老健への入所を検討する方や、ご家族に向けて、費用の内訳と月額のめやすをまとめた記事です。介護老人保健施設(老健)とは、退院後に自宅へ戻るための準備を行う「在宅復帰」を目的とした介護保険施設を指します。リハビリを中心に、医療・看護・介護を受けながら一定期間を過ごす場所です。費用は施設サービス費(介護費)だけでなく、居住費や食費も合わせて考える必要があります。この記事で、費用の内訳・月額のめやす・低所得の方の負担軽減制度がわかります。情報は2026年6月時点のものです。
記事でわかること
この記事でわかること
- 介護老人保健施設(老健)とはどんな施設か
- 老健でかかる費用の内訳(施設サービス費・居住費・食費・日常生活費・加算)
- 1割負担の場合の月額費用のめやす
- 低所得者向けの「負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)」の段階と限度額
- 特別養護老人ホーム(特養)との費用や役割の違い
介護老人保健施設(老健)とは
介護老人保健施設(老健)とは、在宅復帰・在宅療養支援を目的とする介護保険施設です。対象は要介護1以上の方です。病状が安定し、入院治療までは必要ないものの、自宅での生活にまだ不安が残る方が利用します。リハビリや医療的なケアを受けながら、自宅に戻ることを目指します。
老健には医師が常勤します。看護職員や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリ職、介護職員も配置されている点が特徴です。医療と介護の両方を提供できることから、病院と自宅の「中間施設」とも呼ばれます。生活の場として長く暮らすことを前提とする特別養護老人ホーム(特養)とは異なります。原則として在宅復帰を前提とした入所期間(3か月ごとに入所継続の判定を行う)が設けられている点も、老健の大きな特徴です。
要介護度や介護保険のしくみについては、介護度とは何かをまとめた記事もあわせてご確認ください。
老健でかかる費用の内訳
老健に入所すると、毎月の費用は大きく分けて次の要素で構成されます。
- 施設サービス費(介護費):要介護度・施設の類型・居室タイプによって決まる介護サービスの費用。所得に応じて1~3割が自己負担
- 居住費(滞在費):居室の家賃にあたる費用
- 食費:1日3食分の食事の費用
- 日常生活費:理美容代・教養娯楽費・日用品費など
- 各種加算:リハビリや医療体制などに応じて、基本料金に上乗せされる費用
このうち、施設サービス費は介護保険が適用されるため自己負担は1~3割です。一方、居住費・食費・日常生活費は全額が自己負担となります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
施設サービス費(介護費)
施設サービス費は、要介護度が重いほど、また居室タイプによって高くなります。老健の場合、配置体制やリハビリ・看護の充実度によって「基本型」「在宅強化型」「療養型」などの類型に分かれます。同じ要介護度でも類型によって単位数(料金)が変わります。次の表は、2024年度(令和6年度)介護報酬改定後の単位数をもとにした、基本型・多床室の1日あたりのめやすです(1単位は地域によりおおむね10円~11円程度)。
| 要介護度 | 1日あたりの単位数(基本型/多床室) | 1割負担の1日あたりめやす |
|---|---|---|
| 要介護1 | 793単位 | 約793円 |
| 要介護2 | 843単位 | 約843円 |
| 要介護3 | 908単位 | 約908円 |
| 要介護4 | 961単位 | 約961円 |
| 要介護5 | 1,012単位 | 約1,012円 |
このほかに、各種加算が上乗せされます。短期集中リハビリテーション実施加算、在宅復帰・在宅療養支援機能加算、サービス提供体制強化加算、介護職員等処遇改善加算などです。加算の有無や種類は施設によって異なるため、実際の費用は入所先の施設にご確認ください。
居住費(滞在費)と食費
居住費と食費は、国が定める「基準費用額」(標準的な目安額)をもとに、施設と利用者の契約で金額が決まります。2024年8月(令和6年8月)の改定で、居住費の基準費用額が1日あたり60円引き上げられました。現在は次の水準が基準となっています。
| 項目 | 居室タイプ | 基準費用額(1日あたり) |
|---|---|---|
| 食費 | - | 1,445円(月額めやす約4.4万円) |
| 居住費 | 多床室(相部屋) | 437円(室料を徴収しない場合)/697円(室料を徴収する場合) |
| 従来型個室 | 1,728円 | |
| ユニット型個室的多床室 | 1,728円 | |
| ユニット型個室 | 2,066円 |
2025年8月(令和7年8月)からは、老健などの多床室についても新しい扱いが始まりました。一定の要件に該当する場合、室料相当額を利用者が負担するしくみです。そのため、多床室を利用する場合でも、施設によっては従来より居住費が高くなることがあります。
日常生活費
日常生活費は、理美容代・新聞代・教養娯楽費・日用品費など、個人の希望で利用するサービスや物品にかかる費用です。施設ごとに項目や金額が異なります。月額でおおむね1万円前後を見込んでおくとよいでしょう。
老健の月額費用のめやす(1割負担の例)
ここまでの内訳をもとに、月額費用のめやすを試算しました。条件は、1割負担の方が老健(基本型・多床室・室料を徴収しない場合)に1か月(30日)入所した場合です。なお、これは負担軽減制度を利用しない一般的な所得の方(第4段階)の例です。
