ターミナルケアとは~ケアの内容や実施施設、緩和ケアとの違いなどを紹介~

ターミナルケア(終末期ケア)とは、回復が難しいと診断された方の最期を穏やかに支えるケアです。身体的・精神的な苦痛を和らげ、その人らしい時間と生活の質(QOL)を保つことを目指します。「緩和ケアや看取り介護と何が違うの?」と迷う方も多いテーマです。この記事では、ターミナルケアの意味、緩和ケア・ホスピスケア・看取り介護との違いを解説します。あわせてケアの内容と提供場所、介護保険の加算、ACP(人生会議)による意思決定支援まで、2026年7月時点の最新情報で整理します。

この記事でわかること

  • ターミナルケア(終末期ケア)とは何か
  • 緩和ケア・ホスピスケア・看取り介護との違い
  • ターミナルケアの内容(身体的/精神的/社会的ケア)
  • ケアを受けられる場所(病院・介護施設・在宅)
  • 介護保険の看取り介護加算・ターミナルケア加算の概要
  • ACP(人生会議)と本人・家族の意思決定支援

ターミナルケアとは?(終末期ケアの意味)

ターミナルケアとは、終末期にある方の苦痛を和らげ、その人らしい毎日を支えるケアの総称です。終末期とは、病気の回復が難しく、残された時間が限られた段階を指します。「ターミナル(terminal)」は英語で「終わり」「最終」を意味する言葉です。日本語では「終末期ケア」「終末期医療」とも呼ばれます。

ターミナルケアの目的は、病気そのものを治すことではありません。痛みや不安などのつらさを取り除き、最期まで穏やかに過ごせるよう支えることにあります。延命のための積極的な治療を中心にはせず、ご本人が望む過ごし方を尊重します。生活の質(QOL)を保つことに重きを置く点が特徴です。対象となる疾患は特に限定されていません。がんだけでなく、認知症や老衰、慢性的な疾患など、幅広い状態の方が対象になります。

緩和ケア・ホスピスケア・看取り介護との違い

ターミナルケアは似た言葉と混同されがちですが、それぞれ目的や始まる時期が異なります。「緩和ケア」「ホスピスケア」「看取り介護」との違いを整理すると、次のようになります。

名称 主な目的・特徴 始まる時期の目安
ターミナルケア 終末期に、苦痛を和らげ穏やかな最期を支える。延命より生活の質を重視。 余命が限られた終末期
緩和ケア つらさを和らげQOLを高めるケア。病気の段階を問わず、治療と並行して受けられる。 診断された時から(時期を問わない)
ホスピスケア 主にがんなどの方を対象に、終末期の苦痛緩和と心の支えを行うケア・施設。 余命が近づいた段階
看取り介護 食事・排泄・清潔などの日常生活を支え、穏やかな最期に寄り添う介護。 終末期(介護施設などで)

大きな違いは、緩和ケアが病気の段階を問わずに受けられる点です。世界保健機関(WHO)の定義でも、緩和ケアは生命を脅かす病気に直面する方とご家族が対象です。痛みや心理社会的なつらさを早い段階から和らげ、QOLを改善するアプローチとされています。終末期に限定されるターミナルケアは、この緩和ケアの考え方が人生の最終段階に重なって行われるものと捉えると分かりやすいでしょう。一方、看取り介護は、食事・排泄・清潔などの日常生活の支援を通じて穏やかな最期に寄り添う介護です。介護施設などで生活面を支える役割を担います。

ターミナルケアの内容(身体的・精神的・社会的ケア)

ターミナルケアは、ご本人のつらさを身体・心・暮らしの面から多角的に支えます。大きく分けて、次の3つの側面があります。

身体的ケア

身体的ケアは、痛みや息苦しさ、吐き気などの苦痛を和らげるためのケアです。医師や看護師による痛みのコントロール(投薬など)を中心に行います。あわせて体位の工夫、口腔ケア、床ずれ(褥瘡)の予防なども含まれます。食事や水分をとりにくくなったときの対応も大切です。無理に治療を行うのではなく、ご本人が少しでも楽に過ごせることを優先します。

