障害福祉の法人設立【2026年】法人格4種の比較と定款の書き方

この記事は、これから障害福祉事業を始めるために法人を作る人に向けて書いています。放デイ、就労継続支援、グループホーム、相談支援のどれを開く場合も、指定申請の前に法人格を決める必要があります。

結論から言うと、営利で機動的に動くなら株式会社か合同会社、非営利の信用を重視するならNPO法人か一般社団法人が候補です。ただし就労継続支援A型は「専ら社会福祉事業を行う者」に限られます。設立費用は合同会社なら約6万円から、株式会社は約16万5,000円からが実費の目安です。

本記事では、法人格が必要な理由、4つの法人格の比較、サービス別の向き不向き、費用と日数の実額を順に解説します。さらに指定申請で差し戻される定款の書き方と、後から法人格を変えられるのかも扱います。指定申請の手順そのものは指定申請 完全ガイドに譲り、本記事は「法人を作る」段階に集中します。

記事でわかること

障害福祉サービスの指定は「法人」が前提。個人事業では受けられない

障害福祉サービスの報酬を受け取るには、都道府県や政令市・中核市(指定権者)の指定が必要です。この指定は法人にしか出ません。個人事業主のままでは、どれだけ資格や経験があっても申請の入口に立てません。

法律上の根拠は「条例で定める者=法人」

障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)第36条第3項を見てください。指定をしない場合の第1号に「申請者が都道府県の条例で定める者でないとき」とあります。

この「条例で定める者」を、各都道府県は法人と定めています。たとえば大阪府の条例は第4条で「条例で定める者は、法人とする」と明記しています。

児童福祉法に基づく障害児通所支援(放デイ・児童発達支援)も同じ構造です。名古屋市の指定申請の手引きは、指定の要件として「法人格を有すること(病院又は診療所が設置する場合を除く。障害者支援施設の指定は、社会福祉法人に限る)」と書いています。

病院・診療所の例外と入所施設を除けば、法人格の種類は問われません。

「法人ならどれでもよい」わけではない

ただし、法人であれば自動的に指定が受けられるわけではありません。定款の事業目的に該当サービスの根拠法が書かれていることが求められます。就労継続支援A型は指定基準で「専ら社会福祉事業を行う者」と定められ、定款目的に社会福祉事業以外の事業があると認められません。

法人格の選択と定款の目的欄は、指定申請とセットで設計してください。

4つの法人格の比較表(株式会社・合同会社・NPO法人・一般社団法人)

障害福祉の新規参入で選ばれるのは、株式会社・合同会社・NPO法人・一般社団法人の4つです。設立時の費用と日数、運営面の違いを表で整理します。金額は法定費用の実費で、司法書士や行政書士への報酬は含みません。

法人格 法定費用の目安 設立までの日数の目安 定款認証
株式会社 約16万5,000円~(電子定款)/約20万5,000円~(紙定款) 書類準備から登記完了まで2~4週間が一例 必要(1万5,000円~5万円)
合同会社 約6万円~(電子定款)/約10万円~(紙定款) 2~3週間が一例 不要
NPO法人 ほぼ0円(認証手数料なし・登録免許税非課税) 申請から認証まで2週間の縦覧+2か月以内。登記まで3~4か月が一例 不要(所轄庁の認証)
一般社団法人 約11万円~(認証5万円+登録免許税6万円) 2~4週間が一例 必要(5万円)
法人格 意思決定・利益分配 行政・金融機関からの見え方 解散・変更のしやすさ
株式会社 出資比率で決まる。配当可 営利法人として一般的 合同会社への組織変更は可。非営利法人には変更不可
合同会社 社員(出資者)全員一致が原則。定款で柔軟に設計可。配当可 知名度はやや低いが指定審査上の不利はない 株式会社への組織変更は可
NPO法人 社員総会が最高議決機関。社員10人以上。利益分配不可 非営利の信用が得やすい。毎年の事業報告書の提出義務あり 他の法人格への組織変更は不可
一般社団法人 社員2人以上で設立。社員総会と理事が運営。剰余金の分配不可 非営利型なら公益性の印象。設立に行政の認証は不要 営利法人・NPO法人への組織変更は不可

