ケースワーカーとは、病気・障害・貧困・高齢などで生活に困りごとを抱える人の相談に応じ、調査や支援を行う相談援助職です。狭い意味では、市役所などの福祉事務所で生活保護を担当する地方公務員(現業員)を指します。
この記事は、ケースワーカーの仕事やなり方を知りたい人に向けた解説です。仕事内容、必要な資格(社会福祉主事任用資格)、公務員試験からのルート、年収、ソーシャルワーカーやケアマネジャーとの違いまで整理します。
読み終えたときに「自分は何から始めればよいか」が分かる構成にしています。
記事でわかること
ケースワーカーとは|生活の困りごとを支援につなぐ相談援助職
ケースワーカーの意味と役割
ケースワーカーは、個別の事例(ケース)ごとに相談援助(ケースワーク)を行う職種の呼び名です。面接や家庭訪問で生活状況を確かめ、必要な制度やサービスにつなぐのが役割です。
「ケースワーカー」という名前の国家資格はありません。働く場所と担当業務によって、求められる資格が変わります。
法律上は福祉事務所の「現業員」を指す(社会福祉法第15条)
日本で「ケースワーカー」と言うとき、多くの場合は福祉事務所の現業員を指します。
福祉事務所は、社会福祉法第14条に基づく行政機関です。都道府県と市(特別区を含む)に設置が義務付けられ、生活保護法など福祉六法に定める援護・育成・更生の措置を担当します。
同法第15条は、福祉事務所に「現業を行う所員(現業員)」を置くと定めています。現業員の職務は、支援を要する人の家庭を訪問し、または面接し、資産や環境を調査し、保護その他の措置の要否や種類を判断し、生活指導を行う事務と規定されています。
この現業員が、いわゆる生活保護のケースワーカーです。指導監督を行う所員(査察指導員)とともに、社会福祉主事でなければならないと定められています。
ケースワーカーとソーシャルワーカーの違い
結論から言うと、ソーシャルワーカーは福祉分野の相談援助職の総称です。ケースワーカーはその一部にあたります。
ソーシャルワークには、個別援助(ケースワーク)のほか、集団支援(グループワーク)や地域への働きかけ(コミュニティワーク)も含まれます。
ケースワーカーという呼び方は、このうち個別援助を担う人、特に行政機関の現業員に対して使われるのが一般的です。実務では「病院のソーシャルワーカー」「福祉事務所のケースワーカー」のように、職場ごとの慣用で呼び分けられています。
ケースワーカーの仕事内容
生活保護のケースワーカー(市役所・福祉事務所)の仕事
市役所のケースワーカーの中心業務は、生活保護に関する相談援助です。主な仕事は次のとおりです。
- 窓口での面接相談(生活状況の聞き取り、制度の説明)
- 家庭訪問による生活実態の把握と助言
- 収入・資産・扶養関係などの調査
- 保護の開始・変更・停廃止に関する判断の補助と事務
- 就労支援や医療・介護など関係機関との連携、自立に向けた支援
担当件数の目安も法律にあります。社会福祉法第16条は、市部でおおむね被保護世帯(生活保護を受けている世帯)80世帯につき現業員1人という標準を示しています。都道府県が設置する郡部の事務所では65世帯に1人が標準です。
実際には標準を超える世帯を受け持つ自治体もあり、業務量の多さが課題とされています。
生活保護ケースワーカーの1日の流れ(例)
ある市役所勤務のケースワーカーの1日をモデルで示します。
| 時間帯 | 主な業務 |
|---|---|
| 8時30分 | 出勤。電話・メール確認、当日の訪問準備 |
| 9時00分 | 窓口での面接相談、保護費に関する事務 |
| 10時30分 | 家庭訪問(2~3件)。生活状況の確認や助言 |
| 13時00分 | 午後の家庭訪問、または新規申請の面接 |
| 15時30分 | ケース記録の作成、査察指導員への報告・相談 |
| 17時15分 | 関係機関への連絡を済ませて退庁 |
訪問と記録が業務の柱です。月初・月末は保護費関係の事務が集中し、残業が発生することもあります。
病院のケースワーカー(医療ソーシャルワーカー・MSW)
病院で「ケースワーカー」と呼ばれる職員は、医療ソーシャルワーカー(MSW)とほぼ同義です。呼び方が違うだけで、実態は同じ職種と考えて差し支えありません。
入退院の調整、医療費や生活費の心配ごとの相談、転院先や介護サービスの調整などを担当します。業務の範囲は、厚生労働省の「医療ソーシャルワーカー業務指針」(平成14年健康局長通知)に示されています。
法律上の必須資格はありませんが、採用では社会福祉士の資格が求められる場合がほとんどです。
児童相談所・社会福祉施設などその他の職場
児童相談所で虐待対応や養育相談を担う児童福祉司も、広い意味でのケースワーカーと呼ばれることがあります。
そのほか、障害者支援施設や高齢者施設の生活相談員、社会福祉協議会の相談員なども、ケースワークを担う職種です。民間の職場では、求人上「相談員」「ソーシャルワーカー」の名称で募集されることが多くなります。
ケースワーカーと関連職種の違い【比較表】
混同されやすい4つの職種を表で整理します。
| 職種 | 主な職場 | 資格・根拠 | 主な役割 |
|---|---|---|---|
| ケースワーカー(現業員) | 福祉事務所(市役所・区役所など) | 社会福祉主事任用資格+地方公務員(社会福祉法) | 生活保護などの面接・家庭訪問・調査・生活指導 |
| ソーシャルワーカー | 福祉・医療・教育・行政など幅広い | 社会福祉士・精神保健福祉士が代表的(総称のため職場による) | 相談援助職の総称。個別支援から地域支援まで |
