介護職の離職率は本当に高い?最新データで読む定着の実態

「介護職は離職率が高い」という印象は、最新データでは事実と異なります。介護労働安定センターの令和6年度介護労働実態調査によると、訪問介護員と介護職員を合わせた離職率は12.4%でした。厚生労働省の令和6年雇用動向調査が示す全産業平均の14.2%を、1.8ポイント下回っています。

本記事は、施設長・管理者が自施設の離職率を業界水準と比べるための定点観測データ集です。一次情報の数値と推移、自施設の離職率の計算方法までを整理します。数値は2026年7月時点で公表されている最新の調査結果に基づきます。本記事は毎年、新しい調査の公表に合わせて数値を更新する定点観測記事です。

介護職の離職率は12.4%まで低下している

令和6年度介護労働実態調査の要点

結論から示すと、介護職の離職率は低下が続いています。令和6年度調査(2025年7月公表)の主な数値は次のとおりです。

  • 離職率(訪問介護員・介護職員の2職種計):12.4%。前年度の13.1%から0.7ポイント低下し、2年連続の低下
  • 採用率(2職種計):14.3%。前年度の16.9%から2.6ポイント低下
  • 人材の不足感:65.2%の事業所が「不足」と回答。前年度の64.7%から悪化

この調査の離職率は「令和5年10月1日時点の在籍者のうち、その後1年間に離職した人の割合」を指します。出典は介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」プレスリリース(PDF)です。

離職率の推移(過去5年)

過去5年の推移を見ると、低下傾向がはっきり読み取れます。

調査年度 離職率(2職種計)
令和2年度 14.9%
令和3年度 14.3%
令和4年度 14.4%
令和5年度 13.1%
令和6年度 12.4%

さらに長期で見ると、平成24年度の離職率は17.0%でした。10年余りで4ポイント以上下がった計算です。処遇改善加算の拡充や雇用管理改善の積み重ねが、数値に表れています。年度別の報告書は介護労働安定センターの介護労働実態調査ページで確認できます。

全産業平均との比較で見ると介護は低い水準にある

介護の離職率は、全産業平均より低い水準まで下がっています。厚生労働省の雇用動向調査と並べると、次のようになります。

時点 介護職(実態調査) 全産業(雇用動向調査)
令和2年度/2020年 14.9% 14.2%
令和3年度/2021年 14.3% 13.9%
令和4年度/2022年 14.4% 15.0%
令和5年度/2023年 13.1% 15.4%
令和6年度/2024年 12.4% 14.2%

令和4年度以降、介護の離職率は全産業平均を下回り続けています。「介護は辞める人が多い業界」という世間のイメージは、データ上はすでに過去のものです。雇用動向調査では「医療,福祉」産業全体の離職率も13.1%で、介護2職種はそれより低い値でした。出典は厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」です。

ただし注意点があります。実態調査は年度(10月起点の1年間)、雇用動向調査は暦年の集計で、対象や方法も異なります。厳密な同条件の比較ではなく、水準感をつかむ目安として使ってください。

この事実は採用広報の材料にもなります。求職者や家族が抱く「介護はすぐ辞める仕事」という不安に、客観データで答えられるからです。自施設の離職率が業界水準より低ければ、求人票や面接で示す価値があります。

職種・雇用形態・規模別に見ると差がある

職種別では訪問介護員11.4%、介護職員12.8%

令和6年度の離職率は、訪問介護員が11.4%で4年連続の低下でした。施設系を中心とする介護職員は12.8%で、2年連続の低下です。訪問系のほうが離職率は低い一方、人材不足感は83.4%と全職種で最も深刻です。訪問介護は「辞める人が少ないのに、担い手が増えない」構造にあり、離職率の低さだけでは現場の逼迫を説明できません。

雇用形態別・事業所規模別の違い

雇用形態別の公表がある令和4年度調査では、無期雇用職員の離職率が13.4%、有期雇用職員が16.8%でした。有期雇用のほうが3.4ポイント高く、非正規比率の高い事業所は離職率が上振れしやすい構造です。出典は令和4年度介護労働実態調査 結果の概要(PDF)です。

