緩和ケアについて考える~ターミナルケアとの違いとは?詳しく解説!

ターミナルケアと緩和ケアの最も大きな違いは「対象となる時期」です。緩和ケアは診断時から、ターミナルケアは終末期に限って行います。この記事を読むと、両者の違いや看取り・ホスピスとの関係、介護職が関わる場面までが分かります。言葉が似ているうえ、医療や介護の現場で重なる場面も多いため混同されがちです。WHO(世界保健機関)や厚生労働省などの定義をもとに、2026年7月時点の最新情報で整理します。

この記事でわかること

  • 緩和ケアとは何か(WHOの定義と「診断時から」の考え方)
  • ターミナルケア(終末期ケア)とは何か
  • ターミナルケアと緩和ケアの違いを比較表で整理
  • 看取り・ホスピス・エンドオブライフケアとの関係
  • 全人的苦痛(身体・精神・社会・スピリチュアル)への対応とACP(人生会議)
  • 介護職が関わる場面と役割(特養・老健・在宅など)
  • 看取り介護加算など制度面のポイント

緩和ケアとは

緩和ケアとは、重い病気にともなう心と体の苦痛をやわらげるケアです。患者本人とその家族のQOL(生活の質)を高めることを目的とします。日本緩和医療学会などが定訳を作成したWHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義(2002年)では、次のように示されています。

「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである」とされています。

ここで大切なのが、緩和ケアはがんなどと診断されたときから始められるという点です。病気がかなり進んでから受けるイメージを持たれがちです。しかしWHOの定義でも、「病の早い時期から化学療法や放射線療法などの治療と組み合わせて適応できる」とされています。つまり緩和ケアは、病気の時期を問わず、治療と並行して行えるケアなのです。

対象となる苦痛は、痛みなどの身体的なものだけではありません。精神的・社会的な苦痛から、生きる意味に関わるスピリチュアルな苦痛まで含めて、幅広く支えます。

ターミナルケア(終末期ケア)とは

ターミナルケアとは、終末期に苦痛をやわらげ、本人らしい最期を支えるケアです。余命がわずかと見込まれる終末期に行います。「終末期ケア」「終末期医療」とも呼ばれます。

終末期は、積極的な治療によって回復が見込みにくくなった時期です。そのためターミナルケアでは、延命を最優先にはしません。身体的な苦痛をやわらげ、本人の希望にそった過ごし方を支えることに重点を置きます。点滴や酸素吸入などの医療的ケアに加え、食事・入浴・排せつといった日常生活の介助や心のケアまで、多職種が連携して行います。

なお厚生労働省は、平成27年(2015年)に「終末期医療」という表現を「人生の最終段階における医療」へと改めました。本人の意思を尊重し、人生の最終段階をどう過ごすかを大切にする考え方が反映された言い換えです。ターミナルケアについては、関連記事のターミナルケアでも詳しく解説しています。

ターミナルケアと緩和ケアの違い

両者の最も大きな違いは「対象となる時期」です。緩和ケアは病気と診断されたときから受けられます。一方ターミナルケアは、終末期に限定されます。言い換えれば、ターミナルケアは緩和ケアの考え方を終末期に当てはめたもの、と整理できます。主な違いを表にまとめます。

項目 緩和ケア ターミナルケア(終末期ケア)
対象となる時期 病気と診断されたときから(時期を問わない) 余命わずかな終末期
治療との関係 治療と並行して行える 延命より苦痛緩和とQOLを重視
主な目的 苦痛をやわらげQOLを高める その人らしい穏やかな最期を支える
対象となる人 がんなど重い病気の本人と家族 終末期にある本人と家族

看取り・ホスピス・エンドオブライフケアとの関係

終末期にまつわる言葉はほかにもあり、混同されがちです。ここで関連用語を整理しておきましょう。

用語 主な意味
緩和ケア 診断時から、心身の苦痛をやわらげQOLを高めるケア。治療と並行できる
ターミナルケア 終末期に、苦痛緩和と本人らしい最期を支えるケア。医療的ケアも含む
看取りケア 最期が近い時期に、無理な延命や治療は行わず、日常生活のケアと安らかさを重視して寄り添うケア
ホスピス 終末期の人への全人的なケアを行う場所や考え方。治癒や延命を目的とした治療は通常行わない
エンドオブライフケア 人生の最終段階を支えるケアの総称。ターミナルケアとほぼ同義で使われることが多い

介護現場でとくに関わりが深いのが「看取りケア」です。ターミナルケアが医療行為を含むのに対し、看取りケアは無理な延命や治療を行いません。日常のケアを通じて、最期まで穏やかに過ごせるよう寄り添う点に特徴があります。実際の現場では、両者は重なり合いながら一体的に提供されることが多くあります。

全人的苦痛とACP(人生会議)

緩和ケアやターミナルケアを理解するうえで欠かせないのが、全人的苦痛(トータルペイン)という考え方です。人の苦しみは体の痛みだけではなく、複数の側面が絡み合っているという視点です。次の4つに整理されます。

  • 身体的苦痛:痛み、息苦しさ、だるさ、吐き気などの身体症状
  • 精神的苦痛:不安、いらだち、孤独感、気分の落ち込みなど
  • 社会的苦痛:仕事や経済的な問題、家族関係、役割の喪失など
  • スピリチュアルな苦痛:「なぜ自分が」「生きる意味とは」といった、生死や価値観に関わる苦しみ

