本記事は2026年9月11日時点の公開情報に基づいています。制度は今後変わる可能性があります。
この記事は、介護老人保健施設(老健)・特別養護老人ホーム(特養)・グループホーム・通所介護などの管理者やリーダー職の方に向けた内容です。2026年9月3日の社会保障審議会介護給付費分科会(第264回)で示された資料をもとに、認知症関連加算の現行要件・単位数・算定率の実態と、2027年度(令和9年度)介護報酬改定の論点、いま準備すべきことを1本で整理します。
記事でわかること
まず結論:管理者が押さえるべき3点
- 認知症専門ケア加算(Ⅱ)と認知症チームケア推進加算(Ⅰ)は、施設系サービスの多くで事業所ベースの算定率が3%未満です。老健では専門ケア加算(Ⅱ)1.0%、チームケア推進加算(Ⅰ)1.3%にとどまります(令和7年11月審査分)。
- 認知症チームケア推進加算を算定しない理由として、資料では「人手不足」「すでに認知症専門ケア加算で対応している」「単位数に対して労力が見合わない」が示されました。加えて、要件となる研修が対面中心で、受講料や研修時間に大きなばらつきがあることも課題に挙がっています。
- 2027年度改定に向け、研修要件の引き下げ(加算(Ⅰ)は実践者研修、加算(Ⅱ)は実践リーダー研修の修了者で可とする案)や単位数の引き上げ、研修のオンライン化を求める意見が出ています。ただし、いずれも「検討段階」で、決定事項はありません。
認知症関連加算の一覧と現行要件(令和6年度改定後)
認知症に関連する加算は、大きく「専門的なケア提供体制を評価するもの」と「認知症の人への支援そのものを評価するもの」に分かれます。管理者が算定可否を判断するうえで重要なのは、研修修了者の配置要件です。主な加算を表にまとめました。
| 加算名 | 対象サービス | 単位数 | 主な要件(研修修了者の配置など) |
|---|---|---|---|
| 認知症専門ケア加算(Ⅰ) | 特養・老健・介護医療院・グループホーム・短期入所・特定施設・訪問介護・訪問入浴・定期巡回など | 3単位/日(定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護(Ⅱ)は90単位/月) | 施設系は日常生活自立度Ⅲ以上の利用者が2分の1以上(訪問系はⅡ以上が2分の1以上)。認知症介護実践リーダー研修などの修了者を対象者20人未満で1人以上配置。認知症ケアの留意事項伝達や技術指導の会議を定期開催 |
| 認知症専門ケア加算(Ⅱ) | 同上 | 4単位/日(定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護(Ⅱ)は120単位/月) | (Ⅰ)の研修修了者の配置と会議開催の要件を満たすこと。加えて認知症介護指導者研修(指導者養成研修)の修了者を1人以上配置し、職種ごとの認知症ケア研修計画を作成して実施。自立度Ⅲ以上の割合の要件は(Ⅰ)と別に定められている |
| 認知症チームケア推進加算(Ⅰ) | グループホーム・特養・地域密着型特養・老健・介護医療院 | 150単位/月 | 自立度Ⅱ以上の利用者が2分の1以上。認知症介護指導者養成研修と認知症チームケア推進研修の両方を修了した者を1人以上配置し、複数の介護職員でチームを編成。BPSD(行動・心理症状)の評価を計画的に行い、定期的なカンファレンスと計画見直しを実施 |
| 認知症チームケア推進加算(Ⅱ) | 同上 | 120単位/月 | (Ⅰ)と同じ枠組みで、研修要件が「認知症介護実践リーダー研修+認知症チームケア推進研修」の修了者1人以上 |
| 認知症加算(通所介護・地域密着型通所介護) | 通所介護・地域密着型通所介護 | 60単位/日 | 人員基準に加えて看護職員または介護職員を常勤換算で2人以上確保。自立度Ⅲ以上の利用者が15%以上。指導者養成研修・実践リーダー研修・実践者研修いずれかの修了者を提供時間帯を通じて1人以上配置。事例検討などの会議を定期開催 |
| 認知症加算(Ⅰ)~(Ⅳ) | 小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護 | (Ⅰ)920単位/月、(Ⅱ)890単位/月、(Ⅲ)760単位/月、(Ⅳ)460単位/月 | (Ⅰ)(Ⅱ)は研修修了者の配置と会議開催が要件。(Ⅲ)は自立度Ⅲ以上、(Ⅳ)は要介護2かつ自立度Ⅱの利用者が対象 |
