介護サービス情報の公表制度とは|2026年8月改正と未報告リスク

本記事は2026年8月20日時点の公開情報に基づいています。制度は今後変わる可能性があります。最新・正式な内容は必ず厚生労働省の発表をご確認ください。

まず結論(おさえておきたい3点)

  • 介護サービス情報の公表制度は、介護保険法第115条の35に基づく報告義務です。毎年、都道府県等が定める期限までに報告が必要で、任意ではありません。
  • 2026年8月14日付けの介護保険最新情報vol.1535で、調査票等(別添1~7)が改正されました。今年度の報告は当該年度の報告様式(改正後の調査票)で行う必要があります。
  • 未報告や虚偽報告には是正命令があり、従わない場合は指定の取消し・効力の停止もあり得ます。運営指導(実地指導)でも確認され得る項目です。

介護サービス情報の公表制度とは|3分で分かる全体像

介護サービス情報の公表制度は、介護保険法第115条の35に基づく事業者の義務です。事業所のサービス内容や運営状況を都道府県等に報告し、インターネットで公表する仕組みです。報告した情報は「介護サービス情報公表システム」に掲載され、誰でも閲覧できます。

目的は、利用者が事業所を比較・検討し、自分に合うサービスを選べる環境を整えることです。平成18年(2006年)に始まり、都道府県・指定都市の自治事務として全国で運用されています。「うちは小規模だから関係ない」とはなりません。介護報酬の支払いを受けている事業所の大半が対象です。

項目 内容
根拠法令 介護保険法第115条の35(介護サービス情報の報告・公表)
報告する人 対象サービスを運営する介護サービス事業者
報告先 都道府県知事・指定都市市長(指定情報公表センターが窓口の場合あり)
頻度 毎年1回+新規にサービスを開始しようとするとき
報告する内容 基本情報+運営情報+財務状況が分かる書類
公表される場所 介護サービス情報公表システム(インターネット)
報告しない場合 是正命令の対象。従わないと指定の取消し・効力の停止もあり得る

管理者として押さえる点は3つです。第一に、これは行政への「届出」ではなく「公表」であること。入力内容は利用者・家族・求職者に見られます。第二に、毎年の報告が必要なこと。第三に、2026年8月に調査票等が改正され、今年度は新様式で報告することです。

対象になる事業所・ならない事業所

結論から言うと、前1年間の介護報酬支払額が100万円を超える事業所は報告の対象です。正確には、計画の基準日前の1年間において、介護報酬の支払いを受けた金額が100万円を超える事業者が対象です。この基準は介護保険法施行規則第140条の44第1号に規定されたもので、全国共通の考え方です。

逆に、支払額が100万円以下の事業所は、その年の報告対象から外れます。ただし、対象かどうかの通知方法や判定の実務は都道府県等が担います。案内の時期や様式の配布方法も自治体ごとに異なります。自事業所が対象かどうかは、必ず所在地の都道府県等の案内で確認してください。

対象サービスは、訪問介護、通所介護、施設サービスなど介護保険の主要サービス全般です。居宅介護支援(ケアマネ事業所)も含まれます。また、これから開設する事業者は、サービス開始前の報告が必要です。提出期限は、サービス提供開始日の2週間前までとすることが適当とされています。

複数のサービスを一体的に運営している場合は、一体的な報告が認められています。たとえば特養(介護老人福祉施設)と併設のショートステイは、1つの区分としてまとめて報告できる例が示されています。区分の定め方は都道府県等の実情に応じて決められるため、ここも自治体の案内の確認が必要です。

報告の年間スケジュールと流れ

報告の時期は全国一律ではありません。都道府県等が毎年「報告計画」を定め、事業所ごとの提出期限を決めて公表します。計画の期間は1年間とすることが望ましいとされています。おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 都道府県等が報告に関する計画を策定し、公表する
  2. 事業所に報告の案内が届く(提出期限は事業所ごとに指定される)
  3. 提出期限の2週間前から報告の受理が始まる
  4. 事業所が介護サービス情報公表システムで報告する
  5. 都道府県等または指定調査機関が、計画で定めた対象事業所を調査する
  6. 報告内容(調査を受けた場合は調査結果も)が公表される

調査は、全事業所が毎年受けるものではありません。都道府県等が調査指針と計画に基づいて対象と時期を定めます。調査は報告内容の事実確認であり、取組の良し悪しを評価する仕組みではないと通知に明記されています。原則は訪問による面接調査ですが、オンライン会議システムの活用も認められています。

調査の終わり方も知っておくと安心です。調査は、調査結果に事実誤認がないことへの事業者の同意をもって終了します。同意した調査結果はそのまま公表されるため、終了時の読み合わせは管理者自身が立ち会うのが確実です。