株式会社:資金調達と拡大を見据えるなら

株式会社は出資を募りやすく、多店舗展開や事業売却を視野に入れる人に向いています。反面、設立費用は4つの中で最も高く、役員の任期管理や決算公告の義務があります。

合同会社:費用を抑えて小さく始めるなら

合同会社は定款認証が不要で、登録免許税も6万円からです。1人で出資して1人で経営する形が作りやすく、決算公告の義務もありません。指定申請の審査や国保連からの報酬支払いに、株式会社との差はありません。

NPO法人:非営利の看板と地域の信用を重視するなら

NPO法人(特定非営利活動法人)は設立の実費がほぼかかりません。代わりに社員10人以上、理事3人以上・監事1人以上が必要です。役員のうち報酬を受ける者は3分の1以下に限られます。

所轄庁の認証は、縦覧2週間の後に2か月以内の審査があります。認証通知から2週間以内に登記し、6か月を過ぎても登記しないと認証取消の対象です。開業まで時間がかかる点と、毎年の事業報告書の提出義務を理解した上で選んでください。

一般社団法人:非営利だが行政の認証を待たずに作れる

一般社団法人は社員2人以上で設立でき、公証人の定款認証と登記だけで成立します。行政の認証待ちがないため、NPO法人より数か月早く動けます。剰余金を社員に分配する定款の定めは無効で、非営利であることが法律上担保されています。

税制上の「非営利型」に当たるかどうかで課税範囲が変わるため、税理士に確認してください。

サービス別の向き不向き(放デイ・児発/就労継続支援/グループホーム/相談支援)

法人格の縛りがあるサービスはA型だけですが、事業の性質によって相性はあります。主要サービスごとに、選ばれやすい法人格と注意点を整理します。

サービス 選ばれやすい法人格 注意点
放課後等デイサービス・児童発達支援 株式会社・合同会社が多数。一般社団法人も増加 定款目的に「児童福祉法に基づく障害児通所支援事業」が必要
就労継続支援A型 NPO法人・一般社団法人・社会福祉法人。株式会社も可 「専ら社会福祉事業を行う者」であること。定款目的に他事業を入れない
就労継続支援B型・生活介護 すべての法人格 生産活動の売上を扱うため会計区分の整備が必要
共同生活援助(グループホーム) 株式会社・合同会社・NPO法人 物件契約の名義は法人。建物の用途変更・消防手続きが先行
相談支援(特定・障害児) NPO法人・一般社団法人・社会福祉法人が多い 中立性を重視する自治体がある。指定権者は市町村

放デイ・児発:営利法人が主流。定款は児童福祉法ベースで

放デイと児童発達支援は児童福祉法の事業です。障害者総合支援法の事業目的しか書いていない定款では指定を受けられません。開業手順は放課後等デイサービスの開業ガイドを参照してください。

就労継続支援A型:定款目的が社会福祉事業だけに限られる

A型は雇用契約を結ぶため営利活動に近い面がありますが、指定基準は「専ら社会福祉事業を行う者」を求めています。定款に飲食業や小売業などの一般事業が並んでいると認められません。

株式会社で参入するなら、目的欄を社会福祉事業に限定した専用法人を作る形になります。詳しくは就労継続支援A型の開業ガイドで解説しています。

就労継続支援B型・生活介護:法人格の制約は小さい

B型と生活介護は法人格を問いません。生産活動の売上と工賃を分けて管理する会計処理の方が実務上の課題になります。就労継続支援B型の開業ガイド生活介護の開業ガイドを参照してください。

グループホーム・相談支援:物件と中立性がポイント

グループホームは物件契約が先行するため、法人名義で契約できるよう法人設立を最初に済ませます。相談支援は法人の中立性を確認する自治体があるため、指定権者の手引きで確認してください。それぞれ障害者グループホームの開業ガイド相談支援事業所の開業ガイドに詳しくまとめています。

設立費用と日数の実額(定款認証・登録免許税・電子定款の差)

法人設立の実費は、公証人手数料(定款認証)・印紙税・登録免許税の3つで決まります。2026年9月時点の現行額を整理します。

定款認証の手数料:株式会社は1万5,000円~5万円、一般社団法人は5万円

株式会社の定款認証手数料は資本金の額で決まります。100万円未満は3万円、100万円以上300万円未満は4万円、300万円以上は5万円です。2024年12月1日からは、資本金100万円未満で次の3要件を満たすと1万5,000円に下がりました。

