【2027年度】介護報酬改定はどうなる? いま始まっている議論のポイントをやさしく解説

本記事は2026年9月14日時点の公開情報に基づいています。制度は今後変わる可能性があります。最新・正式な内容は必ず厚生労働省の発表をご確認ください。

2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けた話し合いが、すでに国の会議で始まっています。「報酬改定」と聞くと難しく感じますが、要は「介護サービスを提供したときに事業所がいくら受け取れるか」のルールを見直す作業です。3年に一度の大きな見直しで、事業所の収入や運営に直結します。この記事では、いま何が話し合われているのかを、できるだけかみくだいてお伝えします。2026年7月末の時点では、議論はすでにサービスの種類ごとの各論に入っています。

まず結論(おさえておきたい3点)
  • 2027年度の改定に向けた議論は2026年4月にスタート。まだ「何かが決まった」段階ではなく、論点を出し合っている途中です。
  • 大きなテーマは4つ。なかでも事業者に関係が深いのは「さらなる処遇改善(賃上げ)」「事業所の経営の立て直し」「制度を続けられるようにする(給付の効率化)」の3点です。
  • サービスの種類ごとの議論は2026年5月から7月にかけて一巡しました。今後は2026年秋から12月ごろに具体的な方向性、年明け2027年1月ごろに正式な改定案が示される見込みです。

そもそもこれは何の話?(背景)

介護報酬は、原則として3年に一度見直されます。直近では2024年度(令和6年度)に通常改定があり、さらに2026年6月には賃上げを目的とした臨時の改定(全体でプラス2.03%)も行われました。次の通常改定が2027年度で、その準備として「社会保障審議会・介護給付費分科会」という厚生労働省の会議で話し合いが進んでいます。

介護給付費分科会とは、介護報酬の中身を専門的に話し合う厚生労働省の会議です。 事業者団体・自治体・保険者などの委員が参加し、ここでの議論をもとに改定の方向性が固まっていきます。

いま話し合われている4つのテーマ

2026年4月27日の会合で、厚生労働省から次の4つの「分野横断的なテーマ」が示されました(今後変わる可能性もあります)。

  1. 人口減少やサービス需要の変化に応じたサービス提供体制づくり
  2. 地域包括ケアシステムの深化
  3. 介護人材の確保(処遇改善)と職場環境の改善・生産性の向上
  4. 制度の安定性・持続可能性を確保する報酬のあり方

この4つの枠の中で、委員からはとくに次のような意見が出ています。

① さらなる処遇改善(賃上げ)を求める声

介護職員の賃上げは進んでいるものの、他産業との給与の差は依然として1か月あたり8万円程度残っているとされます(2024年度の約8.3万円から2025年度は約8.2万円へ、わずかに縮小)。他産業も2026年度に5%程度の賃上げを進めており、「このままでは差が再び開き、人材が他業種へ流出してしまう」という危機感から、次の改定でもさらなる処遇改善を求める声が多く出ています。賃金水準に合わせて加算が動く「スライド制」の導入を求める意見もありました。

② 事業所の経営の立て直し

「介護事業所の4〜5割が赤字で、経営が安定しなければ職員の賃上げもできない」として、各サービスの基本報酬の大幅な引き上げを求める意見が出ています。あわせて、「3年に一度の改定では物価高や賃上げに対応しきれない」として、改定のサイクルそのものを見直すべきという提案も出ています。

③ 制度を続けられるようにする(給付の効率化・重点化)

一方で、報酬を引き上げれば、その分保険料や税金の負担が増えます。介護費は保険料と税金で半分ずつまかなわれており、現役世代の負担はすでに限界に近いとの指摘もあります。そこで「サービスの質を保ちながら、ムダを減らし重点化する」「ICTの活用や事業所の協働化・大規模化で効率を上げる」といった意見も出ています。

※「サービスを充実させること」と「制度を続けられるようにすること」は、どちらか一方を選ぶ話ではなく、両立をどう図るかが論点になっています。

そのほかの論点

  • 複雑になった加算の整理:算定率の高い加算は基本報酬に組み込んではどうか、という意見。
  • 離島・中山間地などへの特例:人員配置基準の柔軟化や包括的な報酬の導入を検討。
  • 医療・介護連携の強化:85歳以上の高齢者が増え、医療と介護をまたぐニーズが高まる点を踏まえる。
2026年7月28日追記:骨太方針2026にも改定に直結する記載が入りました

2026年7月21日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太方針2026)を閣議決定しました。次期の報酬改定に直接つながる記載が2つあります。向きの違う2つが並んでいる点が要点です。

