吃音(きつおん)とは、話し言葉がなめらかに出ない発話の特性です。決して珍しいものではなく、親の育て方が原因でもありません。「どもるのは育て方のせい?」と不安に感じている保護者や、支援に関わる方に向けて解説します。この記事では、症状・種類・原因から、言語聴覚士による治療、障害者手帳や福祉サービスとの関係、周囲ができる接し方までをまとめました。公的機関や学会の情報をもとに、2026年7月時点でわかりやすく整理しています。
記事でわかること
この記事でわかること
- 吃音(どもり)の意味と、連発・伸発・難発の3つの症状
- 発達性吃音と獲得性吃音という種類の違い
- 吃音の原因(「親の育て方が原因」は誤りである理由)
- 発達障害者支援法・障害者手帳・福祉サービスとの関係
- 言語聴覚士による治療と、周囲の人ができる接し方・相談先
吃音(きつおん)とは?
吃音(きつおん)とは、話し言葉がなめらかに出てこない発話障害のことです。一般には「どもり」とも呼ばれ、読み方は「きつおん」です。言いたいことははっきりしているのに、最初の音が出なかったり、同じ音をくり返してしまったりします。本人の努力不足や性格の問題ではありません。世界保健機関(WHO)の分類でも、話し言葉の流暢さ(なめらかさ・リズム)が乱れるものとして位置づけられています。
吃音の3つの中核症状
吃音には、大きく分けて3つの中核症状があります。「からす」と言おうとする場面を例に見てみましょう。
- 連発(れんぱつ):音をくり返す。例「か、か、か、からす」
- 伸発(しんぱつ):音を引き伸ばす。例「かーーらす」
- 難発(なんぱつ):言葉が出ず、間があく(ブロック)。例「……からす」
多くは連発から始まり、伸発、難発へと変化していくことがあります。また、声を出そうとして顔や体に力が入ることもあります。まばたきや手足の動きを伴う場合もあり、これを随伴症状といいます。話そうとするほど力んでしまい、かえって言葉が出にくくなるのが吃音の特徴です。
吃音の種類
発達性吃音
発達性吃音は、幼児期(おもに2~4歳)に自然に現れる吃音です。吃音の9割以上がこの発達性吃音にあたります。医学的には、DSM-5などの診断基準で「小児期発症流暢症(吃音症)」と分類されます。言葉が爆発的に発達する時期に始まることが多く、後ほど述べるように体質的な要因が大きく関わっています。
獲得性吃音
獲得性吃音は、主に青年期以降に別の原因で生じる吃音です。2つのタイプがあります。脳卒中や脳の外傷など神経の損傷による「獲得性神経原性吃音」と、強いストレスや心的な出来事をきっかけに生じる「獲得性心因性吃音」です。思春期以降に急に吃音が目立ち始めた場合は、医療機関への相談がすすめられます。
吃音はどのくらいの人にある?(発症と経過)
吃音は、幼児期に多くの子どもが一時的に経験する、ありふれた特性です。近年の国内調査では、3歳までに吃音が現れる子どもは1割近く(累積発症率およそ9%)にのぼると報告されています。「10人に1人」とも言われます(従来は約5%とされてきましたが、最新の国内研究ではより高い数値が示されています)。
ただし、その多くは自然に消えていきます。7~8割程度は成長とともに回復する(自然回復)とされています。一方で、残りの一部は症状が続きます。成人で吃音のある人はおよそ0.8%(1%弱)と推定されています。男性に多く、男女比はおおむね2~4対1です。
吃音の原因 ― 「親の育て方が原因」は誤り
吃音の原因は、生まれ持った体質が中心です。「親の育て方が原因」というのは明確な誤りです。原因は、次の3つの要因が互いに影響し合って生じると考えられています。
- 体質的要因:生まれ持った、吃音になりやすい体質(遺伝的な要素を含む)
- 発達的要因:言語・運動・認知などが急速に発達する時期の影響
- 環境要因:周囲の人との関わりや生活上の出来事
このうち、体質的要因が占める割合が大きく、7~8割程度とされます。2000年頃以降の双子研究や脳・遺伝子の研究によって、環境よりも生まれ持った体質が主な原因であることがわかってきました。
日本吃音・流暢性障害学会も、「親の育て方が原因」という説を「最も問題のある間違った原因論」として注意を促しています。「親のしつけが悪い」「真似をすると伝染する」といった俗説は事実ではありません。保護者がご自身を責める必要はまったくありません。
吃音と発達障害・障害者手帳・福祉サービス
発達性吃音は、発達障害者支援法(2005年施行)の対象に含まれる発達障害のひとつです。そのため、状態によっては福祉的な支援を受けられます。関係する手帳は次のとおりです。
- 精神障害者保健福祉手帳:発達障害として、医師の診断書をもとに交付される場合があります。
- 身体障害者手帳(音声・言語機能の障害):吃音が重く、家族以外との意思疎通が著しく困難と認定された場合に交付されることがあります。
これらの手帳を取得すると、就労支援や生活支援、相談支援などの福祉サービスを利用しやすくなります。ただし、手帳の交付要件(初診からの経過期間など)は自治体によって運用が異なります。お住まいの市区町村の窓口や主治医にご確認ください。相談先としては、発達障害者支援センターや障害者総合支援法にもとづくサービスがあります。
吃音の治療・支援
吃音の支援は、「治す」というより「話しやすく、生活しやすくなる」ことを目指します。中心となるのは言語聴覚士(ST。ことばや聞こえのリハビリの専門職)による言語療法です。主な方法は次のとおりです。
- リッカムプログラム:幼児向けの代表的な方法。言語聴覚士の指導のもと、家庭で親子の会話練習を行い、なめらかに話せたら褒めることを基本とします。