注意したいのは、案内を見落とすと未報告扱いになる点です。担当者の異動があった年は、案内メールや郵便物の宛先を必ず確認しましょう。

何を報告するのか|基本情報と運営情報の2階建て

報告する情報は「基本情報」と「運営情報」の2階建てです。加えて、財務状況が分かる書類の報告も必要です。それぞれの中身と、調査での確認のされ方を表で整理します。

区分 主な内容 調査での確認方法
基本情報 事業所の名称・所在地、職員体制、営業時間、利用料金など 指定申請書類や記録、目視等で事実を確認
運営情報 利用者の権利擁護、サービスの質の確保、相談・苦情対応、安全管理などの取組 マニュアルや記録など「確認のための材料」の有無を確認(原本1件で足りる)
財務状況の書類 損益計算書・貸借対照表・資金収支計算書など(簡易な計算書類でも可の場合あり) 直近の事業年度を終えた時点のものを報告

運営情報は「マニュアルがあるか」「記録があるか」を問う形式です。調査では、事業者が「ある」と報告した事項について材料の有無を確認します。原本1件の確認で足りるとされているため、日頃の記録整備がそのまま報告と調査の対策になります。

財務状況の書類は、報告が義務である点に注意してください。原則は財務諸表ですが、会計基準上求められていない等の事情があれば簡易な計算書類でも差し支えないとされています。事業所単位の会計処理をしていない場合は、法人単位の公表でも差し支えありません。財務公表が義務化された背景と対象は財務状況の報告・公表義務化の解説記事で詳しくまとめています。

一体的な報告区分を使う場合、運営情報には省力化の仕組みがあります。区分内で一体的に運営されているサービスは、主たるサービスの報告をもって他のサービスの報告とみなせるとされています。併設サービスの多い施設は、自治体が定める区分を確認してから作業に入ると二度手間を防げます。

なお、運営基準で求められる重要事項のウェブサイト掲載は、このシステムでの公表をもって行ったとみなして差し支えないとされています。自社サイトを持たない事業所ほど、この制度を確実に使う実益があります。

2026年8月14日の改正(vol.1535)で何が変わったか

2026年8月14日、厚生労働省は介護保険最新情報vol.1535を発出しました。内容は「「介護サービス情報の公表」制度の施行について」(平成18年老振発第0331007号)の一部改正です。別添1から別添7までに定める調査票等が改正されました。

調査票等の改正は、報告実務に直結します。通知は都道府県等に対し、全ての事業所が当該年度の報告様式で確実に報告するよう求めています。前年のデータをそのまま流用せず、今年度の様式・項目で入力と確認を行ってください。

なお、この調査票等の改正は今回が初めてではありません。通知の改正履歴を見ると、令和6年10月、令和7年6月にも改正されています。つまり「様式は毎年変わり得る」前提で、報告前に当該年度の様式を確認する運用を固めておくのが現実的です。

また、改正後の通知本文では、任意報告情報(介護サービスの質や従業者に関する情報)の内容が次のように整理されています。都道府県等が定めた場合に報告するもので、全国一律の必須項目ではありません。

区分 情報の内容として考えられている項目
介護サービスの質に関する情報 要介護の改善状況/褥瘡(床ずれ)の発生状況/転倒発生の状況 など
従業者に関する情報 離職率/勤務時間(シフト体制等)/賃金体系/一人あたり賃金/有給休暇の取得状況 など

一人あたり賃金は、任意での報告が可能とされています。事業所や施設の特性に応じた形での公表ができる整理です。どこまで公表するかは、後述する採用への影響も踏まえて判断しましょう。

加えて、システムには「処分」「行政指導(勧告を含む)」に関する公表項目も設けられています。公表するかどうかは都道府県等の判断ですが、処分歴がシステム上で公表され得る点も押さえておきたいところです。

あわせて確認:有料老人ホームの情報公表・検索機能

vol.1535には、参考として事務連絡が1本添付されています。「介護サービス情報公表システム(生活関連情報)への有料老人ホームの情報公表・検索機能追加等について」(令和3年6月23日付け)です。今回の改正にあわせて、改めて周知されました。

ポイントは、介護サービス情報公表システム上で全国の有料老人ホームを検索できることです。有料老人ホームの情報は「生活関連情報」の一つとして掲載されます。実務上の注意は次の3点です。

  • 介護付き有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護としての公表に加え、生活関連情報(有料老人ホーム)での公表も求められている
  • 有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅は、別システムから情報が転送されるため、生活関連情報での重複登録はしない
  • 登録した情報は災害時情報共有システムの運用にも使われる(被災状況の把握と支援につながる)

