障害福祉のBCP未策定減算とは|減算1%・3%の要件と今からの策定・復帰手順

※2026年7月時点の情報です。最新の告示・通知と所管自治体の案内をご確認ください。

「BCP(業務継続計画)を作らないと減算になるらしい」と聞いて、不安になっていませんか。結論からお伝えすると、障害福祉サービスのBCPは2024年4月に完全義務化され、未策定のままだと2025年4月からは「業務継続計画未策定減算」で毎月の報酬(所定単位数)から1%または3%が自動的に減ります。経過措置はすでに終了しており、「知らなかった」では止まりません。しかも運営指導などで未策定が判明すると、基準を満たさなくなった時点までさかのぼって減算されるおそれがあります。

この記事では、小規模事業所で現場と請求・管理を兼務している管理者の方に向けて、減算の対象と率、経過措置の時系列、自分の事業所が減算対象かのチェック方法、厚労省ひな形を使った最短の策定手順、そして「すでに減算対象かもしれない」ときの対応までを、厚生労働省の一次情報にもとづいて整理します。煽るための記事ではありません。今日から何をすればよいかが分かる状態をゴールにします。

結論:BCP未策定なら毎月の報酬から1%・3%が自動的に減る

まず結論です。感染症または災害(自然災害)のBCPのどちらか一方でも策定していなければ、業務継続計画未策定減算の対象になります。減算率は施設・居住系サービスで所定単位数の3%、それ以外のサービスで1%。利用者ごと・サービス提供のたびに所定単位数から差し引かれるため、「毎月の売上が恒常的に1%(または3%)減る」のと同じ状態が、解消するまで続きます。

理由は、令和6年度(2024年度)障害福祉サービス等報酬改定で、BCP義務の実効性を高めるためにこの減算が新設されたからです。令和3年度の基準改正で義務化されたBCPの経過措置(3年)が2024年3月末で終わり、2024年4月からは「策定していて当たり前」が基準になりました。さらに減算側の経過措置も2025年3月31日で終了し、2025年4月1日からはほぼすべてのサービスで全面適用されています(例外は就労選択支援のみ)。

この記事の要点

・感染症・災害のどちらか一方でも未策定なら減算(施設・居住系▲3%/その他▲1%)
・経過措置は2025年3月31日で終了。2026年7月現在、就労選択支援を除き全面適用中
・運営指導で未策定が判明すると基準を満たさない事実が生じた時点まで遡及
・厚労省のひな形(Word)を使えば、最短ルートで策定に着手できる

金額のイメージも持っておきましょう。あくまで単純計算の例ですが、毎月の請求額が200万円の通所事業所なら1%で月2万円・年24万円、請求額300万円のグループホームなら3%で月9万円・年108万円が消えていく計算です。しかも後述のとおり遡及適用があるため、気づくのが遅れるほど返還額は膨らみます。パート職員の人件費や送迎車の維持費に匹敵する金額が、書類1式の有無で左右されるのがこの減算です。

逆に言えば、要件は明確なので「何をすれば減算にならないか」もはっきりしています。以下で順番に確認していきましょう。

業務継続計画未策定減算とは|対象サービスと減算率

業務継続計画未策定減算とは、感染症や非常災害の発生時にサービス提供を継続するためのBCP(業務継続計画)を策定していない場合などに、所定単位数の1%または3%を減算する仕組みです。令和6年度報酬改定で新設されました。国保連請求の仕組み全体をおさらいしたい方は障害福祉の国保連請求 完全ガイドもあわせてご覧ください。

減算率3%の対象(施設・居住系サービス)

次のサービスは所定単位数の100分の3(3%)を減算します。

療養介護/施設入所支援/共同生活援助(グループホーム)/自立訓練(宿泊型)/障害児入所施設

入所・入居の場ではひとたび感染症や災害が起きたときに支援を止められないため、減算率が重く設定されています。

減算率1%の対象(訪問・通所・相談系など上記以外)

上記以外のサービスは所定単位数の100分の1(1%)を減算します。居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、短期入所、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、就労定着支援、自立生活援助、計画相談支援、地域移行支援・地域定着支援、児童発達支援、放課後等デイサービス、障害児相談支援などが含まれます。つまり、障害福祉サービス等のほぼ全サービスが対象です。

