作業療法士(OT)とは、食事や着替え、家事、仕事、趣味といった「作業」を通じて、心身に障害のある人の生活を支えるリハビリテーションの専門職です。身体だけでなく精神や発達の領域にも関われるのが大きな特徴で、医療・介護・福祉と幅広い現場で活躍しています。この記事は、これから資格を目指す方に向けて、仕事内容や国家資格の取り方、最新の国家試験の合格率、平均年収、理学療法士・言語聴覚士との違いまでを2026年7月時点の最新情報で解説します。
記事でわかること
この記事でわかること
- 作業療法士(OT)とは何か、仕事内容と対象となる人
- 作業療法士になるための資格の取り方とルート
- 第61回作業療法士国家試験(2026年)の合格率と難易度
- 作業療法士の平均年収と活躍の場
- 理学療法士(PT)・言語聴覚士(ST)との違い
作業療法士(OT)とは
作業療法士とは、日常生活に支障がある人に「作業」を用いてリハビリテーションを行う国家資格の専門職です。病気やけが、加齢、障害などによる困りごとを支えます。英語の Occupational Therapist の頭文字をとって「OT」とも呼ばれます。「理学療法士及び作業療法士法」にもとづく国家資格で、医師の指示のもとで作業療法を行います。
ここでいう「作業」とは、いわゆる仕事だけを指すのではありません。食事・着替え・トイレ・入浴などの日常生活動作(ADL)から、家事・育児・仕事・勉強・地域活動などの応用的な動作、さらに遊びや趣味、創作活動まで含みます。つまり、人が生活の中で行うあらゆる活動が対象です。作業療法士はこうした作業を治療や訓練の手段として使い、その人らしい生活の再建を支援します。
作業療法士の仕事内容
作業療法士の仕事は、対象者の身体機能・精神機能・生活能力を評価し、一人ひとりに合わせたリハビリ計画を立てて実施することです。具体的には次のような支援を行います。
- 日常生活動作(ADL)の練習:食事・着替え・整容・トイレ・入浴など、毎日の基本的な動作の回復・維持を図る
- 応用的動作・社会適応の支援:家事・買い物・公共交通機関の利用・復職・復学など、生活や社会参加に必要な動作の練習
- 手や腕の機能訓練:手指の細かい動作(書字・ボタンかけなど)や上肢の動きの改善
- 精神面へのアプローチ:うつ病や統合失調症などの精神疾患、認知症のある人への作業活動を通じた支援
- 福祉用具・住環境の提案:自助具や福祉用具の選定、手すりの設置など住宅改修の助言
作業療法士ならではの特徴は、関われる領域の広さです。身体障害だけでなく、精神障害・発達障害・高齢期(認知症など)と幅広く対応できます。とりわけ精神領域のリハビリに専門職として関われる点が、他職種との大きな違いです。
作業療法士になるには|資格の取り方
作業療法士になるには、指定の養成校で3年以上学び、国家試験に合格する必要があります。養成校は文部科学大臣または厚生労働大臣が指定し、卒業(見込み)によって受験資格が得られます。一般的な流れは次のとおりです。
- 高校卒業後、作業療法士の養成校(大学・短大・専門学校)に入学する
- 養成校で3~4年かけて、解剖学・生理学・作業療法学などの専門知識と臨床実習を修める
- 卒業(見込み)により国家試験の受験資格を得る
- 作業療法士国家試験を受験し、合格する
- 厚生労働大臣の免許を受けて作業療法士として登録される
養成校(大学・短大・専門学校)の違い
養成校には大学・短大・専門学校があり、修業年限や学べる内容に違いがあります。どのルートでも国家試験の受験資格は得られるため、学費・期間・学びたい内容に合わせて選びます。
| 養成校の種類 | 修業年限 | 特徴 |
|---|---|---|
| 大学 | 4年 | 一般教養や研究も含めて幅広く学べる。卒業で学士の学位が得られる |
| 短期大学 | 3年 | 短期間で資格取得を目指せるが、設置校は少ない |
| 専門学校 | 3年または4年 | 臨床知識の習得や国家試験対策に力を入れる。昼間・夜間の課程がある場合も |
いずれの養成校でも、学内での座学に加えて医療機関や施設での臨床実習が必修です。現場で求められる実践力を身につけてから国家試験に臨みます。
作業療法士国家試験の合格率と難易度