これらを多職種のチームで支えるのが、緩和ケア・ターミナルケアの基本的な姿勢です。医師・看護師・介護職・ソーシャルワーカーなどが連携します。

あわせて重要になるのがACP(アドバンス・ケア・プランニング)、愛称「人生会議」です。ACPとは、もしものときに望む医療やケアを前もって話し合う取り組みを指します。厚生労働省は、本人が望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療・ケアチームなどと繰り返し話し合い、共有していく取り組みをACP(人生会議)と呼んでいます。体調や状況の変化に応じて何度も話し合うプロセスである点がポイントで、本人の意思を尊重したケアの土台となります。

介護職が関わる場面と役割

緩和ケアやターミナルケアは、医療職だけのものではありません。介護職が大きな役割を担う場面が数多くあります。本人にもっとも身近な存在として日常を支えるのが介護職だからです。

関わる主な場面

  • 特別養護老人ホーム(特養):生活の場であり、施設での看取りに取り組むところが増えています。
  • 介護老人保健施設(老健):医療職との連携のもとで終末期のケアに関わる場面があります。特養や老健(介護老人保健施設)の違いもあわせて確認しておくとよいでしょう。
  • 在宅・グループホーム:訪問介護や認知症対応型共同生活介護(グループホーム)でも、住み慣れた環境での看取りを支える場面があります。

介護職の役割

  • 食事・入浴・排せつなど、日常生活の丁寧なケアで安楽を支える
  • 表情やしぐさから心身の変化や苦痛のサインに気づき、医療職へ共有する
  • 本人や家族の話に耳を傾け、不安にそっと寄り添う
  • 多職種チームの一員として情報を共有し、本人の意思にそったケアにつなげる

体の痛みそのものへの医療的な対応は、医師や看護師が中心です。それでも、本人の小さな変化に最初に気づき、その人らしさを支えるという点で、介護職の役割は大きいといえます。

看取り介護加算など制度面のポイント

介護保険の制度面でも、施設での看取りを後押しするしくみが整えられています。代表的なものが看取り介護加算です。加算とは、一定の条件を満たした場合に介護報酬へ上乗せできる金額のことです。看取り介護加算は、特別養護老人ホームなどで一定の体制を整え、本人や家族の意思を確認しながら看取りのケアを行った場合に算定できます。

看取り介護加算には、算定要件や区分(ⅠとⅡなど)があります。多職種が連携した体制や、24時間の連絡・対応体制などが求められます。要件や単位数は介護報酬改定のたびに見直されるため、最新の内容は厚生労働省の資料や勤務先の運用で必ず確認してください。以下は、自施設の体制を振り返るための確認ポイントです。算定漏れや後日の返還リスクを避けるため、記録や体制づくりの参考にしてください。

確認ポイント チェックの視点
本人・家族の意思確認 看取りに関する説明と同意を、いつ・誰が・どのように行ったか記録が残っているか
看取りに関する指針 施設として看取りの方針・手順を文書化し、職員が共有できているか
多職種連携の体制 医師・看護師・介護職などが情報共有する場(カンファレンス等)を定期的に持てているか
24時間の連絡・対応体制 夜間・休日を含め、医師や看護師と連絡が取れる体制が整い、記録に残っているか
ケア内容の記録 心身の状態変化やケアの経過を、日々の記録として残せているか

算定要件や単位数は改定のたびに変わるため、思い込みでの運用は減算や返還につながりかねません。判断に迷う場合は、都道府県・市区町村の指定権者や厚生労働省の一次資料にあたるのが確実です。在宅での介護に悩む方は、老老介護の記事もあわせてご覧ください。

現場での実践と家族・職員へのケア

定義を理解したら、次は「現場で何をするか」です。緩和ケアの場面では、本人へのケアに加えて、家族への説明と職員自身の心のケアまでが一続きになります。具体的な関わりを整理します。

家族にやさしく伝える言い換え例

家族は専門用語に戸惑い、不安を強めがちです。むずかしい言葉を、状況が伝わる言い方に置き換えると安心につながります。

専門的な言い方 家族への言い換え例
QOLを重視します つらさを減らし、その方らしく過ごせる時間を大切にします
ACP(人生会議)を進めます ご本人がどう過ごしたいか、一緒に少しずつ話し合っていきます
全人的苦痛に対応します 体の痛みだけでなく、心配ごとや気持ちの面も支えます
看取りの時期に入りました 穏やかに過ごせるよう、無理のないケアに切り替えていきます

看取りに向き合う職員自身のケア

看取りに関わる職員は、悲しみや無力感を抱えやすいものです。これは弱さではなく、ていねいに関わった証です。次の取り組みで、燃え尽きを防ぎながら関わり続けられます。

  • 看取りの後にチームでデスカンファレンス(振り返り)を行う
  • 「できたこと」を言葉にして互いにねぎらう
  • つらさを一人で抱えず、リーダーや相談窓口に伝える
  • 新人には先輩がそばで支え、初めての看取りを一人にしない

本人・家族・職員のいずれにも目を配ることが、質の高い緩和ケアと職員の定着につながります。制度や体制の最新情報は、厚生労働省の介護・高齢者福祉のページもあわせてご確認ください。

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まとめ

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ターミナルケアと緩和ケアの最も大きな違いは「対象となる時期」です。緩和ケアは診断されたときから治療と並行して受けられます。一方ターミナルケアは終末期に限定され、苦痛緩和と本人らしい最期を支えることに重点を置きます。全人的苦痛への視点やACP(人生会議)の考え方をふまえ、本人の意思を尊重しながら多職種で支えることが大切です。日々の生活を支える介護職は、その人らしい最期を支えるかけがえのない存在です。