臨床心理士とは? 仕事内容、資格取得のメリットについて分かりやすく解説

臨床心理士とは

臨床心理士とは、心の問題を抱える人を専門的に支援する心理職(心理学の専門家として相談や検査を行う仕事)の代表的な資格です。よく似た名前の「公認心理師」との違いや、資格を取るには大学院に通うのかなど、疑問を持つ方は少なくありません。この記事は、心理職に関心がある方に向けて、臨床心理士の資格の性格やなり方、仕事内容、年収までを2026年7月時点の最新情報で解説します。

この記事でわかること

  • 臨床心理士がどんな資格か(民間資格である点)
  • 臨床心理士になるまでの具体的なステップ
  • 国家資格である公認心理師との違い
  • 臨床心理士の仕事内容と活躍の場
  • 年収の目安や働き方の特徴

臨床心理士とは

臨床心理士とは、公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が認定する心理職の資格です。心理学の専門的な知識と技術にもとづいて、悩みや不安を抱える人の心を支援する「心の専門家」として、1988年から認定が続いています。資格取得者は2025(令和7)年度までの累計で約4.4万人にのぼります。

ここで押さえておきたいのは、臨床心理士が民間資格(国ではなく民間団体が独自の審査で与える資格)である点です。法律にもとづく国家資格ではなく、認定協会という民間の財団が審査によって資格を与えています。後ほど解説する「公認心理師」が国家資格である点とは、ここが大きく異なります。とはいえ、臨床心理士は長い歴史と実績を持ち、医療や教育の現場で高く評価されてきた資格です。

臨床心理士になるには

臨床心理士になるには、原則として認定協会が指定した大学院を修了したうえで、年に1回の資格審査に合格する必要があります。大卒だけでは受験できません。大学院での専門教育が前提となる点が特徴です。

ステップ1:指定大学院または専門職大学院に進学する

受験資格を得る主なルートは、認定協会が定める大学院を修了することです。大学院には次のような種類があります。

  • 第1種指定大学院:学内に心理相談施設があり、在学中から実習でクライエント(相談者)と関われます。修了後すぐに資格審査を受験できます。
  • 第2種指定大学院:修了後に1年以上の心理臨床実務経験を積んでから資格審査を受験します。
  • 専門職大学院:臨床心理に特化した実践重視の課程です。修了後すぐに受験でき、一次試験の論文記述試験が免除されるなどの特徴があります。

2026年4月1日現在、指定を受けた大学院は全国で151校あります。自分の住む地域や学びたい分野に合わせて選ぶとよいでしょう。

ステップ2:資格審査(試験)に合格する

資格審査は一次試験と二次試験で構成されます。一次試験はマークシート方式の多肢選択(100題)と論文記述の2種類で、知識と論理的な記述力が問われます。一次試験の成績が一定の水準に達した人だけが、2名の面接委員による口述面接(二次試験)に進みます。

合格率は60%台半ばで推移しており、2025(令和7)年度は受験者1,809人・合格者1,206人で66.7%でした。2026(令和8)年度は、一次試験(筆記)が10月10日に東京ビッグサイトで実施されます。二次試験(口述面接)は11月21日~23日、合格発表は12月下旬の予定です。受験申込の受付期間は6月24日~8月31日です。最新の日程や合格基準は、認定協会の公式サイトで必ず確認してください。

ステップ3:5年ごとの資格更新

臨床心理士は5年ごとの資格更新が義務づけられています。5年の間に研修会への参加などで所定のポイント(15ポイント以上)を取得し、更新手続きを行う必要があります。これは、有資格者が常に新しい知識や技術を学び続けるための制度です。専門性の質を保つうえで重要な役割を果たしています。

臨床心理士と公認心理師の違い

心理職には、2017年に施行された公認心理師法にもとづく国家資格「公認心理師」があります。臨床心理士と混同されやすいので、主な違いを表で整理します。

項目 臨床心理士 公認心理師
資格の種類 民間資格(認定協会) 国家資格(2017年~)
受験資格 原則、指定大学院の修了 大学+大学院、または大学+実務経験など複数ルート
更新 5年ごとの更新が必要 更新は不要
活躍の場 医療/教育/福祉/産業/司法 医療/教育/福祉/産業/司法

