行動援護とは、知的障害や精神障害により行動上著しい困難がある人の外出や行動を支える障害福祉サービスです。常に介護を必要とする人が安全に外出し、地域で暮らしていくことを支えます。利用者の特性を理解したうえで、行動するときに生じやすい危険を回避します。パニックや自傷・他害といった行動への対応も求められるため、従事するには専門の研修と一定の実務経験が必要です。「行動援護で働きたい」「資格はどう取るの?」と気になる方も多いでしょう。この記事では、行動援護のサービス内容や対象者、従事に必要な行動援護従業者養成研修と資格要件、似たサービスとの違いまで、2026年7月時点の最新情報で解説します。
記事でわかること
この記事でわかること
- 行動援護とはどのような障害福祉サービスなのか
- 行動援護の対象者と仕事内容
- 行動援護に従事するための資格要件(研修+実務経験)
- 行動援護従業者養成研修のカリキュラムと受講方法
- 同行援護・重度訪問介護・居宅介護・移動支援との違い
行動援護とは
行動援護とは、障害者総合支援法に位置づけられた障害福祉サービス(介護給付)の一つです。対象は、知的障害または精神障害により行動上著しい困難があり、常時介護を要する人です。その人が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護を行います。あわせて、外出時の移動中の介護、排せつや食事などの介護、その他の必要な援助も行います。
たとえば、知的障害や自閉スペクトラム症、精神障害のある人のなかには、こうした特性がある方がいます。慣れない場所や急な予定変更でパニックを起こしたり、危険を察知しにくかったりします。自傷・他害につながる行動が出やすい方もいます。行動援護は、こうした行動上の特性を理解したうえで支援します。外出時に本人と一緒に行動しながら危険を防ぎ、安心して活動できるよう支える点が特徴です。単なる移動のサポートにとどまりません。行動全般への援護を行うのが行動援護です。
行動援護の対象者
行動援護の対象となるのは、知的障害または精神障害により行動上著しい困難があり、常時介護を要する障害者・障害児です。具体的には、厚生労働省が示す要件として、次の両方を満たす必要があります。
- 障害支援区分が区分3以上であること(障害支援区分とは、必要な支援の度合いを6段階で示す指標)
- 障害支援区分の認定調査項目のうち、行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上であること(障害児はこれに相当する支援の度合)
行動関連項目には、さまざまな状態が含まれます。コミュニケーションや説明の理解、強いこだわり、多動・行動停止などです。さらに、パニックや突発的な行動、自傷行為、強い不安や恐怖なども含まれます。これらの状態によって日常生活に著しい困難が生じている人が、行動援護の対象です。
行動援護の仕事内容
行動援護で働くヘルパーの主な仕事内容は、次のとおりです。
- 予防的対応:苦手な場所や状況を事前に把握し、不安やパニックが起きにくいよう環境や声かけを工夫する
- 制御的対応:パニックや自傷・他害などの行動が起きたときに、本人と周囲の安全を守りながら落ち着けるよう対応する
- 身体介護的対応:外出時の移動の介護、食事や排せつの介助など、必要な身体的なサポートを行う
具体的には、通院や買い物、余暇活動などの外出に同行します。危険を回避しながら安全に行動できるよう支援するのが役割です。利用者一人ひとりの特性を理解し、その人に合った関わり方をすることが何より大切な仕事です。
行動援護に従事するための資格要件
行動援護は専門性の高いサービスです。ヘルパー(行動援護従業者)として働くには、研修の修了と実務経験の両方が必要です。
ヘルパー(行動援護従業者)の要件
行動援護のヘルパーとして従事するには、次の要件を満たす必要があります。
- 行動援護従業者養成研修課程を修了していること(または強度行動障害支援者養成研修の基礎研修・実践研修を修了していること)
- 知的障害者・知的障害児または精神障害者の直接支援業務に、1年かつ180日以上従事した経験があること
つまり、研修を修了しただけではヘルパーとして算定されません。障害のある人への支援経験が一定以上求められる点に注意が必要です。
サービス提供責任者の要件
行動援護のサービス提供責任者(サ責)になるには、より多くの要件が必要です。まず、行動援護従業者養成研修または強度行動障害支援者養成研修(実践研修)を修了します。加えて、知的障害者・知的障害児または精神障害者の直接支援業務に3年以上従事した経験が必要です。サービス提供責任者は、利用者ごとの支援内容を組み立て、ヘルパーをまとめる役割を担います。サービス管理責任者とは役割が異なりますので、混同しないようにしましょう。
経過措置(みなし規定)について
これまでは経過措置が設けられていました。介護福祉士や実務者研修修了者などを、行動援護従業者養成研修課程の修了者とみなす規定です。この経過措置は令和9年(2027年)3月31日まで延長されています。その後は廃止される予定です。経過措置の終了後も継続して行動援護に従事するには、行動援護従業者養成研修の修了が必要になります。これから行動援護で働きたい人は、早めに研修を受けておくと安心です。
行動援護従業者養成研修のカリキュラムと受講方法
行動援護従業者養成研修は、行動援護に必要な知識と技術を身につけるための研修です。カリキュラムは講義と演習で構成されます。標準的な時間数は次のとおりです。
| 区分 | 主な内容 | 時間数 |
|---|---|---|
| 講義 | 強度行動障害がある人の理解、支援に関する基礎知識、制度の概要など | 10時間 |
| 演習 | 障害特性の理解と支援、行動障害のある人へのチーム支援、危機対応など | 14時間 |
