シニアでも介護派遣の仕事は可能?60代でも働ける理由と年金との両立を解説

60歳を過ぎてから介護の仕事を探すとき、多くの方が最初に気にするのが年齢です。「この歳で採ってもらえるのか」「年金が減るのではないか」という不安は当然のものです。

結論から言えば、介護派遣は60代・70代でも働けます。労働者派遣法には60歳以上の方だけに適用される特例がいくつかあり、働き方の選択肢はむしろ広がります。ただし、その特例には裏側もあります。この記事では良い面と注意点の両方を整理します。

この記事でわかること
  • 介護派遣に年齢の上限がない理由と、法律上の年齢制限のルール
  • 60歳以上に適用される派遣法の3つの特例と、その裏側にある注意点
  • 介護の職場でシニアが浮かない理由(年齢構成のデータ)
  • 体力に不安があっても続けやすい仕事内容の選び方
  • 年金・雇用保険・扶養と働き方の関係(2026年度の改正を反映)

介護派遣に年齢の上限はない

介護派遣に、法律で定められた年齢の上限はありません。労働者を募集・採用する際に年齢を制限することは、労働施策総合推進法によって原則として禁止されています。派遣会社が派遣スタッフを募集する場面も、この規定の対象です。

また派遣先の施設が「◯歳以下の人を」と指名することもできません。派遣労働者の特定を目的とする行為にあたり、派遣先が講ずべき措置に関する指針で禁じられているためです。誰を派遣するかを決めるのは派遣会社であって、施設ではありません。

ただし正直に書くと、これらは罰則を伴う強い禁止ではなく、行政の指導や指針による規制です。現実には、年齢を理由に紹介が進みにくい場面もあります。だからこそ、シニアの就業実績がある派遣会社を選ぶことが実質的な対策になります。

逆に「60歳以上の方を募集」と年齢を明記した求人は、年齢制限禁止の例外として認められています。シニア歓迎と明示された求人は、堂々と応募して構いません

60歳以上に適用される派遣法の3つの特例

労働者派遣法には、60歳以上の派遣スタッフを規制の対象から外す条文があります。まず内容を整理し、そのあとで裏側の注意点にも触れます。

項目 一般の派遣スタッフ 60歳以上の場合
同じ職場で働ける期間 同じ部署は原則3年まで 期間制限の対象外。3年を超えて働ける
30日以内の単発勤務 日雇い派遣は原則禁止 禁止の例外にあたる(60歳以上であること)
退職した勤務先への派遣 離職から1年間は受け入れ不可 60歳以上の定年退職者に限り例外

同じ職場に3年を超えて居られる

派遣には「3年ルール」と呼ばれる期間制限があります。同じ事業所の同じ部署で働けるのは原則3年までという決まりです。60歳以上の派遣スタッフは、この期間制限の対象から外れています。

慣れた職場を3年で離れなくてよいのは、人間関係と仕事の手順を覚え直す負担がないということです。年齢を重ねてから働くうえで、これは小さくない利点になります。

ただし裏側があります。期間制限の対象外ということは、派遣会社が講じる雇用安定措置の対象からも外れるということです。3年を迎える人に対して派遣会社が就業機会の確保を図る仕組みが、60歳以上には適用されません。契約が続くかどうかは、そのつどの更新の話し合いで決まります。更新の見通しは早めに担当者へ確認しておいてください。

30日以内の単発勤務も制度上は可能

30日以内の日雇い派遣は法律で原則禁止されていますが、60歳以上の方は例外にあたります。「月に数日だけ」という働き方が、制度上は認められているということです。

ただしこれも注意が必要です。制度上できることと、実際に求人があることは別です。介護分野の派遣は月単位の契約が主流で、単発案件を常時扱っている派遣会社は限られます。単発中心で働きたい場合は、登録前に「短期・単発の取り扱いがあるか」を確認してください。

定年退職した施設に派遣として戻れる

本来、退職した会社へ1年以内に派遣として戻ることはできません。この禁止の対象から除かれるのは60歳以上の定年退職者です。自己都合で辞めた場合は、60歳以上でも例外にあたりません。ここは間違えやすい部分です。

定年まで勤め上げた施設であれば、雇用の形だけを変えて短時間で戻るという道が残されています。勝手が分かっている職場なので、体力に合わせた働き方の相談もしやすいはずです。

介護の職場は40歳以上が約4分の3

年齢を気にする方が安心できる材料は、統計かもしれません。介護労働安定センターの令和6年度介護労働実態調査(労働者調査・回答21,325人)の年齢構成は次のとおりです。介護職員・訪問介護員のほか、看護職員やケアマネジャーなど7職種を含む数字です。