| 医療ソーシャルワーカー(MSW) | 病院・診療所 | 必須資格はないが社会福祉士が採用の主流 | 退院支援、医療費・生活の相談、地域連携 |
| ケアマネジャー(介護支援専門員) | 居宅介護支援事業所・介護施設 | 介護支援専門員(介護保険法に基づく公的資格) | ケアプラン作成、介護サービスの調整・給付管理 |
ケースワーカーとケアマネジャーの違い
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護保険法に基づく専門職です。要介護者のケアプラン(介護サービス計画)作成とサービス調整が中心で、対象は主に介護保険の利用者です。
一方、ケースワーカーは生活全般の困りごとを扱い、生活保護など行政の決定・給付に関わる点が異なります。試験で得る公的資格が要るケアマネジャーに対し、ケースワーカーは任用資格と採用で就く職種という違いもあります。
高齢の生活保護利用者を支える場面では、両者が連携して動きます。対立する職種ではなく、役割分担の関係です。
ケースワーカーになるには|社会福祉主事任用資格と公務員試験
必要なのは社会福祉主事任用資格
福祉事務所のケースワーカーには、社会福祉主事任用資格が必要です(社会福祉法第15条第6項)。
任用資格とは、その職に任用されて初めて効力を持つ資格のことです。試験に合格して名乗る国家資格とは仕組みが異なります。
社会福祉法第19条に基づく主な取得ルートは次のとおりです。
- 大学・短大などで厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を3科目以上修めて卒業する(いわゆる3科目主事)
- 都道府県知事の指定する養成機関または講習会の課程を修了する
- 社会福祉士の資格を取得する
- 厚生労働大臣の指定する社会福祉事業従事者試験に合格する
- 精神保健福祉士の資格を取得する(同等以上の能力を有する者として省令で規定)
詳細は厚生労働省の「社会福祉主事任用資格の取得方法」で確認できます。指定科目は幅広く、多くの大学卒業者が知らないうちに3科目主事の要件を満たしています。まず成績証明書を確認してみてください。
公務員としてなるルート(市役所のケースワーカー)
生活保護のケースワーカーは地方公務員です。なるための流れは次の3段階です。
- 自治体の職員採用試験(一般行政職または福祉職)に合格する
- 採用後、福祉事務所(生活福祉課・保護課など)に配属される
- 社会福祉主事任用資格の要件を満たした職員が、現業員として任用される
一般行政職で採用され、人事異動で福祉事務所に配属されてケースワーカーになる人も多くいます。つまり「ケースワーカー採用」という試験区分は基本的になく、入口は公務員試験です。
福祉職採用を行う自治体では、社会福祉士などの資格や見込みを受験要件とする場合があります。志望先の受験案内で必ず確認してください。
なお、行政職採用の場合は数年ごとの異動があります。相談援助の仕事を長く続けたい人は、福祉職採用のある自治体を選ぶのが近道です。
民間・医療機関で働くルート
病院のMSW、社会福祉協議会や施設の相談員などは、公務員試験を経ずに就職できます。この場合は社会福祉士や精神保健福祉士の資格が採用の決め手になりやすいです。
資格取得前でも、相談援助の実務経験を積める職場から始める方法があります。実務経験は資格取得後のキャリアでも評価されます。
ケースワーカーの年収
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag(福祉事務所ケースワーカー)」には、この職種を含む区分の平均年収として441.7万円が掲載されています(令和7年賃金構造基本統計調査に基づく掲載値)。
福祉事務所のケースワーカーは地方公務員のため、実際の給与は各自治体の給料表と手当で決まります。年功で昇給し、期末・勤勉手当(賞与)も支給されるため、収入の安定性は高い職種です。
民間の相談員やMSWの給与は法人ごとの規程によります。社会福祉士の資格手当や経験加算の有無で差が出るため、求人票では基本給と手当の内訳まで確認しましょう。
ケースワーカーに向いている人・やりがいと大変さ
向いている人
- 相手の話を最後まで聞き、事実を正確に確かめられる人
- 制度や法律を調べ、根拠をもって説明できる人
- 感情に巻き込まれすぎず、チームで課題を抱えられる人
- 記録や文書の作成をこつこつ続けられる人
やりがいと大変さ
やりがいは、生活の立て直しに最初から伴走できることです。就労や自立につながった瞬間の手応えは、この仕事ならではのものです。
一方で、担当世帯数の多さ、対応が難しいケース、制度改正への対応など負担も小さくありません。一人で抱えず、査察指導員や関係機関に相談する体制を使いこなせるかが、長く働く鍵になります。
まとめ|ケースワーカーを目指すなら今日やること
ケースワーカーとは、調査と相談援助で生活の立て直しを支える職種です。中心は福祉事務所の現業員、つまり生活保護のケースワーカーで、身分は地方公務員です。
目指す人が今日からできる行動は次の4つです。
- 卒業した学校の成績証明書で、3科目主事に該当するか確認する
- 志望する自治体の採用区分(福祉職か一般行政職か)と受験資格を調べる
- 社会福祉士・精神保健福祉士の受験資格を確認し、必要なら養成課程を検討する
- 民間・医療の相談援助職の求人を見て、実務経験から入る道と比較する
公務員試験までの期間に相談援助の現場経験を積んでおくと、選考でも配属後の実務でも役立ちます。
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