介護派遣に残業はある?残業代の仕組みと計算方法・断れるケースを解説

「派遣なら残業はないと聞いたけれど本当?」「残業した分はちゃんと払われるの?」と気になっていませんか。

結論から言うと、介護派遣でも残業はあります。ただし契約で決めた範囲内でしか残業は発生しません。直接雇用に比べると少なめになりやすく、残業代は派遣会社(派遣元)が法律で決められた割増率をつけて支払います。

この記事では、残業のルールと残業代の計算方法をまず解説します。続けて、サービス残業になりやすい時間、断れるケース、相談先を順番に紹介します。

この記事でわかること
  • 派遣の残業が認められる3つの条件
  • 残業代を払うのは派遣会社。割増率と時給別の計算例
  • 16時間夜勤は残業になるのか
  • 着替えや申し送りなど「見えない残業」の扱い
  • 残業を断れるケースと、未払い時の相談先

介護派遣の残業は「契約で決めた範囲内」だけ

介護派遣の残業は、契約書に書かれた上限の範囲内でしか発生しません。上限を超えて残業させることは、派遣先の施設にもできないルールです。

直接雇用より残業が少なくなりやすい理由は、施設側の費用にあります。派遣スタッフが残業すると、施設が派遣会社に払う料金も一般的に割増になります。そのため多くの施設は、派遣スタッフを定時で帰すように調整します。

とはいえ、介護の現場は予定どおりに進まない日もあります。残業がゼロになるわけではない点は、あらかじめ知っておきましょう。

介護派遣で残業が発生しやすい場面

場面 よくある例 残業になりやすさ
記録 ケース記録や介護記録を勤務時間内に書き終えられない 高い
申し送り 次の勤務帯への引き継ぎが長引く 高い
急変・事故対応 転倒や体調急変で救急搬送・家族連絡が重なる 中
欠員 次の勤務者が急に休み、少しだけ残るよう頼まれる 中
送迎の遅れ デイサービスで渋滞や利用者の準備待ちが発生する 中(デイのみ)

このうち記録と申し送りは毎日のことなので、「気づいたら毎日15分残っていた」という形で積み重なりがちです。後で解説するとおり、こうした時間も労働時間として記録するのが原則です。

派遣の残業を決めるルールは3つ

派遣スタッフの残業は、次の3つがそろったときだけ認められます。どれか1つでも欠けていれば、残業を命じることはできません。

派遣で残業が認められる3つの条件
  1. 派遣会社が36協定を結び、労働基準監督署に届け出ている
  2. 就業条件明示書に時間外労働の上限が書かれている
  3. 施設の指示が、1と2の範囲内である

ルール1:派遣会社の36協定(さぶろくきょうてい)

36協定とは、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせるために、会社と労働者代表が結ぶ取り決めです。労働基準監督署への届出が必要です。

派遣の場合、36協定を結ぶのは雇い主である派遣会社です。働く場所の施設ではありません。派遣会社の36協定で決めた時間を超える残業はできず、上限は原則として月45時間・年360時間です。

ルール2:就業条件明示書の「時間外労働」欄

派遣会社から受け取る「就業条件明示書」には、残業の有無と上限が書かれています。たとえば「1日2時間・月20時間まで」のように記載されます。

ここに「時間外労働なし」とあれば、原則として残業はありません。上限が書かれていれば、その範囲内でのみ残業を頼まれる可能性があります。

ルール3:派遣先の指示

実際に「今日は30分残ってください」と指示するのは、施設側の指揮命令者(ユニットリーダーなど)です。ただし指示できるのは、ルール1と2の範囲内だけです。範囲を超える場合は、施設が派遣会社と調整する必要があります。

項目 派遣会社(派遣元) 施設(派遣先)
36協定の締結・届出 担当する 担当しない
残業の上限を決める 就業条件明示書に記載する 派遣契約の範囲で合意する
残業の指示 しない 範囲内で指示する
労働時間の記録・管理 勤怠を受け取り給与計算する 始業・終業時刻を確認し記録する
残業代の支払い 支払う 支払わない(派遣会社に料金を払う)

残業代は派遣会社が払う。割増率と計算例

残業代を払うのは派遣会社です。施設から直接受け取るものではありません。法定労働時間を超えた分には、法律で決められた割増率が上乗せされます。

割増率の早見表

働いた時間の種類 割増率
時間外労働(1日8時間・週40時間を超えた分) 25%以上
時間外労働のうち月60時間を超えた分 50%以上
深夜労働(22時~5時) 25%以上
時間外労働+深夜労働 50%以上
法定休日の労働 35%以上
法定休日の労働+深夜労働 60%以上

