義肢装具士(PO)とは、義手・義足や装具をつくり、患者さんの身体に合わせる医療専門職です。事故や病気で手足の一部を失った人のために、医師の指示のもとで採型・採寸から製作・適合までを担います。ものづくりと医療をつなぐ仕事です。この記事では、義肢装具士を目指す人や仕事内容を知りたい人に向けて、仕事内容・なり方・養成校・国家試験の合格率・年収のめやす・活躍の場・他職種との連携を、2026年7月時点の最新情報で解説します。
記事でわかること
この記事でわかること
- 義肢装具士(PO)とは何か、義肢装具士法にもとづく国家資格としての位置づけ
- 義肢装具士の具体的な仕事内容(採型・採寸・製作・適合)
- 義肢装具士になる方法と養成校
- 第39回義肢装具士国家試験の合格率・受験者数・合格者数
- 義肢装具士の年収のめやす
- 活躍の場と、理学療法士・作業療法士などとの連携
義肢装具士(PO)とは?
義肢装具士(PO)とは、義肢装具士法(昭和62年法律第61号)にもとづく国家資格です。医師の指示のもとに、義肢・装具の装着部位の採型と、義肢・装具の製作、身体への適合を行うことを業とします。POは「Prosthetist and Orthotist」の略です。
資格が誕生したのは1987年(昭和62年)で、医療職のなかでは比較的新しい国家資格です。技術職のイメージが強い職種ですが、実際は医師やリハビリ専門職、患者さんと密に連携しながら進める、医療チームの一員でもあります。
「義肢」と「装具」の違いも整理しておきましょう。義肢は、上肢や下肢の一部を失った場合に、手足の形や機能を補う人工の手足です。腕の代わりとなる「義手」と、脚の代わりとなる「義足」に分かれます。一方の装具は、手足や体幹に障害がある人が、機能の回復や悪化の抑制のために使う器具です。上肢装具・下肢装具・体幹装具があり、コルセットやサポーターも含まれます。
義肢装具士の仕事内容(採型・採寸・製作・適合)
義肢装具士の仕事は、医師の指示(処方)にもとづき、患者さんに合わせた義肢装具をつくり、身体に適合させることです。義肢装具はすべてオーダーメイドでつくります。失った部位や身体の状態、生活の仕方は人によって異なるためです。製作の流れは、大きく次の3ステップに分けられます。
- 採型・採寸:医師の指示を受け、患者さんと対話しながら身体のサイズを測り(採寸)、石膏などで型をとります(採型)。
- 製作:採型・採寸の結果をもとに、多種多様な材料を使って義肢装具を製作します。
- 適合:できあがった義肢装具を実際に装着してもらいます。フィッティング(合わせ)を繰り返し、その人の身体にぴったり合うよう細かく調整します。
義肢装具は、わずかなズレでも患者さんの生活に大きなストレスを与えます。そのため、細やかな調整と確実な技術が求められます。義肢装具士は、医師と患者さんという「人」と、義肢装具という「もの」のインターフェース(接点)を担う専門職です。患者さんの要望を聞きながら、最終的な適合を仕上げます。
義肢装具士になるには?(なり方と養成校)
義肢装具士になるには、受験資格を満たし、義肢装具士国家試験に合格して厚生労働大臣の免許を受ける必要があります。義肢装具士法にもとづく主な受験資格のルートは、次のとおりです。
- 高等学校卒業後などに、文部科学大臣が指定した学校または厚生労働大臣が指定した義肢装具士養成所で、3年以上必要な知識・技能を修得する。
- 大学や高等専門学校などで厚生労働大臣の指定する科目を修めたうえで、養成所で1年(一部は2年)以上修業する。
- 職業能力開発促進法にもとづく義肢・装具製作の技能検定合格者で、養成所で1年以上修業する。
もっとも一般的なのは、最初のルートです。すなわち、3年制以上の養成校(大学・専門学校)を卒業して受験資格を得る方法です。養成校では、臨床医学大要、義肢装具工学、義肢装具材料学、義肢装具生体力学、リハビリテーション医学、理学療法・作業療法などを幅広く学びます。
養成校は全国でも数が少なく、大学・専門学校あわせて10校程度(2026年時点で9校)にとどまります。内訳は、大学が4校(北海道札幌市、新潟県新潟市、埼玉県さいたま市、広島県東広島市)、専門学校・養成所が東京都・愛知県・兵庫県・熊本県などです。義肢装具士は、他の医療職に比べて養成校も有資格者も少ない、希少性の高い専門職です。
義肢装具士国家試験の合格率(第39回)
義肢装具士国家試験は、指定試験機関である公益財団法人テクノエイド協会が実施しています。試験は例年2月に行われ、合計100問(一般問題70問・実地問題30問)が出題されます。配点は一般問題が1問1点、実地問題が1問2点の130点満点です。78点以上(正答率60%以上)が合格基準です。
最新の第39回(2026年2月20日実施)の結果と、近年の推移は次のとおりです。
| 回(実施年) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 第39回(2026年) | 186人 | 150人 | 80.6% |
