2027年度 介護報酬改定の論議スタート|「同時改定」の論点を先取り

※本記事は2026年6月17日時点の公開情報に基づきます。制度の詳細は今後変更される可能性があるため、最新は出典元でご確認ください。

2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けた話し合いが、国の会議で始まりました。3年に一度の通常改定で、事業所の収入や運営に直結する重要なテーマです。今回は「賃上げ」「経営の安定」「制度を続けられるようにすること」の3つが大きな柱になりそうです。あわせて「トリプル改定」という言葉も聞こえてきますが、ここには注意が必要です。この記事では、いま何が話し合われているのかを、「決まったこと」と「まだ議論の途中のこと」を分けながら、できるだけかみくだいてお伝えします。

まず結論(おさえておきたい3点)
  • 2027年度改定の議論は2026年4月にスタートしたばかりで、改定率も施行日の細目もまだ決まっていません。現時点はすべて「議論中」です。
  • 議論の柱は「さらなる処遇改善(賃上げ)」「事業所の経営安定」「制度の持続可能性(給付の効率化)」の3つ。事業者にいちばん関係が深い部分です。
  • 「トリプル改定」は本来、医療・介護・障害の3つが同時に見直される年を指します。2027年度は介護と障害福祉の同時(ダブル)改定で、医療(診療報酬)は2028年度。3分野そろう次のトリプル改定は2030年度の見込みです。

そもそもこれは何の話?(背景)

介護報酬は、原則として3年に一度見直されます。直近では2024年度(令和6年度)に通常改定があり、さらに2026年度には賃上げを目的とした臨時(期中)の改定(全体でプラス2.03%、2026年6月施行)も行われました。次の通常改定が2027年度で、その準備として「社会保障審議会・介護給付費分科会」で2026年4月27日から本格的な議論が始まっています。

介護給付費分科会とは、介護報酬の単位数や算定要件の中身を専門的に話し合う、厚生労働省の会議です。事業者団体・自治体・保険者・利用者団体などの委員が参加し、ここでの議論をもとに改定の方向性が固まっていきます。なお、報酬とは別に「制度そのもの(自己負担割合やケアマネジメントの仕組みなど)」を扱う介護保険部会では、2027年度からの制度改正に向けた意見が2025年12月にいったん取りまとめられ、現在は基本指針づくりなどの段階に進んでいます。

「トリプル改定」って2027年度のこと?(よくある誤解)

結論から言うと、2027年度はトリプル改定の年ではありません。改定の周期が分野ごとに違うためです。

  • 診療報酬(医療)…2年に一度(2024 → 2026 → 2028 …)
  • 介護報酬…3年に一度(2024 → 2027 → 2030 …)
  • 障害福祉サービス等報酬…3年に一度(2024 → 2027 → 2030 …)

この3つの周期が重なるのは6年に一度で、直近では2024年度が「医療・介護・障害」がそろうトリプル改定でした。2027年度は介護と障害福祉の同時(ダブル)改定にあたり、医療(診療報酬)は1年後の2028年度です。3分野がそろう次のトリプル改定は2030年度の見込みです。とはいえ、医療と介護をまたぐ高齢者が増えるなか、議論では「医療・介護連携」が重要テーマに挙がっており、2027年度の介護改定もこうした連携の文脈を意識して進められると見られます。「トリプル改定」という言葉だけが先行して、施行年を取り違えないよう注意が必要です。

いま話し合われている4つのテーマ

2026年4月27日の会合で、厚生労働省から次の4つの「分野横断的なテーマ」が示されました(議論の中で変わる可能性もあります)。

  1. 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築
  2. 地域包括ケアシステムの深化
  3. 介護人材の確保に向けた処遇改善等と、職場環境改善・生産性向上
  4. 制度の安定性・持続可能性を確保する報酬のあり方

この4つの枠の中で、委員からはとくに次のような意見が出ています。いずれも「決定」ではなく、出されている意見・論点であることにご留意ください。

① さらなる処遇改善(賃上げ)を求める声

賃上げ加算の創設・拡充により介護職員の給与は上がってきたものの、他産業との賃金格差は依然として1か月あたり8万円程度残っているとされます(2024年度の約8万3000円から、2025年度は約8万2000円へわずかに縮小)。他産業も2026年度に5%程度の賃上げを進めており、「このままでは差が再び開き、人材が他業種へ流出してしまう」という危機感から、次の改定でもさらなる処遇改善を求める意見が多く出ています。賃金水準の動向に合わせて加算が動く「スライド制」の導入や、保険料・自治体負担の増につながらないよう「国による支援」の拡充を求める提案もありました。