年齢層 割合
30歳未満 6.2パーセント
30歳代 16.1パーセント
40歳代 28.3パーセント
50歳代 28.6パーセント
60歳代 15.9パーセント
70歳以上 3.4パーセント

40歳以上が約4分の3を占め、60歳以上だけでもおよそ2割います。介護の職場において60代は、年長すぎる人ではなく標準的な世代です。同じ調査では年齢階層別の採用率も出ています。訪問介護員と介護職員を合わせた集計では、65歳以上でも7.9パーセントの採用が起きています。実際に新しく入っている人がいるということです。

加えて、事業所側の人手不足感は訪問介護で83.4パーセント、施設などの介護職員で69.1パーセントにのぼります。受け入れる側の事情としても、経験や年齢より「来てくれる人」を求めているのが実態です。

体力に不安があっても続けやすい仕事の選び方

年齢より先に考えるべきなのは、身体の負担です。介護の仕事は施設の種類と役割で負担が大きく変わります。派遣は職場と業務内容を決めてから契約するため、ここを外さなければ長く続きます。

見守り・レクリエーション中心のデイサービス

日帰りのデイサービスは日中のみの勤務で、夜勤がありません。見守り・話し相手・レクリエーションの進行が中心になる職場もあります。ただし入浴介助や移乗の有無は施設によって大きく違います。契約前に、担当する業務の範囲を具体的に確認してください。

生活援助が中心の仕事

掃除・洗濯・調理・買い物といった生活援助が中心の役割は、身体を抱える場面が少なくなります。家事の経験がそのまま活きるため、介護未経験から入る方にも向いています。

送迎の担当

運転ができる方には、利用者の送り迎えを担う送迎ドライバーという選択肢もあります。乗車定員10人以下の車であれば普通自動車免許で運転できますが、車両の重量によっては準中型以上が必要になる場合もあります。免許の種類と車種は求人ごとに確認してください。午前と午後の数時間だけという勤務も珍しくありません。

夜勤専従という選び方

体力に自信があり、まとまった収入がほしい方には夜勤専従という働き方もあります。出勤日数が少なく1回あたりの手当が高い一方、生活リズムへの影響は大きくなります。健康状態と相談して決めてください。

無資格から始める場合に必要なこと

施設の中で働く介護職員は、無資格でも応募できる求人があります。ただし2024年4月から、資格を持たない方が介護業務に就く場合のルールが変わりました。事業所は採用後1年以内に、認知症介護基礎研修を受けさせることが義務づけられています。多くはeラーニングで受講できます。働きながら受ける前提のもので、入職の妨げにはなりません。

一方、利用者の自宅を訪ねる訪問介護は最初から資格が必要です。身体介護を行うには介護職員初任者研修以上、生活援助のみでも生活援助従事者研修の修了が求められます。無資格から始めるなら、まずは施設内の仕事が入口になります。

年金・保険・扶養はどうなるのか

シニアが働くとき、賃金より気になるのが年金と保険です。年齢によって扱いが変わる点を整理します。

制度 加入・適用の年齢 派遣で働くときのポイント
労災保険 年齢制限なし 勤務中・通勤中のけがは年齢に関係なく対象
雇用保険 65歳以上も加入できる 週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みで加入。65歳以上は高年齢被保険者
厚生年金 70歳未満 加入して働いた分は将来の年金額に反映される
健康保険 75歳未満 75歳からは後期高齢者医療制度へ移る

在職老齢年金は2026年度から基準が65万円に

厚生年金に加入して働くと、収入と年金の合計が一定額を超えた場合に老齢厚生年金の一部が止まります。これが在職老齢年金です。計算に使うのは、賞与を含めて月割りした収入(総報酬月額相当額)と、老齢厚生年金の報酬比例部分の月額です。老齢基礎年金は計算に入りません。

その基準額は令和7年度の51万円から、令和8年度(2026年度)は65万円に引き上げられました。収入と年金を合わせて月65万円という水準ですから、週3日程度の派遣勤務でまず届くことはありません。年金の減額を心配して勤務日数を抑える必要は、ほとんどの方にとってなくなったと考えて差し支えありません。

なお70歳を過ぎて厚生年金に加入しなくなった後も、勤務先で一定以上の報酬を受けている場合は同じ計算の対象になります。基準額は毎年度改定されるため、最新の額は日本年金機構の案内で確認してください。

配偶者の扶養に入っている方は「180万円」が基準

見落とされがちなのがこの点です。健康保険の被扶養者でいられる収入の基準は、一般には年130万円未満ですが、60歳以上の方は年180万円未満に緩和されます。あわせて、被保険者である配偶者の年収の2分の1未満であることも要件です。

