言語聴覚士の仕事内容とは? 資格の取り方、取得メリットを分かりやすく解説

この記事は、言語聴覚士(ST)を目指す方や、介護分野での役割を知りたい方向けです。言語聴覚士は、話す・聞く・食べるといった日常に欠かせない機能を支えるリハビリの専門職です。「どんな資格なのか」「どうすればなれるのか」「年収はどのくらいか」と気になっている方も多いでしょう。この記事では、言語聴覚士の仕事内容や資格の取り方、平均年収、国家試験の合格率、介護分野での需要までを、2026年7月時点の最新情報で解説します。

この記事でわかること

  • 言語聴覚士(ST)とは何か、どんな国家資格なのか
  • 言語聴覚士の具体的な仕事内容と活躍の場
  • 言語聴覚士になるための資格の取り方(3つのルート)
  • 国家試験の合格率の推移と最新(第28回)の結果
  • 言語聴覚士の平均年収と職場による違い
  • 理学療法士(PT)・作業療法士(OT)との違いと連携
  • 介護分野での需要(機能訓練指導員としての活躍)

言語聴覚士(ST)とは

言語聴覚士とは、言語聴覚士法(1997年制定、1998年施行)に基づく国家資格です。英語の Speech-Language-Hearing Therapist の頭文字をとって「ST」とも呼ばれます。

言語聴覚士は、ことばや飲み込みに困難を抱える方を支えます。病気や事故、加齢、発達上の理由などによって、話す・聞く・読む・書くといったコミュニケーションがうまくいかなくなった方が対象です。また、食べる・飲み込む(摂食嚥下)ことに困難を抱える方も支援します。検査・評価を行い、訓練・指導・助言などのリハビリテーションを担います。医師や歯科医師の指示のもとで、嚥下訓練や人工内耳の調整などの医療行為に関わる業務を行える点も特徴です。

対象となるのは、生まれたばかりの赤ちゃんから高齢者まで幅広い年代の方です。言語聴覚士は、一人ひとりが「自分らしく生きる」ことを支える専門職です。コミュニケーションと「食べる」という側面から支えます。

言語聴覚士の仕事内容

言語聴覚士が扱う障害は多岐にわたります。代表的な領域は次のとおりです。

言語・コミュニケーションのリハビリ

  • 失語症:脳卒中(脳梗塞・脳出血)などで、聞く・話す・読む・書くといったことばの機能が障害された状態への訓練
  • 構音障害:発音が正しくできない、ろれつが回らないといった「話しにくさ」への訓練
  • 音声障害:声が出にくい、かすれるといった発声の問題へのアプローチ
  • 吃音(きつおん):なめらかに話すことが難しい状態への支援

摂食嚥下(食べる・飲み込む)のリハビリ

加齢や病気で飲み込む力が弱まると、むせや誤嚥(食べ物が気管に入ること)が起こります。誤嚥性肺炎や低栄養につながります。言語聴覚士は、嚥下機能の評価や訓練を行います。安全な食事の姿勢・食形態の提案などを通じて「口から食べる」ことを支えます。高齢化が進むなか、介護分野でとくに需要が高まっている領域です。

聴覚・高次脳機能障害などへの対応

  • 聴覚障害:聴力検査、補聴器の調整、人工内耳のリハビリ、聞こえに関する相談
  • 高次脳機能障害:記憶・注意・遂行機能などの障害に対する評価と訓練
  • 言語発達障害:ことばの遅れがある子どもへの発達支援(小児領域)

言語聴覚士の活躍の場

言語聴覚士は、さまざまな現場で活躍しています。医療・介護・福祉・教育などです。主な職場は次のとおりです。

  • 医療機関:総合病院、リハビリテーション病院、回復期リハビリテーション病棟、クリニックなど。脳卒中後のリハビリや嚥下評価などを担います。
  • 介護・福祉施設:介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、デイサービス、デイケアなど。機能訓練や嚥下・口腔ケアの中心的な担い手です。
  • 訪問リハビリ・訪問看護:在宅で暮らす方の自宅を訪問し、生活に密着したリハビリを提供します。近年とくに需要が伸びている分野です。
  • 小児領域(発達支援):児童発達支援、放課後等デイサービス、特別支援学校など。ことばの発達に課題がある子どもを支援します。
  • その他:補聴器メーカー、研究・教育機関など。

