LD(学習障害)とは?特性や治療方法、配慮の仕方を知ろう

みなさんは学習障害(LD)という言葉を知っていますか?学習障害(LD)はASDやADHDなどを含む発達障害のひとつで、「聞く」「読む」といった特定の能力に困難を持つ状態のことです。今回は、学習障害(LD)の特性や発生頻度、治療方法、配慮の仕方について詳しく学んでいきましょう。

学習障害(LD)とは

学習障害(LD: Learning Disabilities)とは、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動性障害)などを含む発達障害のひとつで、別名「限局性学習症」とも呼ばれます。一時期は言語性LD、非言語性LDとも言われていましたが、現在では使われていません。

LDには「読字の障害を伴うタイプ」「書字表出の障害を伴うタイプ」「算数の障害を伴うタイプ」の3タイプがあり、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する能力のうち特定のものに著しい困難を示します。全般的な知的発達の遅れはありませんが、特性により学校での学習到達度が遅れやすいため「努力が足りない」「勉強不足」と誤解されることも少なくありません。

参考:文部科学省「学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(SDHD)及び高機能自閉症について」
参考:e-ヘルスネット「学習障害(限局性学習症)」

学習障害(LD)の特性

LDの特性を持つ人は、知的発達の遅れはないものの聞く、話す、読む、書く、計算、推論する能力のうち特定のものが苦手です。人によって特性の現れ方は異なり、話すことや理解することは普通にできるのに書くことや読むことが苦手、読み書きはできるのに計算ができないなどさまざまなパターンがあります。

たとえば、読み書きに障害を持つタイプには以下のような特性が現れます。

  • 文字を一つ一つ拾って読む(逐次読み)
  • 単語や文節の途中で区切って読む
  • 文字間や行間を狭くするとさらに読み間違いが増える
  • 文末などを適当に変えて読んでしまう
  • 「わ」と「は」、「お」と「を」など同じ音の文字を書き間違える
  • 「ぬ」と「め」など形態的に似ている文字を書き間違える
こうした特性が原因で、学業や日常生活で以下のような困難が生じやすいです。
  • 教科書を読むのに時間がかかり学習に遅れが生じる
  • 学業不振が著しくなり心身症や不登校といった二次障害の状態になることもある
  • 会議で大事なところをメモしようとすると、書くことに集中してしまい内容がわからなくなる
なお、学習障害の特性を持つ人はASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動性障害)といった他の発達障害を併発することも少なくありません。

参考:文部科学省「学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(SDHD)及び高機能自閉症について」
参考:国立研究開発法人 国立成育医療研究センター「ディスレクシア」
参考:厚生労働省 政策レポート「発達障害の理解のために」
参考:e-ヘルスネット「学習障害(限局性学習症)」

学習障害(LD)の発生頻度と原因

小児期に生じる学習障害を発達性ディスレクシアと言い、こちらの発生頻度はアルファベット圏で3~12%と報告されています。

日本においては、2012年の全国調査によると学習面に著しい困難を示す児童生徒は4.5%存在することが示されました。日本語の表記文字にはひらがなとカタカナ、漢字がありますが、ひらがなの学習障害は0.8~2.1%の有病率とされます。漢字や英語の学習障害はそれよりさらに多いと見積もられていますが、現状明確な有病率は分かっていません。

LDは中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されておりますが、明確な原因は現在分かっていません。視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因ではないとされています。

参考:e-ヘルスネット「学習障害(限局性学習症)」
参考:文部科学省「学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(SDHD)及び高機能自閉症について」

学習障害(LD)の治療方法

LDは生まれ持った脳の特性によるものであることから、根本的な治療方法は確立されていません。そのため、個々の特性に合わせた教育や療育を行い、学習障害とうまく付き合いながら生きていく術を身に付けることが大切です。

発達性ディスレアシアの場合は音韻処理の困難を抱えているため、国語の学習の初期段階から、積極的に診断をして治療的介入していきます。小児科神経科医師や言語聴覚士などの専門家と一緒に音韻操作、呼称の速さの能力を見て支援につなげることが必要です。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動性障害)を持つ場合は、学業不振がそれらに伴うものかどうかも見極めます。

教育面では、特性に対して以下のような方法で支援を行います。

  • 読むことが困難な場合:大きな文字で書かれた文章を指でなぞりながら読む、文章を文節に分ける
  • 書くことが困難な場合:大きなマス目のノートを使う、ICT機器を活用する
  • 計算が困難な場合:  絵を使って視覚化する
なお、児童発達支援や放課後等デイサービスを利用することも可能です。

参考:e-ヘルスネット「学習障害(限局性学習症)」
参考:国立研究開発法人 国立成育医療研究センター「ディスレクシア」
参考:厚生労働省 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス「発達障害」

学習障害(LD)の配慮の仕方

LDの人は知的障害を伴わないため、一見障害がないように見えるかもしれません。ですが、読むことや書くことが苦手なのは努力不足ではなく、生まれ持った脳の機能が関係しています。そのため、苦手なことを他の方法で補ったり本人が心理的な苦痛を持たないように配慮したりすることが大切です。

たとえば、書くことが苦手ならメモを取る代わりにボイスレコーダーを使ったり、口頭試問による評価を行ったりします。拡大文字や体裁の変更も良いでしょう。また、苦手な学習活動があることで心理面に影響が出ている場合は、成功体験を増やしたり困ったときの相談場所を作ったりすることも大切です。

そしてなにより、教師や地域の人、周囲の児童などに対して、努力によって変わらない苦手なこと・得意なことがある旨を理解してもらえるよう啓発することが支援につながります。

参考:独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター「学習障害(LD)のある子どもの合理的配慮」

まとめ

学習障害(LD)とは、生まれつきの脳の機能の違いにより読み書きや計算などの能力の一部に苦手なものをもつ発達障害のことです。知的発達の遅れは伴わないものの、障害を持たない人なら普通にできることでも時間がかかるため学業や日常生活に困難が生じます。そのため、保護者や医療機関、教育者が連携し個々のニーズに合った支援をしていくことが大切です。LDの人が社会で適応する力を身に付け自分らしく過ごせるよう、障害特性を理解し自分にできることを考えてみましょう。