老健の初期加算(Ⅰ)対象拡大と訪問リハビリ診療未実施減算|厚労省Q&A18(2026年7月)のポイント

厚生労働省は2026年7月14日、「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.18)」を公表しました。

今回のQ&Aのテーマは2つです。訪問リハビリテーションの「診療未実施減算」と、老健(介護老人保健施設)の「初期加算(Ⅰ)」です。

本記事では、老健や訪問リハビリ事業所の施設長・管理者の方に向けて、明確化された内容と、実務で確認すべきポイントを整理します。

Q&A(Vol.18)で何が明確化されたのか

結論から言うと、今回のQ&A(Vol.18)のポイントは次の2点です。

  • 訪問リハビリの診療未実施減算:要件のひとつ「適切な研修」に、日本医師会の「かかりつけ医機能研修制度」の応用研修の単位取得が含まれると明確化
  • 老健の初期加算(Ⅰ):2026年度診療報酬改定で新設された「急性期病院一般入院料」(急性期A・B)からの退院患者も対象に含まれると明示

どちらも算定の可否に直結する論点です。それぞれの制度のおさらいと合わせて、順に解説します。

訪問リハビリの「診療未実施減算」とは

原則は事業所の医師による診療

訪問リハビリ(介護予防を含む)では、事業所である医療機関や老健の医師が利用者を診療することが原則です。

診療の結果をリハビリテーション計画に反映し、それに基づいてサービスを提供する仕組みだからです。

ただし例外的・時限的に、次の4要件をすべて満たす場合に限り、減額された報酬を算定できます。これが「診療未実施減算」です。

  1. 利用者が、別の医療機関の医師による計画的な医学的管理を受けている
  2. 訪問リハビリ事業所の医師が、その別医療機関の医師から情報提供を受けている
  3. 情報提供を行う別医療機関の医師が「適切な研修」を修了している
  4. 情報提供を受けた事業所の医師が、その内容を踏まえてリハビリテーション計画を作成する

この減算は2018年度改定で新設されました。当初は1回につき20単位の減額でしたが、2021年度改定で1回50単位の減額へと厳格化されています。

「適切な研修」に応用研修の単位取得が含まれる

今回のQ&A(Vol.18)では、要件3の「適切な研修」の範囲が明確化されました。

日本医師会の「かかりつけ医機能研修制度」の応用研修の単位取得が、この研修に含まれます。

ポイントは、応用研修の全単位を取得する必要はないことです。基準は次のとおりです。

  • 対象プログラム(2023~2026年度の指定テーマ)を含むこと。例えば2026年度のテーマは「在宅を支えるリハビリテーション」
  • 情報提供を行う月から遡って36か月以内(3年前まで)に、合計6単位以上を取得していること
  • または、2027年3月31日までに取得予定であること

連携先の医師がこの基準を満たしているかどうかで、減算算定の可否が変わります。単位の取得状況を早めに確認しておきましょう。

経過措置は2027年3月31日で終了

注意すべきは、診療未実施減算そのものが時限的な措置である点です。

適用の猶予措置は2027年3月31日で終了します。

2027年4月以降は、事業所の医師の診療がなければ、訪問リハビリの報酬を算定できません。減算による代替もできなくなります。

現在この減算で運用している事業所は、事業所の医師が診療できる体制への移行を、今から検討する必要があります。

老健の初期加算(Ⅰ)の対象が広がった

初期加算(Ⅰ)とは

老健(介護老人保健施設)では、入所者が新しい環境に慣れるための支援を「初期加算」として評価しています。入所日から30日間算定できます。

2024年度改定では、急性期病院からの受け入れを促進するため、上位区分の初期加算(Ⅰ)が新設されました。

初期加算(Ⅰ)は、次のいずれかに適合することが要件です。

  • 空床情報を地域医療情報連携ネットワーク等で医療機関に定期的に共有している。またはウェブサイトで公表し、複数の急性期医療機関の入退院支援部門と共有している
  • 「急性期医療を担う医療機関の一般病棟」への入院後30日以内に退院した利用者を入所させている