作業療法士国家試験は年1回、例年2月に実施されます。直近の第61回作業療法士国家試験(令和8年/2026年2月実施)の結果は、厚生労働省の発表によると次のとおりです(出典:厚生労働省「第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について」2026年)。
| 項目 | 第61回(2026年)の結果 |
|---|---|
| 出願者数 | 5,632人 |
| 受験者数 | 5,426人 |
| 合格者数 | 4,947人 |
| 合格率 | 91.2% |
| 新卒者の合格率 | 96.6% |
同じ回の理学療法士国家試験は、受験者数12,436人・合格率89.7%でした。作業療法士国家試験の合格率は例年80~90%前後で推移しており、しっかり対策をすれば合格を狙える試験です。特に新卒者の合格率は高く、養成校での学びと国家試験対策を着実に積み重ねることが大切です。
合格率の推移
作業療法士国家試験の合格率は、ここ数年おおむね80%台で安定しており、第61回は90%台に上昇しました。近年の推移は次のとおりです(出典:厚生労働省 各回の合格発表)。
| 回(実施年) | 合格率 |
|---|---|
| 第57回(2022年) | 80.5% |
| 第58回(2023年) | 83.8% |
| 第59回(2024年) | 84.1% |
| 第60回(2025年) | 85.8% |
| 第61回(2026年) | 91.2% |
次回(第62回・2027年実施予定)の試験日程は、例年9月ごろに厚生労働省から公表されます。受験を予定している場合は、厚生労働省の公式サイトで最新の施行要項を確認してください。
作業療法士の平均年収
作業療法士の平均年収は、おおむね440万円前後とされています。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和7年/2025年)をもとにすると、月収約30.9万円・年間賞与約71.7万円で年収約443万円が目安です。あくまで全国平均であり、勤務先の規模や地域、経験年数、役職、勤務形態によって幅があります。
年収を上げる方法としては、次のようなキャリアアップが挙げられます。経験を積んで役職に就く、認定作業療法士・専門作業療法士などの上位資格を取得する、訪問リハビリや管理職など待遇の良いポジションに移る、といった道です。最新の金額は調査年によって変わるため、求人を比較する際は提示された給与額を個別に確認することをおすすめします。
作業療法士(OT)・理学療法士(PT)・言語聴覚士(ST)の違い
リハビリテーションの専門職には、作業療法士(OT)のほかに理学療法士(PT)と言語聴覚士(ST)があり、いずれも国家資格です。3職種は連携してチームでリハビリを担いますが、得意とする領域が異なります。違いを表で整理します。
| 職種 | 略称 | 主な対象・役割 |
|---|---|---|
| 作業療法士 | OT | 応用的動作(家事・趣味・仕事など)や日常生活動作の改善。精神障害・発達障害・高齢期の領域にも関わる |
| 理学療法士 | PT | 起き上がる・立つ・歩くなどの基本動作能力の回復。運動機能や体力の維持・向上が中心 |
| 言語聴覚士 | ST | 話す・聞くなどの言語コミュニケーション、声、聴覚、食べる・飲み込む(摂食嚥下)の障害への支援 |
大まかに整理すると、役割は次のように分かれます。PTが「立つ・歩く」といった基本動作を支えるのに対し、OTは「食べる・着替える・家事をする・働く」といった応用的・社会的な動作を支援します。STは言語・聴覚・嚥下を専門とします。とりわけOTは、身体面だけでなく精神面のケアや心の病・発達障害への支援にも関われる点で、PT・STとは役割が異なります。理学療法士の仕事は理学療法士とは、言語聴覚士については言語聴覚士とはでも詳しく解説しています。
作業療法士の活躍の場
作業療法士の活躍の場は、医療から介護・福祉・地域まで多岐にわたります。対象とする領域が広いぶん、働ける現場も豊富です。主な勤務先は次のとおりです。
- 医療分野:病院(急性期・回復期・療養型)、リハビリテーション科、精神科病院・精神科デイケア など