② 事業所の経営の立て直し

介護事業所の4〜5割が赤字で、経営が安定しなければ職員の賃上げもできない」として、各サービスの基本報酬の大幅な引き上げを求める意見が出ています。あわせて、「昨今の経済状況の中で3年先を見通すのは難しい」として、改定のサイクルそのものを見直すべきという提案(経営維持は3年サイクル、賃上げ・物価高対応は毎年度対応とする、など)も示されました。ただし自治体からは「頻繁な改定は事務負担が重い」との声もあり、サイクルの見直しは分科会だけでは決められず、政府全体・自治体を交えた検討が必要とされています。

③ 制度を続けられるようにする(給付の効率化・重点化)

一方で、報酬を引き上げれば、その分保険料や税金の負担が増えます。介護費は保険料と税金で半分ずつまかなわれており、40〜64歳が納める第2号保険料は制度創設時の3倍に増えているとして、現役世代の負担はすでに限界に近いとの指摘もあります。そこで「2024年度・2026年度の改定の効果を検証したうえで、効率化・重点化に力点を置くべき」「ICTの活用や事業所の協働化・大規模化で効率を上げるべき」といった意見も出ています。「サービスの充実」と「制度の維持」は、どちらかを選ぶ話ではなく、両立をどう図るかが論点です。

そのほかの論点

  • 複雑になった加算の整理:算定率の高い加算は基本報酬に組み込んではどうか、という意見。
  • 離島・中山間地などへの特例:人員配置基準の柔軟化や包括的な報酬の導入を検討。
  • 医療・介護連携の強化:85歳以上の高齢者が増え、医療と介護をまたぐニーズが高まる点を踏まえる。
  • 臨時改定の効果検証:2026年度の臨時改定で新たに対象となった訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援(ケアマネ事業所)も含め、賃上げの進み具合を調査。結果は2027年度改定の重要な基礎資料に。

事業者への影響(実務の目線で)

現時点では中身が決まっていないため、いま何かの対応を急ぐ必要はありません。ただ、議論の方向性からは、次のような流れが読み取れます(あくまで現時点の傾向で、確定ではありません)。

  • 処遇改善(賃上げ)の仕組みは、次の改定でもさらに重視される可能性が高いとみられます。
  • 加算を整理・簡素化する方向の議論があり、いま取っている加算の要件や算定状況を把握しておくと、改定時の対応がスムーズになりやすいと考えられます。
  • 経営状況の調査(介護事業経営実態調査など)の結果が改定の基礎資料になるため、調査への協力は自事業所の実態を反映させるうえで意味があります。
  • 介護と障害福祉の事業を両方手がける法人では、2027年度に両方の報酬が同時に見直される点に留意しておくと、準備の見通しが立てやすくなります。

今後のスケジュール(現時点の案・見込み)

  • 2026年4月~:主な論点の総論的な議論(第1ラウンド)と、事業者団体などからの意見聴取
  • 2026年10~12月:個別サービスごとの具体的な議論(第2ラウンド)
  • 2026年12月:報酬・基準に関する基本的な考え方をとりまとめ(基準は条例改正の期間を踏まえ先行してとりまとめ)
  • 2026年12月下旬:政府の予算編成のなかで改定率が決定
  • 2027年1月ごろ:介護報酬改定案の諮問・答申
  • 2027年度(令和9年度):改定の施行

※上記は2026年4月時点で示されたスケジュール案です。施行日の細目や改定率はまだ決まっていません。2026年度に行われた臨時(期中)改定とは別の、次の通常改定である点にご注意ください。

まとめ&次にチェックすべきこと

2027年度の介護報酬改定は、まだ「論点を出し合っている」段階で、具体的な数字や要件は決まっていません。ただし「賃上げ」「経営の安定」「制度の持続可能性」という3つの軸で議論が進んでいること、そして2027年度は介護・障害の同時改定であり医療を含むトリプル改定ではないことを、今のうちに押さえておくと、秋以降の具体論を理解しやすくなります。次の節目は2026年10~12月の具体的な議論と、12月下旬の改定率決定です。本サイトでも続報を追っていきます。

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