減算になる条件の正確な文言

令和6年度報酬改定Q&A(VOL.1・問14)では、減算の対象を「感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合や、当該業務継続計画に従い必要な措置が講じられていない場合」としています。一方で、周知・研修・訓練・定期的な見直しの「実施の有無」は減算の算定要件ではないと明記されています(ただし基準上の義務であり、適切に実施するよう求められています)。「研修まではやれていないから即減算」ではありませんが、「計画書のファイルすら無い」は明確にアウト、という線引きです。

義務化から減算までの時系列|経過措置はもう終わっている

結論として、2026年7月時点で使える猶予は残っていません(就労選択支援を除く)。時系列で整理すると次のとおりです。

障害福祉のBCP義務化から業務継続計画未策定減算の全面適用までの時系列(2021年義務化、2024年4月完全義務化・減算新設、2025年4月全面適用、就労選択支援のみ2027年3月まで猶予)

ポイントは2段階の経過措置です。まず令和3年度(2021年度)の基準改正でBCPの策定・研修・訓練が運営基準に位置づけられ、3年間の経過措置(努力義務)を経て2024年4月1日に完全義務化されました。次に、同時に新設された未策定減算の側にも1年間の経過措置があり、「感染症の予防及びまん延防止のための指針」と「非常災害に関する具体的計画」の両方を策定していれば、2025年3月31日までは減算が適用されませんでした。また、居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護・計画相談支援・障害児相談支援・地域移行支援・地域定着支援・自立生活援助・就労定着支援・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援など、基準上「非常災害に関する具体的計画」の策定が求められていない訪問系・相談系等のサービスは、2025年3月31日まで一律に減算が適用されませんでした。

この2つの経過措置がいずれも終了した2025年4月1日以降は、感染症・災害それぞれのBCPそのものを策定していない限り減算です。「非常災害対策計画ならある」「感染症の指針ならある」は、もう減算を止める理由になりません。唯一の例外は2025年10月に始まった就労選択支援で、こちらは2027年3月31日(令和9年3月31日)まで減算が適用されません。

自分の事業所が減算対象かを確認する4つのチェック

「うちは大丈夫か」を判定するには、次の4点を順に確認してください。1つでも「いいえ」があれば、減算対象の可能性があります

業務継続計画未策定減算の対象かを確認する4つのチェック(感染症BCPの有無・災害BCPの有無・計画に沿った措置・請求上の減算反映)

チェック1は「感染症発生時のBCPが文書として存在するか」。新型コロナ対応で作った暫定マニュアルや「感染症の予防及びまん延防止のための指針」だけでは、BCPを策定したことにはなりません。チェック2は「自然災害発生時のBCPが文書として存在するか」。消防計画や非常災害対策計画(避難確保計画)はBCPとは別物です。BCPは「逃げる」だけでなく「サービスをどう継続・復旧するか」まで定める計画だからです。チェック3は「計画に従い、必要な体制(担当者・連絡体制・備蓄など計画に定めた措置)が実際に講じられているか」。チェック4は「減算対象なのに通常の単位数で請求していないか」。減算対象であることに気づかず満額請求を続けると、後から過誤調整(返還)の対象になり得ます。

判定に迷うグレーなケース(例:法人本部で一括作成した計画しかない、計画はあるが事業所名も担当者も入っていない等)は、自己判断で「セーフ」にせず、所管自治体(指定権者)に確認するのが安全です。

BCPに最低限必要な中身は「感染症」と「災害」の2本

減算を止めるために必要なのは、「感染症」と「自然災害」それぞれの発生時を想定した業務継続計画です。厚生労働省が障害福祉サービス事業所等向けにガイドラインとひな形を公開しており、盛り込むべき項目はそこに整理されています。

感染症BCPに入れる中身

感染症BCPの柱は「平時からの備え」「初動対応」「感染拡大防止と業務継続」の3段階です。具体的には、体制(意思決定者・担当者)、感染疑い発生時の報告・連絡ルート、消毒や隔離などの初動、職員が出勤できない場合に優先する業務の絞り込み(優先業務の整理)、応援体制や関係機関との連携などを定めます。