実際の仕事内容に大きな差はなく、どちらも医療・教育・福祉・産業・司法の幅広い分野で働けます。違いがはっきりしているのは「国家資格か民間資格か」「更新の有無」「受験資格のルート」の3点です。近年は、安定した国家資格である公認心理師と、歴史ある臨床心理士の両方を取得する人が多いのも特徴です。心理職を目指すなら、公認心理師の資格についてもあわせて理解しておくと役立ちます。

関連記事:公認心理師とは

臨床心理士の仕事内容

臨床心理士の専門業務は、大きく次の4つに整理されます。

心理アセスメント(心理検査)

面接や観察、各種の心理検査を通じて、相談者の特性や抱えている問題の状態を客観的に把握する業務です。支援の方針を立てる土台となります。

心理面接(カウンセリング)

相談者との信頼関係を築きながら、対話を通じて心の問題の解決や成長を支援します。臨床心理士の中心的な業務です。

地域援助

学校や職場、地域社会といった集団に働きかけ、人々の心の健康づくりや、災害・事件の被害者支援などを行います。

調査・研究

支援の質を高めるために、事例研究や調査を通じて専門的な知識や技術を磨きます。

臨床心理士が活躍する場

臨床心理士はさまざまな分野で活躍しています。

  • 医療・保健分野:病院やクリニックで心理検査や心理療法を担当します。
  • 教育分野:小中高校などのスクールカウンセラーとして、子どもや保護者、教職員を支えます。
  • 福祉分野:児童相談所、障害者・高齢者施設などで心理的な支援を行います。
  • 司法・産業分野:少年鑑別所や家庭裁判所、企業の相談室などでも力を発揮します。

介護・福祉の領域でも、臨床心理士の役割は重要です。高齢者本人の不安やうつへの心理的ケアに加え、介護を担う家族の精神的な負担を和らげる支援も担います。認知症の方やその家族への寄り添いなど、心の専門家としての関わりが求められています。福祉分野の他の専門職とあわせて知っておくと理解が深まります。

関連記事:精神保健福祉士とは

臨床心理士の年収と働き方

臨床心理士の平均年収は、おおむね400万円台が一つの目安とされています。ただし勤務先や雇用形態によって幅があり、常勤として働く場合は300万円~500万円台が多く見られます。

働き方の特徴として、非常勤での勤務が多い点が挙げられます。スクールカウンセラーや医療機関では週数日の契約となるケースもあり、複数の職場をかけ持ちして収入を確保する人も少なくありません。非常勤は時給制が一般的で、経験を積むほど待遇が上がる傾向があります。経験や役職、ダブルライセンス(複数資格の取得)などによって、収入を高めていくことが可能です。

臨床心理士を目指す前に知っておきたい取得後の現実

臨床心理士は人気の資格ですが、取得後の働き方には知っておくべき現実があります。進路選びで後悔しないために、次の3点を押さえておきましょう。

非常勤・かけ持ちが多く、収入が安定しにくい

スクールカウンセラーや医療機関の心理職は、週数日の非常勤契約が珍しくありません。常勤の求人は限られ、複数の職場をかけ持ちして収入を確保する人が多いのが実情です。安定した収入を得るには、経験を積みながら常勤枠を狙うか、ダブルライセンスで職域を広げる工夫が必要になります。

資格取得まで時間とお金がかかる

受験には原則として指定大学院の修了が必要です。大学4年に加え大学院2年、最短でも6年の学費と時間がかかります。さらに取得後も5年ごとの更新があり、研修参加などで所定のポイントを取り続ける必要があります。学び続ける覚悟が前提の資格です。

公認心理師とどちらを取るか迷ったときの考え方

これから目指すなら、就職での評価が高まっている国家資格の公認心理師を軸に考えるのが現実的です。そのうえで、歴史と実績のある臨床心理士もあわせて取得すると、活躍の場が広がります。多くの大学院は両方の受験資格に対応しているため、進学先を選ぶ段階で「両資格に対応しているか」を確認しておくと選択ミスを防げます。福祉分野でのキャリアを描くなら、関連する国家資格を知っておくと進路の幅が広がります。

あわせて読みたい

まとめ

臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格です。原則として指定大学院の修了と資格審査の合格を経て取得します。5年ごとの更新があることや、国家資格である公認心理師との違いを理解しておくことが大切です。介護・福祉の現場でも、高齢者や家族の心を支える専門職として活躍の場が広がっています。心理職に関心がある方は、関連資格もあわせて検討してみてください。

介護業界の求人を探す / 介護の求人を見る

LINEで気軽に相談する / LINEで相談する

関連記事:福祉の資格図鑑

参考(一次情報)