- 環境調整法:子どもの発話能力に合わせて、周囲の話す速さや質問のしかたを調整し、話しやすい環境を整えます。
- 認知行動療法:主に思春期以降を対象に、吃音への不安や、話す場面を避ける行動をやわらげる目的で用いられます。
- 合理的配慮:障害者差別解消法にもとづき、学校での発表や職場の電話応対などについて、無理のない範囲での配慮を求めることができます。
吃音のある人への接し方
周囲の関わり方は、吃音のある人がのびのびと話せるかどうかに大きく影響します。次のポイントを意識しましょう。
- 言い直させない・せかさない。「ゆっくり話して」「落ち着いて」といった助言も、かえってプレッシャーになります。
- 話の「内容」に耳を傾け、本人が言い終わるまで落ち着いて待ちます。先回りして言葉を言い当てないようにしましょう。
- 「どもってもいいから、たくさん話してね」という安心感を伝えます。隠そうと力むほど症状は出やすくなるためです。
- 園や学校、職場には「吃音は本人がわざとしているのではなく、ふざけているわけでもない」ことを伝え、理解を広げることも大切です。
吃音の相談先
気になることがあれば、早めに専門機関へ相談しましょう。主な相談先は次のとおりです。
- 医療機関:耳鼻咽喉科、小児科、リハビリテーション科などの言語聴覚士。吃音を専門に診る医師もいます。
- ことばの教室:小学校などに設置された通級指導教室。
- 発達障害者支援センター:発達障害全般の相談窓口。
- セルフヘルプグループ:当事者同士で交流する言友会(げんゆうかい)などの会。
現場・家庭での吃音への関わり方(声かけ例・NG例)
吃音のある子に支援者・保護者がどう関わるかで、本人の安心感は変わります。原則は「話し方」を直そうとせず、「話す内容」を受け止めることです。場面別の声かけ例とNG例を整理しました。
| 場面 | 良い声かけ・対応 | NG例 |
|---|---|---|
| 言葉が出にくいとき | 言い終わるまで穏やかに待つ。視線を合わせてうなずく | 「ゆっくり」「落ち着いて」と助言する/先回りして言葉を当てる |
| 連発・難発が出たとき | 内容に「そうなんだね」と反応し、話せたことを自然に受け止める | 言い直させる/真似する/笑う |
| 音読・発表の場面 | 本人と相談し、読む量や順番を調整する(合理的配慮) | 無理に一人で読ませる/急かす |
| からかいが起きたとき | 「わざとではない」と周囲に伝え、理解を広げる | 放置する/本人に我慢を求める |
保護者へ伝えるときは、専門用語をかみ砕いて翻訳すると安心につながります。たとえば「親の育て方が原因ではなく、生まれ持った体質が大きい」「7~8割は自然に回復する」「隠そうと力むほど出やすい」の3点です。療育の質を高めるうえでは、いつ・どんな場面で症状が出やすいかを記録に残し、言語聴覚士やことばの教室と共有すると支援が一貫します。放課後等デイサービスや児童発達支援では、こうした関わりの方針をスタッフ間でそろえることが、本人の安心と療育効果につながります。発達障害全般の相談先は、こども家庭庁(https://www.cfa.go.jp/)や厚生労働省 障害者福祉(障害者福祉のページ)も参考になります。
吃音について詳しく知るための参考情報
本記事の内容は、以下の公的機関・学会の一次情報を確認して作成しています。制度や支援の詳細を確認したいときは、あわせてご覧ください。
- 厚生労働省「発達障害者支援法」(発達性吃音を含む発達障害の定義と支援施策の根拠法。平成17年4月1日施行)
- 厚生労働省「発達障害者支援施策」(発達障害者支援センターの案内や関連条文をまとめたページ)
- 日本吃音・流暢性障害学会(吃音の原因論や最新の研究知見を発信する専門学会の公式サイト)
- 厚生労働省「障害者福祉」(障害者手帳や障害者総合支援法にもとづくサービスの全体像)
よくある質問(FAQ)
Q. 吃音の読み方は?
A. 「きつおん」と読みます。一般には「どもり」とも呼ばれます。
Q. 子どもの吃音は自然に治りますか?
A. 幼児期に始まった吃音の7~8割程度は、成長とともに自然に回復するとされています。ただし続く場合もあるため、気になるときは言語聴覚士やことばの教室に相談しましょう。
Q. 吃音は発達障害ですか?
A. 発達性吃音は発達障害者支援法の対象に含まれる発達障害のひとつです。状態によっては障害者手帳や福祉サービスの対象となる場合があります。
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まとめ
吃音(きつおん)とは、話し言葉がなめらかに出ない発話の特性です。連発・伸発・難発の3つの症状があります。9割以上は幼児期に始まる発達性吃音で、主な原因は生まれ持った体質です。「親の育て方が原因」という説は誤りです。多くは自然に回復しますが、続く場合もあります。言語聴覚士による支援や福祉サービス、周囲の理解によって、安心して暮らし・働ける環境を整えられます。
福祉や介護の現場では、障害のある人の生活を支える多くの仕事があります。「人を支える仕事に関心がある」という方は、お気軽にご相談ください。
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※本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成した一般的な解説です。症状や対応についての判断は、医師・言語聴覚士などの専門家にご相談ください。
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