介護のパートと派遣、手取りが増えるのはどっち?時給・社会保険・シフトの違いを解説

介護の仕事を時給で探すと、同じ施設の同じ仕事なのに「パート募集」と「派遣募集」が並んでいることがあります。どちらも時給制で、シフトの相談ができて、資格がなくても応募できる求人が多い。一見よく似ています。

ただし、この2つは雇い主が誰かというところから違う働き方です。そして雇い主が違うと、時給の決まり方も、社会保険の入り方も、有給の貯まり方も変わります。

この記事では、介護のパートと派遣の違いを仕組みから整理します。求人票を並べて見ても分からない部分こそ、手取りと働きやすさに効いてきます。

この記事でわかること

  • 介護のパートと派遣の違いを11項目で比較
  • 派遣の時給に「法律にもとづく下限」がある理由
  • 社会保険と有給が、どちらの働き方で積み上がりやすいか
  • シフトの決め方と、契約外の仕事を頼まれたときの違い
  • 派遣のデメリット3つと、その現実的な受け止め方
  • パートから派遣に切り替えるときの進め方

結論|収入と選び直しやすさを取るなら派遣

先に結論です。同じ時間だけ働くなら、収入面では派遣のほうが有利になりやすい働き方です。理由は、多くの派遣会社が採用する賃金の決め方に、国が示す水準という下限があり、交通費や退職金相当額の扱いまでルールで決まっているためです。

もうひとつの違いは、職場が合わなかったときの選び直しやすさです。パートは辞めて自分で探し直すことになりますが、派遣は退職の手続きを踏まずに、派遣会社へ次の就業先を相談できます。

一方で、パートが向いている場面もあります。ひとつの施設に長く勤めて役割を広げていきたい人や、勤務先の行事や委員会に関わりたい人は、パートのほうが自然です。以降で、どこがどう違うのかを順に見ていきます。

介護のパートと派遣の違いを一覧で比較

まず全体像です。11項目で並べると、違いの中心が「雇い主が誰か」から派生していることが分かります。

項目 パート 派遣
雇い主 働く施設 派遣会社
給与を支払う人 施設 派遣会社
時給の決まり方 施設の賃金規程 国が示す一般賃金水準が下限(労使協定方式の場合)
交通費 施設ごと。上限つきや支給なしもある 実費支給か時給への上乗せ(労使協定方式の場合)
社会保険 施設の規模と勤務時間で判断 派遣会社の規模と勤務時間で判断
有給休暇 その施設での勤続でカウント 派遣会社での勤続でカウント
シフトの決め方 施設と直接調整。月ごとの希望提出が多い 契約時に曜日と時間帯を固定。変更は派遣会社経由
職場が合わないとき 辞めて自分で探し直す 派遣会社に相談して次の就業先へ
働ける期間 制限なし 同じ組織単位は原則3年まで
賞与 施設によってあり 別途支給しない形が一般的。時給に含む
仕事の範囲 施設の判断で広がりやすい 契約書に書かれた範囲

いちばん大きな違いは「誰に雇われているか」

パートは施設と直接契約します。給与も施設から出ますし、シフトの相談相手も施設です。

派遣は派遣会社と契約し、その派遣会社から施設へ派遣される形です。給与は派遣会社から支払われます。指示を出すのは施設ですが、雇用契約そのものは派遣会社との間にあります。

この一点が、以降で説明するすべての違いの出発点になります。

シフトは「契約で固定するかどうか」で分かれる

パートのシフトは、月ごとに希望を出して施設が組む形が一般的です。融通が利く反面、人手が足りない日の出勤を頼まれる場面も出てきます。

派遣は、働く曜日と時間帯を契約書に書き込みます。決めた枠の中で働くため、契約外の日に急な出勤を求められにくいのが特徴です。逆に、月ごとに勤務日を大きく変えたい人には窮屈に感じられます。

時給に差がつく理由|派遣には法律にもとづく下限がある

介護の派遣求人がパート求人より高い時給で出ているのには、はっきりした理由があります。派遣の賃金には、法律にもとづく下限が設けられているためです。

パートの時給は施設の体力で決まる

パートの時給は、その施設の賃金規程で決まります。地域の最低賃金を上回っていれば、金額の設定は施設の裁量です。

そのため、同じ市内の同じ職種でも、施設によって時給に差が出ます。介護報酬という決まった収入の中で人件費を組む以上、施設側も簡単には上げられません。地域ごとの相場は介護パートの時給相場2026で確認できます。

派遣の時給は国が示す水準が下限になる

派遣で働く人の待遇は、労働者派遣法によって決め方が定められています。方式は2つあり、多くの派遣会社が採用している「労使協定方式」では、厚生労働省が毎年示す一般労働者の賃金水準と同等以上にすることが要件です。もうひとつの「派遣先均等・均衡方式」の場合は、派遣先の社員との均等・均衡が基準になります。

