本記事は2026年7月28日時点の公開情報に基づいています。制度は今後変わる可能性があります。最新・正式な内容は必ず厚生労働省の発表をご確認ください。
2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けた話し合いが、すでに国の会議で始まっています。「報酬改定」と聞くと難しく感じますが、要は「介護サービスを提供したときに事業所がいくら受け取れるか」のルールを見直す作業です。3年に一度の大きな見直しで、事業所の収入や運営に直結します。この記事では、いま何が話し合われているのかを、できるだけかみくだいてお伝えします。2026年7月末の時点では、議論はすでにサービスの種類ごとの各論に入っています。
- 2027年度の改定に向けた議論は2026年4月にスタート。まだ「何かが決まった」段階ではなく、論点を出し合っている途中です。
- 大きなテーマは4つ。なかでも事業者に関係が深いのは「さらなる処遇改善(賃上げ)」「事業所の経営の立て直し」「制度を続けられるようにする(給付の効率化)」の3点です。
- サービスの種類ごとの議論は2026年5月から7月にかけて一巡しました。今後は2026年秋から12月ごろに具体的な方向性、年明け2027年1月ごろに正式な改定案が示される見込みです。
記事でわかること
そもそもこれは何の話?(背景)
介護報酬は、原則として3年に一度見直されます。直近では2024年度(令和6年度)に通常改定があり、さらに2026年6月には賃上げを目的とした臨時の改定(全体でプラス2.03%)も行われました。次の通常改定が2027年度で、その準備として「社会保障審議会・介護給付費分科会」という厚生労働省の会議で話し合いが進んでいます。
介護給付費分科会とは、介護報酬の中身を専門的に話し合う厚生労働省の会議です。 事業者団体・自治体・保険者などの委員が参加し、ここでの議論をもとに改定の方向性が固まっていきます。
いま話し合われている4つのテーマ
2026年4月27日の会合で、厚生労働省から次の4つの「分野横断的なテーマ」が示されました(今後変わる可能性もあります)。
- 人口減少やサービス需要の変化に応じたサービス提供体制づくり
- 地域包括ケアシステムの深化
- 介護人材の確保(処遇改善)と職場環境の改善・生産性の向上
- 制度の安定性・持続可能性を確保する報酬のあり方
この4つの枠の中で、委員からはとくに次のような意見が出ています。
① さらなる処遇改善(賃上げ)を求める声
介護職員の賃上げは進んでいるものの、他産業との給与の差は依然として1か月あたり8万円程度残っているとされます(2024年度の約8.3万円から2025年度は約8.2万円へ、わずかに縮小)。他産業も2026年度に5%程度の賃上げを進めており、「このままでは差が再び開き、人材が他業種へ流出してしまう」という危機感から、次の改定でもさらなる処遇改善を求める声が多く出ています。賃金水準に合わせて加算が動く「スライド制」の導入を求める意見もありました。
② 事業所の経営の立て直し
「介護事業所の4〜5割が赤字で、経営が安定しなければ職員の賃上げもできない」として、各サービスの基本報酬の大幅な引き上げを求める意見が出ています。あわせて、「3年に一度の改定では物価高や賃上げに対応しきれない」として、改定のサイクルそのものを見直すべきという提案も出ています。
③ 制度を続けられるようにする(給付の効率化・重点化)
一方で、報酬を引き上げれば、その分保険料や税金の負担が増えます。介護費は保険料と税金で半分ずつまかなわれており、現役世代の負担はすでに限界に近いとの指摘もあります。そこで「サービスの質を保ちながら、ムダを減らし重点化する」「ICTの活用や事業所の協働化・大規模化で効率を上げる」といった意見も出ています。
※「サービスを充実させること」と「制度を続けられるようにすること」は、どちらか一方を選ぶ話ではなく、両立をどう図るかが論点になっています。
そのほかの論点
- 複雑になった加算の整理:算定率の高い加算は基本報酬に組み込んではどうか、という意見。
- 離島・中山間地などへの特例:人員配置基準の柔軟化や包括的な報酬の導入を検討。
- 医療・介護連携の強化:85歳以上の高齢者が増え、医療と介護をまたぐニーズが高まる点を踏まえる。
2026年7月21日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太方針2026)を閣議決定しました。次期の報酬改定に直接つながる記載が2つあります。向きの違う2つが並んでいる点が要点です。
- 処遇改善を進める側:次期の介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定では、賃上げの状況や事業者の経営状況等を把握したうえで、「物価の変動に適切に対応するとともに、他職種と遜色のない処遇改善の実現を図る」とされました。
- 給付を抑える側:あわせて「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていく」という方針が示され、給付と負担の見直しを続けることが明記されました。社会保障改革の項目は2026年度中に具体的な制度設計を行うとされています。