  • 発起人の全員が自然人で、その数が3人以下である
  • 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける
  • 定款に取締役会を置く旨の記載がない

一般社団法人の定款認証は5万円です。合同会社とNPO法人は認証自体が不要です。別途、定款の謄本代が数千円かかります。

印紙税4万円は電子定款なら不要

紙の定款には印紙税4万円がかかりますが、電子定款にすれば不要です。自分で作るにはマイナンバーカードと電子署名の環境が必要です。専門家に依頼すれば電子定款が一般的です。一般社団法人とNPO法人の定款は印紙税の対象外です。

登録免許税:株式会社15万円、合同会社と一般社団法人は6万円

設立登記の登録免許税は、株式会社が資本金の1,000分の7で最低15万円、合同会社が同じ税率で最低6万円です。一般社団法人は6万円で、法務局の記載例にも「金6万円」と示されています。NPO法人は非課税です。

日数:会社は1か月以内、NPO法人は3~4か月が一例

会社と一般社団法人は、定款作成から登記完了まで2~4週間で終わるケースが多いです。NPO法人は認証の審査があるため、申請から登記まで3~4か月を見込んでください。

定款の事業目的の書き方。指定申請で差し戻される典型例

法人設立でいちばん多い失敗が、定款の事業目的の書き方です。指定申請では定款と登記事項証明書を提出し、目的欄に根拠法に基づく事業が書かれているかを審査されます。記載が不十分だと定款変更と変更登記をやり直すことになり、指定が1~2か月遅れます。

記載例:法律の正式名称で書く

奈良市や名古屋市の手引きが示す記載例は、次のような文言です。

  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく一般相談支援事業
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく特定相談支援事業
  • 児童福祉法に基づく障害児通所支援事業
  • 児童福祉法に基づく障害児相談支援事業

社会福祉法人の場合は「障害福祉サービス事業の経営」「障害児通所支援事業の経営」のように「経営」を付けた書き方になります。

差し戻される典型例

  • 「障害者総合支援法に基づく」と略称で書いている。正式名称で書くのが原則です。
  • 「放課後等デイサービス事業」「グループホームの運営」など、サービス名だけで根拠法が書かれていない。
  • 放デイを開くのに障害者総合支援法の事業しか書いておらず、児童福祉法の記載がない。
  • 相談支援を開くのに「障害福祉サービス事業」だけで、相談支援事業の記載がない。
  • A型を開くのに、社会福祉事業に該当しない一般事業が目的欄に並んでいる。

目的欄は「今やる事業+近い将来やる事業」で設計する

目的欄は後から追加できますが、追加のたびに定款変更と変更登記(登録免許税3万円)が必要です。放デイから相談支援に広げる計画があるなら、最初から児童福祉法と障害者総合支援法の両方を書いておきます。A型を予定する場合は逆で、社会福祉事業以外を入れない設計にします。

迷ったら指定権者の窓口に定款案を事前に見せてください。

社会福祉法人・医療法人はどうか

社会福祉法人と医療法人は、新規参入者がゼロから作る法人格としては現実的ではありません。既存法人が障害福祉に参入する場合の選択肢です。

社会福祉法人:認可と機関設計のハードルが高い

社会福祉法人は所轄庁の認可が必要で、評議員会・理事会・監事を置く機関設計が法律で決まっています。評議員の数は定款で定めた理事の員数を超える数です(社会福祉法第40条第3項)。設立時の資産要件は所轄庁の審査基準によるため、所轄庁に確認してください。障害者支援施設(入所施設)は第一種社会福祉事業に当たり、名古屋市の手引きは指定を社会福祉法人に限ると明記しています。

医療法人:附帯業務として障害福祉サービスを行える

医療法人は医療法第42条第6号の附帯業務として、障害福祉サービス事業・一般相談支援事業・特定相談支援事業を行えます。障害児通所支援事業と障害児相談支援事業も同じ告示で認められています。事業開始前に定款に定める必要があり、定款変更には都道府県の認可が要ります。

