障害福祉サービス事業者の財務諸表公表義務|対象・手順・スケジュール

障害福祉サービス等の指定事業者には、財務諸表をはじめとする経営情報の報告と公表が義務付けられています。報告先は、障害福祉サービス等情報公表システム上の「経営情報データベース」です。

初回となる令和6年度決算分の報告期限は、2026年(令和8年)3月31日でした。2年目以降は、毎会計年度終了後3か月以内に報告します。都道府県等の指導を受けてもなお未報告の場合は、報酬の減算対象になります。

本記事では、対象事業者の判定方法、報告項目の一覧、報告手順、スケジュールを整理します。内容は2026年7月時点の厚生労働省の通知・Q&Aに基づいています。

経営情報の報告・公表義務とは|結論と制度の全体像

結論から述べると、情報公表制度の対象サービスを運営する事業者は、原則すべて経営情報の報告義務を負います。収益規模が小さい事業所を一律に除外する規定はありません。

制度の狙いは、障害福祉分野の経営実態の見える化です。集めたデータは、処遇改善の検討や報酬改定の基礎資料として活用されます。

根拠は障害者総合支援法と児童福祉法の情報公表制度

根拠法令は、障害者総合支援法第76条の3と児童福祉法第33条の18です。平成30年4月に始まった障害福祉サービス等情報公表制度の枠組みを活用しています。

省令改正により、この制度の報告事項に経営情報(財務諸表等)が追加されました。従来の運営情報などに加えて、収益・費用といった決算情報の報告が求められる形です。

報告されたデータは経営情報データベースに蓄積されます。都道府県等は、事業所の属性ごとにグルーピングした分析結果を公表します。個別事業所単位の公表方法は、厚生労働省から追って示されるとされています。

制度の全体像は、厚生労働省の障害福祉サービス等情報公表制度のページで確認できます。

介護分野の経営情報データベースとの違い

介護分野では、改正介護保険法に基づく経営情報の報告制度が先行して始まっています。介護側の制度は介護事業者の財務報告義務化の記事で解説しています。

介護は法改正で新たな報告制度と専用のデータベースを設けました。一方、障害福祉は既存の情報公表制度に経営情報の報告を組み込んだ点が特徴です。

報告項目の骨格(収益・費用・職員数・給与)や、毎会計年度終了後3か月以内という期限の考え方は共通です。介護と障害福祉の両方を運営する法人は、それぞれの制度への報告が必要になります。

対象事業者の判定|原則すべての指定事業者が対象

対象は、障害福祉サービス等情報公表制度の対象サービスを提供する指定事業者です。障害福祉サービスのほか、障害児通所支援・障害児入所支援、相談支援なども含まれます。

具体的には、居宅介護や生活介護、就労継続支援A型・B型、共同生活援助(グループホーム)などが該当します。児童分野では、児童発達支援や放課後等デイサービスも対象です。

法人格や経営主体は問いません。社会福祉法人、営利法人、NPO法人のほか、公立の事業所も対象です。複数サービスを運営する法人は、対象サービスごとに報告の要否を整理してください。

除外・特例となるケース

  • 災害その他の正当な理由により報告できない場合は、報告義務を課されません。
  • 就労選択支援は、システム改修が完了するまで当面報告不要です。この間は未報告による減算も適用されない取り扱いです(2026年2月時点のQ&A)。
  • 公立事業所で議会の議決が必要な場合は、期限内にいったん報告し、議決後に差し替えができます。

繰り返しになりますが、収益規模による除外はありません。うちは小規模だから対象外だろう、という自己判断は禁物です。判断に迷う場合は、指定権者(都道府県・政令市等)に確認してください。