規模別では、小さい事業所ほど離職率が高い傾向があります。令和元年度調査の2職種計では、従業員9人以下の事業所が21.3%、100人以上が13.6%でした。出典は厚生労働省「介護労働の現状」資料(PDF)です。小規模では1人の離職で数値が大きく振れる点も、差の一因です。

離職者の約6割は勤続3年未満

離職の中身を見ると、早期離職の比重が大きいことが分かります。この項目を調査した令和4年度調査では、離職者のうち勤続1年未満が34.7%、1年以上3年未満が25.4%でした。合計で約6割が勤続3年未満で辞めています。出典は令和4年度 事業所における介護労働実態調査 結果報告書(PDF)です。

自施設の離職率が業界水準より高い場合、最初の3年を乗り切る仕組みづくりが焦点になります。入職後のフォロー体制など具体策は人材定着・離職を防ぐ現場の打ち手で詳しく解説しています。

離職理由の1位は職場の人間関係

令和6年度調査で、介護の前職を辞めた理由の1位は「職場の人間関係に問題があったため」で24.7%でした。「他に良い仕事・職場があったため」が18.5%、「事業理念や運営のあり方に不満があったため」が17.6%と続きます。人間関係の内訳では「上司や先輩の指導や言動がきつい、パワーハラスメントがあった」が49.1%で最多でした。

収入への不満は上位3項目に入らず、令和5年度調査でも16.6%にとどまります。賃金だけでなく、人間関係と運営への納得感が定着を左右する構図です。業界全体の離職率低下の背景も同様で、詳しくは離職率低下の最大要因が人間関係の改善である理由を参照してください。

なお令和6年度調査では、採用に効果があった取り組みの1位は「賃金水準の向上」(36.0%)でした。定着では「休暇取得や勤務変更をしやすい職場づくり」(34.4%)が1位です。賃金原資の確保には処遇改善加算の確実な算定が前提になります。

自施設の離職率の計算方法と業界水準との比べ方

計算式は「1年間の離職者数÷起点日の在籍者数」

実態調査と同じ物差しで比べるには、同じ計算式を使います。離職率(%)=直近1年間の離職者数÷起点日の在籍者数×100です。手順は次のとおりです。

  • 起点日を決める(実態調査に合わせるなら前年10月1日)
  • 起点日の在籍者数を数える。正規・非正規を問わず、常勤換算ではなく実人数で全員を含める
  • 起点日から1年間の離職者数を数える。定年退職や契約期間満了の扱いは毎年そろえる
  • 離職者数を在籍者数で割り、100を掛ける

職種別に比べる場合は、訪問介護員と介護職員を分けて集計します。看護職員や事務職を混ぜると、業界データと条件がずれる点に注意してください。

比べるときの3つの物差し

算出した数値は、次の3段階で業界水準と照らします。

  • 全体水準と比べる:2職種計12.4%より高いか低いか
  • 属性をそろえて比べる:訪問系なら11.4%、施設系なら12.8%。実態調査には都道府県別データもあり、地域水準とも比較できる
  • 分布で位置を知る:令和6年度は離職率10%未満の事業所が53.6%。10%を超えていれば、業界の過半数より高い側にいる

小規模事業所は単年の数値で判断しない

職員10人の事業所では、1人の離職で離職率が10%動きます。小規模の場合は単年でなく、3年程度の平均や推移で判断してください。あわせて、辞めた職員の勤続年数を確認します。勤続3年未満の離職が業界水準(約6割)より多ければ、早期定着に課題がある状態です。逆に、長く勤めた職員の定年退職や転居が重なった年は、数値が高くても構造的な問題とは限りません。数字の高低だけでなく、誰がいつ辞めたのかまで分解して読むことが大切です。

離職率が下がっても採用難は続く

離職率の低下は朗報ですが、安心材料ばかりではありません。令和6年度の採用率は14.3%で、3年ぶりに低下しました。全産業の入職率14.8%を下回り、辞める人が減る以上に、入ってくる人が細っています。採用率と離職率の差である増減率は1.9%のプラスを保ちましたが、伸びは3年ぶりに縮小しました。

人材の不足感は65.2%と前年度から悪化し、訪問介護員では83.4%に達しました。人手を確保できず事業継続を断念する法人も増えており、その実態は2025年の介護事業者倒産の動向で解説しています。低い離職率の維持と採用力の強化を、両輪で進める段階に入っています。

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