災害BCPに入れる中身

災害BCPの柱は「平時の対策」「緊急時の対応」「他施設・地域との連携」です。ハザードマップにもとづく自事業所のリスク確認、建物・設備・ライフラインが止まったときの代替手段、安否確認と参集ルール、優先業務の選定と復旧の目安、地域や法人内他事業所との応援体制などを定めます。避難方法を定める非常災害対策計画と重なる部分もありますが、「災害のあと、事業をどう続け、どう復旧させるか」まで書くのがBCPだと押さえておけば混同しません。

厚労省ひな形を使った最短の策定手順(5ステップ)

ゼロから書く必要はありません。厚労省のひな形(Word・Excel様式)に自事業所の情報を埋めていくのが最短ルートです。手順は次の5ステップです。

ステップ1:ひな形と研修動画を入手する。厚労省の「自然災害発生時の業務継続ガイドライン」ページと「感染対策マニュアル・業務継続ガイドライン等」ページから、ガイドラインとひな形(入所系・通所系・訪問系別)をダウンロードします。あわせてBCP作成支援の研修動画(総論・各論)も公開されています。
ステップ2:自事業所の基本情報とリスクを埋める。事業所名・体制・連絡網、ハザードマップの確認結果など「調べれば書ける欄」を先に埋めます。
ステップ3:優先業務を決める。職員が半分しか出勤できない日に何を残すか。食事・排せつ・服薬・安否確認など、利用者の生命と生活に直結する業務から優先順位をつけます。ここが計画の核です。
ステップ4:職員に周知し、研修・訓練の予定を年間計画に落とす。作った計画は回覧・ミーティングで共有し、研修と訓練(シミュレーション)の実施時期を決めます。
ステップ5:完成日を記録し、自治体への報告・届出の要否を確認する。策定日は減算解消の起点になり得る重要な日付です。体制届の扱いは自治体で運用が異なるため、指定権者に確認してください。

現実的な壁は「管理者にまとまった時間がない」ことです。ステップ2〜3は現場を知る管理者にしか書けない一方、毎月1〜10日の国保連請求と重なると着手が翌月送りになりがちです。請求業務の効率化で時間を捻出するか、思い切って毎月の国保連請求業務そのものを請求代行(WITH福祉)に切り出して、BCPの策定・研修・訓練に管理者の時間を充てるのも現実的な選択肢です(WITH福祉は請求業務の代行であり、BCP作成代行ではありません)。

策定後にやること|研修・訓練・定期見直しの回し方

策定して終わりではありません。運営基準上は、計画の職員への周知、研修および訓練(シミュレーション)の定期的な実施、計画の定期的な見直しまでがセットで義務づけられています。前述のとおり、研修・訓練の実施の有無は未策定減算の算定要件ではありませんが、運営指導では確認される事項であり、いざというとき機能しない「紙だけのBCP」では策定した意味がありません。

小規模事業所での現実的な回し方は、①年間の研修・訓練予定を年度初めに職員会議でカレンダー化する、②研修は既存の職員会議や虐待防止研修と同日開催にして負担を減らす、③訓練は「震度6弱が起きた想定で30分の机上訓練」など小さく始める、④実施記録(日時・参加者・内容・気づき)を必ず残す、⑤訓練で見つかった穴を計画に反映して見直し日を追記する、という流れです。記録が残っていないと「実施した」と証明できません。実施記録の様式をあらかじめ決めておくことが、運営指導対策としても最も費用対効果が高い一手です。

すでに減算対象かもしれないときの対応と復帰の流れ

「2025年4月以降、BCPが無いまま満額で請求していた」という事業所は、放置がいちばん危険です。理由は遡及です。Q&A(VOL.1・問15)では、運営指導等で未策定が判明した場合、「基準を満たさない事実が生じた時点」までさかのぼって減算が適用されるとされています。発覚が遅れるほど、返還額は月々の1%・3%の積み重ねで大きくなります。