報告する経営情報の項目一覧

報告項目は、決算情報と職員情報が中心です。主な項目を表にまとめます。

区分 主な項目 取り扱い
基本情報 事業所名/法人番号/会計年度・決算月/会計基準 必須
収益 障害福祉サービス等事業収益(自立支援給付費等収益・利用者負担金等収益)/事業外収益/特別収益 必須
費用 人件費(給与・役員報酬・法定福利費等)/業務委託費/減価償却費/水道光熱費/その他の費用/事業外費用/特別費用 必須
職員数 職種別・常勤非常勤別の人員数 必須
給与 職種別の給与の状況 任意
情報公表項目 職員1人当たりの賃金 任意

報告単位は原則サービス単位です。会計をサービスごとに区分していない場合は、事業所単位や法人単位での報告も認められます。

職員数や給与は、会計単位に所属する職員として報告します。サービス別に細かく按分する必要はありません。実務上の論点は、厚生労働省の経営情報の報告に関するQ&A(PDF)にまとまっています。

報告の手順|5つのステップ

報告は、障害福祉サービス等情報公表システムから行います。基本の流れは次のとおりです。

  1. 対象サービスと報告単位(サービス/事業所/法人)を確認する
  2. 決算書類(事業活動計算書・損益計算書など)と職員数がわかる資料を準備する
  3. 障害福祉サービス等情報公表システムにログインする
  4. 経営情報の報告画面で収益・費用・職員数などを入力し、報告を確定する
  5. 翌年度以降の報告(会計年度終了後3か月以内)を年間スケジュールに組み込む

ログインIDは、既存の情報公表制度の報告で使っているものと共通です。IDが不明な場合は、指定権者に確認してください。

報告前に整理しておきたい実務ポイント

最大のつまずきポイントは、会計区分と報告単位の整理です。複数サービスを一つの会計で処理している場合は、どの単位で報告するかを先に決めておくと入力がスムーズです。

勘定科目の対応関係も事前に確認が必要です。社会福祉法人会計基準と企業会計では科目名が異なるため、自法人の決算書の科目を報告様式のどこに入れるか整理しておきます。

顧問税理士や会計事務所に決算を委託している場合は、決算確定のタイミングを共有しておきましょう。期限の3か月以内から逆算し、決算作業と報告作業の日程を組むことが重要です。

操作マニュアルや最新のお知らせは、WAM NETの障害福祉サービス等情報公表システム関係連絡板で確認できます。

報告期限とスケジュール

初回は令和6年度決算分|期限は2026年3月31日

経営情報の報告機能は、2025年(令和7年)8月29日にシステム上で運用が始まりました。厚生労働省は同年9月1日付の通知とリーフレット(PDF)で、運用開始と報告期限を示しています。

初回は令和6年度の決算情報が対象で、報告期限は2026年3月31日でした。まだ報告していない事業所は、遡って減算となる前に早急な対応が必要です。

2年目以降は毎会計年度終了後3か月以内

令和7年度決算分からは、毎会計年度終了後3か月以内に報告します。3月決算の事業所であれば、期限は2026年6月30日です。

つまり2026年7月時点では、3月決算の事業所はすでに令和7年度分の期限を過ぎています。未了の場合は減算リスクに直結するため、優先的に処理してください。

決算月が3月以外の場合は、自法人の決算月の3か月後が期限です。12月決算なら翌年3月末が目安になります。

未報告の場合はどうなるか

結論として、都道府県等の指導を受けても報告しない場合は、報酬の減算対象になります。令和6年度報酬改定で新設された情報公表未報告減算の仕組みが適用されるためです。減算の内容は児発・放デイの情報公表未報告減算の記事で詳しく解説しています。

初回分(令和6年度決算)は、指導後も未報告のままだと2026年4月1日に遡って減算されます。2年目以降の分は、報告期限の翌月から減算対象です。

さらに、法律上は報告命令や是正命令の対象にもなり得ます。命令に従わない場合は、指定の取消しや効力停止に至る可能性もあります。

報告状況は指定権者が把握しています。実地指導(運営指導)で指摘を受ける前に、自主的に報告状況を点検しておきましょう。

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