  • 処遇改善を進める側:次期の介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定では、賃上げの状況や事業者の経営状況等を把握したうえで、「物価の変動に適切に対応するとともに、他職種と遜色のない処遇改善の実現を図る」とされました。
  • 給付を抑える側:あわせて「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていく」という方針が示され、給付と負担の見直しを続けることが明記されました。社会保障改革の項目は2026年度中に具体的な制度設計を行うとされています。

つまり「賃上げは進める」と「全体の給付は抑える」が同時に置かれているということです。賃上げへの期待だけで見通しを立てず、加算の整理や効率化の議論もあわせて追っておくほうが安全です。

事業者への影響(実務の目線で)

現時点では中身が決まっていないため、いま何かの対応を急ぐ必要はありません。ただ、議論の方向性からは、次のような流れが読み取れます。

  • 処遇改善(賃上げ)の仕組みは、次の改定でもさらに重視される可能性が高い。
  • 加算が整理・簡素化される方向の議論があり、いま取っている加算の要件や算定状況を見直しておくと、改定時の対応がスムーズになりやすい。
  • 経営状況の調査(介護事業経営実態調査など)の結果が改定の基礎資料になるため、調査への協力は自事業所の実態を反映させるうえで重要です。

その後の議論の進み方(2026年7月末時点)

2026年7月28日追記。2026年4月27日のスタート以降、介護給付費分科会ではサービスの種類ごとの議論(第1ラウンド)が進みました。当初は秋以降と見込まれていた各論が、実際には5月から7月にかけて先に行われています。自分の事業所に関係する回の資料は、すでに厚生労働省のサイトで公開されています。まずは自分のサービス種別の回に目を通すのが、いちばんの近道です。

回 開催日 取り上げられたサービス・テーマ
第257回 2026年5月25日 小規模多機能型居宅介護/看護小規模多機能型居宅介護/認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
第258回 2026年6月15日 通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護/療養通所介護/通所リハビリテーション/短期入所生活介護・短期入所療養介護
第259回 2026年6月29日 訪問介護/訪問入浴介護/訪問看護/訪問リハビリテーション/居宅療養管理指導/居宅介護支援・介護予防支援/福祉用具・住宅改修
第260回 2026年7月9日 介護老人福祉施設(特養)/介護老人保健施設(老健)/介護医療院/特定施設入居者生活介護
第261回 2026年7月23日 分野横断のテーマ「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築」
第263回 2026年8月28日 横断的事項(処遇改善/生産性向上と人員配置/虐待防止・安全確保/BCP/ハラスメント対策)
第264回 2026年9月3日 横断的事項(認知症/医療・介護連携と看取り/LIFE/口腔・栄養/多床室の室料負担)

施設系では「基本報酬の引き上げ」を求める声が相次いだ(第260回)

特養・老健・介護医療院・特定施設を取り上げた第260回では、共通の論点として「安定的にサービスを提供するための方策」が示されました。関係団体の委員からは、基本報酬の大幅な引き上げを求める意見が相次ぎ、日本医師会の委員からは「基本報酬の異次元の増額が不可欠」という表現も出ています。

背景にあるのが収支の厳しさです。厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査(令和6年度決算)では、収支差率は特別養護老人ホームが1.4%、介護老人保健施設が0.6%で、全サービス平均の4.7%を大きく下回りました。ただし、これはあくまで「そういう意見が出た」段階です。引き上げが決まったわけではない点に注意してください。

人口減少地域向けの新しい仕組みが動き出す(第261回)

第261回は分野横断のテーマで、人口が減っていく地域でどうサービスを維持するかが論点になりました。事業者に関係が深いのは次の2点です。

  • 「特定地域サービス」の制度設計が始まりました:2026年に成立した社会福祉法等の改正で創設された仕組みで、施行は原則として2027年(令和9年)4月1日です。今の基準ではサービスを維持しにくい地域を対象に、市町村への登録制などが検討されています。「地域から介護サービスがなくなることを防ぐ」ことがねらいです。
  • 人員配置基準の弾力化が論点になりました:管理者や専門職の常勤専従の要件をゆるめる、ICTの活用を前提に配置基準を見直す、といった方向が示されています。ただし夜勤の配置については慎重な意見が多く、引き続き検討とされました。

このほか、中山間地域向けの3つの加算(特別地域加算・小規模事業所加算・居住者へのサービス提供加算)の取得率が低いことが取り上げられ、活用を促す方策が検討されます。送迎の距離が長くなりがちな通所系サービスにも、同じような支援を求める意見が複数の委員から出ました。中山間地や人口減少地域で運営している事業所は、この2つの行方を追っておくと安心です。

なお、障害福祉サービスとの同時改定という切り口の論点は、2027年度 介護報酬改定の論議スタート|「同時改定」の論点を先取りで整理しています。

第2ラウンドが始まった(2026年9月14日時点)|第263回・第264回で示された論点

2026年9月14日追記。サービスの種類ごとの議論(第1ラウンド)に続き、8月28日の第263回からは、すべてのサービスに共通するテーマ(横断的事項)の議論が始まりました。事業者に関係の深い論点に絞ってまとめます。いずれも「厚生労働省が論点を示し、委員が意見を述べた」段階で、決まったことはまだありません。