| 第38回(2025年) | 186人 | 133人 | 71.5% |
| 第37回(2024年) | 194人 | 154人 | 79.4% |
| 第36回(2023年) | 200人 | 162人 | 81.0% |
| 第35回(2022年) | 181人 | 124人 | 68.5% |
近年の合格率は、おおむね70%前後から80%台で推移しています。第1回から第39回までの累計合格者数は6,610名(テクノエイド協会)です。毎年の合格者は100名台にとどまるため、有資格者の総数も他の医療職に比べて少ないのが特徴です。リハビリ分野の国家資格としては、合格率の高い理学療法士の記事もあわせて参考にしてみてください。
義肢装具士の年収のめやす
義肢装具士の年収は、平均でおおむね430万円前後がめやすです(厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagで430.2万円・賃金構造基本統計調査をもとにした値)。ただし、勤務先の規模や地域、経験年数によって幅があります。正社員は月給制が一般的で、勤務先の規模が大きいほど平均年収も上がる傾向です。年齢の上昇とともに年収も上がりやすく、ベテランほど技術が評価される職種です。
義肢装具士は専門性が高く、有資格者が少ない資格です。そのため、技術を磨いてキャリアアップを目指しやすい点も魅力です。手に職をつけて長く働きたい人に向いています。
義肢装具士の活躍の場と他職種との連携
義肢装具士のおもな勤務先は、義肢装具製作会社(製作所)です。多くの義肢装具士は製作会社に所属し、契約先の病院やリハビリテーション施設に出向いて、採型・採寸や適合を行います。病院やリハビリテーションセンターに直接勤務するケースもありますが、人数としては少数派です。
義肢装具士の仕事は、医師の指示のもとで進むチーム医療の一環です。とくにリハビリの現場では、歩行や動作の訓練を担う理学療法士や、日常生活動作の改善を支える作業療法士、医師、看護師などと連携します。介護・リハビリの現場で機能訓練を担う職種としては機能訓練指導員の記事、骨折や打撲などの施術を行う国家資格としては柔道整復師の記事もあわせてご覧ください。
高齢化が進むなかで、歩行が不安定な高齢者の介護予防に役立つ装具など、義肢装具へのニーズは高まると見込まれています。希少な国家資格として、義肢装具士の活躍の場はこれからも広がっていくと考えられます。
進路選びで後悔しないための確認ポイント
義肢装具士は希少で魅力的な資格ですが、目指す前に「働き方の現実」を知っておくと、進路選びのミスマッチを防げます。資格取得後のイメージを具体的に持っておきましょう。
- 養成校が全国に約10校と少ない:通学できる範囲に学校があるか、進学前に確認が必要。地方在住の場合は一人暮らしも視野に入る。
- 勤務先の多くは義肢装具製作会社:病院に直接勤務する人は少数派。製作会社から契約先の病院へ出向く働き方が中心になる。
- ものづくりと対人支援の両方が求められる:細かな手作業が得意で、かつ患者さんと対話しながら調整できる人が向く。どちらか一方だけでは続けにくい。
- 技術の習得に時間がかかる:資格取得後も現場で経験を積むほど評価が上がる。手に職をつけて長く働きたい人に向く。
年収は平均430万円前後がめやすですが、勤務先の規模や経験で幅があります。「安定した高収入」よりも「専門技術を極めたい」「人の社会復帰を支えたい」という動機の人に合う仕事です。理学療法士や作業療法士など、リハビリに関わる他の進路と比べたうえで選ぶと納得感が高まります。資格や養成校の最新情報は、進学先の募集要項や厚生労働省のページなどで確認しましょう。
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まとめ
義肢装具士(PO)とは、義肢装具士法にもとづく国家資格です。医師の指示のもと、義手・義足などの義肢や、身体機能を補う装具の採型・採寸・製作・適合を担います。なるには、文部科学大臣または厚生労働大臣が指定する養成校(全国で10校程度)で3年以上学び、テクノエイド協会の国家試験に合格する必要があります。最新の第39回(2026年)国家試験は受験者186人・合格者150人・合格率80.6%で、近年は70%前後から80%台で推移しています。年収のめやすは平均430万円前後で、おもな勤務先は義肢装具製作会社です。理学療法士や作業療法士などと連携しながら、患者さんの社会復帰と生活の質を支える、専門性の高い希少な職種です。
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参考(一次情報)
- 厚生労働省「第39回義肢装具士国家試験の合格発表について」(受験者186人・合格者150人・合格率80.6%の原典)
- 公益財団法人テクノエイド協会「義肢装具士情報」(養成校一覧と第1回~第39回の試験結果・累計合格者数)
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