介護の派遣求人を見ていて、「交通費はどうなるの?」と気になった方は多いはずです。結論から言うと、介護派遣の交通費は原則として支給されます。2020年4月の法改正で、派遣で働く人にも通勤手当を支払うことが実質的に義務づけられたためです。
ただし、支給のされ方には2つのパターンがあります。「別途、実費でもらう」場合と「時給に上乗せされている」場合です。この違いを知らないと、時給だけを見て求人を選んだ結果、手取りが思ったより増えないということが起こります。
- 介護派遣の交通費が原則支給になった法改正の中身
- 「実費支給」と「時給に上乗せ」で手取りがどう変わるか
- 求人票のどこを見れば見分けられるか
- 2026年4月に変わった非課税限度額と駐車場代の加算措置
- 扶養内で働く場合の交通費の扱い
記事でわかること
介護派遣の交通費は原則支給される|2020年4月にルールが変わった
介護派遣の交通費は、派遣先の施設ではなく派遣会社(派遣元)から支払われます。雇用契約を結んでいる相手が派遣会社だからです。
かつては「交通費なし・時給に含む」という求人が当たり前でした。それが変わったのが2020年4月です。働き方改革関連法により、改正労働者派遣法が施行されました。派遣で働く人と正社員の不合理な待遇差をなくす「同一労働同一賃金」が導入されたのです。
派遣会社は2つの方式から待遇の決め方を選ぶ
この法改正により、派遣会社は次のどちらかの方式で待遇を決めることになりました。
- 派遣先均等・均衡方式:派遣先の施設の正社員に合わせて待遇を決める
- 労使協定方式:派遣会社と働き手の代表が結んだ協定で、国が示す一般労働者の賃金水準以上に決める
厚生労働省の集計(令和5年度)では、労使協定方式が88.8%、派遣先均等・均衡方式が7.9%、両方の併用が3.3%でした。つまり介護派遣で働く人の約9割は、労使協定方式が適用されています。
労使協定方式なら通勤手当は「実費」か「時間額79円以上」
労使協定方式を選んだ派遣会社は、通勤手当について次のどちらかを満たす必要があります。
- 通勤距離や通勤方法に応じた実費を支給する
- 国が毎年示す一般通勤手当の額(時間あたり)と同等以上を支給する
2の金額は毎年8月ごろに厚生労働省が公表します。2026年度(令和8年度)に適用される額は、1時間あたり79円です。前年度の73円から6円引き上げられました。
時間額で考えるとピンときにくいので、月の勤務時間に換算してみます。1日8時間・月20日勤務なら160時間なので、79円 × 160時間 = 12,640円が目安です。これが「交通費相当分」として時給に組み込まれている計算になります。
交通費の支給方法は2パターン|「実費支給」と「時給に上乗せ」
介護派遣の交通費は、大きく次の2つの形で支給されます。求人票の見え方も手取りへの影響も変わるため、応募前に必ず確認しておきたい部分です。
| 項目 | 実費支給(別途支給) | 時給に上乗せ |
|---|---|---|
| 支給の形 | 給与とは別に通勤手当として支給 | 時給の中に交通費相当分が含まれる |
| 求人票の書き方 | 「交通費全額支給」「交通費別途支給」 | 「交通費込み」「時給に交通費相当額を含む」 |
| 時給の見え方 | やや低く見える | 高く見える |
| 所得税 | 限度額まで非課税 | 賃金の一部として課税対象 |
| 向いている人 | 職場が遠い・交通費が高い人 | 職場が近い・徒歩や自転車の人 |
時給が高い求人ほど交通費込みの可能性がある
同じエリア・同じ職種なのに時給に差がある場合、その一因が交通費の扱いです。たとえば次の2つを比べてみます。
- A社:時給1,600円(交通費込み)
- B社:時給1,520円+交通費実費(往復800円 / 月20日で16,000円)
月160時間働いた場合、A社は256,000円、B社は243,200円+16,000円で259,200円です。時給が低く見えるB社のほうが手取り前の総額は多くなります。さらにB社の交通費は非課税なので、所得税の面でも有利です。
時給の高さだけで選ぶと損をする場面があります。介護派遣で働くメリットを最大限に活かすためにも、交通費の扱いを含めた「実質の受取額」で比べてください。
求人票のどこを見ればいいか
- 給与欄に「交通費込み」「交通費別途」の記載があるか
- 交通費に上限があるか(例:月上限15,000円まで)
- マイカー通勤が可能か、ガソリン代の計算方法はどうなっているか
- 支給のタイミング(毎月の給与と一緒か、定期代の前払いか)
記載がない、または読み取れない場合は、登録時の面談や顔合わせの前に派遣会社の担当者へ聞くのが確実です。就業条件明示書という書面に記載されるため、そこで最終確認もできます。
交通費に上限はある?非課税限度額と2026年4月の改正点
交通費そのものに法律上の上限額はありません。ただし税金の面で「ここまでは所得税がかからない」という非課税限度額が定められています。派遣会社の多くは、この限度額を目安に上限を設定しています。
電車・バス通勤は月15万円まで非課税
電車やバスなど公共交通機関を使う場合、1か月あたり15万円までが非課税です。合理的な経路であることが条件になります。介護派遣で15万円を超えるケースはほとんどないため、実質的に全額が非課税と考えて差し支えありません。
マイカー通勤は距離ごとに限度額が決まっている
介護の職場は住宅街や郊外にあることも多く、車通勤の方は少なくありません。自動車や自転車などで通勤する場合は、片道の距離に応じて限度額が決まっています。
| 片道の通勤距離 | 1か月あたりの非課税限度額 |
|---|---|
