介護派遣で契約外の業務を頼まれたら?断り方と相談先を解説

「日勤の契約なのに夜勤に入ってほしいと言われた」「送迎を頼まれたけれど、契約に入っていない」。介護派遣で働いていると、こうした場面に出会うことがあります。

結論から言うと、契約に書かれていない業務は断れます。派遣は、仕事の内容を契約で決めてから働き始める仕組みだからです。

ただし、断り方と相談する順番を間違えると、職場に居づらくなります。この記事では、確認すべき書類、角が立たない伝え方、相談先の順番を整理します。

契約外の業務は断ってよい

仕事の内容は契約で決まっている

派遣で働くとき、仕事の内容は2つの書類に書かれています。

  • 労働者派遣契約書:派遣会社と施設が結ぶ契約。業務内容が明記される
  • 就業条件明示書:派遣会社から本人に渡される書類。同じ内容が書かれている

労働者派遣法では、業務内容を契約に定めることが義務づけられています。範囲をあいまいにしたまま働かせない仕組みです。

派遣先が指示できるのは契約の範囲まで

派遣先には、仕事の進め方を指示する権限があります。これを指揮命令権と呼びます。ただし、その範囲は契約に書かれた業務までです。

契約にない業務を命じることは、原則としてできません。断ることは、わがままではなく契約どおりの対応です。

介護現場で契約外になりやすい業務

介護の現場では、次のような依頼が契約の範囲を超えていることがあります。

頼まれやすい業務 契約外になりやすい理由
利用者の送迎(運転) 運転業務は介護業務と別に定める必要がある。事故時の保険の扱いも変わる
夜勤(日勤契約の場合) 勤務時間帯は契約の重要事項。時間帯の変更は契約変更にあたる
ケース記録や計画書の作成 職員向けの書類作成は、介護業務と切り分けて契約するのが一般的
サービス担当者会議への出席 就業時間外に設定されることが多く、時間管理の問題も生じる
委員会活動や研修の準備 施設運営に関わる業務で、派遣スタッフの担当範囲外になりやすい
調理、洗濯、施設全体の清掃 介護業務に含まれるかは契約次第。別の職種が担う施設もある
喀痰吸引や経管栄養 資格と事業所の登録が必要。無資格で行うと法律に触れる
利用者の金銭管理 トラブルの原因になりやすく、派遣スタッフに任せない施設が多い

これらがすべて契約外というわけではありません。契約に書かれていれば、当然行う業務です。判断の基準は、あくまで自分の就業条件明示書に何と書かれているかです。

勤務時間や残業がどう決まるかは介護派遣は週1・日勤のみで働ける?勤務日数とシフトの決め方を解説で整理しています。

まず就業条件明示書を確認する

依頼を受けたら、感情で判断せず書類を見ます。就業条件明示書は、就業開始前に派遣会社から渡されているはずです。手元にない場合は、担当者に再送を頼んでください。

特に確認したいのは、業務内容、就業場所、就業時間、時間外労働の有無の4つです。

明示書にはこのほか、指揮命令者、就業日、苦情の申出先なども書かれています。まず見るべきは、上に挙げた4つです。

注意したいのが「その他これに付随する業務」という書き方です。この一文があると、記載された業務に密接に関わる作業までは含まれると考えられます。ただし、送迎や夜勤のように性質が異なる業務までは含まれません。

判断に迷う書き方だった場合も、自分で結論を出す必要はありません。派遣会社に確認すれば済みます。

角が立たない断り方の3ステップ

ステップ1:その場では保留にする

頼まれた場面で、はっきり断る必要はありません。「派遣会社に確認します」と伝えて、いったん持ち帰ります。

この言い方には理由が2つあります。1つは、否定でも承諾でもないため関係が悪くならないこと。もう1つは、確認先が派遣会社であることを自然に伝えられることです。

逆に避けたいのが、その場で引き受けてしまうことです。一度応じると前例になり、次から断りにくくなります。

ステップ2:派遣会社の担当者に連絡する

その日のうちに、派遣会社の担当者へ連絡します。伝える内容は3点です。

  • 誰から、いつ、何を頼まれたか
  • 契約に書かれているか自分で確認した結果
  • 自分としてやりたいか、やりたくないか

3点目は率直に伝えて構いません。派遣会社は、本人の意向を確認したうえで施設と話をします。

ステップ3:派遣会社から施設へ伝えてもらう

施設への連絡は、派遣会社に任せます。自分で現場の職員に交渉すると、その場の空気で押し切られやすくなるためです。

派遣会社は施設と契約を結んでいる立場です。本人が直接言うより、話が通りやすくなります。

相談先は派遣会社が基本、施設にも窓口がある

相談する順番は、派遣会社の担当者が最初です。担当者で解決しない場合は、派遣元責任者に相談できます。派遣会社が必ず選ぶことになっている役職です。

施設側にも、派遣先責任者と苦情の申出先が置かれています。誰が担当かは労働者派遣契約に定められているため、派遣会社に聞けば分かります。

2021年1月の指針改正で、施設側も苦情に主体的に対応する責任を負うことが明確になりました。以前のように、施設が確認もせず派遣会社へ丸投げする対応は認められません。