- 介護分野:介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、通所リハビリテーション(デイケア)、訪問リハビリテーション など
- 福祉・発達支援分野:児童発達支援・放課後等デイサービス、障害者支援施設、就労支援事業所 など
- 地域・行政分野:地域包括支援センター、保健所、行政の介護予防事業 など
高齢化が進むなかで、介護分野でのリハビリ専門職へのニーズは高まっています。たとえば作業療法士は、デイサービスなどで利用者の身体機能の維持・向上を担う機能訓練指導員として配置されることもあります。また、精神科や発達支援の現場では、心理の専門職である公認心理師などと連携しながら支援にあたる場面も少なくありません。
作業療法士に向いている人
作業療法士は人と深く関わる仕事のため、相手の気持ちに寄り添えるコミュニケーション力が求められます。次のような人は適性があるといえます。
- 人の役に立ちたい、生活を支えたいという思いが強い人
- 相手の小さな変化に気づき、根気強く関われる人
- 身体機能だけでなく、心のケアにも関心がある人
- 手工芸やレクリエーションなど、作業活動を通じた支援に興味がある人
長期的に対象者と関わりながら回復を支える仕事です。観察力・忍耐力・チームで連携する協調性も大切になります。
養成校選び・資格取得で後悔しないために
作業療法士は3年以上の学費と時間がかかる資格です。だからこそ、入学前の確認不足が後悔につながりやすい点を先に押さえておきましょう。よくあるつまずきと、防ぐための確認ポイントを整理します。
進路選びで起こりやすい失敗
- 学費だけで養成校を決め、臨床実習の体制や国家試験対策の手厚さを見落とす
- 働きたい領域(身体・精神・発達)を考えず入学し、実習で方向性に迷う
- 夜間課程の通学と仕事の両立を甘く見積もり、実習期間に行き詰まる
入学前に確認したいチェックリスト
- 直近の国家試験合格率と、卒業までの留年・退学の状況
- 実習先の分野と数(自分が関心のある領域の経験を積めるか)
- 通学のしやすさと、働きながら学ぶ場合の時間割の現実味
取得後の年収とキャリアの現実
初任給の水準は職種内で大きな差はつきにくく、年収を伸ばすには働き方の選択が鍵になります。主な道筋は次の3つです。
| 方向性 | 年収アップにつながる動き |
|---|---|
| 専門性を高める | 認定作業療法士など上位資格を取り、得意領域を深める |
| 働く場を選ぶ | 訪問リハビリや管理職など待遇の良いポジションへ移る |
| 役割を広げる | 後進指導やチームのまとめ役を担い、役職に就く |
国家試験の最新の施行要項は、厚生労働省の介護・高齢者福祉のページなどで公表されます。受験前に必ず確認しましょう。
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まとめ
作業療法士(OT)は、食事・家事・仕事・趣味といった「作業」を通じて、身体・精神・発達・高齢期と幅広い領域の人を支える国家資格の専門職です。なるには養成校(大学・短大・専門学校)で3年以上学び、国家試験に合格する必要があります。第61回(2026年)の合格率は91.2%と高く、新卒者であれば着実な学習で合格を目指せます。平均年収はおおむね440万円前後で、医療・介護・福祉・地域と活躍の場も豊富です。応用的動作や精神領域にも関われる点が、理学療法士・言語聴覚士との大きな違いです。リハビリ専門職としてのキャリアを考えている方は、養成校選びや国家試験の最新情報を確認しながら、自分に合った道を検討してみてください。
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参考(一次情報)
- 厚生労働省「第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について」(受験者5,426人・合格率91.2%の原典)
- 厚生労働省「作業療法士国家試験の施行」(試験日程・受験資格・受験手続の原典)
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