【60歳を迎えた方が対象】高年齢雇用継続給付と高年齢求職者給付について

65歳以上で会社を辞めたとき、雇用保険から一時金を受け取れることをご存じでしょうか。それが「高年齢求職者給付金」です。簡単にいえば、65歳以上で失業した人がもらえるまとまった一時金です。65歳未満が受け取る基本手当(いわゆる失業手当)とは仕組みが異なります。まとまった額が一度に支給されます。さらに、老齢年金と同時に受け取れる点も大きな特徴です。この記事では、支給額・受給条件・申請の流れ・基本手当との違いを解説します。厚生労働省やハローワークの情報をもとに、2026年7月時点の最新情報でまとめました。

この記事でわかること

  • 高年齢求職者給付金とは何か(65歳以上の失業時に支給される一時金)
  • 支給額の決まり方(被保険者期間1年未満は30日分/1年以上は50日分)
  • 受給するための条件と申請の流れ
  • 65歳未満の基本手当(失業手当)との違いを比較表で整理
  • 老齢年金と併給できる点や、複数回受給できる点
  • 定年後の再就職先として介護業界が選ばれている理由

高年齢求職者給付金とは

高年齢求職者給付金とは、65歳以上で離職した方に支給される手当です。雇用保険の「高年齢被保険者」であった方が対象になります。65歳以上で働き、雇用保険に加入していた方が会社を辞めて求職活動をするときに受け取れます。厚生労働省のリーフレットにも明記されています。「高年齢被保険者であった方が失業した場合に支給される手当」という説明です。

かつては、65歳以降に新たに雇用保険へ加入することはできませんでした。これが2017年(平成29年)1月施行の雇用保険法改正で変わりました。65歳以上の方も「高年齢被保険者」として新規加入できるようになったのです。これにより対象が広がりました。65歳を過ぎて就職した方や、定年後に再雇用・再就職した方も、要件を満たせば対象になります。

最大の特徴は、一時金として一括で支給される点です。65歳未満の方が離職した場合の「基本手当(いわゆる失業手当)」とは異なります。基本手当は、原則として28日ごとの認定を受けながら複数回に分けて支給されます。失業手当の仕組みそのものをくわしく知りたい方は、失業手当(基本手当)の記事もあわせてご覧ください。

高年齢求職者給付金の支給額

支給額は、雇用保険の被保険者であった期間に応じて決まります。次の日数分の「基本手当日額」に相当する額が、一括で支給されます。

被保険者であった期間 支給される日数
1年未満 基本手当日額の30日分
1年以上 基本手当日額の50日分

つまり、被保険者であった期間が1年に満たなければ30日分です。1年以上であれば50日分が支給されます。65歳未満の基本手当とは仕組みが違います。基本手当は、被保険者期間が長くなるほど給付日数が細かく増えていきます。一方、高年齢求職者給付金は30日分か50日分かの2段階です。この点を押さえておきましょう。

基本手当日額の計算方法

支給額の基礎となるのが「基本手当日額」です。まず、離職前6か月間に支払われた賃金(賞与などを除く)をもとに「賃金日額」を算出します。次に、その賃金日額へ一定の給付率を掛けて計算します。給付率は、賃金水準が低い人ほど高くなるよう設計されています。おおむね賃金日額の50~80%です(60歳以上の区分では45~80%)。

基本手当日額には、年齢区分ごとに上限額が設けられています。高年齢求職者給付金の対象となる方は、原則として「60歳以上65歳未満」の区分が適用されます。この区分の計算式・上限額が使われます。厚生労働省の発表による、令和7年(2025年)8月1日からの上限額・下限額は次のとおりです。

区分 基本手当日額(令和7年8月1日~)
上限額(60歳以上65歳未満) 7,623円
下限額(全年齢共通) 2,411円

具体例で見てみましょう。被保険者期間が1年以上で、基本手当日額が5,000円のケースです。この場合、5,000円×50日分=25万円が一時金として支給される計算です。基本手当日額が上限の7,623円であれば、50日分で38万円程度になります。実際の金額はハローワークでの計算によります。あくまで目安として参考にしてください。なお基本手当日額の上限額・下限額は、毎年8月に改定されます。申請時には最新の金額を確認しましょう。

高年齢求職者給付金を受給するための条件

支給を受けるには、厚生労働省が示す次の2つの要件をすべて満たす必要があります。

条件1 離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あること

離職の日以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6か月以上あることが必要です。ここでいう被保険者期間とは、賃金支払いの基礎となった日数で数えます。離職日から1か月ごとに区切り、その日数が11日以上ある月を1か月として計算します。11日以上の月が6か月に満たない場合は、別の数え方を使います。賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上の月を、1か月として計算します。