有料老人ホーム・特定施設の管理者は、介護サービス情報の報告と生活関連情報の登録の両方を確認しておきましょう。

報告しない・虚偽報告をするとどうなるか

結論として、未報告・虚偽報告は指定の取消しまであり得る違反です。介護保険法第115条の35第4項に基づき、都道府県知事は事業者に対して命令ができます。報告を行うこと、報告内容を是正すること、調査を受けることの命令です。この命令に従わない場合、指定・許可の取消しや、期間を定めた効力の停止ができると定められています。

「報告を忘れていただけで即取消し」となるわけではありません。通知でも、未報告の事業所には個別に連絡して確実な報告を促すよう都道府県等に求めています。ただし、催促を放置し続ければ命令、そして処分へと進む建て付けです。行政処分に直結し得る義務として扱ってください。

また、情報公表の報告状況は運営指導(実地指導)でも確認され得る項目です。指導の場で未報告を指摘されると、他の運営基準の確認にも影響しかねません。指導の流れと準備は運営指導(実地指導)の流れ・確認書類・対策の記事をご覧ください。

なお、障害福祉分野では一歩進んだ仕組みが既に動いています。児童発達支援・放課後等デイサービスなどでは、未公表の場合に報酬を減算する情報公表未報告減算があります。詳細は児発・放デイの情報公表未報告減算の解説記事で確認できます。介護保険側でも、財務や職場環境など公表を求められる情報の拡充が続いています。

「うちは何をすればいいか」実務チェックリスト

今週から動ける形で、やることを整理しました。管理者と事務担当で分担してください。

  • 情報公表の担当者と、不在時の代行者を決めて引き継ぎ書に残す
  • 介護サービス情報公表システムのID・パスワードの保管場所とログイン可否を確認する
  • 都道府県等の報告計画(今年度の提出期限)を自治体サイトで確認する
  • 自治体からの案内メール・郵便物の宛先が現在の体制と合っているか確認する
  • 今年度の報告は当該年度の報告様式(別添1~7の改正後の調査票)で入力する
  • 前年度の報告データを控えとして保存し、今年の変更点を差分で洗い出す
  • 運営情報で「ある」と答えるマニュアル・記録の現物を1件ずつ確認する
  • 財務状況の書類(直近事業年度の財務諸表等)を経理担当から入手する
  • 離職率・有給休暇取得率など人事データの集計を労務担当と擦り合わせる
  • 公表画面を利用者・求職者の目線で開き、空欄や古い情報を直す
  • 調査(訪問・オンライン)の連絡が来た場合の対応者を決めておく

ポイントは、報告作業を1人に抱えさせないことです。人事データや財務書類は担当部署をまたぎます。年1回の恒例業務として、分担と期限をセットで決めておくと来年以降が楽になります。

情報公表は「守り」だけでなく「採用の入口」でもある

最後に、管理者として一番実利のある視点です。公表ページは、利用者だけでなく求職者にも見られています。応募前に職場を調べる求職者にとって、離職率・賃金体系・有給休暇の取得状況は求人票と同じ重みを持つ情報です。だからこそ、任意報告情報に従業者の労働環境が位置づけられています。

ここが空欄だったり、更新が何年も止まっていたりするとどう見えるでしょうか。「開示できない事情があるのか」と受け取られかねません。逆に、任意項目まで埋めている事業所は、それだけで誠実さを示せます。離職率という数字の読み方と業界の実態は介護職の離職率を最新データで読む記事で解説しています。自施設の数字に自信があるなら、公表しない手はありません。

年1回の報告は、人事データを棚卸しする定点観測の機会でもあります。集計した離職率や有給取得率は、求人票や採用ページにもそのまま転用できます。募集から定着までの全体設計は介護職員の採用完全ガイドにまとめています。

情報公表の従業者情報を整えたうえで、求人の露出も見直したい施設様へ。介護・障害福祉専門の求人サイト「e介護転職」への掲載は、e介護転職の掲載案内ページからご相談いただけます。公表データで示せる職場の強みを、応募につなげる導線づくりからお手伝いします。

まとめ

介護サービス情報の公表制度は、介護保険法第115条の35に基づく毎年の義務です。2026年8月14日の介護保険最新情報vol.1535で調査票等(別添1~7)が改正され、今年度は当該年度の報告様式での報告が必要になりました。未報告・虚偽報告には是正命令があり、従わなければ指定の取消し・効力の停止まであり得ます。

一方で、公表ページは利用者と求職者に向けた無料の広報媒体でもあります。担当者を決める、期限を確認する、従業者情報まで埋める。この3つを今週の行動に落とし込めば、「守り」と「採用」の両方で回収できる制度です。

出典