この収入には給与だけでなく年金も含まれます。年金を年120万円受け取っている方であれば、給与は年60万円未満に収まるかどうかが判断の目安になります。59歳までの感覚のまま130万円で調整していると、働ける余地を自分で狭めていることになりかねません。

60歳から65歳までは給付金の種類を確認する

60歳以降も雇用保険に加入して働き、賃金が60歳時点の75パーセント未満に下がった方には、高年齢雇用継続基本給付金が支給される場合があります。雇用保険の被保険者期間が通算5年以上あることが前提です。給付率の上限は、2025年4月1日以降に60歳へ達した方から15パーセントから10パーセントに縮小されました。

失業給付(基本手当)を受け取ってから再就職した場合は、高年齢再就職給付金のほうが対象になります。こちらは再就職の前日時点で、基本手当の支給残日数が100日以上あることが要件です。加えて、1年を超えて雇用が見込まれる安定した職業に就く必要があります。短期の派遣契約では要件を満たさないことがあるため、受給を見込んでいる方は契約期間を担当者に確認してください。

65歳以上で離職した場合は、失業給付ではなく高年齢求職者給付金が一時金として支給されます。こちらは離職前1年間に被保険者期間が6か月以上あることが必要です。どれに当たるかは年齢・加入期間・基本手当を受け取ったかどうかで変わるため、高年齢雇用継続給付と高年齢求職者給付の記事とハローワークで確認するのが確実です。

手取りを減らさないための3つの確認
  • 厚生年金に加入する働き方か(加入すれば将来の年金額は増える)
  • 配偶者の扶養に入っている場合、60歳以上の基準は年180万円未満
  • 受給中・受給予定の給付金が、就労によって減額や支給停止にならないか

派遣会社に登録するときの確認ポイント5つ

派遣は職場ではなく派遣会社と雇用契約を結びます。担当者の力量が働きやすさに直結するため、登録時に次の5点を確認してください。

  • 60歳以上のスタッフの就業実績があるか。実績がある会社ほど紹介先の当てがあります
  • 紹介できる求人の数と地域。年齢を伝えたうえで具体的に聞く
  • 夜勤・入浴介助の有無を契約で選べるか。担当業務の範囲を書面で確認する
  • 契約更新の見通し。60歳以上は雇用安定措置の対象外のため、ここは特に重要です
  • 通勤時間と交通費の扱い。毎日の移動負担は体力に直結します

職場が合わなければ、契約更新のタイミングで担当者に相談して次の職場へ移れます。この身軽さは、無理をして体を壊さないための仕組みでもあります。派遣の基本的な流れははじめての介護派遣のガイドにまとめています。

よくある質問

70歳を過ぎても働けますか

働けます。年齢の上限を定めた法律はありません。実際、介護の職場で働く人の3.4パーセントは70歳以上です。ただし70歳で厚生年金の加入対象から外れ、75歳で健康保険が後期高齢者医療制度に移ります。保険まわりの扱いが変わる点だけ押さえておいてください。

無資格・ブランクありでも登録できますか

できます。施設内の介護職は無資格でも応募できる求人があり、家族の介護経験しかない方も現場に入っています。採用後1年以内に認知症介護基礎研修を受けることになりますが、働きながら受講できます。ブランクについては、まず日数の少ない契約から始めて感覚を戻す進め方が現実的です。

週2日だけ働くことはできますか

できます。派遣は勤務日数と時間帯を決めてから契約する働き方です。週2日、午前中のみといった条件でも探せます。ただし勤務時間が週20時間を下回ると、雇用保険の対象外になる点は理解しておいてください。

まとめ

介護派遣に年齢の上限はなく、60歳以上には期間制限の対象外・単発勤務の例外・定年退職先への復帰という3つの特例があります。一方で、期間制限から外れることは雇用安定措置の対象からも外れることを意味します。契約更新の見通しを担当者と共有しておくことが、この特例と付き合うコツです。

お金の面では、2026年度から在職老齢年金の基準額が65万円に上がりました。年金を気にして勤務日数を抑える必要は、ほぼなくなっています。扶養に入っている方の基準も、60歳以上なら180万円未満です。あとは身体の負担が小さい職場を選び、日数と時間帯を自分の体調に合わせて決めるだけです。まずは通える範囲にどんな求人があるかを見てみてください。

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参考にした一次情報

日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」

日本年金機構「家族を被扶養者にするときの手続き」(収入要件)

厚生労働省「派遣で働くみなさまへ」(期間制限と雇用安定措置)

東京労働局「年齢にかかわりなく均等な機会を」(年齢制限の例外)

介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査結果の概要」