つまり「賃上げは進める」と「全体の給付は抑える」が同時に置かれているということです。賃上げへの期待だけで見通しを立てず、加算の整理や効率化の議論もあわせて追っておくほうが安全です。
事業者への影響(実務の目線で)
現時点では中身が決まっていないため、いま何かの対応を急ぐ必要はありません。ただ、議論の方向性からは、次のような流れが読み取れます。
- 処遇改善(賃上げ)の仕組みは、次の改定でもさらに重視される可能性が高い。
- 加算が整理・簡素化される方向の議論があり、いま取っている加算の要件や算定状況を見直しておくと、改定時の対応がスムーズになりやすい。
- 経営状況の調査(介護事業経営実態調査など)の結果が改定の基礎資料になるため、調査への協力は自事業所の実態を反映させるうえで重要です。
その後の議論の進み方(2026年7月末時点)
2026年7月28日追記。2026年4月27日のスタート以降、介護給付費分科会ではサービスの種類ごとの議論(第1ラウンド)が進みました。当初は秋以降と見込まれていた各論が、実際には5月から7月にかけて先に行われています。自分の事業所に関係する回の資料は、すでに厚生労働省のサイトで公開されています。まずは自分のサービス種別の回に目を通すのが、いちばんの近道です。
| 回 | 開催日 | 取り上げられたサービス・テーマ |
|---|---|---|
| 第257回 | 2026年5月25日 | 小規模多機能型居宅介護/看護小規模多機能型居宅介護/認知症対応型共同生活介護(グループホーム) |
| 第258回 | 2026年6月15日 | 通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護/療養通所介護/通所リハビリテーション/短期入所生活介護・短期入所療養介護 |
| 第259回 | 2026年6月29日 | 訪問介護/訪問入浴介護/訪問看護/訪問リハビリテーション/居宅療養管理指導/居宅介護支援・介護予防支援/福祉用具・住宅改修 |
| 第260回 | 2026年7月9日 | 介護老人福祉施設(特養)/介護老人保健施設(老健)/介護医療院/特定施設入居者生活介護 |
| 第261回 | 2026年7月23日 | 分野横断のテーマ「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築」 |
施設系では「基本報酬の引き上げ」を求める声が相次いだ(第260回)
特養・老健・介護医療院・特定施設を取り上げた第260回では、共通の論点として「安定的にサービスを提供するための方策」が示されました。関係団体の委員からは、基本報酬の大幅な引き上げを求める意見が相次ぎ、日本医師会の委員からは「基本報酬の異次元の増額が不可欠」という表現も出ています。
背景にあるのが収支の厳しさです。厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査(令和6年度決算)では、収支差率は特別養護老人ホームが1.4%、介護老人保健施設が0.6%で、全サービス平均の4.7%を大きく下回りました。ただし、これはあくまで「そういう意見が出た」段階です。引き上げが決まったわけではない点に注意してください。
人口減少地域向けの新しい仕組みが動き出す(第261回)
第261回は分野横断のテーマで、人口が減っていく地域でどうサービスを維持するかが論点になりました。事業者に関係が深いのは次の2点です。
- 「特定地域サービス」の制度設計が始まりました:2026年に成立した社会福祉法等の改正で創設された仕組みで、施行は原則として2027年(令和9年)4月1日です。今の基準ではサービスを維持しにくい地域を対象に、市町村への登録制などが検討されています。「地域から介護サービスがなくなることを防ぐ」ことがねらいです。
- 人員配置基準の弾力化が論点になりました:管理者や専門職の常勤専従の要件をゆるめる、ICTの活用を前提に配置基準を見直す、といった方向が示されています。ただし夜勤の配置については慎重な意見が多く、引き続き検討とされました。
このほか、中山間地域向けの3つの加算(特別地域加算・小規模事業所加算・居住者へのサービス提供加算)の取得率が低いことが取り上げられ、活用を促す方策が検討されます。送迎の距離が長くなりがちな通所系サービスにも、同じような支援を求める意見が複数の委員から出ました。中山間地や人口減少地域で運営している事業所は、この2つの行方を追っておくと安心です。
なお、障害福祉サービスとの同時改定という切り口の論点は、2027年度 介護報酬改定の論議スタート|「同時改定」の論点を先取りで整理しています。
今後のスケジュール(見込み)
- 2026年4月から7月:主な論点の総論的な議論に続き、サービスの種類ごとの議論(第1ラウンド)を実施(実施済み)
- 2026年秋から12月ごろ:具体的な方向性の議論(第2ラウンド)
- 2026年12月ごろ:報酬・基準の基本的な方向性をとりまとめ
- 2026年12月下旬:政府予算編成のなかで改定率が決定
- 2027年1月ごろ:介護報酬改定案の諮問・答申
- 2027年度(令和9年度):改定の施行
- 実施済みと書いた項目以外は、現時点では確定した情報ではありません。時期は前後する可能性があります。