言語聴覚士になるには(資格の取り方)

言語聴覚士になるには、養成校で学び、言語聴覚士国家試験に合格する必要があります。文部科学大臣が指定する学校、または都道府県知事が指定する言語聴覚士養成所で、必要な知識・技能を修得します。主なルートは次の3つです。

ルート1:高校卒業後に養成校へ(3~4年制)

高校卒業後、言語聴覚士を養成する学校に進学します。4年制大学・3年制短大・3~4年制の専門学校が対象です。卒業すると国家試験の受験資格が得られます。高校卒業後にまっすぐ言語聴覚士を目指す、もっとも一般的なルートです。

ルート2:一般の大学卒業後に養成課程へ(2年制)

すでに4年制大学を卒業している方は、2年制の言語聴覚士養成課程に進学します。大学院・専修学校などが対象です。これで受験資格を得られます。社会人から言語聴覚士を目指す方の多くが、このルートを選びます。

ルート3:指定科目を修めている場合(1年制など)

大学などで指定された科目をすでに履修している場合があります。その場合は、1年制の指定校で必要な単位を補うことで受験資格を得られるケースがあります。また、海外で言語聴覚士に関する学位を取得した方もいます。厚生労働大臣の認定を受けることで、受験資格が認められる場合もあります。

ルート 対象 必要年数の目安
高校卒業後に養成校 高校卒業(見込み)者 3~4年
一般大学卒業後に養成課程 4年制大学卒業(見込み)者 2年
指定科目履修者の養成課程 指定単位を修めた人 1年程度

言語聴覚士国家試験の概要と合格率

言語聴覚士国家試験は、公益財団法人医療研修推進財団(PMET)が実施しています。厚生労働大臣の指定を受けて行われます。例年2月下旬に年1回実施され、合格発表は3月下旬です。

最新(第28回)の試験結果

第28回言語聴覚士国家試験は、2026年2月21日に実施されました。2026年3月26日に合格発表されています。結果は次のとおりです(厚生労働省発表)。

  • 受験者数:2,187人
  • 合格者数:1,453人
  • 合格率:66.4%

合格基準は、配点を1問1点・合計200点満点とし、120点以上で合格とされています(第28回の場合)。

合格率の推移

言語聴覚士国家試験の合格率は、近年おおむね66~75%の間で推移しています。年度ごとの主な結果は次のとおりです(厚生労働省の合格発表より作成)。

回(実施年) 受験者数 合格者数 合格率
第24回(2022年) 2,593人 1,945人 75.0%
第26回(2024年) 2,431人 1,761人 72.4%
第27回(2025年) 2,342人 1,707人 72.9%
第28回(2026年) 2,187人 1,453人 66.4%

合格率は7割前後で推移しています。ただし、新卒者と既卒者では差が大きい傾向があります。第27回では、新卒者の合格率が87.5%でした。一方、既卒者は25.9%でした。在学中にしっかり学び、新卒で受験することが合格への近道です。次回(第29回)の日程は、厚生労働省や医療研修推進財団(PMET)の公式発表で確認しましょう。

言語聴覚士の平均年収

言語聴覚士の平均年収は、約444万円です。厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとにした数値です(きまって支給する現金給与額 月約31.1万円+年間賞与など約70.5万円から算出)。全国の平均年収と比べると、やや低めの水準です。

ただし、年収は年齢・経験・勤務先によって変わります。一般に経験を積むほど上がる傾向です。年代別に見ると次のようなイメージです(公的統計をもとにした目安)。

区分 年収の目安
初任給(月給ベース) 月約24.6万円
30代 約400万円台
40代後半 約500万円台
55~59歳(ピーク) 約610万円

職場別では、在宅系の職場が比較的高めの傾向があるとされています。訪問看護ステーションや訪問リハビリなどです。求人を探す際は、基本給だけでなく賞与・各種手当・昇給制度もあわせて確認するとよいでしょう。

