就労移行支援体制加算とは|算定要件・単位数と取得の実務

就労移行支援体制加算は、就労継続支援A型・B型や生活介護などの利用者が一般就労へ移行し、6ヶ月以上働き続けた実績を評価する加算です。名称に「就労移行支援」と入っていますが、就労移行支援事業所のための加算ではありません。この点は現場でも混同されやすいポイントです。

本記事では、対象サービスと算定要件、単位数の早見表、届出から算定までの実務手順を整理します。令和8年度報酬改定で加わった算定上限などの見直しも、一次情報をもとに解説します。障害福祉の加算全体を見直したい方は障害福祉サービスの加算一覧もあわせて確認してください。

就労移行支援体制加算とは

一般就労への移行と6ヶ月定着を評価する加算

結論から言うと、この加算は「利用者を一般就労につなげ、定着まで支えた実績」への報酬上乗せです。前年度に、事業所の支援を受けた後に企業等へ就職し、就労継続期間が6ヶ月に達した利用者が1人以上いる場合に算定できます。

加算額は「所定単位数×前年度に6ヶ月定着へ到達した人数」で決まります。この単位数を、当年度の全利用者に1日ごとに上乗せする仕組みです。移行者本人ではなく事業所全体の報酬が増えるため、送り出した後の欠員による減収を補う意味を持ちます。

制度の原文は、厚生労働省の報酬算定構造・サービスコード表等に掲載されています。現行の要件・単位数の根拠は、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について(厚生労働省)の告示・留意事項通知で確認できます。

対象サービス(就労移行支援事業所は対象外)

対象は、就労移行支援「以外」の日中活動系・就労系サービスです。具体的には次の4種類が該当します。

  • 生活介護
  • 自立訓練(機能訓練・生活訓練)
  • 就労継続支援A型
  • 就労継続支援B型

就労移行支援は一般就労への移行そのものが本来の役割であるため、この加算の対象外です。就労移行支援では、移行実績は定着率に応じた基本報酬の区分に反映されます。

算定要件と単位数

算定要件のポイント

算定要件の中心は「前年度における6ヶ月定着の実績」です。整理すると次のようになります。

  • 前年度に、当該事業所の支援を受けた後に一般就労した利用者がいること
  • その利用者の就労継続期間が、前年度中に6ヶ月に達していること
  • 該当者が1人以上いれば、当年度の全利用者に加算を算定できること
  • 指定権者(都道府県・市町村等)へ体制の届出を行っていること

体制の届出を欠くと、移行実績があっても加算は算定できません。実績の発生が見込まれた時点で、届出の準備を始めておきましょう。

ここでの一般就労は、企業等との雇用契約に基づく就職を指します。就労継続支援A型事業所の利用へ移った場合は、雇用契約があっても原則として対象になりません。就職先での勤務状況は在職証明書などで確認し、根拠書類として保管します。就職後6ヶ月間の職場定着を支える制度としては、別サービスの就労定着支援が就職後7ヶ月目から利用できます。

対象サービスと単位数の早見表

単位数は、サービス種別・基本報酬の区分・利用定員の規模で決まります。A型はスコア(評価点)、B型は平均工賃月額の水準も影響します。定員20人以下の場合の単位数は次のとおりです。

対象サービス 単位数の決まり方 定員20人以下の単位数(1日・移行者1人あたり)
生活介護 定員規模別 42単位
自立訓練(機能訓練・生活訓練) 定員規模別 定員区分ごとに設定
就労継続支援A型 定員規模×スコア(評価点)別 加算(Ⅰ)で50~93単位
就労継続支援B型 定員規模×平均工賃月額別((Ⅲ)(Ⅳ)は定員のみ) 加算(Ⅰ)で48~93単位/(Ⅲ)42単位/(Ⅳ)39単位

加算(Ⅰ)~(Ⅳ)の区分は、算定している基本報酬の体系や人員配置の区分に対応します。就労継続支援B型では、平均工賃月額に応じた報酬体系の事業所は(Ⅰ)(Ⅱ)を、利用者の就労や生産活動等への参加を評価する体系の事業所は(Ⅲ)(Ⅳ)を算定します。

定員が大きくなるほど1人あたりの単位数は小さく設定されています。例えば生活介護では、定員81人以上の区分で6単位です。自事業所の正確な単位数は、前述の厚生労働省のサービスコード表で該当区分を確認してください。