| 認知症ケア加算 | 老健・短期入所療養介護(認知症専門棟) | 76単位/日 | 認知症専門棟で自立度Ⅲ以上の入所者にサービスを提供 |
出典は第264回介護給付費分科会の資料1(19ページ、22ページ、24ページ、27ページ、30ページ)です。なお、認知症チームケア推進加算は、認知症専門ケア加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定している場合は算定できません。この「どちらか一方」というルールが、後述する算定率の低さにも影響しています。
研修修了者の配置要件でつまずく施設は少なくありません。研修の体系(基礎研修・実践者研修・実践リーダー研修・指導者養成研修)については、認知症介護基礎研修の義務化と研修体系の記事で整理しています。
算定率が低い実態:老健の専門ケア加算(Ⅱ)は1.0%
厚生労働省は今回の資料で、認知症関連加算の算定率を「件数ベース」と「事業所ベース」の両方で示しました。事業所ベースで3%以下の加算は赤色で機械的に色分けされており、多くの加算が該当します。施設系サービスの主な数値を抜き出します(令和7年11月審査分、事業所ベース)。
| 加算 | 老健 | 特養 | グループホーム | 介護医療院 |
|---|---|---|---|---|
| 認知症専門ケア加算(Ⅰ) | 4.0% | 5.3% | 18.5% | 5.4% |
| 認知症専門ケア加算(Ⅱ) | 1.0% | 1.2% | 0.9% | 0.6% |
| 認知症チームケア推進加算(Ⅰ) | 1.3% | 1.0% | 1.0% | 0.4% |
| 認知症チームケア推進加算(Ⅱ) | 7.9% | 4.6% | 6.0% | 5.2% |
出典は同資料の20~21ページ(専門ケア加算)と23ページ(チームケア推進加算)です。認知症専門ケア加算(Ⅱ)と認知症チームケア推進加算(Ⅰ)は、どのサービスでも事業所ベースで3%未満です。共通点は「認知症介護指導者養成研修の修了者」の配置が要件になっている点です。
通所系も同じ傾向です。通所介護の認知症加算は7.6%、地域密着型通所介護では2.8%にとどまります(同25ページ)。一方、老健の認知症ケア加算(認知症専門棟)は27.7%と比較的高く、加算ごとの差がはっきり出ています。
認知症の人の受け入れ自体は進んでいます。同資料11ページ(令和8年4月審査分)によると、老健の入所者のうち自立度Ⅲ以上の割合は51.0%、特養は72.2%、グループホームは63.8%です。認知症の人を多く受け入れているのに、専門的ケアを評価する加算が取れていない。これが今回の分科会で問題視された構図です。
なぜ取れないのか:4つの壁
資料では、加算を算定していない理由と研修の課題が整理されています。管理者の実感に近い内容です。
1. 人手不足で研修に職員を出せない
認知症介護実践リーダー研修は講義・演習28時間に加えて職場実習4週間、指導者養成研修は講義・演習128時間と職場実習5週間が標準です(同36ページ)。現場の人員配置が余裕のない状態では、リーダー級の職員を数週間にわたって研修に出すこと自体が難しくなります。資料でも、認知症チームケア推進加算を算定しない理由として「人手不足」が障壁に挙げられました。
2. すでに認知症専門ケア加算で対応している
認知症チームケア推進加算は、認知症専門ケア加算と併算定できません。専門ケア加算(Ⅰ)を取っている施設が新しくチームケア推進加算(Ⅱ)へ切り替えるには、チームケア推進研修の受講やBPSD評価の仕組みづくりが必要です。「専門ケア加算で対応している」という回答が挙がるのは、この切り替えの手間が大きいためと考えられます。
3. 単位数に対して労力が見合わない
認知症専門ケア加算(Ⅰ)は1日3単位、(Ⅱ)でも4単位です。入所者100人の施設で(Ⅰ)を30日分算定しても9,000単位(1単位10円換算で9万円)で、研修派遣の人件費や受講料、会議運営の手間を考えると採算が合いにくいという声があります。資料でも、認知症チームケア推進加算を算定しない理由として「単位数に対して労力が見合わない」が挙げられました。
4. 研修が対面中心で、受講料と時間にばらつきがある
