認知症の種類と症状をわかりやすく|4大認知症と中核症状・BPSDの違い

認知症は「種類」で症状が変わる|まず押さえる全体像

認知症はひとつの病気ではありません。原因となる病気によって、現れやすい症状も進み方も変わります。だからこそ、種類を見分けたうえで関わることが、本人にも家族にも負担の少ないケアにつながります。

もうひとつ大切なのが、症状を「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状)」の2つに分けて考える視点です。中核症状は脳の細胞が壊れて直接起こる症状、BPSDは本人の性格や環境などが絡んで二次的に出る症状を指します(厚生労働省 政策レポート「認知症を理解する」2008年)。

この記事では、4大認知症の特徴を早見表で整理し、2つの症状の違い、種類別の関わり方、避けたいNG対応までをまとめます。スタッフ指導や家族への説明の土台として使える内容です。

4大認知症の特徴 早見表

認知症の大半は、次の4つの種類で占められます。まず全体像を一覧で確認してください。詳しい説明はこのあと種類ごとに続きます。

種類 主な原因 特徴的な症状 進み方の傾向
アルツハイマー型 脳の萎縮(海馬から進む) 新しいことを忘れる、日付や場所がわからない ゆるやかに進行
血管性 脳梗塞・脳出血など脳血管障害 症状にむら(まだら)、手足のまひや意欲低下 段階的に進む
レビー小体型 レビー小体という物質が神経細胞を障害 実際にないものが見える(幻視)、調子の波、手足の震え 調子に波がある
前頭側頭型 前頭葉・側頭葉の萎縮 がまんがきかない、同じ行動の繰り返し 比較的若い年代でも発症

同じ「認知症」でも、忘れることが中心の人もいれば、見えないものが見える人もいます。種類を意識すると、起きている行動の理由が読み解きやすくなります。

アルツハイマー型認知症の特徴

アルツハイマー型は、認知症のなかで最も多い種類です。記憶をつかさどる海馬を中心に脳が少しずつ萎縮することで起こります。

初期に目立つのは「もの忘れ」です。さっき聞いた話を覚えていない、同じことを何度も尋ねる、といった新しい記憶の障害から始まることが多いとされています(厚生労働省 政策レポート)。進行すると、今日の日付や自分のいる場所がわからなくなる見当識障害も加わります。

関わり方の基本は、できないことを責めず、できていることに目を向けることです。忘れる前提でメモや声かけを工夫し、本人が混乱しない環境を整えます。

血管性認知症の特徴

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血など脳の血管の障害が原因で起こります。障害を受けた脳の場所によって症状が変わるのが特徴です。

同じ人でも「できること」と「できないこと」がはっきり分かれる、いわゆる「まだら」の状態になりやすい傾向があります。手足のまひや言葉の出にくさ、意欲の低下を伴うこともあります。気分が落ち込みやすい面にも配慮が必要です。

再発のたびに段階的に進むことがあるため、高血圧や糖尿病など生活習慣病の管理が予防の面でも重要になります。本人の「できる部分」を活かす関わりが力を発揮します。

レビー小体型認知症の特徴

レビー小体型は、レビー小体というたんぱく質が脳の神経細胞を障害することで起こります。アルツハイマー型に次いで多い種類とされています。

特徴的なのが、実際にはないものがはっきり見える「幻視」です。「子どもが部屋にいる」などと訴えることがあります。また、頭がはっきりしている時とぼんやりしている時の波(認知機能の変動)や、手足の震え・動きにくさといったパーキンソン症状を伴うこともあります。

幻視を頭ごなしに否定すると、本人は強く不安になります。見えている世界を一度受け止めたうえで、安心できる声かけにつなげることが関わりのこつです。転びやすさにも注意します。

前頭側頭型認知症の特徴

前頭側頭型は、前頭葉や側頭葉が萎縮することで起こります。比較的若い年代で発症することもある種類です。

記憶よりも先に、行動や性格の変化が目立ちやすいのが特徴です。順番を待てない、悪気なくお店の物を持ってきてしまう、毎日同じ時間に同じ道を歩く(常同行動)など、社会のルールに沿った行動が難しくなることがあります。

これは「わがまま」ではなく、脳の障害による症状です。叱るよりも、本人が落ち着いて過ごせる日課や環境を整える対応が効果的です。

中核症状とは|脳が直接受けるダメージ

中核症状は、脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状です。認知症であれば、種類を問わず多くの人に現れます。代表的なものを整理します。