収益インパクトの計算例

加算の影響は「単位数×該当者数×利用者数×利用日数」で概算できます。就労継続支援B型(Ⅲ)・定員20人以下・前年度の定着到達者2人の例で計算します。

1日あたりの加算は42単位×2人で84単位です。利用者18人が月22日利用し、1単位10円とすると、84単位×10円×18人×22日で月額約33万円になります。定着者を継続的に出せれば、年間では数百万円規模の増収要因です。1単位あたりの単価は地域区分により異なるため、実際の金額は自事業所の単価で計算してください。

令和8年度報酬改定での見直し

令和8年度報酬改定は臨時応急的な見直しとして、多くの項目が令和8年6月に施行されました。一方、就労移行支援体制加算の見直しは令和8年4月から適用されています。詳細は令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について(厚生労働省)改定事項の概要(PDF)で確認できます。改定全体の内容は令和8年6月施行の報酬改定の記事で解説しています。

年間の就職者数に「定員数まで」の上限

1事業所で加算の対象にできる年間の就職者数は、利用定員数が上限になりました。基準となる定員は前年度9月末時点のものです。定員を超える人数分を算定した場合は、請求の修正や返還の対象になります。

過去3年間に算定実績がある利用者は原則対象外

同一の利用者について、過去3年間にこの加算の算定実績がある場合は、原則として対象にできなくなりました。自事業所だけでなく、他事業所での算定実績も含めて判定します。ハラスメントなどやむを得ない事情で離職した場合など、市町村長が適当と認めるケースは例外です。短期間の就職と福祉サービス利用を繰り返す事例への対応として設けられた仕組みです。

就労選択支援の創設との関係

令和7年10月には、本人の希望や適性から働き方を選ぶ就労選択支援が創設されました。アセスメントを通じて一般就労の可能性を丁寧に評価する流れが整い、B型等から企業就労へ移行する動きは今後も広がる見込みです。移行実績を適正に評価しつつ不正な算定を防ぐ方向で、加算のルールが整理されたと押さえておきましょう。

算定までの実務ステップ

算定は次の5ステップで進めます。年度替わりの届出時期から逆算して準備するのが実務のコツです。

  1. 前年度の一般就労移行者を洗い出し、就職日と在籍状況を確認する
  2. 在職証明書等で6ヶ月定着の到達を確認し、根拠書類を整える
  3. 定員数の上限と、過去3年間の算定実績の有無を確認して対象者数を確定する
  4. 指定権者に加算の体制届出を提出する(期限は算定開始月の前月15日等。自治体で異なる)
  5. 該当するサービスコードで国保連請求を行い、記録を保管する

届出様式や添付書類は自治体ごとに差があります。就職先企業名・就職日・6ヶ月到達日を一覧化した書類を求められることが多いため、移行者台帳を日頃から整備しておくと届出がスムーズです。

よくある誤解と注意点

就労移行支援事業所の加算ではない

名称の似た制度が多く、就労移行支援事業所が算定する加算と誤解されがちです。この加算はあくまで、生活介護・自立訓練・就労継続支援A型・B型が対象です。社内資料や引き継ぎでは「B型等が一般就労実績で取る加算」と補足しておくと誤解を防げます。

A型事業所への移行やアルバイト継続は要確認

一般就労への移行と6ヶ月継続が要件のため、移行先の雇用形態の確認が欠かせません。就労継続支援A型への移行は原則対象外です。判断に迷う事例は、届出前に指定権者へ確認しておくと安全です。

上限超過や重複算定は返還リスクになる

令和8年度からは、定員超過分や過去3年以内の重複算定が返還の対象になります。市町村による確認は令和8年6月以降に始まっており、令和8年4月・5月分も対象です。対象者の判定記録を残し、請求前のチェック体制を整えておきましょう。

まとめ

就労移行支援体制加算は、生活介護・自立訓練・就労継続支援A型・B型が、一般就労への移行と6ヶ月定着の実績で算定できる加算です。定員20人以下なら1人の定着で1日39~93単位が全利用者に上乗せされ、経営への効果は小さくありません。令和8年度からは定員数の上限と過去3年の重複算定制限が加わりました。実績の記録と届出を確実に行い、支援の成果を報酬につなげていきましょう。

加算の請求もれを防ぎたい事業所様へ

就労移行支援体制加算は、対象者の判定や年度替わりの届出が絡み、請求もれや返戻が起きやすい加算です。障害福祉専門の請求代行サービスWITH福祉は、FAXを送るだけで毎月の国保連請求を代行し、加算の請求もれや返戻の防止に役立ちます。

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