認知症介護実践者等研修の実施状況調査(令和6年度老人保健健康増進等事業)によると、令和6年度は実践者研修で半数を超える自治体が「対面のみ実施」、実践リーダー研修では約7割を超える自治体が「対面のみ実施」でした。しかも令和5年度より対面のみの自治体が増えています(同39ページ)。受講料や研修時間も自治体ごとに大きく異なり、施設の所在地によって受講の負担に差が出ています。過去の分科会でも「各都道府県で定員も回数も少ない」という委員意見が出されてきました(同33ページ)。
2027年度改定の論点:研修要件はどう見直されるか
ここからが本題です。2026年9月3日の分科会で、厚生労働省は「認知症施策推進基本計画を踏まえた社会参加の推進」「研修のあり方」「若年性認知症への支援」「算定率の低い加算の見直し」などを論点として提示しました。施設の管理者に関係が深いのは、後半の2つです。委員からは次のような意見が出ています。いずれも意見・提案の段階であり、決定ではありません。
研修要件を1段階引き下げる案
委員から、加算(Ⅰ)は認知症介護実践者研修、加算(Ⅱ)は認知症介護実践リーダー研修の修了者を配置要件として活用できるようにする提案が出ました。現行では上位区分に指導者養成研修(累計修了者2,905人)が求められており、修了者数から見ても全国の施設に行き渡る人数ではありません。令和6年度末までの累計修了者は、実践者研修357,305人、実践リーダー研修58,611人です(同38ページ)。要件を1段階ずつ下げれば、算定できる施設は大きく増える可能性があります。
単位数の引き上げ要望
現行の単位数が算定要件の厳しさに見合っていないとして、引き上げが必要との意見も出ました。ただし、財源の制約もあり、引き上げと要件緩和を同時に実現できるかは今後の議論次第です。
研修のオンライン化と共通教材
研修については、オンライン化や定員の拡大を求める意見が複数の委員から出ました。国が共通の動画教材を整備する仕組みの提案や、研修内容の重複を見直して研修体系全体を整理すべきという指摘もありました。令和6年度改定の審議報告でも「研修時間数も含めた研修のスリム化やオンライン化を積極的に検討すべき」と明記されており(同32ページ)、今回はその具体化が問われる形です。資料には、オンライン形式と集合形式で学習効果を比較した調査結果も示されています。
算定率の低い加算そのものの見直し
厚生労働省は「算定率の低い加算の見直し」を論点に挙げています。要件緩和で算定を促す方向と、加算を再編・統合する方向の両方があり得ます。過去の分科会では「体制加算のみでは限界がある。プロセスやアウトカム(成果)の評価を組み込むべき」という意見も出ており(同34~35ページ)、次の改定で加算の構造自体が変わる可能性もあります。
改定全体の進み方や他のテーマについては、2027年度介護報酬改定の議論のポイントで解説しています。
いま管理者がやること:研修修了者の棚卸しと受講計画
結論から言えば、改定の結論を待ってから動くと間に合いません。研修は年度ごとの募集で、職場実習を含めると修了まで数か月かかります。2027年4月の施行時点で算定できる状態を作るには、2026年度内に受講の目処をつけておく必要があります。
ステップ1:研修修了者を棚卸しする
職員ごとに、認知症介護基礎研修・実践者研修・実践リーダー研修・指導者養成研修・認知症チームケア推進研修の修了状況を一覧にします。修了証のコピーを人事ファイルで確認し、退職予定者や異動予定者も把握しておきます。中途採用者の修了歴は見落とされがちなので、採用時の書類も見直してください。
ステップ2:自施設の算定可否をチェックする
- 入所者(利用者)のうち、日常生活自立度Ⅲ以上の割合は2分の1以上か(チームケア推進加算はⅡ以上が2分の1以上、通所介護の認知症加算はⅢ以上が15%以上)
- 実践リーダー研修の修了者は、対象者20人未満で1人以上、20人以上なら10人増えるごとに1人追加で配置できているか
- 指導者養成研修の修了者はいるか(専門ケア加算(Ⅱ)・チームケア推進加算(Ⅰ)の要件)
- 認知症チームケア推進研修(原則eラーニング70分)の修了者はいるか
- 認知症ケアに関する会議を定期的に開催し、記録を残しているか
- 職種ごとの認知症ケア研修計画を作成しているか(専門ケア加算(Ⅱ)の要件)
- BPSDの評価を計画的に行い、カンファレンスと計画見直しの記録があるか(チームケア推進加算の要件)