どちらでも解決しない場合は、都道府県労働局の需給調整事業を担当する部署に相談できます。労働者派遣に関する相談を受け付けている公的な窓口です。

引き受けてもよい場合もある

契約外の業務がすべて悪いわけではありません。自分にとって経験を積める内容なら、引き受ける選択もあります。

その場合は、口約束で始めないでください。派遣会社に契約内容の変更を依頼します。業務が増えるなら、時給の見直しを相談する材料にもなります。

時給の話をどう切り出すかは介護派遣の時給交渉はできる?伝えるタイミングやポイントを解説で整理しています。

引き受けてはいけない業務

一方で、本人が納得していても引き受けられない業務があります。

資格が必要な医療的ケア

喀痰吸引や経管栄養は、介護職員が行うには研修の修了と認定が必要です。あわせて、事業所が登録を受けていることも条件になります。

「今日だけ」「見ているから」と言われても応じないでください。無資格で行えば、本人が法律違反を問われます。

資格職が行う医療業務

医師や看護師などの資格職が行う医療業務は、労働者派遣そのものが原則として禁止されています。対象となるのは、病院、診療所、助産所に加えて、介護老人保健施設と介護医療院です。

ただし、禁止されているのは資格職の医療業務です。介護職員が行う介護業務は含まれません。老健で介護スタッフとして派遣で働くことに問題はありません。

一方、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの社会福祉施設は、この規制の対象外です。同じ介護の仕事でも、就業先の種類によって扱いが変わります。

看護助手として病院に派遣される場合も、食事や排泄の介助、環境整備、事務作業などは行えます。任せられないのは、看護師が行うべき処置です。そうした依頼を受けたら、その場で応じず派遣会社に連絡してください。

安全が確保されていない業務

2人での対応が必要な利用者の移乗を1人で任される、人員が足りない状態で夜間の対応を求められるといった依頼も同じです。本人と利用者の双方に危険が及ぶため、その場で引き受けず派遣会社に連絡してください。

断ったら契約を切られませんか

契約外の業務を断ったことを理由に、契約を打ち切ることは適切ではありません。契約に沿った対応をしているだけだからです。

また、施設側の都合で契約を途中で解除する場合、施設には義務が生じます。新しい就業先を確保するよう努めること、それができないときに休業手当などの費用を負担することです。断った側が一方的に不利になる仕組みではありません。

それでも扱いが変わったと感じる場合は、派遣会社に状況を伝えてください。派遣会社は施設と交渉する立場にあり、必要であれば別の就業先を紹介します。

就業先を変えることは、辞めることとは違います。派遣会社との雇用契約が続いていれば、勤続年数や有給休暇も引き継がれます。次の就業先までに空白ができる場合の扱いは、担当者に確認してください。

働き続けるかどうか迷っている場合は介護派遣を辞めたい|後悔しない辞め方と次の一手とはもあわせてご覧ください。

就業前に防ぐ方法

契約外の業務を頼まれる場面は、就業前の確認である程度減らせます。

顔合わせの場では、1日の業務の流れを具体的に聞いてください。「記録は誰が書きますか」「送迎の担当は決まっていますか」といった質問です。曖昧な答えが返ってきた場合は、その場で派遣会社の担当者に確認してもらいます。

顔合わせで確認すべき項目は介護派遣の顔合わせとは?面接ではない理由と当日の流れを解説にまとめています。

まとめ

契約外の業務を頼まれたときの対応を整理します。

  • 契約に書かれていない業務は断れる。派遣先が指示できるのは契約の範囲まで
  • まず就業条件明示書を確認する。判断に迷う書き方でも自分で結論を出さない
  • その場では「確認します」と保留し、派遣会社から施設へ伝えてもらう
  • 相談先は派遣会社の担当者、派遣元責任者、施設の苦情申出先、労働局の順
  • 資格が必要な医療的ケアと、安全が確保されていない業務は引き受けない

ひとりで抱えないことが大切です。派遣は、間に入る会社がいることが利点の働き方です。困ったときは担当者に連絡してください。

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