介護保険制度で利用できる福祉用具貸与・販売と住宅改修の範囲

自宅で暮らし続けるために手すりを付けたい、段差をなくしたい。そう考えたときに頼りになるのが、介護保険の「住宅改修費」です。要支援・要介護の認定を受けた在宅の方なら、原則20万円を上限に工事費の一部が給付されます。ただし対象工事や申請のタイミングにはルールがあり、知らずに工事をすると給付を受けられないこともあります。

この記事では、住宅改修費の対象工事・上限額・自己負担・申請の流れ・福祉用具との違いまでを解説します。厚生労働省の資料をもとに、2026年7月時点の最新情報でまとめました。

この記事でわかること

  • 介護保険の居宅介護住宅改修費とは何か、対象になる人
  • 対象となる6種類の工事と、対象外になりやすい工事
  • 上限20万円の仕組みと自己負担(1~3割)の考え方
  • 限度額がリセットされる「3段階リセット」と「転居」の例外
  • 事前申請が必須となる申請の流れと、2つの支払い方法
  • 福祉用具貸与・購入との違いと注意点

介護保険の住宅改修費(居宅介護住宅改修費)とは

介護保険の住宅改修費は、自宅のバリアフリー工事に費用の一部が支給される制度です。正式には「居宅介護住宅改修費」(要支援の方は「介護予防住宅改修費」)といいます。対象は、要支援1~要介護5の認定を受けて自宅で生活している方です。手すりの取り付けや段差の解消といった工事を行った際に、費用の一部が市区町村から支給されます。住み慣れた家で安全に暮らし続け、介護する家族の負担も軽くすることを目的としています。

支給の上限となる「支給限度基準額」は、要介護度にかかわらず一律で原則20万円です。このうち自己負担を除いた分が給付されます。負担割合が1割の方なら、最大18万円相当の支給を受けられます。なお、施設に入所している方や入院中の方は在宅とみなされないため、原則として対象外です(出典:厚生労働省「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」)。

この制度を使う前提は、要介護度の認定を受けていることです。要介護度とは、誰がどのくらい介護を必要とするかを示す区分を指します。

対象となる工事は6種類

介護保険の住宅改修で給付対象となる工事は、厚生労働省により6種類に定められています。これ以外の工事は、原則として対象外です。

種類 主な工事の内容
(1) 手すりの取り付け 廊下・トイレ・浴室・玄関・玄関から道路までの通路などに、転倒予防や移動・移乗を助ける手すりを設置する
(2) 段差の解消 居室・廊下・浴室・玄関などの段差や、玄関から道路までの通路の段差をなくす(スロープ設置や床のかさ上げなど)
(3) 床材の変更 滑りの防止や移動をスムーズにするため、畳をフローリングに替える、浴室の床を滑りにくい材料に変えるなど
(4) 扉の取り替え 開き戸を引き戸・折れ戸・アコーディオンカーテンなどに変更する。扉の撤去やドアノブの変更も含む
(5) 便器の取り替え 和式便器を洋式便器に取り替える。既存の洋式便器の位置・向きの変更なども対象
(6) 付帯して必要な工事 上記(1)~(5)に伴って必要になる工事(手すり取り付けのための壁の下地補強、床材変更に伴う給排水設備工事など)

一方、工事を伴わずに設置できるものは、住宅改修費の対象になりません。置き型の手すりや段差解消用の置くだけのスロープ、滑り止めマットなどは、福祉用具の扱いです。和式便器の上に置くだけの腰掛け便座なども、福祉用具購入の対象です。何が対象になるかは市区町村で判断が分かれることもあります。工事前にケアマネジャーや市区町村へ確認しましょう。

上限20万円と自己負担の仕組み

住宅改修費の支給限度基準額は原則20万円です。このうち利用者の所得に応じた1~3割を自己負担し、残りが保険から給付されます。負担割合ごとの目安は次のとおりです。

負担割合 20万円の工事をした場合の自己負担 給付される額(最大)
1割 2万円 18万円
2割 4万円 16万円
3割 6万円 14万円

負担割合は本人と世帯の所得で決まり、毎年送付される「介護保険負担割合証」で確認できます。20万円を超えた分は全額自己負担です。たとえば30万円の工事を行った場合、超過した10万円はそのまま自分で支払います(出典:厚生労働省、各市区町村)。

20万円は1回で使い切らなくてよい

上限20万円は、一度の工事で使い切る必要はありません。たとえば最初に手すりで10万円、後日段差解消で10万円というように複数回に分けて利用できます。ただし限度額の管理は、工事費の合計(自己負担前の総額)で行われます。合計が20万円に達するまでが給付対象です。

限度額がリセットされる2つの例外

住宅改修費は原則として1人あたり生涯20万円までです。ただし次の場合は、再び20万円まで利用できる例外があります。

  • 3段階リセット:最初に住宅改修費を使ったときと比べて、要介護状態区分が3段階以上重くなった場合(例:要支援1から要介護3以上、要介護1から要介護4以上)。原則1人につき1回限りです。
  • 転居リセット:別の住宅へ転居した場合。新しい住宅では、前の住宅での利用状況に関係なく改めて20万円まで利用できます。