第263回(8月28日):処遇改善・生産性向上・虐待防止・BCP・カスハラ

  • 処遇改善:介護職員と他産業の賃金の差は月8.2万円(2025年度)と、まだ大きいままです。委員からは「これまでにない大幅な処遇改善」「毎年度の対応」「職場環境要件などの簡素化」を求める声が相次ぎました。処遇改善加算の最上位区分の要件になっているサービス提供体制強化加算は、算定割合が7割を超えるサービスが多く、要件として妥当かが論点に挙がっています。
  • 生産性向上と人員配置:夜間に見守り機器を活用した施設で職員の業務時間が減ったという効果検証をもとに、サービスの質の確保を前提とした人員配置基準の柔軟化が論点になりました。一方で「テクノロジーは人手の代替になっていない」「夜間に必要なケアが提供できているかの検証が先」という慎重な意見も出ています。詳しくは夜間の人員配置基準はさらに緩和されるのかで整理しています。
  • 高齢者虐待の防止・安全確保:虐待の通報件数は増加傾向にあります。虐待防止措置の経過措置があるサービスや、義務の対象外のサービス(居宅療養管理指導など)の扱いが論点です。
  • BCP(業務継続計画):策定に関する報酬上の措置(減算)のあり方や、経過措置が設けられているサービスの扱いが論点です。委員からは「居宅療養管理指導も含めた策定100%」「地域での訓練の充実」を求める意見が出ました。
  • カスタマーハラスメント:未然防止と発生時の対応に加え、事業所が「正当な理由」としてサービス提供を断れる場面にカスハラを位置づけることの検討が論点に挙がりました。

第264回(9月3日):認知症・医療連携・LIFE・口腔栄養・多床室

  • 認知症への対応:認知症関連の加算は、算定率が3%未満のものが多いと報告されました。研修要件の見直し(加算Ⅰは実践者研修、加算Ⅱは実践リーダー研修の修了者で可とする案)や、単位数の引き上げを求める意見が出ています。詳しくは認知症専門ケア加算・チームケア推進加算の算定率と2027年度改定の論点をご覧ください。
  • 医療・介護連携:3要件を満たす協力医療機関を確保している割合は、特養67.9%、老健83.3%、介護医療院84.9%でした。委員からは、地域に要件を満たす医療機関がない場合に直ちに基準違反としないことや、経過措置(2027年3月末)の延長を求める意見が出ています。
  • LIFE(科学的介護情報システム):関連加算の算定率は施設系で約7割、通所・居宅系で約5割です。「現場の入力負担は限界」を前提に、提出項目を増やさないこと、介護ソフトからの自動連携、ケア改善に役立つフィードバックを求める意見が出ました。
  • 口腔・栄養:口腔連携強化加算(月1回50単位)は実務の手間に見合わないとして、要件緩和を求める声が上がりました。
  • 多床室の室料負担:2025年8月から、老健(その他型・療養型)と介護医療院(Ⅱ型)で月8,000円相当の室料負担が始まっています。対象をほかの施設に広げるかが論点で、施設側の委員は反対、支払側の委員は拡大の検討を求め、意見が分かれました。

次の節目は、横断的テーマの議論を終えたあと、12月ごろに見込まれる基本的な方向性のとりまとめです。自施設に関係する論点は、上の各記事と厚生労働省の分科会資料(第263回・第264回)で確認しておくと安心です。

今後のスケジュール(見込み)

  • 2026年4月から7月:主な論点の総論的な議論に続き、サービスの種類ごとの議論(第1ラウンド)を実施(実施済み)
  • 2026年秋から12月ごろ:具体的な方向性の議論(第2ラウンド)
  • 2026年12月ごろ:報酬・基準の基本的な方向性をとりまとめ
  • 2026年12月下旬:政府予算編成のなかで改定率が決定
  • 2027年1月ごろ:介護報酬改定案の諮問・答申
  • 2027年度(令和9年度):改定の施行
  • 実施済みと書いた項目以外は、現時点では確定した情報ではありません。時期は前後する可能性があります。

まとめ&次にチェックすべきこと

2027年度の介護報酬改定は、まだ「論点を出し合っている」段階で、具体的な数字や要件は決まっていません。ただし「賃上げ」「経営の立て直し」「制度の持続可能性」という3つの軸で議論が進んでいることは、今のうちに押さえておくと、秋以降の具体論を理解しやすくなります。次の節目は2026年秋から12月ごろに見込まれる第2ラウンドの議論です。本サイトでも続報を追っていきます。

出典