後から法人格は変えられるのか

株式会社と合同会社の間は組織変更できますが、営利法人と非営利法人の間は変更できません。NPO法人と一般社団法人の間の変更も認められていません。

組織変更できる組み合わせ・できない組み合わせ

  • 株式会社から合同会社、合同会社から株式会社:会社法上の組織変更で可能。債権者保護手続きと登記が必要
  • 株式会社・合同会社から一般社団法人・NPO法人:不可
  • NPO法人から一般社団法人、一般社団法人からNPO法人:不可
  • 一般社団法人・NPO法人から株式会社:不可

実務的な代替手段は「新法人設立+事業の移し替え」

法人格を変えたい場合は、新しい法人を設立して事業を移す方法をとります。指定は法人単位で出ているため、新法人が新規に指定申請をやり直すのが原則です。旧法人の廃止届と新規指定の日付をそろえる調整が必要で、扱いは自治体差があります。

利用者との契約書の切り替えも発生するため、指定権者と早めに相談してください。

設立から指定申請までのスケジュール

指定は毎月1日付けで出す自治体が多く、申請の締切は指定日の1~2か月前です(名古屋市は指定希望月の前々月末日)。締切と指定日の関係は自治体差があるため、指定権者の手引きで確認してください。株式会社・合同会社・一般社団法人で開業する場合の一例を示します。

時期の目安 やること 注意点
開業6~5か月前 法人格の決定・定款案の作成・指定権者への事前相談 定款目的を事前相談で確認。物件は法人名義で契約できるよう準備
開業5~4か月前 定款認証・登記申請・登記完了。法人口座の開設 電子定款で印紙税4万円を節約。口座開設に2~4週間かかる銀行もある
開業4~3か月前 物件契約・改修・消防手続き。サビ管や児発管の採用 人員要件を満たす人材の確保が最大の律速要因
開業3~2か月前 指定申請書類の提出 登記事項証明書・定款の写しを添付。締切は自治体差
開業1か月前~当月 指定通知の受領・国保連の電子請求受付システムの登録・利用契約 初回請求は開業翌月10日まで。請求体制を先に整える

NPO法人の場合は「定款認証・登記」の部分が3~4か月に伸びます。指定申請に必要な人員・設備の詳細は指定申請 完全ガイドを、開業資金の集め方は障害福祉事業の開業資金ガイドを参照してください。

よくある質問

個人事業主として先に始めて、後から法人化できますか

できません。指定は法人にしか出ないため、個人事業のままではサービス提供も報酬請求もできません。法人設立が開業の第一歩です。

合同会社だと指定申請や融資で不利になりますか

指定申請の審査で法人格の種類による差はありません。創業融資も事業計画と自己資金で判断されます。知名度の差が気になるなら株式会社を選んでください。

資本金はいくら必要ですか

会社法上は1円から設立できますが、指定申請では運転資金の裏付けを見られる自治体があります。報酬の入金は開業から2か月以上後になるため、家賃と人件費の2~3か月分は自己資金で用意するのが現実的です。

NPO法人と一般社団法人はどちらが早く作れますか

一般社団法人です。行政の認証がなく、定款認証と登記だけで2~4週間で成立します。NPO法人は縦覧2週間と2か月以内の審査があり、登記まで3~4か月かかります。

まとめ:法人格は「指定申請と5年後」から逆算して決める

障害福祉サービスの指定は法人が前提で、個人事業では受けられません。費用を抑えて早く始めるなら合同会社、資金調達と拡大を見据えるなら株式会社、非営利の信用を重視するなら一般社団法人かNPO法人が候補です。A型は「専ら社会福祉事業を行う者」の縛りがあるため、定款目的の設計が法人格選び以上に重要になります。

営利法人と非営利法人の間は後から組織変更できません。定款の事業目的は根拠法の正式名称で書き、指定権者に事前相談してから認証に進んでください。税制は法人格で変わるため、税理士など専門家に確認した上で決めてください。

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法人設立が終わると、次は指定申請です。定款目的の確認から申請書類の作成までを一括で任せたい場合は、障害福祉サービスの指定申請代行にご相談ください。定款の事前相談の段階から並走できます。

開業後に毎月発生する国保連請求は、障害福祉専門の請求代行WITH福祉に任せる選択肢があります。実績記録票をFAXで送るだけで、請求事務の負担を約90%削減できます。全国47都道府県・約1,200事業所の実績があります。

参考(一次情報)