精神的ケア

精神的ケアは、死を意識する中で生じる不安や恐怖、孤独感などに寄り添う心のケアです。ご家族への気がかりにも目を向けます。お話にじっくり耳を傾けたり、ご家族や親しい方と過ごす時間をつくったりします。趣味や好きなことに触れる機会を整え、心穏やかに過ごせるよう支えます。ご本人だけでなく、ご家族の不安や悲しみに寄り添うことも大切な役割です。

社会的ケア

社会的ケアは、暮らしの面での不安を和らげるケアです。療養に伴う経済的な負担や、各種制度の手続きなどを支えます。医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーなどが対応します。医療費の負担を軽くする制度の案内や、利用できるサービスの情報提供、関係者との調整などを担います。これにより、ご本人とご家族が安心して過ごせるよう支援します。

ターミナルケアを受けられる場所

ターミナルケアは、病院だけでなく、介護施設や住み慣れた自宅でも受けられます。ご本人やご家族の希望、体の状態、必要な医療やサポートの内容に応じて選びます。

病院(緩和ケア病棟・ホスピスなど)

病院では、主に緩和ケア病棟やホスピスでターミナルケアが行われます。医師や看護師による医療的なサポートを受けやすい点が安心につながります。症状の変化にも対応しやすい環境です。一方で、住み慣れた環境とは異なります。ご本人の希望をよく確認しながら検討することが大切です。

介護施設

介護施設でも、看取り介護やターミナルケアに対応する施設が増えています。特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)などが代表例です。介護の専門職による日常生活の支援を受けながら、住まいに近い環境で過ごせる点が特徴です。施設ごとに対応できる範囲や体制は異なるため、事前の確認が欠かせません。施設の費用については介護老人保健施設(老健)の費用の記事もあわせてご覧ください。また、認知症の方が暮らすグループホーム(認知症対応型共同生活介護)の記事でも、看取りへの対応が広がっています。

在宅(自宅)

在宅では、住み慣れた自宅で過ごしながらターミナルケアを受けます。訪問診療や訪問看護、訪問介護などのサービスを組み合わせる形です。家族とともに最期まで自宅で過ごせる安心感がある一方、ご家族の負担にも配慮が必要です。在宅での療養は要介護度によって利用できるサービスや費用が変わります。介護度とはの記事もあわせて確認しましょう。ケアマネジャーに相談しながら、無理のない体制を整えるとよいでしょう。

介護保険の看取り介護加算・ターミナルケア加算

終末期のケアを支えるしくみとして、介護保険には「看取り介護加算」や「ターミナルケア加算」があります。加算とは、一定の体制や手続きを満たした事業者に上乗せされる報酬のことです。事業者が終末期のケアを行った場合に算定され、質の高い看取りを後押しします。

看取り介護加算は、特別養護老人ホームなどの施設系サービスを中心とした加算です。対象は、医師が回復の見込みがないと診断したご本人です。算定には、医師・看護職員・介護職員・ケアマネジャーなどの連携や、24時間の連絡体制が求められます。ご本人やご家族に十分な説明と同意を得たうえで看取りのケアを行うことなども要件です。死亡日に近づくほど手厚い単位が設定されています。

ターミナルケア加算は、主に訪問看護で算定される加算です。2024年(令和6年)度の介護報酬改定では、看取りへの対応強化として訪問看護のターミナルケア加算の単位数が2,000単位から2,500単位に引き上げられました。人生の最終段階におけるご本人の意向を適切に把握することが要件に位置づけられるなど、ご本人の思いを尊重する方向で見直されました。同改定では短期入所サービスなどに看取りの評価が新設され、在宅を含めた体制づくりも後押しされています。なお、2026(令和8)年6月の臨時改定は処遇改善加算の拡充が中心です。看取り関連の加算は、この2024年度改定の内容が現行の要件です(2026年7月時点)。詳しい単位数や要件はサービス種別によって異なります。利用にあたってはケアマネジャーや事業所に確認するとよいでしょう。

