他業種より給料が低いから。総理肝いりの介護職員増加対策は6000円の賃上げ

「介護職員1人あたり月6,000円の賃上げ」というニュースを覚えている方も多いでしょう。これは2024年2月から5月に実施された一時的な補助金で、すでに役目を終えています。その後、賃上げの仕組みは大きく形を変えました。2026年6月には異例の臨時改定も施行されました。この記事では、6,000円賃上げから現在までの処遇改善の流れと今後の見通しを、2026年7月時点の最新情報でたどります。介護現場で制度を追う方が、いつ・誰が対象・いくらかを一読で確認できる内容です。

この記事でわかること

  • 「月6,000円賃上げ」だった介護職員処遇改善支援補助金の中身と、2024年5月で終了したこと
  • 2024年6月に3つの加算が一本化された「介護職員等処遇改善加算」のしくみ
  • 2009年から続く介護職の処遇改善の歴史的な流れ
  • 2025年度補正予算と2026年6月の臨時介護報酬改定(+2.03%)による最新の賃上げ
  • これまでの賃上げの効果と、いま残されている課題

「月6,000円の賃上げ」とは何だったのか

「月6,000円の賃上げ」は、2024年2月から5月までの一時的な補助金でした。2023年秋、政府が経済対策の一環として介護職員らの賃金を月6,000円程度引き上げる方針を検討していると報じられ、話題になりました。これが実際の制度として動き出したのが「介護職員処遇改善支援補助金」です。

厚生労働省の資料によると、この補助金は介護職員の収入を2%程度(月額平均6,000円相当)引き上げるための経費を補助するものでした。対象期間は2024年2月分から5月分です。賃上げ効果が続く取組を行うことを前提に、補助額の全額を介護職員等の賃上げに充てることが要件とされていました。(出典:厚生労働省「令和6年2月からの介護職員処遇改善支援補助金について」)

ここで大切なのは、この6,000円の補助が2024年5月で終了している点です。これは2024年6月の制度改正までの「つなぎ」として設けられた一時的な補助金でした。現在、この補助金そのものは存在しません。6月以降は、後述する介護報酬改定によって、補助金額を上回る加算率の上乗せに引き継がれています。

2024年6月、3つの加算が「介護職員等処遇改善加算」に一本化

2024年6月、それまで別々だった3つの加算が「介護職員等処遇改善加算」という1つの加算(賃上げの原資となる介護報酬の上乗せ)に統合されました。6,000円補助の終了とほぼ同時に、賃上げの土台が大きく作り替えられたのです。2024年度(令和6年度)の介護報酬改定によるもので、対象は次の3加算でした。

  • 介護職員処遇改善加算
  • 介護職員等特定処遇改善加算
  • 介護職員等ベースアップ等支援加算

新しい加算は、要件の重さに応じて(I)から(IV)までの4区分に整理されました。算定要件は大きく3種類です。(1)キャリアパス要件、(2)月額賃金改善要件、(3)職場環境等要件にわかれます。さらに、急に加算額が下がることを防ぐ激変緩和の経過措置もありました。2025年3月末までは、従来の組み合わせに応じた区分(V)も用意されていたのです。(出典:厚生労働省リーフレット「処遇改善加算の制度が一本化されます」)

この一本化により、加算率の引き上げも行われました。2024年度に+2.5%、2025年度に+2.0%相当のベースアップにつながるよう設計されています。複雑だった3加算が1つにまとまり、申請の手間も一定程度軽くなりました。加算の中身については処遇改善手当の記事もあわせてご覧ください。

そもそも介護職の処遇改善はいつから始まった?

介護職の処遇改善は、2009年から15年以上にわたって積み重ねられてきました。「6,000円」や「処遇改善加算」は突然出てきたものではありません。歴史的な流れを簡単に振り返っておきましょう。

時期 おもな制度・できごと
2009年10月 介護職員処遇改善交付金がスタート(1人あたり月1.5万円相当)
2012年4月 交付金が介護報酬に組み込まれ「介護職員処遇改善加算」へ
2019年10月 介護職員等特定処遇改善加算を創設(経験・技能のある職員を重点処遇)
2022年2月~9月 処遇改善支援補助金(月9,000円相当)を一時実施
2022年10月 介護職員等ベースアップ等支援加算を創設
2024年2月~5月 介護職員処遇改善支援補助金(月6,000円相当)を実施し終了
2024年6月 3加算を「介護職員等処遇改善加算」に一本化

出発点は、2009年10月にスタートした介護職員処遇改善交付金です。当時は介護職の離職率が全産業平均を上回り、他業種との賃金格差が深刻でした。これを背景に、約3,975億円規模で1人あたり月1.5万円相当が手当てされたのです。これが2012年4月に介護報酬へ組み込まれ、現在の処遇改善加算の原型になりました。(出典:厚生労働省「介護職員処遇改善交付金について」)

その後も、対象や金額を変えながら処遇改善の取組が重ねられてきました。賃金そのものの推移は介護職員の給料アップの記事でも詳しく解説しています。

2025年度補正予算と2026年6月の臨時改定

2025年から2026年にかけて、賃上げはさらに大きく動いています。まず2025年度補正予算では「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」が盛り込まれました。対象期間は2025年12月から2026年5月までの半年間で、6月以降は次に述べる臨時改定へ引き継がれました。

この支援事業は3階建ての構造です。内訳は次のとおりで、合計で最大月1.9万円相当の賃上げを目指します。

  • 幅広い職員への賃上げ(月額1.0万円目安)
  • 協働化等に取り組む事業者への上乗せ(月額0.5万円目安)
  • 職場環境改善への支援(人件費に充てた場合、賃上げ換算で月額0.4万円目安)