労使協定方式の水準は、賃金構造基本統計調査などをもとに職種別・地域別で算出され、職業安定局長通達として毎年8月ごろに公表されます。翌年度の4月から適用され、近年は毎年引き上げられています。

つまり派遣の時給には、施設の事情とは別のところで決まる下限があります。パートにはこの仕組みがありません。ここが、同じ仕事でも時給差が生まれる最大の理由です。

交通費と退職金相当額も金額が決まっている

労使協定方式では、通勤手当と退職金の扱いまで定められています。通勤手当は実費支給か、時給への上乗せかを選ぶ形です。上乗せの場合の下限額は、令和8年度適用分で1時間あたり79円と通達で示されています。退職金を時給に含める場合も、一般基本給・賞与等の5パーセントという基準があります。

パートの交通費は施設ごとの判断で、上限つきや支給なしも珍しくありません。詳しい仕組みは介護派遣の交通費は出る?で解説しています。

社会保険と有給|派遣は「積み上げ」が消えにくい

時給の次に効いてくるのが、社会保険と有給休暇です。どちらも雇い主を基準に判断されるため、パートと派遣で結果が変わります。

週30時間前後働くなら、規模に関係なく加入できる

まず押さえたいのは、勤務時間と勤務日数が正社員の4分の3以上あれば、勤め先の規模にかかわらず社会保険に加入するという原則です。多くの施設では週30時間前後が目安になります。ここはパートも派遣も同じです。

分かれ目になるのは、それより短い時間で働く場合です。週20時間以上30時間未満の人は、次の要件をすべて満たすと加入対象になります。

短時間で働く人の社会保険加入要件

  • 勤め先の厚生年金保険の被保険者数が51人以上
  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金8万8千円以上
  • 2か月を超える雇用の見込みがある
  • 学生でないこと

ここで見られる人数は、パートなら勤務先の法人、派遣なら派遣会社の規模です。介護の派遣会社は規模の大きい事業者が多いため、週20時間台でも加入できるケースが多くなります。一方、50人以下の施設でパートとして週25時間働く場合は、対象外になることがあります。

なお賃金要件の月額8万8千円は、2026年10月に撤廃される予定です。加入の判断が収入から労働時間へ寄っていくため、扶養の範囲で働きたい人は勤務時間の管理が今より重要になります。人数の要件も2027年10月から段階的に引き下げられ、将来的には撤廃される方向で決まっています。

有給は同じ派遣会社なら職場が変わっても引き継がれる

有給休暇は、雇い入れから6か月続けて勤務し、全労働日の8割以上出勤すると付与されます。これはパートも派遣も同じです。

違うのは、勤続年数を数える相手です。パートは施設ごとにカウントするため、施設を移ると勤続はゼロに戻ります。派遣は派遣会社との雇用契約に紐づくので、同じ派遣会社で就業を続ければ勤続も続きます。就業先が変わっても、貯めた有給も付与日数もそのままです。

ただし、契約と契約の間に長い空白ができると、勤続が途切れたと判断される場合があります。就業先を移るときは、間を空けずに次の契約へつなげられるか担当者に確認してください。

職場が合わなかったときの動き方が違う

介護の仕事を辞める理由として、人間関係やケア方針の相性は常に上位に挙がります。この点で、パートと派遣は取れる手段が違います。

パートで職場が合わなかった場合、選択肢は「我慢して続ける」か「辞めて自分で探し直す」のどちらかです。退職の意思を伝え、引き継ぎをして、また一から求人を探すことになります。収入が途切れる期間も出ます。

派遣は、退職という形を取らずに就業先を変えられます。担当者に事情を伝えれば、契約更新のタイミングで別の施設を提案してもらえます。派遣会社には次の就業機会を確保する措置が求められており、求人を自分で探し直す負担がない点はパートにない仕組みです。この動き方は介護派遣は人間関係が楽?で詳しく扱っています。

また、派遣は契約書に業務範囲が書かれます。契約外の業務を頼まれたときに、自分ではなく派遣会社から施設へ伝えてもらえるのも、直接雇用にはない距離感です。

派遣にもデメリットはある

いい面だけを見て選ぶと、後から想定外が出てきます。派遣の弱点も先に押さえておきます。

同じ部署で働けるのは原則3年まで

労働者派遣法により、同じ組織単位で派遣として働ける期間は原則3年です。気に入った職場でも、3年で区切りが来ます。

ただし、同じ施設の別の部署へ移る、別の施設へ移る、派遣会社の無期雇用に切り替えるなど、続け方はあります。派遣会社に無期雇用されている人と60歳以上の人は、そもそもこの期間制限の対象外です。3年は「終わり」ではなく、次を選び直す時期だと考えるのが現実的です。