ACP(人生会議)と本人・家族の意思決定支援

終末期のケアで欠かせないのが、ご本人の意思を大切にした意思決定支援です。その中心となる考え方がACP(アドバンス・ケア・プランニング)です。厚生労働省は親しみやすい愛称として「人生会議」と呼んでいます。

人生会議(ACP)とは、もしものときに備えて自分が望む医療やケアを前もって考えておく取り組みです。ご家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有しておきます。一度決めたら終わりではありません。気持ちや状況の変化に応じて何度でも話し合えるのが特徴です。元気なうちから少しずつ気持ちを言葉にしておくと、いざというときにご本人の希望が尊重されやすくなります。ご家族が判断に迷う負担を和らげることにもつながります。

厚生労働省は、こうした話し合いの土台となるガイドラインも示しています。「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年3月改訂)です。このガイドラインでは、医療従事者から適切な情報提供と説明を受けることを前提とします。そのうえで、ご本人による意思決定を基本とし、多職種からなる医療・ケアチームで方針を決めていくことが重要とされています。終末期は、ご本人もご家族も気持ちが揺れて当然の時期です。一人で抱え込まず、医療・ケアの専門職に支えられながら、その時々の思いを共有していきましょう。

看取りに関わる職員・家族のための実践のポイント

ターミナルケアは、支える側の関わり方しだいで、本人と家族の安心が大きく変わります。現場の職員と家族、それぞれの立場での要点を整理します。

家族への声かけ・伝え方の例

終末期は家族も気持ちが揺れる時期です。専門用語を避け、寄り添う言葉を選ぶと安心につながります。

  • 状態を伝えるとき:「今は痛みが出ないよう、楽に過ごせることを一番に考えています」
  • 食事が進まないとき:「無理に召し上がっていただくより、好きなものを少しずつで大丈夫です」
  • 判断に迷う家族へ:「正解はありません。ご本人ならどう望まれるか、一緒に考えましょう」

「頑張りましょう」など回復を前提とした言葉は、かえって家族を追い詰めることがあります。事実を穏やかに伝え、家族の気持ちを受け止める姿勢が大切です。

看取り介護加算で運営上つまずきやすい点

施設で看取り介護加算を算定する場合、体制や記録の不備は返還につながります。管理者が確認すべき要点です。

確認項目 ポイント
説明と同意 本人・家族へ説明し、同意の記録を残しているか
多職種連携 医師・看護・介護・ケアマネの協議記録があるか
24時間連絡体制 夜間も含めた連絡体制を整え、明文化しているか
看取りの記録 状態の変化やケア内容を日々記録しているか

職員が抱え込まないための備え

看取りに関わる職員は、心理的な負担を抱えやすいものです。ケア後にチームで振り返る時間を設けたり、不安を相談できる体制を整えたりすることが、職員の定着にもつながります。加算の要件や運用の詳細は、厚生労働省の介護・高齢者福祉のページで確認し、自施設の体制に当てはめて整えましょう。

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まとめ

ターミナルケア(終末期ケア)とは、回復が難しい段階にある方の最期を穏やかに支えるケアです。残された時間をその人らしく過ごせるよう、身体的・精神的な苦痛を和らげ、生活の質を保つことを目指します。病気を治すことよりも、最期まで尊厳をもって過ごせることを大切にする点が、緩和ケアや看取り介護とも重なり合います。ケアを受けられる場所は病院・介護施設・在宅と幅広く、介護保険の看取り介護加算やターミナルケア加算が質の高いケアを支えています。そして何より大切なのは、ACP(人生会議)を通じた意思決定です。ご本人の思いを中心に据え、ご家族や専門職とともに重ねていきましょう。不安なときは一人で抱え込まず、ケアマネジャーや医療・ケアチームに気軽に相談してみてください。

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参考(一次情報)