老健の役割や特養との違いをおさらいしたい方は、特養と老健の違いを解説した記事も参考にしてください。

「急性期医療を担う一般病棟」の範囲とQ&A18の明確化

「急性期医療を担う医療機関の一般病棟」には、次のような病棟・治療室が含まれます。

区分 該当する入院料の例
一般病棟 急性期一般入院基本料/7対1・10対1入院基本料
高度急性期の治療室 救命救急入院料/特定集中治療室管理料(ICU)/ハイケアユニット入院医療管理料(HCU)/脳卒中ケアユニット入院医療管理料(SCU)
包括的な病棟 地域包括医療病棟入院基本料

今回のQ&A(Vol.18)では、この範囲が明確になりました。2026年度診療報酬改定で新設の「急性期病院一般入院料」(急性期A・B)も含まれます。

つまり、急性期病院一般入院料を算定する病棟から30日以内に退院した利用者を受け入れた場合も、初期加算(Ⅰ)の対象になります。

背景には、新たな地域医療構想があります。老健には「包括期・慢性期医療をカバーする役割」が期待されており、急性期後の受け皿としての機能が一層求められています。

実務チェックリスト|自施設で今から確認すること

訪問リハビリ事業所が確認すること

  • 診療未実施減算を算定している利用者を一覧化する
  • 連携先(別医療機関)の医師の研修修了状況を確認する。応用研修の場合は、36か月以内に6単位以上か、2027年3月末までの取得予定かを確かめる
  • 2027年3月31日の経過措置終了を、施設の期限管理表に登録する
  • 2027年4月以降に向けて、事業所の医師が利用者を診療できる体制づくりを検討する

老健が確認すること

  • 初期加算(Ⅰ)の算定状況と、どちらの要件で適合しているかを確認する
  • 空床情報の共有方法(地域医療情報連携ネットワーク/ウェブサイト公表)を整備し、共有の記録を残す
  • 受け入れ元となる医療機関の入院料区分を確認する。2026年度新設の急性期病院一般入院料(急性期A・B)も対象に含めて判定する
  • 急性期医療機関の入退院支援部門との連携窓口や共有頻度を文書化しておく

要件の該当・非該当をあいまいにしたまま算定を続けると、実地指導での指摘や返還のリスクにつながります。チェック結果は記録として残すことが大切です。

よくある質問|職員への説明にも使えるQ&A

連携先の医師は、応用研修の全単位を取る必要がありますか

必要ありません。今回のQ&A(Vol.18)で基準が示されました。

基準は、情報提供を行う月から遡って36か月以内に合計6単位以上です。この単位に、対象プログラム(2023~2026年度の指定テーマ)を含める必要があります。

2027年3月31日までに取得予定の場合も、同様に認められます。

2027年4月以降も、診療未実施減算で算定を続けられますか

続けられません。適用の猶予措置は2027年3月31日で終了します。

以降は、事業所の医師が利用者を診療しなければ、訪問リハビリの報酬そのものを算定できません。

減算での代替という選択肢がなくなるため、体制の見直しは早いほど安全です。

急性期A・Bの病院からの退院でも、初期加算(Ⅰ)を算定できますか

算定できます。今回のQ&A(Vol.18)で明示されました。

「急性期病院一般入院料」(急性期A・B)は、2026年度診療報酬改定で新設された入院料です。この病棟も「急性期医療を担う医療機関の一般病棟」に含まれます。

入院後30日以内に退院した利用者の入所であることなど、他の要件は従来どおり確認してください。

まとめ|期限管理と連携体制の整備を並行して進める

Q&A(Vol.18)は、訪問リハビリの診療未実施減算と老健の初期加算(Ⅰ)について、算定可否の判断基準を具体化した内容です。

特に訪問リハビリでは、2027年3月31日の経過措置終了という明確な期限があります。連携先医師の研修単位の確認と、自前の診療体制づくりを並行して進めましょう。

老健では、初期加算(Ⅰ)の対象となる退院元の範囲が広がりました。空床情報の共有体制を整え、急性期病院との連携を見直す機会になります。

算定要件の最終判断は、必ず厚生労働省のQ&A原文と指定権者への確認に基づいて行ってください。

出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.18)」(2026年7月14日)

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