【2026年8月】介護施設の食費・居住費が引き上げ|補足給付見直しの対象と実務

本記事は2026年7月28日時点の公開情報に基づいています。制度は今後変わる可能性があります。最新・正式な内容は必ず厚生労働省の発表をご確認ください。

2026年(令和8年)8月1日から、介護保険施設やショートステイを利用する低所得者を対象とした補足給付(特定入所者介護サービス費)が見直され、食費と居住費の金額が一部引き上がります。特養・老健・介護医療院・短期入所(ショートステイ)の管理者、相談員、請求担当の方にとっては、料金表や重要事項説明書の見直し、利用者・ご家族への説明が必要になる場面です。本記事では、何が・いくら変わるのか、対象になる利用者の見分け方、施設としてやっておくとスムーズなことを、できるだけやさしく整理しました。

まず結論(おさえておきたい3点)
  • 2026年8月1日から、補足給付の対象となる一部の低所得者(負担限度額認定証をお持ちの方)の食費・居住費が引き上がります。食費の負担限度額が上がるのは第3段階①・②の方で、日額30円から60円です。居住費の負担限度額が上がるのは第3段階②の方のみで、日額100円です(一部の部屋タイプを除く)。食費の基準費用額も1日1,445円→1,545円に上がります。
  • 影響を受けるのは「負担限度額認定証」を持つ方です。第4段階(一般の方)や、認定証をお持ちでない方の料金は今回の見直しでは変わりません。
  • 施設側は、8月分の請求に向けて料金表・重要事項説明書・契約書・請求システムの単価を確認し、対象者への説明を準備しておくと8月以降がスムーズです。
  • 第2段階の所得基準(年金収入額+合計所得金額)も、令和8年8月1日から80万9千円以下→82万6,500円以下に引き上げられることが正式決定しました(2026年6月22日、介護保険法施行規則の一部を改正する省令等により告示)。これまで第3段階①だった一部の方が第2段階へ移り、負担がさらに軽くなる場合があります。

そもそも補足給付(特定入所者介護サービス費)とは?

補足給付とは、所得の低い方が介護保険施設やショートステイを利用するとき、食費・居住費の負担が重くなりすぎないよう、一定の上限額を超える分を介護保険から給付する仕組みです。正式名称を「特定入所者介護(予防)サービス費」といい、現場では「補足給付」と呼ばれることが多い制度です。

仕組みとしては、国が定める標準的な費用である「基準費用額」と、その方が実際に負担する上限である「負担限度額」との差額を、介護保険が施設へ支払います。対象になるのは、世帯全員が市町村民税非課税であることなどの所得要件と、預貯金額の要件を満たす低所得の方です。

この給付を受けるには、利用者ご本人が市町村に申請して「介護保険負担限度額認定証」の交付を受けている必要があります。つまり、施設側から見ると「負担限度額認定証を持っている方=補足給付の対象者」と考えると分かりやすいでしょう。対象施設は、介護老人福祉施設(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、そして短期入所(ショートステイ)です。

2026年8月から何が・いくら変わる?

厚生労働省は2026年5月29日付の「介護保険最新情報 vol.1506」で、令和8年8月1日からの見直し内容を周知しました。食費・居住費の負担限度額・基準費用額の引上げは、令和8年厚生労働省告示第88号等にもとづく決定事項です。主な変更点は次のとおりです。

食費の引き上げ

  • 基準費用額:1日1,445円 → 1,545円(+100円、月額換算で約4.7万円)
  • 負担限度額(食費):第3段階①・②の方について、日額30〜60円引き上げ。施設入所の場合、第3段階①は650円→680円、第3段階②は1,360円→1,420円となります。

居住費の引き上げ

第3段階②に該当する方を中心に、居住費が日額100円引き上がります(一部の部屋タイプを除く)。具体的には次のとおりです。

  • 多床室(特養等):430円 → 530円
  • 従来型個室(特養等):880円 → 980円
  • 老健・介護医療院等、ユニット型個室など:1,370円 → 1,470円

食費と居住費の両方が引き上がる方の場合、負担増は日額で最大160円程度、30日換算で月4,800円程度になり得ます。なお、居住費の引上げには例外があり、「その他型」「療養型」の老健や「II型」の介護医療院の多床室(療養室の床面積が1人あたり8平方メートル以上に限る)などの取扱いがあります。ご自身の施設のどの部屋がどう変わるかは、対象者ごとに必ず確認してください。

