる関わり方が中心になります。
- アセスメントやモニタリングのための訪問、計画作成、関係者との調整が業務の柱になる
- 多職種・多事業所と連携し、利用者と地域資源をつなぐ役割を担う
- 管理者を目指す場合は、主任介護支援専門員の資格取得がキャリアの一つの軸になる
- 夜勤がない事業所が多く、身体介助中心の働き方から移行する人もいる
一方で、給付管理などの事務や関係者調整の負担は小さくありません。求人を比較する際は、担当件数の目安や事務職員の配置、ICT環境、特定事業所加算の取得状況などを確認すると、働きやすさをイメージしやすくなります。
利用者・家族への伝え方と事業所選びのチェックリスト
制度の用語は、利用者や家族にそのまま伝わりません。結論として、専門用語を生活の言葉に言い換えると、納得して契約・利用につながります。働く側・選ぶ側それぞれの実用ポイントをまとめます。
家族向けの言い換え例
| 専門用語 | 家族への言い換え |
|---|---|
| ケアプラン(居宅サービス計画) | 「ご本人に合った介護サービスの組み合わせ表」 |
| アセスメント | 「お体の状態やご希望をうかがう聞き取り」 |
| モニタリング | 「サービス開始後の様子を定期的に確認する作業」 |
| 給付管理 | 「使ったサービスの実績をまとめ、保険に請求する事務」 |
事業所を選ぶときの自己点検リスト
- 担当ケアマネ1人あたりの件数の目安は無理のない範囲か
- 事務職員の配置やICT(ケアプランデータ連携システム)の活用があるか
- 特定事業所加算を取得しているか(多様な課題への対応体制の目安)
- 夜間や緊急時の連絡体制が整っているか
- 主任介護支援専門員が管理者として在籍しているか
働く側にとっては、これらは職場の働きやすさを測る指標にもなります。求人比較の際は、件数・体制・加算取得状況を確認しましょう。制度の詳細は厚生労働省 介護・高齢者福祉の公表資料が参考になります。
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まとめ
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居宅介護支援事業所は、在宅の要介護者のケアプランを作り、サービス事業者との調整を担う、在宅介護の要となる事業所です。常勤の介護支援専門員1人以上の配置が必要で、管理者は原則として主任介護支援専門員が務めます。利用者の自己負担がない(10割給付)点も大きな特徴です。2024年度改定では取扱件数の緩和や介護予防支援の市町村指定が行われ、2026年6月には処遇改善加算(2.1%)も新設されました。利用を検討する人も、ケアマネとして働くことを考える人も、最新の制度をふまえて自分に合った選択につなげてください。
参考(一次情報)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」(居宅介護支援の基準・報酬の通知の正本)
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