条件2 失業の状態にあること

「失業の状態」とは、就職の意思と能力があるのに就職できない状態を指します。就職したいという積極的な意思と、いつでも就職できる能力があることが前提です。積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態が条件です。次のような方は、原則として失業の状態とは認められず、支給を受けられません。

  • すでに次の就職先が決まっている方
  • 病気やケガ、出産などですぐに就職できない方
  • 家事や学業に専念する方、自営業を営んでいる方
  • 会社の役員に就任している方(名義だけの役員を含む)
  • 就職・就労中の方(試用期間を含む)

条件を満たしたら、住所地を管轄するハローワークで手続きをします。求職の申し込みと受給手続きが必要です。

高年齢求職者給付金の申請の流れ

申請は、ご自身の住所を管轄するハローワークで行います。求職申込みの手続き自体は、どのハローワークでも受け付けています。ただし雇用保険の受給手続きは、住所地を管轄するハローワークで行う必要があります。

  1. 離職票を受け取る 退職後、勤務先から「離職票-1」「離職票-2」を受け取ります。
  2. ハローワークで求職申込み・受給手続き 離職票などの必要書類を持参し、求職の申し込みと受給手続きを行います。
  3. 待期期間(7日間) 手続き日から失業の状態にあった日が通算7日経過するまでは支給されません。これを「待期」といいます。
  4. 失業の認定 ハローワークが指定した認定日に来所し、失業の状態にあることの確認を受けます。
  5. 一時金の支給 失業の認定を受けると、被保険者期間に応じた日数分(30日分または50日分)が一括で支給されます。

自己都合で退職した場合は、注意が必要です。待期7日の経過後に、さらに給付制限期間が設けられます。令和7年4月1日以降の自己都合退職は、原則1か月です。自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇は3か月となります。

手続きに必要なもの

  • 離職票-1、離職票-2
  • マイナンバーカード(お持ちでない場合は個人番号確認書類と身元確認書類)
  • 写真1枚(最近の正面上半身、タテ3.0cm×ヨコ2.4cm。マイナンバーカード提示で省略可)
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

受給期限は離職日の翌日から1年

高年齢求職者給付金には受給期限があります。離職日の翌日から1年が過ぎると、たとえ手続き前であっても受け取れなくなります。基本手当のように受給期間を延長する一般的な仕組みはありません。そのため、求職申込みの手続きが遅れると不利になります。本来受け取れる日数の一部しか支給されないことがあります。退職したら、早めにハローワークで手続きをしましょう。

基本手当(65歳未満の失業手当)との違い

65歳未満が受け取る基本手当と、65歳以上が受け取る高年齢求職者給付金。どちらも同じ雇用保険の求職者給付ですが、仕組みに大きな違いがあります。主な違いを表で整理します。

項目 高年齢求職者給付金(65歳以上) 基本手当(65歳未満の失業手当)
支給の方法 一時金として一括支給 認定を受けながら複数回に分けて支給
給付日数 30日分または50日分 原則90日~最大330日(年齢・被保険者期間・離職理由による)
必要な被保険者期間 離職前1年間に通算6か月以上 離職前2年間に通算12か月以上(特定受給資格者などは6か月以上)
老齢年金との関係 併給可能(支給停止・調整なし) 特別支給の老齢厚生年金は支給停止(調整あり)
受給期限 離職日の翌日から1年 原則として離職日の翌日から1年(延長制度あり)

老齢年金と併給できる

大きなメリットは、老齢年金と同時に受け取れる点です。65歳未満の方が基本手当を受給する場合は、扱いが異なります。特別支給の老齢厚生年金が支給停止されてしまいます。一方、高年齢求職者給付金は年金との併給調整の対象外です。そのため、老齢年金を受け取りながら受給しても、年金が減らされることはありません。年金制度のしくみについては、国民年金と厚生年金の違いの記事もご参照ください。

条件を満たせば何度でも受給できる

高年齢求職者給付金は、条件を満たせば繰り返し受給できます。受給後に再び就職して新たに被保険者期間を満たし、再度離職して失業の状態になればよいのです。年に1回までといった回数制限はありません。65歳以降に就職と離職を繰り返す場合でも、その都度受給できる可能性があります。

