介護人材不足の10年後と、その原因・対策を知りたい方に向けた記事です。結論から言えば、需要は拡大し続け、人材確保は今後も大きな課題になります。国の調査では、27.0%の事業所が「10年後に運営の中核を担う人材の候補がいない」と回答しました。訪問介護では3割を超えます。将来への危機感は現場でも共有されています。この記事では、介護人材不足の将来予測と原因、国や事業所が進める対策、働く人や転職希望者にとっての意味を、2026年7月時点の最新情報で解説します。
記事でわかること
この記事でわかること
- 介護人材不足が10年後にどうなるのか(2026年度・2040年度の必要数の推計)
- なぜ介護人材が不足するのか(高齢化・生産年齢人口の減少などの原因)
- 国や事業所が進める5つの人材確保対策
- 働く人・転職希望者にとって「人材不足」が持つ意味
介護人材不足の10年後はどうなる?厚生労働省の最新推計
介護職員の必要数は、2040年度に約272万人まで増えると見込まれています。将来像を考えるうえで最も信頼できるのは、厚生労働省の推計です。2024年7月公表の「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」では、各都道府県が見込んだ介護サービス量をもとに、今後必要となる介護職員数が示されました。
それによると、必要な介護職員数は2026年度(令和8年度)に約240万人です。2040年度(令和22年度)には約272万人にのぼります。基準となる2022年度(令和4年度)の約215万人と比べると、2040年度までに約57万人の増員が必要になる計算です。
必要数の推計(2022年度比)
| 年度 | 必要な介護職員数 | 2022年度(約215万人)比 |
|---|---|---|
| 2026年度(令和8年度) | 約240万人 | +約25万人(年約6.3万人) |
| 2040年度(令和22年度) | 約272万人 | +約57万人(年約3.2万人) |
(出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」2024年7月12日公表)
ポイントは、直近の必要増員ペースが速い点です。2040年度までの長い目で見ると年あたりの必要増員数は約3.2万人にとどまります。しかし2026年度までは、年約6.3万人という速いペースが求められます。「10年後の心配」である前に、この数年間こそ人材確保の正念場だといえます。
現場の実感「10年後に中核を担う人材がいない」
現場の声からも、将来不安がうかがえます。厚生労働省は日本総研とともに、特養・介護付きホーム・訪問介護・通所介護を対象とした調査を2024年に実施しました。「10年後にサービス運営の中核を担える人材の候補がいるか」という問いに対し、全体の27.0%が「いない」と回答しています。とりわけ訪問介護では33.9%と、3分の1にのぼりました。
ここでいう「中核を担う人材」とは、管理者や施設長、主任、リーダーといったポストを適切に担える人を指します。日々の介護を担うスタッフの確保だけでなく、組織を引っ張るリーダー層の育成にも課題があるということです。背景には、訪問介護のホームヘルパーやケアマネジャーの平均年齢が高い事情もあります。10年後には、多くが引退時期を迎えます。
なぜ介護人材は不足するのか|4つの主な原因
10年後を見据えた人材不足には、4つの構造的な原因が重なっています。代表的なものを整理しました。
原因1:高齢化の進行(2025年問題・2040年問題)
団塊の世代が全員75歳以上となる2025年以降、介護を必要とする高齢者は増え続けます。さらに高齢者人口がピークに近づく2040年ごろには、介護サービスへの需要が一段と高まると見込まれます。これがいわゆる「2025年問題」「2040年問題」です。
原因2:生産年齢人口(働き手)の減少
需要が増える一方で、生産年齢人口(15歳から64歳の働き手の層)は減少が続きます。介護に限らずあらゆる業界で人手の取り合いが起こります。その結果、介護分野が必要な人数を確保しにくくなる構図です。
原因3:賃金や仕事に対するイメージ
介護は専門性の高い仕事です。それでも「給料が低い」「身体的・精神的な負担が大きい」といったイメージが先行し、入職をためらう人がいるのも事実です。実際の処遇は後述のとおり改善が進んでいますが、イメージの更新が追いついていない面があります。
原因4:離職と人材の定着
かつて介護業界は離職率の高さが課題とされてきました。ただし近年は改善が進み、後述するように離職率は全産業平均を下回る水準まで低下しています。それでも、採用した人材をいかに定着させ、リーダーへと育てるかは引き続き重要なテーマです。介護現場が抱える課題を整理した介護現場の問題点の記事もあわせてご覧ください。
国や事業所が進める5つの対策
こうした人材不足に対し、厚生労働省は総合的な介護人材確保対策として、大きく5つの柱を掲げています。全体像を表で整理しました。
対策の全体像
| 柱 | 主な取り組み |
|---|---|
| 処遇改善 | 賃上げ・処遇改善加算による給与水準の引き上げ |
| 多様な人材の確保・育成 | シニア・未経験者・他業種からの転職者の受け入れ |
| 離職防止・定着・生産性向上 | ICT/介護ロボット/AIの活用、介護助手の配置 |
| 介護職の魅力向上 | 仕事のやりがいや専門性の発信 |
| 外国人材の受入環境整備 | 育成就労制度などによる受け入れ支援 |
(出典:厚生労働省「総合的な介護人材確保対策」2024年7月)
処遇改善(賃上げ)