2026年7月28日追記:上がるのは誰か(早見)

金額の話は「基準費用額」と「負担限度額」が混ざりやすいところです。今回の見直しは、次のように整理すると読み違えを防げます。

  • 基準費用額(施設の標準的な料金の目安)で上がるのは食費だけです。1日1,445円→1,545円。居住費の基準費用額は、すべての部屋タイプで据え置きです。
  • 負担限度額(認定証をお持ちの方の自己負担の上限)は、食費が第3段階①・②居住費は第3段階②だけが引き上げの対象です。
  • 第1段階・第2段階の方の負担限度額は、食費・居住費とも変わりません。ただし第2段階に入るための所得基準はゆるくなります(後述)。
  • 多床室のうち、老健・介護医療院などで室料を徴収しない区分は430円のまま据え置きです。「多床室は一律530円になる」と案内すると誤りになります。
  • 第4段階(一般の方)の料金は、今回の見直しでは変わりません。

所得段階の判定基準(第2段階)の見直し(2026年6月22日付で正式決定)

あわせて、第2段階の所得基準(年金収入額+合計所得金額)が、従来の80万9千円以下から82万6,500円以下へ引き上げられることが正式に決定しました。2026年6月22日発出の「介護保険法施行規則の一部を改正する省令等の公布について(通知)」(介護保険最新情報Vol.1513)により告示され、適用は令和8年8月1日からです。これにより、これまで第3段階①だった方のうち年金収入等が80万9千円超〜82万6,500円以下の方は、令和8年8月の更新時から第2段階(負担軽減幅がより大きい区分)へ移ります。食費・居住費の基準費用額そのものの引上げ(本記事冒頭で解説)とは別の変更である点に注意してください。

対象になる利用者・ならない利用者の見分け方

もっとも分かりやすい見分け方は、「負担限度額認定証」を持っているかどうかです。認定証をお持ちの方は補足給付の対象であり、今回の見直しで料金が変わる可能性があります。

認定証には利用者負担段階(第1段階〜第3段階②)が記載されています。今回の食費・居住費の引上げは、主に第3段階①・②の方が対象です。第1段階・第2段階の方の金額の扱いは段階や費目によって異なるため、お一人ずつ認定証の段階と部屋タイプを照らし合わせて確認するのが確実です。

  • 対象になりやすい方:負担限度額認定証をお持ちで、段階が第3段階①・②の方
  • 今回の見直しで料金が変わらない方:第4段階(一般の所得の方)、負担限度額認定証をお持ちでない方

新たに第2段階の基準が見直される予定の点については、対象者の段階が変わる可能性もあります。正式な通知が出てから、各市町村の認定結果にもとづいて確認するのが安全です。現時点で個別の利用者へ「段階が変わります」と断定的に伝えるのは避けるのが無難でしょう。

施設・事業者がやること(実務)

8月1日の施行に向けて、次のような準備をしておくと8月以降の請求や利用者対応がスムーズになります。「必ずこうしなければならない」というより、抜け漏れを防ぐためのチェックリストとして活用してください。

料金表・重要事項説明書・契約書の確認

  • 食費・居住費を記載した料金表に、8月からの基準費用額・負担限度額を反映できているか確認します。
  • 重要事項説明書利用契約書に食費・居住費の金額を明記している場合は、改定版の準備や、変更点の説明方法を整理しておきます。書式の変更要否は、各施設の運用や自治体の指導内容にもよるため、必要に応じて保険者(市町村)にも確認すると安心です。
2026年7月28日追記:8月から負担限度額認定証の様式が変わります

厚生労働省は介護保険最新情報 Vol.1491(2026年4月3日発出)で、介護保険法施行規則の改正にあわせて介護保険負担限度額認定証の様式を改めました。適用は2026年8月1日からです。

変更の中心は多床室の区分です。これまで様式上は「多床室」とひとまとめでしたが、負担限度額に差がつくため、次の3区分に分かれます。

  • 多床室Ⅰ:特別養護老人ホーム等の多床室
  • 多床室Ⅱ:介護老人保健施設・介護医療院等で室料を徴収する場合
  • 多床室Ⅲ:介護老人保健施設・介護医療院等で室料を徴収しない場合