| 2km未満 | 全額課税 |
| 2km以上10km未満 | 4,200円 |
| 10km以上15km未満 | 7,300円 |
| 15km以上25km未満 | 13,500円 |
| 25km以上35km未満 | 19,700円 |
| 35km以上45km未満 | 25,900円 |
| 45km以上55km未満 | 32,300円 |
| 55km以上65km未満 | 38,700円 |
| 65km以上75km未満 | 45,700円 |
| 75km以上85km未満 | 52,700円 |
| 85km以上95km未満 | 59,600円 |
| 95km以上 | 66,400円 |
出典:国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」(令和8年4月)
2026年4月から2点が変わった
令和8年度税制改正により、2026年4月1日以後に支払われる通勤手当から次の2点が変わりました。
- 片道65km以上の区分が新設・引き上げ:改正前は55km以上が一律38,700円でした。改正後は距離に応じて最大66,400円になります
- 駐車場代の加算措置が新設:一定の要件を満たす駐車場を自己負担で使っている場合、月5,000円を上限に非課税枠へ加算できます
駐車場代の加算には条件があります。対象は職場の周辺、または通勤で使う駅やバス停の周辺にある駐車場です。自宅周辺の駐車場は対象外で、片道2km未満の人も対象になりません。
職場に駐車場がなく近隣のコインパーキングを自費で使っている場合は、派遣会社に補助の有無を確認する価値があります。
交通費が出ない・少ないと感じたときの確認ポイント
「求人に交通費の記載がない」「思ったより少ない」というときは、次の3点を順に確認してください。
1. 時給に含まれていないか
交通費が別途支給されていない場合、時給に組み込まれている可能性が高いです。労使協定方式では時間あたり79円以上(2026年度)を満たす必要があります。そのため「まったく出ていない」ということは通常ありません。給与明細に通勤手当の項目があるかを見てください。
2. 上限が設定されていないか
「月上限10,000円まで」といった上限を設けている派遣会社もあります。この場合、上限を超える分は自己負担です。遠方の施設に応募する前に、上限額と自宅からの実費を照らし合わせておくと安心です。
3. 短期・単発の仕事ではないか
数日だけの単発勤務では、交通費の扱いが通常の派遣と異なることがあります。介護派遣とスキマバイトの違いでも触れているとおり、単発アプリ経由の仕事は交通費が出ないケースもあります。同じ「1日だけ」でも、派遣会社を通す働き方かどうかで条件が変わります。
扶養内で働く人が知っておきたい交通費の扱い
扶養の範囲内で働きたい方にとって、交通費が「年収」に含まれるかどうかは重要です。ここは制度によって扱いが分かれます。
- 所得税の年収:非課税限度額内の通勤手当は年収に含まれません。ただし時給に上乗せされている交通費は賃金なので、そのまま年収に加算されます
- 社会保険の加入判定(賃金月額8.8万円):通勤手当は判定の対象に含まれません
- 社会保険料の計算(標準報酬月額):通勤手当も報酬として含めて計算されます
- 被扶養者の認定(130万円):交通費を含めて判断されるのが一般的です。加入している健康保険によって扱いが異なるため、確認をおすすめします
つまり扶養内で働くなら、交通費は実費で別途もらうほうが有利になりやすいということです。時給に含まれる形だと、その分だけ課税対象の年収が増えてしまいます。
年収の壁そのものについては、扶養内で働く介護パートの記事で金額ごとの違いを整理しています。
介護派遣の交通費に関するよくある質問
交通費はどこに申請しますか
派遣会社に申請します。雇用主は派遣会社なので、勤務先の施設ではありません。登録時や就業開始時に通勤経路を届け出る形が一般的です。経路を変更したときは、その都度連絡してください。
就業先が変わったら交通費も変わりますか
実費支給の場合は、新しい就業先までの経路で計算し直されます。時給に含まれる形の場合、時給そのものが就業先ごとに設定されるため、あわせて見直されます。
ガソリン代はどう計算されますか
派遣会社ごとに規定が異なります。片道の距離に1kmあたりの単価を掛ける方式が多く見られます。単価は各社の規定によるため、車通勤を希望する場合は登録時に確認しておくと確実です。
交通費は在職中に上げてもらえますか
実費支給であれば、経路や定期代が変われば支給額も変わります。一方、上限額そのものの引き上げは派遣会社の規定によります。引っ越しなどで通勤費が大きく増えるときは、担当者に相談してみてください。
まとめ|交通費まで含めて「実質の時給」で比べる
- 交通費は派遣会社から支給される。2020年4月以降、原則として支給される仕組みになった
- 支給方法は「実費支給」と「時給に上乗せ」の2パターン
- 労使協定方式(全体の約9割)では、実費または時間あたり79円以上(2026年度)が必要
- 電車・バスは月15万円まで、マイカーは距離に応じた額まで非課税
- 2026年4月から65km以上の限度額が引き上げられ、駐車場代の加算措置も新設された
- 扶養内で働くなら、実費で別途支給されるほうが有利になりやすい
求人を比べるときは、時給の数字だけでなく「交通費込みか別途か」までセットで見ることが大切です。同じ条件に見えて、1か月で数千円の差が出ることもあります。
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