| 合計 | – | 24時間 |
研修期間はおおむね3~4日程度で、多くの研修機関では3日間で実施されています。受講に特別な資格や実務経験は必要ありません。年齢や経験を問わず誰でも受講できます。修了試験は基本的になく、カリキュラムをすべて履修すれば修了となります。近年はオンラインで講義部分を受講できる研修も増えています。研修は都道府県や指定を受けた事業者が実施しており、福祉系の資格スクールなどで受講できます。
似たサービスとの違い
行動援護は、外出や移動を支える他のサービスと混同されやすい点があります。違いを整理しておきましょう。ガイドヘルパー(移動介護従業者)として働くうえでも、それぞれの位置づけを理解しておくことが大切です。
| サービス | 主な対象者 | 区分などの要件 | サービスの重点 |
|---|---|---|---|
| 行動援護 | 知的・精神障害で行動上著しい困難がある人 | 区分3以上+行動関連項目10点以上 | 外出時の危険回避・行動全般への援護 |
| 同行援護 | 視覚障害で移動に著しい困難がある人 | 障害支援区分の認定は不要 | 外出時の情報提供・移動の援護 |
| 重度訪問介護 | 重度の肢体不自由者、重度の知的・精神障害で行動上著しい困難がある人 | 区分4以上 | 居宅での介護と外出時の移動介護を総合的に提供 |
| 居宅介護 | 障害のある人全般 | 区分1以上 | 自宅での入浴・排せつ・食事の介護や家事援助 |
| 移動支援 | 外出が困難な障害のある人(自治体が対象を設定) | 市区町村が実施・区分は不問のことが多い | 社会生活上必要な外出の支援 |
行動援護・同行援護・重度訪問介護・居宅介護は、国(障害者総合支援法)の介護給付に位置づけられた全国共通のサービスです。一方、移動支援は市区町村が実施する地域生活支援事業です。対象者や利用できる範囲は自治体によって異なります。行動援護が「行動上の困難への対応」に重点を置くのに対し、同行援護は「視覚障害者への移動サポート」に重点を置く点が大きな違いです。居宅介護は自宅での生活支援が中心で、外出時の行動への援護は行動援護が担います。
行動援護で働くメリット
行動援護は専門性が高い分、やりがいや待遇の面でメリットがあります。主なメリットは次のとおりです。利用者一人ひとりとじっくり向き合い、その人らしい生活を支えられます。強度行動障害への支援スキルも身につきます。強度行動障害とは、自傷・他害などが著しく頻繁に現れ、特別な支援を要する状態のことです。さらに、研修や実務経験を重ねることで、サービス提供責任者などへのキャリアアップにつながります。障害福祉の現場で長く働きたい人にとって、行動援護の経験は強みになります。
事業所が陥りやすい人員要件の落とし穴と自己点検
管理者の視点で最も怖いのが、要件を満たさない人で算定して返還を求められることです。行動援護は「研修修了+実務経験」の両方がそろって初めてヘルパーとして算定できます。研修を修了しただけの職員を配置していると、運営指導(実地指導)で過誤調整や返還につながります。次のチェックリストで自事業所を点検しましょう。
- 従事者全員が行動援護従業者養成研修(または強度行動障害支援者養成研修の基礎・実践)を修了しているか
- 各従事者の「知的・精神障害者への直接支援1年かつ180日以上」の実務経験を、職歴書や前職の証明で確認・保管しているか
- サービス提供責任者は実務経験3年以上を満たしているか
- みなし経過措置(介護福祉士など)で配置している職員がいないか。令和9年(2027年)3月末で廃止されるため、計画的に研修受講を進めているか
とくに経過措置で運用している事業所は、廃止までに研修を受け直さないと算定できなくなります。受講枠は埋まりやすいため、年度初めに受講計画を立てておくと安心です。要件の根拠は厚生労働省 障害者福祉のページで確認できます。
研修修了後の働き方・キャリアの現実
これから研修を受ける人が気になるのが、修了後にどう働けるかです。前述のとおり、研修だけでは現場で算定されません。まずは居宅介護などで知的・精神障害のある人への支援経験を積み、要件を満たしてから行動援護に従事する流れが一般的です。順序を逆に考えると「研修を受けたのにすぐ働けない」と感じやすいので注意してください。
経験を重ねると、サービス提供責任者(実務3年以上)への道が開けます。強度行動障害支援は専門性が高く、加算の対象にもなりやすい分野です。事業所にとって貴重な人材として、待遇面で評価されやすい強みになります。長く障害福祉で働きたい人にとって、行動援護の経験はキャリアの土台になります。
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まとめ
行動援護は、知的障害や精神障害により行動上著しい困難があり、常時介護を要する人の外出や行動を支えるサービスです。障害者総合支援法に位置づけられた障害福祉サービスです。対象者は障害支援区分3以上かつ行動関連項目の合計が10点以上の人です。従事するには、行動援護従業者養成研修(講義10時間・演習14時間の計24時間)の修了が必要です。加えて、知的・精神障害者への直接支援1年かつ180日以上の実務経験も求められます。介護福祉士などのみなし経過措置は令和9年(2027年)3月末で廃止される予定です。これから行動援護で働きたい人は、早めに研修を受けておくとよいでしょう。専門性を活かして利用者の地域生活を支えたい人にとって、行動援護はやりがいの大きい仕事です。
参考(一次情報)
- 厚生労働省「障害福祉サービスについて」(行動援護を含む障害福祉サービスの制度概要)
- WAM NET「行動援護」(対象者要件・区分3以上/行動関連項目10点以上の解説)
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