  • 記憶障害:新しいことを覚えにくい、体験そのものを忘れる
  • 見当識障害:日付・時間・場所・人がわからなくなる
  • 理解・判断力の低下:考えるのに時間がかかる、二つのことを同時に処理しにくい
  • 実行機能障害:段取りを立てて物事を進めることが難しくなる

中核症状は、本人の努力で消せるものではありません。「なぜできないのか」を責めるのではなく、忘れる・わからないことを前提に環境やサポートを整える、という発想が出発点になります。

BPSD(行動・心理症状)とは|環境やケアで変わる症状

BPSD(行動・心理症状)は、中核症状を土台に、本人の性格・体調・環境・周囲との関わりなどが絡み合って二次的に生じる症状です(厚生労働省 政策レポート)。「周辺症状」とほぼ同じ意味で使われます。

具体的には、不安・抑うつ・妄想といった心理面の症状や、興奮・歩き回る(徘徊)・拒否・暴言といった行動面の症状があります。中核症状と違い、出る人と出ない人がいるのが大きな特徴です。

そして最も重要なのは、BPSDは関わり方や環境の調整でやわらげられる場合が多いという点です。「困った行動」を抑える対象として見るのではなく、本人の不安や不快のサインとして読み解くことが、よいケアの分かれ道になります。

種類・症状別の関わり方のポイント

関わり方の土台は、種類が変わっても共通しています。そのうえで、種類ごとの特徴を少し足すと対応がぶれません。実務で使える順に整理します。

  • まず共通:行動の「理由」を探す。空腹・痛み・退屈・不安などがBPSDの引き金になりやすい
  • アルツハイマー型:忘れる前提で、短く・具体的に・一つずつ伝える
  • 血管性:できる部分を活かし、感情の落ち込みに寄り添う
  • レビー小体型:幻視を否定せず受け止める。転倒予防の環境づくり
  • 前頭側頭型:叱らず、落ち着ける日課と環境で行動を整える

こうした一人ひとりの尊厳を大切にする関わりは、認知症ケアの基本姿勢そのものです。なかでも、見つめる・話しかける・触れるなどを通じて「あなたを大切に思っている」と伝えるユマニチュードの考え方は、現場でも取り入れやすい技法として知られています。

やってはいけないNG対応

よかれと思った対応が、かえって本人を追い込むことがあります。BPSDを強める典型的なNG対応を、先に知っておくと失敗を防げます。

NG対応 なぜ逆効果か かわりにできること
「さっき言ったでしょう」と責める 記憶障害は本人の努力では戻せず、自信を失わせる はじめて聞いたつもりで、落ち着いて伝え直す
幻視や訴えを頭ごなしに否定する 本人には現実で、否定は不安と興奮を強める 「そう見えるのですね」と一度受け止める
行動を力でやめさせる 恐怖や抵抗を生み、BPSDが悪化しやすい 理由を探し、安心できる別の行動へ促す
「認知症だから何もわからない」と決めつける 感情は残っており、雑な対応は伝わって傷つく 一人の人として、ていねいに声をかける

NG対応の多くは、症状を「治すべき問題」とみなす姿勢から生まれます。症状の裏にある気持ちに目を向けると、自然と対応がやわらかくなります。

まとめ|種類と症状の理解が、よいケアの第一歩

認知症は種類によって症状や進み方が異なり、症状は中核症状とBPSD(行動・心理症状)に大きく分かれます。中核症状は脳の障害による直接の症状、BPSDは環境や関わりで変わる二次的な症状、という違いを押さえることが理解の軸になります。

まずは目の前の人がどの種類に近く、どんな症状で困っているのかを観察してみてください。そのうえで、責めずに理由を探す関わりへ切り替えるだけで、現場の空気は変わります。

さらに専門性を高めたい方は、認知症ケア専門士などの資格学習で体系的に学ぶのも有効です。住まいの面では、少人数で家庭的に暮らす認知症対応型共同生活介護(グループホーム)という選択肢もあり、本人と家族の状況に合わせて検討できます。

認知症ケアの知識と経験は、これからの介護現場でますます求められます。スキルを正しく評価してくれる職場で働きたい方は、介護福祉の求人を探す→ https://www.ekaigotenshoku.com/kyujin/list / 転職やキャリアの相談はLINEで相談→ https://page.line.me/176cntkd からお気軽にご相談ください。

(参考:厚生労働省 政策レポート「認知症を理解する」2008年 https://www.mhlw.go.jp/seisaku/19.html / 厚生労働省 e-ヘルスネット「認知症」)