| 項目 | 月額のめやす(要介護3・多床室の例) |
|---|---|
| 施設サービス費(1割負担) | 約27,000円 |
| 居住費(多床室) | 約13,000円 |
| 食費 | 約43,000円 |
| 日常生活費 | 約10,000円 |
| 合計 | 約93,000円 |
居室タイプをユニット型個室にすると、居住費が高くなります。そのため月額の合計は12万円~14万円程度になることもあります。また、加算の内容や2割・3割負担の方の場合は、これより高くなります。あくまでめやすとして参考にしてください。
なお、自宅と施設を行き来しながら利用する短期入所(ショートステイ)とは、費用のしくみが一部異なります。違いについては短期入所とショートステイの違いを解説した記事もあわせてご覧ください。
低所得の方の負担を軽くする「負担限度額認定」
所得や資産が一定以下の方は、費用を軽減できます。市区町村に申請して「負担限度額認定証(特定入所者介護サービス費)」を受けると、居住費と食費の自己負担に上限が設けられます。条件は、世帯全員が市町村民税非課税であることや、預貯金額が基準以下であることなどです。所得や資産に応じて、第1段階~第3段階②の区分(所得に応じた負担のランク分け)に分かれます。
2024年8月(令和6年8月)以降の、老健における居住費・食費の負担限度額(1日あたり)は次のとおりです。
| 項目 | 第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② |
|---|---|---|---|---|
| 食費 | 300円 | 390円 | 650円 | 1,360円 |
| 居住費(多床室) | 0円 | 430円 | 430円 | 430円 |
| 居住費(従来型個室) | 550円 | 550円 | 1,370円 | 1,370円 |
| 居住費(ユニット型個室) | 880円 | 880円 | 1,370円 | 1,370円 |
たとえば第2段階に該当する方が多床室を利用する場合、食費は1日390円、居住費は1日430円が上限です。一般所得の方と比べて、負担が大幅に軽くなります。該当しそうな場合は、入所前に市区町村の介護保険窓口へ相談し、認定証の交付を受けておきましょう。なお、第3段階②の方の食費については、2026年8月(令和8年8月)から引き上げが予定されています。最新の情報は各自治体でご確認ください。
特別養護老人ホーム(特養)との違い
老健と混同されやすい施設に、特別養護老人ホーム(特養)があります。どちらも介護保険施設で、費用の内訳は似ています。ただし、役割と入所期間に大きな違いがあります。
| 項目 | 介護老人保健施設(老健) | 特別養護老人ホーム(特養) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 在宅復帰・在宅療養支援、リハビリ | 生活の場としての長期入所 |
| 対象 | 要介護1以上 | 原則要介護3以上 |
| 入所期間 | 原則として一定期間(在宅復帰を前提) | 長期の入所が可能 |
| 医師・リハビリ職 | 医師が常勤、リハビリ職を配置 | 医師は非常勤が中心 |
老健はリハビリと医療体制が手厚いぶん、施設サービス費が特養よりやや高めに設定されている傾向があります。一方、自宅での生活が難しくなった方の住まいとしては、特養や、見守り・生活支援を受けられるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)なども選択肢になります。目的に合わせて施設を選ぶことが大切です。
家族へ費用を説明する職員が押さえる失敗回避ポイント
老健で相談員や現場リーダーが家族に費用を案内する場面では、説明の食い違いが後のクレームや退所につながります。先に自施設の数字に当てはめ、説明の型を決めておくと安心です。次の自己点検リストで、よくある説明ミスを防ぎましょう。
- 「介護費の1割だけ」と伝えていないか:居住費・食費・日常生活費は全額自己負担。月額の総額で示す
- 多床室の室料負担を伝え漏れていないか:2025年8月からの扱いで、従来より高くなる場合がある旨を必ず添える
- 負担限度額認定の案内を忘れていないか:低所得が疑われる家族には、入所前に市区町村への申請を促す
- 加算を一律で説明していないか:自施設で算定している加算を一覧化し、根拠とともに説明する
家族からの「結局いくら?」には、自施設の要介護度別・居室別の月額早見表を用意しておくと即答できます。費用の説明は、入所後の信頼や口コミ、ひいては稼働率にも直結します。介護保険施設の費用区分や負担限度額の最新の考え方は、厚生労働省 介護・高齢者福祉のページもあわせてご確認ください。
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まとめ
介護老人保健施設(老健)の費用は、施設サービス費(介護費)に加えて、居住費・食費・日常生活費・各種加算で構成されます。1割負担で多床室を利用する場合、月額のめやすはおおむね9万円台からです。居室タイプや負担割合、加算の内容によって変動します。低所得の方は、負担限度額認定を申請することで、居住費と食費の負担を大きく軽減できます。費用は施設や地域、最新の制度改定によって変わります。入所を検討する際は、必ず入所先の施設や市区町村の窓口で最新の金額を確認しましょう。
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