言語聴覚士と理学療法士(PT)・作業療法士(OT)の違い

言語聴覚士(ST)は、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)とあわせて「リハビリ専門職(セラピスト)」と呼ばれます。いずれも国家資格です。それぞれ専門とする領域が異なります。

職種 主な専門領域 具体例
言語聴覚士(ST) ことば・聞こえ・飲み込み 失語症・構音障害・摂食嚥下・聴覚
理学療法士(PT) 基本的動作能力 起き上がる・立つ・歩く
作業療法士(OT) 応用動作・日常生活動作 食事・着替え・トイレ・手の動き

3職種は対象や手法が異なります。しかし、リハビリの現場では役割を分担しつつ連携します。医師や看護師、介護職、栄養士などとチームを組みます。一人の患者・利用者を多角的に支えるのが特徴です。理学療法士について詳しく知りたい方は、理学療法士とはもあわせてご覧ください。

介護分野で高まる言語聴覚士の需要

介護分野における言語聴覚士の役割は、年々大きくなっています。高齢化が進んでいるためです。とくに重要なのが、嚥下機能の低下による誤嚥性肺炎の予防です。言語聴覚士は、嚥下評価や口腔ケア、安全な食事方法の提案などを行います。高齢者が「最後まで口から食べる」ことを支えます。

また、言語聴覚士は機能訓練指導員として働くこともできます。機能訓練指導員は、デイサービス(通所介護)やショートステイ、特別養護老人ホームなどで配置が求められる職種です。一定の資格があれば従事できます。看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師・はり師・きゅう師のいずれかです。言語聴覚士が機能訓練指導員を務める場合は、コミュニケーションや嚥下・口腔機能の維持改善を担う点が強みです。詳しくは機能訓練指導員の記事で解説しています。

なお、リハビリや訓練に関わる国家資格には、目の機能を扱う視能訓練士などもあります。関連する職種に興味がある方は、視能訓練士もチェックしてみてください。

言語聴覚士に向いている人・求められる資質

  • 人と向き合い、相手の気持ちに寄り添えるコミュニケーション力がある
  • 地道な訓練を粘り強く続けられる
  • 観察力があり、わずかな変化に気づける
  • 医師・看護師・介護職など多職種と協力して働ける
  • ことばや「食べる」ことを通じて人の生活を支えたいという思いがある

言語聴覚士は、患者・利用者の回復や成長に長く伴走する仕事です。その分、相手の変化を間近で感じられます。やりがいの大きい専門職です。

社会人から目指す人がつまずかないために

言語聴覚士は社会人からの転身が多い資格です。一方で、新卒と既卒の合格率の差が大きい点には注意が必要です。第27回では新卒87.5%に対し、既卒は25.9%でした。働きながら、あるいは一度卒業してから挑む人ほど、対策の積み方が結果を左右します。

既卒受験で起こりやすいつまずき

  • 仕事と学習の両立で勉強時間が確保できず、出題範囲を回しきれない
  • 卒業から時間が空き、最新の出題傾向や法改正をつかめていない
  • 苦手分野を後回しにし、合格基準の総得点に届かない

合格率を踏まえた進路選びのコツ

養成ルートは現在の学歴や働き方で選び方が変わります。無理のない計画が遠回りを防ぎます。

状況 現実的なルートの考え方
一般大学を卒業済み 2年制の養成課程。学習に集中できる環境を整える
働きながら目指したい 夜間課程など。実習期間の確保を先に見込む
指定科目を履修済み 1年制で不足単位を補えるか個別に確認する

国家試験の最新の日程や要項は、厚生労働省の資格・試験情報のページや実施団体(医療研修推進財団)の案内で確認できます。受験前に最新情報を必ずチェックしましょう。

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まとめ

言語聴覚士(ST)は、話す・聞く・食べるという生活の土台を支える国家資格です。資格を取るには、養成校で学んで国家試験に合格する必要があります。第28回(2026年)の合格率は66.4%でした。平均年収は約444万円です。活躍の場は医療機関だけでなく、介護施設や訪問リハビリ、小児の発達支援まで広がっています。とくに高齢化が進む介護分野では、嚥下や口腔機能を支える機能訓練指導員としての需要も高まっています。人と深く関わりながら社会に貢献したい方にとって、魅力的な選択肢です。

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参考(一次情報)