名前が似ている「高年齢雇用継続給付」との違い

名前の似た制度に「高年齢雇用継続給付」があります。こちらは離職した人ではなく、雇用保険に加入して働き続ける60歳以上65歳未満の方が対象です。賃金が60歳時点の75%未満に下がった場合に、各月の賃金の一部が支給されます。支給率は2025年(令和7年)4月の改正で、最大15%から最大10%に引き下げられました。対象は2025年4月1日以降に60歳に達した方です。2025年3月31日以前に60歳に達した方は、最大15%のまま変わりません。この給付は今後、段階的に縮小・廃止される方針です。「働き続けながら受け取る」のが高年齢雇用継続給付、「離職して求職中に受け取る」のが高年齢求職者給付金です。この違いを押さえておくと混同を防げます。

介護業界はシニアの再就職先として需要が高い

定年後の再就職先として注目されているのが、介護業界です。介護業界は、深刻な人手不足が続いています。年齢を重ねた方の経験や落ち着いた対応力が歓迎される職場も多くあります。

厚生労働省のハローワーク向けリーフレットでも、医療・介護・保育の分野が紹介されています。無資格・未経験から始められ、働きながら資格取得を目指せる仕事としての紹介です。介護の現場は、柔軟な働き方を選びやすいのも特徴です。短時間勤務や週数日のシフトなどがあります。体力に合わせて無理なく続けられる点も、シニアに向いています。

給付金を受けながら求職活動する場合の考え方

高年齢求職者給付金は一時金のため、基本手当のように「働くと減額される」といった仕組みはありません。求職活動中に短期の仕事に就いても、次に離職して要件を満たせば再度受給できる可能性があります。この特徴を踏まえると、次のような動き方が考えられます。

求職活動の進め方 ポイント
じっくり職場を選びたい場合 一時金を生活の備えにしながら、複数の求人・施設を比較検討する時間に充てる
早く働き始めたい場合 研修だけで始められる訪問介護員や、無資格可の求人から探し始める
将来また離職する可能性がある場合 再就職後の雇用保険加入期間(通算6か月以上)を意識しておくと、再受給の選択肢が残る

たとえばホームヘルパー(訪問介護員)は、研修を修了すれば始められます。利用者の生活を支える、やりがいの大きな仕事です。高年齢求職者給付金を受け取りながら、じっくり求職活動を行うこともできます。自分に合った働き方を見つけられます。定年後の働き方を具体的に考えたい方は、定年後の再就職の記事もあわせてご覧ください。

もらい損ね・損を防ぐ申請チェックリスト

結論をいうと、高年齢求職者給付金は「期限切れ」と「失業状態の認定漏れ」で損をしやすい給付です。一時金のため、もらい損ねると取り返しがつきません。退職前後に次の点を確認しておきましょう。

  • 受給期限は離職日の翌日から1年。基本手当のような延長は使えない。離職票が届いたらすぐハローワークへ
  • 次の就職が決まっていると対象外。退職と同時に再就職先が決まっている場合は支給されない
  • 名義だけの役員でも対象外。退職後に親族の会社の役員になっている場合は要注意
  • 自己都合退職は給付制限あり。令和7年4月以降は原則1か月。待期7日と合わせて手続きを急ぐ
  • 離職票は退職後に勤務先から届く。なかなか届かないときは早めに会社へ催促する

年金事務所への相談も忘れずに

この給付金は老齢年金と併給できますが、在職老齢年金や他の給付との関係で迷う人もいます。判断に迷うときは、ハローワークと年金事務所の両方に確認すると確実です。窓口で「高年齢求職者給付金を受けながら年金を受給したい」と伝えれば、自分のケースで調整があるか教えてもらえます。制度の最新情報は、記事末の「参考(一次情報)」に挙げた厚生労働省の資料でも確認できます。

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まとめ

高年齢求職者給付金は、65歳以上で離職し失業の状態にある方が受け取れる雇用保険の一時金です。被保険者であった期間が1年未満なら、基本手当日額の30日分が支給されます。1年以上なら50日分が一括で支給されます。受給には条件があります。離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あり、失業の状態にあることです。手続きは、住所地を管轄するハローワークで行います。

65歳未満の基本手当との違いは3つです。一時金で支給される点、老齢年金と併給できる点、要件を満たせば何度でも受給できる点です。受給期限は離職日の翌日から1年です。退職したら、早めの手続きを心がけましょう。定年後の再就職を考える際は、シニアの需要が高い介護業界も選択肢に入れてみてください。給付金を活用しながら、じっくり次の一歩を探せます。

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参考(一次情報)