そして2026年6月、処遇改善に特化した臨時の介護報酬改定が施行されました。年度途中での改定は異例です。改定率は+2.03%(処遇改善分+1.95%、食費の基準費用額の引き上げ分+0.09%)で、大部分が処遇改善加算の引き上げ(賃上げ部分)にあてられています。介護職員については、基本として月1万円(3.3%)の賃上げが目標です。さらに、生産性向上や協働化に取り組む事業者には月7,000円(2.4%)が上乗せされます。事業所の定期昇給分も合わせると、最大で月1万9,000円程度の賃上げが目指されています。

この臨時改定で、介護職員等処遇改善加算は従来の4区分から(Iイ)(Iロ)(IIイ)(IIロ)(III)(IV)の6区分に再編され、加算率も引き上げられました。たとえば訪問介護の最上位区分は、旧24.5%から27.0%(イ)/28.7%(ロ)に上がっています。上位の「ロ」区分を令和8年度に算定するには、ケアプランデータ連携システムの利用、生産性向上推進体制加算の算定、社会福祉連携推進法人への参画のいずれかを満たす必要があります。

もう一つの大きな変化が対象の拡大です。これまで処遇改善加算の対象外だった訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援などにも、処遇改善の加算(2.1%など)が新設されました。介護支援専門員(ケアマネジャー=ケアプランを作る専門職)も、2026年6月から新たに処遇改善の対象に含まれています。(出典:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」)

賃上げの効果と、いま残る課題

一連の処遇改善によって、介護職の平均賃金は着実に底上げされてきました。長く続けるほど加算の恩恵が積み重なる仕組みのためです。勤続年数の長い介護福祉士などでは、処遇改善関連の手当だけでまとまった金額が上乗せされているケースもあります。介護福祉士の資格を取得しておくと、こうした加算の対象になりやすい点もメリットです。

一方で、課題も残っています。制度の恩恵を「実感」に変えられるかどうかは、次の3点にかかっています。

残っている課題 現場での現れ方
全産業平均との賃金格差 加算を重ねても、他業種と比べた水準差はすぐには埋まらない
事業所ごとの配分ルールの差 同じ加算率でも「一律配分」か「経験・技能で重点配分」かで手取りが変わる
対象外だった職種との不公平感 看護師やリハビリ職、事務職は長らく加算の対象外で、現場内で温度差が出やすい

2026年6月の臨時改定で対象職種・サービスが広がったことは、このうち3点目の不公平感を和らげる見直しです。ケアマネジャーや訪問看護、居宅介護支援なども新たに処遇改善の対象に含まれ、対象外だった職種の範囲は縮まっています。とはいえ、賃上げが「自分の給与明細」にどう反映されるかは、事業所ごとの配分方針次第という構図は変わりません。求人票や給与明細を見るときは、次の2点を意識すると実感とのズレを防げます。

  • 基本給と処遇改善手当を分けて確認する:処遇改善加算は多くの場合「手当」として別立て支給です。基本給だけで比較すると実態を見誤ります。
  • 配分ルールを面接や入職時に聞く:「一律いくら」なのか「経験・役職で差がつく」のか、事業所によって方針が異なります。曖昧なまま入職すると、想定より手取りが少なく感じる原因になります。

給料が上がりにくいと感じる背景については、介護職の給料が安い理由の記事もあわせて確認しておくとよいでしょう。

管理職向け:スタッフへの説明と自施設での確認ポイント

制度が次々に変わるなか、部下から「結局いくら上がるの?」と聞かれて答えに困る管理職は少なくありません。スタッフへ説明するときの要点と、自施設で確認しておきたいことを整理しました。

スタッフに伝えるときの3つの要点

  • 6,000円補助は終了している:2024年2月~5月の一時的な補助金で、今は存在しません。古い数字で期待させないよう注意します。
  • 今は加算で賃上げが続いている:2024年6月に一本化された介護職員等処遇改善加算が原資です。一時金ではなく継続的な賃金改善につながります。
  • 金額は配分方針で決まる:実際の手取りは、加算をどう配分するかという事業所のルール次第です。「一律」か「経験・技能で重点配分」かで一人ひとりの額が変わります。

自施設で確認しておきたいこと

確認項目 なぜ必要か
現在算定している加算の区分(Iイ~IVの6区分) 区分によって加算率と必要な要件が変わるため
キャリアパス要件・職場環境等要件の充足状況 要件を満たさないと加算が取れず、賃上げ原資が減るため
加算の配分ルールが職員に説明できる状態か 「同じ職場で額が違う」不満やトラブルを防ぐため
2026年6月臨時改定による6区分再編・対象拡大への対応 ロ区分の特例要件や、ケアマネなど新たに対象となった職種・サービスの確認が必要なため

加算の要件や配分は誤ると返還や減算につながるおそれがあります。最新の様式や要件は厚生労働省の介護・高齢者福祉のページで必ず確認しましょう。

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まとめ

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「月6,000円の賃上げ」は2024年2月から5月までの一時的な補助金で、すでに終了しています。その後は段階的に仕組みが強化されてきました。2024年6月の介護職員等処遇改善加算への一本化、2025年度補正予算による支援事業、そして2026年6月に施行された臨時介護報酬改定(+2.03%)へと続いています。古いニュースの数字だけで判断せず、最新の制度に置き換えて理解することが欠かせません。賃上げや処遇改善の動向を踏まえて働き方を考えたい方は、求人情報やLINE相談も活用してみてください。

参考(一次情報)