対応の流れは次の3段階です。第1に、今日からBCP策定に着手する。減算状態を止める唯一の方法は策定です。第2に、所管自治体(指定権者)に自主的に相談する。未策定期間の請求をどう扱うか(自主点検の上での過誤調整など)は自治体の指示に従うのが原則で、自主申告と指導での発覚では心証も対応も変わり得ます。第3に、復帰の要件を自治体・国保連に確認する。策定後いつの提供分から減算が止まるのか(策定した月からか翌月からか)、体制届(介護給付費等算定に係る体制等に関する届出)の提出が必要かは、国のQ&Aに明示がなく、自治体によって案内が異なります。必ず指定権者に確認してください。

減算に気づいたときの3ステップ

1. 止血:厚労省ひな形でBCP(感染症・災害の2本)を策定する
2. 申告:所管自治体に相談し、未策定期間の請求の扱い(過誤調整等)の指示を受ける
3. 復帰:減算が止まる時期と体制届の要否を自治体・国保連に確認して請求に反映する

なお、過誤調整や返戻対応が発生すると、通常月の請求業務に上乗せで事務負担がかかります。管理者一人で抱えきれない場合の考え方は請求業務の内製vs外注の比較記事で整理しています。

よくある質問(FAQ)

研修や訓練をまだやっていないと、それだけで減算になりますか?

いいえ。Q&A(VOL.1・問14)では、周知・研修・訓練・定期的な見直しの実施の有無は減算の算定要件ではないとされています。減算対象は、感染症・災害のいずれか(または両方)のBCPが未策定の場合や、計画に従い必要な措置が講じられていない場合です。ただし研修・訓練は運営基準上の義務なので、実施と記録は必要です。

感染症と災害のBCPを1冊にまとめてもいいですか?

障害福祉のQ&Aには明示の記載が見当たりません。厚労省のひな形は感染症用と自然災害用が別々に用意されており、両方の内容を満たすことが前提です。1冊に統合して作成したい場合は、両方の要素が漏れなく入っていることを前提に、取り扱いを所管自治体に確認するのが安全です。

今からBCPを作ったら、減算はいつから止まりますか?

策定により「基準を満たさない状態」が解消されて以降の減算は止まりますが、正確な起算(策定した月の提供分からか、翌月からか)と体制届の要否は、国のQ&Aに明示がなく自治体の案内によります。策定日を文書に明記したうえで、所管自治体と国保連に確認してください。なお、未策定だった期間の分が策定によって帳消しになるわけではありません。

経過措置が終わった今から作るのは、もう手遅れですか?

手遅れではありません。未策定期間の減算リスクは残りますが、策定しない限りその期間は毎月延び続けます。今日着手することが損失を最小にする唯一の方法です。就労選択支援のみ2027年3月31日まで減算が適用されない経過措置がありますが、これも「作らなくてよい」という意味ではなく、BCP策定義務自体はあります。

まとめ|BCPは「作れば止まる」減算。今日ひな形を開こう

最後にもう一度結論です。業務継続計画未策定減算は、感染症・災害のBCPを策定すれば止められる減算です。経過措置は2025年3月末で終わり、2026年7月現在は就労選択支援を除く全サービスで適用中。未策定のまま過ごした期間は遡及リスクとして積み上がるため、「いつかやる」が最も高くつきます。厚労省のひな形と研修動画を使えば、ゼロから書くより大幅に短時間で策定に着手できます。まずは感染症・災害の2本のひな形をダウンロードし、策定日をカレンダーに入れるところから始めてください。すでに減算対象の可能性がある場合は、自主的に所管自治体へ相談することが傷を最小にします。

BCPに向き合う時間は、請求業務の外部化でつくれる

BCPの策定・研修・訓練は、現場を知る管理者にしか進められない仕事です。一方、毎月1〜10日の国保連請求は、外部に切り出せる仕事です。WITH福祉は障害福祉専門の国保連請求代行として、実績記録票の取りまとめから伝送・返戻対応までを引き受け、管理者が管理の仕事に時間を使える体制づくりを支援します(BCPの作成代行サービスではありません)。

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出典・参考(一次情報)

いずれも2026年7月9日にリンク先の生存と内容を確認しています。