なお、これらの例外で限度額がリセットされても、以前に使い残した残額は新しい20万円には合算されません(出典:厚生労働省、各市区町村)。

申請の流れ|「事前申請」が必須

住宅改修費で最も重要な注意点は、工事を始める前に必ず申請(事前申請)が必要な点です。先に工事をしてしまうと、原則として給付を受けられません。一般的な流れは次のとおりです。

手順 内容
(1) 相談 担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、必要な改修内容を検討する
(2) 見積もり・理由書作成 施工業者に見積もりを依頼し、「住宅改修が必要な理由書」を作成してもらう
(3) 事前申請 工事前に、申請書・見積書・理由書・改修前の写真・図面などを市区町村に提出する
(4) 工事の実施 市区町村の確認後に着工し、改修工事を行う
(5) 事後申請(支給申請) 工事完了後、領収書・改修後の写真などを提出して住宅改修費の支給を受ける

(2)の「住宅改修が必要な理由書」は、原則として担当のケアマネジャー(介護支援専門員)や地域包括支援センターの職員が作成します。このほか、作業療法士や福祉住環境コーディネーター2級以上の資格を持つ人などが作成できる場合もあります(出典:厚生労働省「介護保険における住宅改修」)。

支払い方法は2種類

住宅改修費の受け取り方には、市区町村によって次の2つの方式があります。

  • 償還払い:利用者がいったん工事費の全額を業者に支払い、その後の事後申請で保険給付分(最大9割など)が後日払い戻される方式。
  • 受領委任払い:利用者は自己負担分のみを業者に支払い、残りの保険給付分は市区町村から業者へ直接支払われる方式。一時的な立て替えが少なくて済みます。

受領委任払いを利用できるかどうかや対象となる業者は、市区町村ごとに異なります。事前に確認しておくと安心です。

福祉用具貸与・購入との違い

住宅改修と混同しやすいのが「福祉用具貸与」「福祉用具購入(特定福祉用具販売)」です。大きな違いは、住宅を工事して改修するか、用具を借りる・買うかという点にあります。

項目 住宅改修 福祉用具貸与・購入
内容 手すり設置・段差解消など住宅の工事 車いす・介護ベッド・スロープ・腰掛便座などの貸与や購入
限度額 原則20万円(生涯/例外あり) 貸与は月々の区分支給限度基準額内/購入は年間10万円
工事 工事を伴う 工事を伴わない(置く・取り付ける)

たとえば工事をして壁に固定する手すりは住宅改修、床に置くだけの手すりは福祉用具というように、扱いが分かれます。どちらを使うべきか迷う場合は、用具の選定にくわしい福祉用具専門相談員やケアマネジャーに相談するとよいでしょう。

住宅改修の注意点

  • 必ず工事前に事前申請を行う(事後の申請では給付が受けられないのが原則)。
  • 賃貸住宅では、改修にあたって所有者(大家)の承諾が必要になる場合がある。
  • 新築・増築や、介護と関係のないリフォームは対象外。
  • 見積書・領収書の宛名は、認定を受けた本人の氏名で作成してもらう。

給付を受け損ねる失敗例と回避のチェックリスト

住宅改修費は、手続きの順番を間違えると1円も給付されないことがあります。結論として、よくある失敗を先に知っておけば防げます。代表的な落とし穴と対策を整理します。

よくある失敗例と対策

失敗例 結果 対策
事前申請より先に着工した 原則として給付されない 必ず申請し、市区町村の確認後に着工する
対象外の工事を依頼した その費用は全額自己負担 6種類に該当するかをケアマネに事前確認
領収書の宛名が本人以外 支給申請が通らないことがある 宛名は認定を受けた本人の氏名にする
賃貸で大家の承諾を取らなかった 工事自体ができない・原状回復で揉める 着工前に所有者の承諾を文書で得る

工事前のセルフチェック

  • 担当ケアマネまたは地域包括支援センターに相談済みか
  • 「住宅改修が必要な理由書」を作成してもらったか
  • 申請書・見積書・理由書・改修前の写真・図面がそろっているか
  • 市区町村の確認(受付)を経てから着工する段取りか
  • 償還払いか受領委任払いか、立て替えの有無を確認したか

判断に迷う工事は、自治体に問い合わせるのが確実です。制度の最新の取り扱いは厚生労働省 介護・高齢者福祉とお住まいの市区町村で確認しましょう。

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まとめ

介護保険の住宅改修費は、要支援・要介護の在宅の方が使える制度です。原則20万円を上限に、手すりの取り付けや段差の解消など6種類の工事費の給付を受けられます。自己負担は所得に応じて1~3割です。3段階リセットや転居といった例外で、再び使えるケースもあります。

最大のポイントは、工事前の事前申請と「住宅改修が必要な理由書」の作成です。まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、安全で暮らしやすい住まいづくりに役立てましょう。なお、制度の細かい運用や支払い方法は市区町村で異なります。最新の取り扱いは、必ずお住まいの自治体にご確認ください。

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