この時点で「実践リーダー研修の修了者が1人いれば専門ケア加算(Ⅰ)の研修要件は満たせる」「あとはチームケア推進研修(eラーニング)を足せば推進加算(Ⅱ)の人員要件に届く」といった具体的な距離感が見えてきます。残る要件は自立度の割合と会議・記録なので、あわせて点検してください。
ステップ3:受講計画を立てる
都道府県の研修日程は年度初めに公表されることが多く、定員が少ない自治体では早期に締め切られます。候補者を2人以上立て、受講中の勤務シフトを先に組んでおくと実現しやすくなります。認知症チームケア推進研修は原則eラーニングで、令和6年度(2024年度)実績で67自治体が導入済みです(同37ページ)。指導者養成研修や実践リーダー研修の修了者がすでにいる施設は、この研修を追加するだけで推進加算の人員要件に近づけます。
ステップ4:費用と定着をセットで考える
研修の受講料や代替職員の人件費は施設負担になることが多く、研修修了者が退職すれば加算も失います。研修派遣を処遇やキャリアパスと結びつけ、修了者の定着を図ることが結果的に加算の安定算定につながります。処遇改善加算のキャリアパス要件と研修計画を連動させる方法は、処遇改善加算の完全ガイドを参考にしてください。
グループホームは専門ケア加算(Ⅰ)の算定率が18.5%と施設系で最も高く、計画作成担当者に実践者研修の受講が義務づけられていることが背景にあると考えられます。人員基準と研修要件の関係はグループホームの人員基準の記事で確認できます。認知症ケアに関わる資格・研修を横断的に見たい場合は認知症ケアに活かせる資格まとめも役立ちます。
今後のスケジュール
2027年度介護報酬改定は、例年の流れに沿えば次のように進む見込みです。日程は今後変わる可能性があります。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年9月3日 | 第264回介護給付費分科会。認知症への対応力強化を含む5テーマの論点を提示(実施済み) |
| 2026年秋 | 具体的な方向性の議論(第2ラウンド)。認知症関連加算の要件・単位数の方向性が見えてくる時期 |
| 2026年12月ごろ | 分科会が審議報告をとりまとめ(見込み) |
| 2027年1~3月ごろ | 改定率の決定、単位数・算定要件の告示、解釈通知の発出(見込み) |
| 2027年4月 | 改定施行(見込み) |
研修要件が緩和された場合でも、施行と同時に算定するには、新要件に該当する修了者が4月時点で在籍している必要があります。実践者研修・実践リーダー研修の修了者を増やしておく準備は、どの方向に決まっても無駄になりません。
まとめ
認知症専門ケア加算(Ⅱ)と認知症チームケア推進加算(Ⅰ)は、施設系サービスの多くで事業所ベースの算定率が3%未満でした。理由は人手不足、専門ケア加算との併算定不可、単位数と労力の不釣り合い、そして対面中心で負担の大きい研修です。2027年度改定に向けて、研修要件の引き下げ、単位数の引き上げ、研修のオンライン化を求める意見が出ていますが、いずれもまだ検討段階です。管理者がいまできるのは、研修修了者の棚卸し、自施設の算定可否チェック、2026年度内の受講計画づくりの3つです。改定の結論が出てから動くのでは施行に間に合いません。
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出典(一次資料)
- 厚生労働省 第264回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1「認知症への対応力強化」(2026年9月3日)
- 厚生労働省 第264回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料ページ
- 厚生労働省 第264回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)開催案内
- 社会保険研究所「認知症、LIFE、多床室負担など5テーマを議論 令和9年度介護報酬改定に向け論点整理」(2026年9月)
- CBnews「認知症関連加算 研修要件『見直しを』」(2026年9月4日)
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