月60時間を超えた分の50%割増は、2023年4月から中小企業にも適用されています。詳しくは厚生労働省のリーフレット「2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」で確認できます。

なお、35%割増がつくのは週1日の「法定休日」に働いた場合だけです。シフト上の休みの日に出勤しても、法定休日でなければ35%にはなりません。その場合は、週40時間を超えた分に25%の割増がつきます。

時給1,500円の場合の計算例

ケース 1時間あたり 計算式
通常の勤務 1,500円 1,500円×1.00
1日8時間を超えた残業 1,875円 1,500円×1.25
22時以降にかかった残業 2,250円 1,500円×1.50
法定休日の出勤 2,025円 1,500円×1.35

たとえば1日8時間の日勤のあとに30分残業した場合、残業代は約938円です。月に10回あれば、残業代だけで約9,380円になります。

「法定内残業」は割増がつかないこともある

所定労働時間(契約上の勤務時間)が7時間の人が、8時間まで働いた場合の1時間を「法定内残業」と呼びます。法定労働時間の8時間以内なので、割増は法律上の義務ではありません。

この1時間は、通常の時給で支払われるのが一般的です。割増をつけるかどうかは派遣会社の就業規則で決まるので、契約時に確認しておくと安心です。

残業代は1分単位で計算するのが原則

残業代は、実際に働いた時間を1分単位で計算するのが原則です。「15分未満は切り捨て」のように、毎日の残業時間を切り捨てる扱いは認められていません。

給与明細の残業時間が、自分の記録より少ないと感じたら、派遣会社の担当者に確認しましょう。

夜勤の16時間は全部が残業になる?

2交代制の16時間夜勤は、すべてが残業になるわけではありません。派遣会社が就業規則などで「変形労働時間制」を定めている場合、月全体で労働時間を調整します。この場合、16時間夜勤そのものは所定の勤務として扱われます。休憩を除いた実働は14時間前後が一般的です。

一方、22時~5時に働いた分には深夜割増(25%以上)が必ずつきます。夜勤手当は深夜割増とは別物で、派遣会社が任意で設けるものです。「夜勤1回○円」と書かれた求人は、深夜割増が含まれていることが多いので内訳を確認しましょう。相場は夜勤手当の記事でまとめています。

夜勤明けに記録が終わらず、決められた終了時刻を過ぎて残った時間は残業として扱われます。夜勤専従で働く人は、明けの残業の扱いも契約前に確認しておきましょう。

サービス残業になりやすい時間と、労働時間に当たるもの

介護の現場では、タイムシートに書かれない「見えない残業」が起きやすいです。労働時間とは、施設の指示のもとで働いている時間を指します。明示の指示だけでなく、「やらないと仕事が回らない」という黙示の指示で働いた時間も含まれます。

時間の種類 労働時間に当たるか ポイント
施設で着用が義務の制服への着替え 原則として当たる 施設内で着替えるよう決められている場合
始業前の申し送り 当たる 「15分前に来て」と言われたらその時間から
勤務後の記録の書き残し 当たる タイムシートを押した後に書くのはNG
休憩中のナースコール対応・見守り 当たる 対応した時間は休憩ではない
参加が義務の研修・勉強会 当たる 任意参加なら当たらないこともある

考え方の根拠は、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」です。着替えや業務に必要な準備、義務づけられた研修なども、指示のもとで行えば労働時間に当たると示されています。

勤怠は「実際の時刻」で記録する

派遣の勤怠は、タイムシートや勤怠アプリに始業・終業の時刻を記録し、施設の担当者が確認する流れが一般的です。

「定時で書いておいて」と言われても、実際に働いた時刻を記録するのが正しい対応です。書きにくい場合は、自分用のメモ(日付・時刻・残った理由)を残し、派遣会社の担当者に相談しましょう。

派遣の残業は断れる?判断の目安と伝え方

断れるかどうかは、残業が契約の範囲内かどうかで決まります。

状況 断れるか
就業条件明示書で「時間外労働なし」 断れる(そもそも命じられない)
明示書の上限を超える残業 断れる
契約にない業務のための残業 断れる
上限内で、業務上必要な残業 原則は応じる。ただし体調不良・保育園のお迎えなど正当な理由があれば相談できる