賞与や昇給の仕組みが違う

派遣は賞与を別途支給しない形が一般的です。その分は時給に織り込まれている前提の設計になっています。年2回のまとまった支給を家計の柱にしたい人は、パートのほうが合う場合があります。賞与の仕組みは介護派遣に賞与は出る?で整理しています。

契約が終われば雇用にも区切りが来る

派遣は3か月ごとなど期間を区切った契約が中心です。更新のたびに継続の意思確認があります。定期的に見直せる利点でもありますが、落ち着かないと感じる人もいます。

また、登録型の派遣では、就業先との契約が終われば派遣会社との雇用契約も終わるのが原則です。次の就業先が決まるまでの間は無給になります。空白を作りたくない場合は、更新の1か月ほど前から次の希望を担当者に伝えておくと動きが早くなります。

パートが向いている人/派遣が向いている人

ここまでの違いを、選び方に落とし込みます。

こんな人 向いている働き方
同じ時間で手取りを増やしたい 派遣
職場が合わなければ変えたい 派遣
いろいろな施設形態を経験したい 派遣
勤務日と時間帯を固定したい 派遣
ひとつの施設に長く勤めたい パート
委員会や行事に関わりたい パート
賞与を家計の柱にしたい パート
月ごとに勤務日を変えたい パート

迷ったときの目安は、その職場に「根を張りたいか」です。根を張りたいならパート、条件と相性で選び続けたいなら派遣が合います。派遣側の利点をまとめて確認したい場合は介護派遣で働くメリット7つもあわせてご覧ください。

パートから派遣に切り替えるときの進め方

今パートで働いている人が派遣に移る場合、順番を間違えると収入が途切れます。次の流れが安全です。

1. 辞める前に派遣会社へ登録する

登録だけなら在職中でもできます。費用もかかりません。登録の時点で辞める必要はなく、どんな求人があるかを見てから判断できます。

2. 希望条件を数字で伝える

週何日、1日何時間、時給いくら以上、通勤何分まで。数字で伝えるほど提案の精度が上がります。夜勤の可否と、扶養の範囲で働きたいかどうかも最初に伝えます。

3. 求人票の3点を必ず確認する

派遣求人で必ず見る3点

  • 交通費が実費支給か、時給に含まれているか
  • 社会保険の加入条件を満たす勤務時間か
  • 契約期間と更新の見込み

4. 就業先が決まってから退職を申し出る

顔合わせを経て就業先が確定してから、今の職場に退職を伝えます。順番を逆にすると空白期間が生まれます。

よくある質問

無資格・未経験でも派遣で働けますか

施設内の求人であれば働けます。介護助手や生活支援の募集では、資格を求めない求人が多くあります。ただし訪問介護で利用者の身体に触れるケアを行うには、介護職員初任者研修以上の資格が必要です。資格があると時給も上がるため、働きながら初任者研修を取る人は少なくありません。

扶養の範囲内でも派遣はできますか

できます。週の勤務時間と月の収入を調整すれば、扶養内での就業も可能です。ただし時給が高いぶん、パートより短い時間で上限に届きます。勤務時間の設計は登録時に相談してください。

パートと派遣を掛け持ちできますか

制度上は可能です。ただし社会保険や労働時間の通算に注意が必要で、勤務先双方への申告も要ります。両方で加入要件を満たす場合は、二以上事業所勤務の届出も必要です。派遣会社の担当者に事前に伝えてください。

派遣は残業やサービス残業がありますか

派遣は契約で勤務時間が決まっており、超えた分は時間外手当の対象です。派遣会社が勤務時間を管理するため、記録に残らない残業は起こりにくい仕組みになっています。

まとめ

介護のパートと派遣は、雇い主が違うことから、時給・社会保険・有給・シフト・職場の選び直しやすさまで変わります。

派遣は、国が示す賃金水準という下限があるぶん時給が高くなりやすく、交通費の扱いもルールで守られています。有給は同じ派遣会社で働き続ければ職場が変わっても引き継がれ、合わない職場は退職せずに変えられます。同じ時間だけ働くなら、手元に残る額でも働き方の柔軟さでも有利に働く場面が多い選択肢です。

一方で3年の期間制限や賞与の扱い、契約が切れれば雇用も切れる点など、割り切りが要る面もあります。両方を見たうえで、いま自分が優先したいものに合うほうを選んでください。

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参考:厚生労働省職業安定局長通達「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和8年度適用)」(令和7年8月25日公表)/労働基準法第39条/労働者派遣法第30条の2から第40条の3/政府広報オンライン「社会保険の適用が段階的に拡大!従業員数51人以上の企業は要チェック」/介護労働安定センター「介護労働実態調査」