8月は負担限度額認定証の年次一斉更新の月でもあります(有効期間は8月1日から翌年7月31日まで)。8月に届く新しい認定証は、所得段階だけでなく多床室の区分まで確認するのが、今年の実務のポイントです。区分の読み違いは、そのまま自己負担額の誤りにつながります。

請求システムの単価更新

  • 介護ソフト・請求システムに登録している食費・居住費の単価を8月利用分から更新します。対象者の負担限度額の変更も反映が必要です。
  • 更新のタイミングを誤ると8月分の請求に影響するため、ベンダーの対応スケジュールも早めに確認しておくとよいでしょう。
  • 2026年7月28日追記:新しい単価が請求に乗るのは、8月サービス提供分(9月10日までの介護給付費請求)が最初です。8月1日に一斉に切り替わるため、改定を理由とする月途中の日割りは生じません。請求ソフトの単価マスタが8月利用分から新しい金額になっているかを、8月中に一度確認しておくと安心です。

利用者・ご家族への説明・通知文

  • 対象となる利用者・ご家族へ、いつから・いくら変わるのかを分かりやすく伝える通知文を準備します。負担増の理由(国の制度改正であること)と、具体的な月額の目安を添えると理解を得やすくなります。
  • 金額は段階や部屋タイプで異なるため、「一律いくら上がる」と書かず、お一人ごとの金額を案内するのが親切です。

2026年7月28日追記:説明資料をゼロから作る必要はありません。厚生労働省は利用者・ご家族向けの周知リーフレットを、介護保険最新情報 Vol.1506に添付する形で公開しています。「令和8年8月1日から食費・居住費が変わります」という表題で、対象者・金額・手続きが1枚にまとまっているため、そのまま説明資料や通知文の添付として使えます。掲載ページは厚生労働省の介護保険最新情報のページで、Vol.1506のPDFにリーフレットが収録されています。多くの市町村も同じリーフレットを自治体サイトに掲載しているため、お住まいの市町村版があればそちらを使うと、窓口の案内と食い違いません。

8月施行までの逆算スケジュール

8月1日に向けた段取りの目安です。本記事の更新時点(2026年7月28日)では、残るのは最終確認の段階です。まだ着手できていない項目があれば、下の逆算表で抜けを確認してください。施設の規模や運用に合わせて調整してください。

  1. 6月(今):介護保険最新情報vol.1506と添付の周知リーフレットで、自施設の部屋タイプ・対象者ごとの新しい金額を確認。負担限度額認定証をお持ちの利用者をリストアップします。
  2. 6月下旬〜7月上旬:料金表・重要事項説明書・契約書の改定案を作成。請求システムのベンダーに更新スケジュールを確認します。
  3. 7月中旬:対象者・ご家族向けの通知文を作成し、説明を開始。請求システムの単価を8月利用分から反映できるよう設定を準備します。
  4. 7月下旬〜8月1日:説明の完了と書類の整備を確認。8月利用分から新しい金額で請求できる状態にしておきます。第2段階の所得基準の見直しは2026年6月22日付で正式に決定済みのため、該当しそうな方の再判定と案内も8月1日までに済ませておきます。

まとめ

2026年8月1日からの補足給付の見直しは、負担限度額認定証をお持ちの低所得者(主に第3段階①・②)の食費・居住費が引き上がるものです。食費の基準費用額は1,545円に、居住費は対象者で日額100円程度上がり、両方が上がる方では月4,800円程度の負担増になり得ます。これらはいずれも告示にもとづく決定事項です。第2段階の所得基準の見直し(80万9千円以下→82万6,500円以下)も2026年6月22日付で正式決定しており、対象となる方は令和8年8月の更新時から負担区分が変わります。

施設側は、料金表・重要事項説明書・契約書・請求システムの確認と、対象者ごとの金額を踏まえた利用者・ご家族への説明を、7月中に整えておくと8月以降がスムーズです。金額や対象は利用者ごとに異なるため、最終的な判断は厚生労働省の公式情報と各市町村(保険者)の取扱いにもとづいて行ってください。

出典