まとめ&次にチェックすべきこと
2027年度の介護報酬改定は、まだ「論点を出し合っている」段階で、具体的な数字や要件は決まっていません。ただし「賃上げ」「経営の立て直し」「制度の持続可能性」という3つの軸で議論が進んでいることは、今のうちに押さえておくと、秋以降の具体論を理解しやすくなります。次の節目は2026年秋から12月ごろに見込まれる第2ラウンドの議論です。本サイトでも続報を追っていきます。
出典
- 厚生労働省 社会保障審議会(介護給付費分科会):https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126698.html
- GemMed「2027年度介護報酬改定論議スタート…—社保審・介護給付費分科会」(2026.4.27):https://gemmed.ghc-j.com/?p=74156
- GemMed「2026年度介護報酬改定を決定、訪問介護では最大『28.7%』の処遇改善加算…」:https://gemmed.ghc-j.com/?p=72494
- 介護経営ドットコム「2027年度の介護保険制度改正に向けたスケジュール・論点」:https://kaigokeiei.com/news/efK8UB7VtkHG/
- 内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」(2026年7月21日閣議決定):https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2026/decision0721.html
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第257回(2026年5月25日):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73207.html
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第258回(2026年6月15日):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73633.html
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第259回(2026年6月29日):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74005.html
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第260回(2026年7月9日):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74170.html
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第261回(2026年7月23日):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74599.html
e介護転職は、株式会社ベストパーソンが運営する、介護と福祉に特化した求人情報サイトです。
介護・福祉の求人情報を専門に扱う求人・転職サイトのため、介護・福祉の求人を探しやすいのが特徴です。
掲載求人件数は業界最大級で、全国の求人を取り扱っています。
介護・福祉に特化しているので、職種検索(介護職、ケアマネージャー、看護師、生活相談員、児童発達支援管理責任者、サービス管理責任者など)、サービス種類検索:介護(特養ホーム、有料老人ホーム、デイサービス、グループホーム、訪問介護など)・福祉の障害児/障害者支援関連(放課後等デイサービス、障害者就労支援など)、雇用形態での検索(正社員はもちろん、短時間パート、日勤のみ、夜勤のみなど)と充実しており、あなたに合った求人を探せます。
当サイトは、パソコンだけではなく、スマートフォンでも利用できます。これからの高齢化社会を支える業界で、是非あなたの力を発揮できる職場を見つけて下さい。
e介護転職に掲載している求人情報
- 介護職・ヘルパー
- サービス提供責任者
- 介護支援専門員
- 看護師
- 生活相談員
- 作業療法士
- 理学療法士
- 管理栄養士・栄養士
- 福祉用具専門相談員
- 福祉住環境コーディネーター
- 管理職
- 広報・営業職
- 介護事務・事務
- 送迎ドライバー
- 保健師
- 看護助手
- 言語聴覚士
- 医療事務
- 保育士
- 主任介護支援専門員
- 機能訓練指導員
- 相談員
- 訪問入浴オペレーター
- サービス管理責任者
- 児童発達支援管理責任者
- 児童指導員
- 調理職
- 支援員
- あん摩マッサージ指圧師
- 計画作成担当者
- 移動介護従事者(ガイドヘルパー)
- 居宅介護従事者
- 重度訪問介護従事者
- 行動援護従業者
- 相談支援専門員
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 視能訓練士
- 技師装具士
- 手話通訳士
- 歩行訓練士
- その他