処遇改善加算(介護職員の給与上乗せを支える国の仕組み)などにより、給与は着実に上がっています。厚生労働省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」によると、加算を取得する事業所の介護職員(月給・常勤)の平均給与額は上昇しました。2023年9月の324,240円から2024年9月には338,200円へと、1年間で13,960円の増加です。給与の仕組みについては処遇改善手当の記事で詳しく解説しています。
ICT・介護ロボット・AIによる生産性向上
限られた人手で質の高いケアを続けるには、テクノロジーの活用が欠かせません。見守りセンサーや記録のデジタル化、移乗を補助する機器などが広がっています。職員の負担を軽くしながらサービスを維持する取り組みです。詳しくは介護ロボットの記事をご覧ください。
外国人材の受け入れ
外国人材が安心して長く働ける環境づくりも進んでいます。技能実習に代わる育成就労制度の整備などがその一例です。受け入れの仕組みや現状については、外国人介護人材の記事で詳しく紹介しています。
離職率はむしろ改善している
「介護は離職が多い」というイメージとは裏腹に、近年のデータは改善傾向を示しています。介護労働安定センターの令和6年度(2024年度)介護労働実態調査によると、訪問介護員・介護職員を合わせた離職率は12.4%まで低下しました。2年連続の低下で、調査開始以来の最低水準です。これは全産業平均(厚生労働省「雇用動向調査」2023年で15.4%)を下回る数字です。
改善の背景には、職場の人間関係の改善や休暇制度の充実があるとされ、有給休暇の取得率も上昇しています。人材不足という課題はあるものの、働く環境そのものは着実に良くなってきています。
事業所・管理者ができる人材確保・定着・育成の打ち手
結論として、人材不足の影響は事業所ごとの取り組みで大きく変わります。国の対策を待つだけでなく、管理者が自施設で打てる手を整理しました。明日からの一歩に使ってください。
採用:入口を広げる
- 未経験・シニア・短時間勤務など、多様な人が入りやすい求人条件にする
- 資格取得支援(初任者研修の費用補助など)を打ち出し、無資格者の不安を下げる
- 求人票で給与・処遇改善手当・休暇の取りやすさを具体的に書く
定着:辞めない職場をつくる
- 入職後の早期離職を防ぐため、教育担当(メンター)をつけてOJTを仕組み化する
- シフトの希望を出しやすくし、有給休暇の取得率を上げる
- ICT・介護ロボット・介護助手で記録や周辺業務の負担を減らす
- 面談で不満や悩みを早期に拾い、人間関係のトラブルに先回りする
育成:10年後の中核人材を今から育てる
調査で課題となった「中核を担う人材」は、採用より育成で確保するのが現実的です。
- リーダー候補に、シフト作成や記録管理などのマネジメント業務を早めに任せる
- 主任・管理者・ケアマネなどへのキャリアパスと、到達後の処遇を見える化する
- 資格取得のスケジュールを本人と共有し、計画的に育てる
国の対策の全体像は、厚生労働省「介護・高齢者福祉」のページもあわせてご確認ください。
働く人・転職希望者にとっての意味
視点を変えれば、人材不足は介護の仕事を選ぶ人にとって大きなチャンスです。ここまで厳しい側面を見てきましたが、需要の拡大は働き手にとって追い風になります。
安定した需要と「売り手市場」
介護ニーズが10年後に向けて拡大し続けるということは、介護の仕事への需要が今後も安定して続くということです。求人が豊富で、未経験からでも挑戦しやすく、自分に合った職場を選びやすい「売り手市場」が続くと考えられます。
キャリアアップとリーダーへの道
多くの事業所が「中核を担う人材」を求めている今は、リーダーや管理者を目指す人にとって追い風です。資格取得や経験の積み重ねによって、施設長や主任といったポストに就く道が開けやすくなっています。処遇改善も進む中で、長く働き続けることで収入アップも期待できます。
働きやすい職場を選ぶことが大切
一方で、人材確保がうまくいっている事業所とそうでない事業所の差は広がっています。採用や定着に力を入れ、教育体制や福利厚生が整った職場を選ぶことが、長く安心して働く鍵です。求人票や面接では、次のような点を確認すると、育成体制の有無が見えてきます。
- 教育担当(メンター・プリセプター)の有無と、入職後どれくらいの期間つくか
- 資格取得支援(初任者研修・実務者研修の費用補助)の実績
- 直近1~2年の離職率や、平均勤続年数の目安を教えてもらえるか
- 主任・リーダー・管理者への昇格実績と、その際の処遇の変化
これらを見学や面接で具体的に質問し、答えが曖昧でない事業所ほど、育成の仕組みが整っている傾向があります。
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まとめ
介護人材不足の10年後は、厚生労働省の推計で2040年度に約272万人の介護職員が必要とされ、2022年度比で約57万人の増員が求められます。高齢化と働き手の減少という構造的な要因がある一方、対策も総合的に進んでいます。処遇改善やICT活用、多様な人材・外国人材の受け入れがその柱です。離職率はすでに全産業平均を下回る水準まで改善し、働く環境は良くなってきています。需要が拡大し続ける介護の仕事は、未経験からの挑戦やキャリアアップを考える人にとって、むしろ将来性の高いフィールドです。正確な情報をもとに、自分に合った働きやすい職場を選んでいきましょう。
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参考(一次情報)
- 厚生労働省「介護人材確保の現状について」(福祉人材確保専門委員会資料・2025年5月)(第9期推計・有効求人倍率の原典)
- 介護労働安定センター「介護労働実態調査」(離職率・賃金の最新調査結果)
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