小学校入学前の子を育てている人や、家族を介護している人は、法律にもとづいて残業の制限を請求できる制度があります。請求先は雇い主である派遣会社です。対象になる人は早めに伝えておきましょう。

断るときの伝え方の例

施設への一言

「申し訳ありません、今日は家の事情で定時に上がらせてください。派遣会社の担当にも伝えておきます」

派遣会社への相談

「契約では残業なしのはずですが、最近は毎日30分ほど残るよう言われています。施設に確認していただけますか」

施設と直接言い合いにならないよう、条件に関わる話は派遣会社を通すのが基本です。派遣会社が施設と調整してくれるのは、派遣で働く大きなメリットの1つです。

残業代が払われない・残業が多すぎるときの相談先

残業代の未払いや、契約を超える残業が続くときは、次の順番で相談しましょう。

順番 相談先 相談できること
1 派遣会社の担当者・派遣元責任者 残業代の計算の確認、施設への申し入れ
2 施設の派遣先責任者 残業の指示の出し方、勤怠の付け方の改善
3 労働基準監督署・総合労働相談コーナー 未払い残業代や違法な長時間労働の相談(無料)

相談するときは、勤務した日付と始業・終業の時刻、残業の理由をメモしておくと話が早く進みます。残業代を請求できる期間は3年なので、気づいた時点で動くことが大切です。

公的な窓口は、厚生労働省の総合労働相談コーナーから最寄りの場所を探せます。

登録前・契約前に確認したい残業チェックリスト

残業のトラブルは、契約前の確認でほとんど防げます。派遣会社の面談や職場見学のときに、次の項目を確認しておきましょう。

確認項目 聞き方の例
残業の有無と上限 「就業条件明示書の時間外労働は、何時間までになりますか」
実際の残業時間 「前任の派遣スタッフの方は、月にどのくらい残業がありましたか」
記録のタイミング 「記録は勤務中に書く時間がありますか」
申し送りの開始時刻 「始業前に来るよう言われることはありますか」
法定内残業の扱い 「8時間までの残業にも割増はつきますか」
夜勤手当の内訳 「夜勤1回の金額に深夜割増は含まれていますか」
勤怠の付け方 「タイムシートはどなたに確認してもらいますか」

「残業はほとんどない」と言われたときも、明示書の記載と一致しているかを必ず見比べてください。口頭の説明より、書面の内容が優先されます。

介護派遣の残業でよくある質問

Q. 派遣の時給には残業代が含まれていますか?

含まれていません。残業代は時給とは別に計算して支払われます。「時給が高いから残業代はなし」という扱いは認められません。

Q. 扶養内で働いていますが、残業すると扶養から外れますか?

残業代も収入に含まれるため、残業が増えると年収の壁を超える可能性があります。扶養内で働きたい人は、残業の上限が低い求人を選び、派遣会社にも伝えておきましょう。年収の壁の考え方は扶養内で働く介護パートの記事で解説しています。

Q. 残業を断ったら契約を更新してもらえなくなりますか?

契約の範囲を超える残業を断ることは、正当な対応です。ただ、施設との関係が気になる人も多いはずです。直接断りにくいときは、先に派遣会社へ相談し、調整してもらうのが安全です。

Q. 施設から直接「残業代を払う」と言われました。受け取っていいですか?

派遣スタッフの給与を払うのは派遣会社です。施設から現金などを直接受け取ると、勤怠や保険の記録とずれてトラブルの元になります。残業した分は必ず勤怠に記録し、派遣会社から受け取りましょう。

まとめ:契約書の「時間外労働」欄を確認し、働いた分は必ず記録する

介護派遣の残業は、派遣会社の36協定と就業条件明示書の範囲内でしか発生しません。残業代は派遣会社が1分単位で計算して支払い、法定時間外は25%以上、深夜は25%以上の割増がつきます。

一方で、記録や申し送り、着替えの時間が「見えない残業」になりやすいのが介護現場の特徴です。働いた時刻はそのまま記録し、おかしいと感じたら派遣会社に相談しましょう。

残業を減らしたい人は、契約前に残業の上限と実態を確認するのが近道です。「残業なし」「日勤のみ」など、希望に合う派遣求人から探してみてください。

介護派遣の求人を探す

あわせて読みたい

介護派遣で働くメリット7つ|直接雇用との違いを解説

【おすすめできる介護派遣会社】実際に登録して6社を徹底比較|本音レビュー